軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第720話 様々なプレゼント

「さて、そしたら俺もツィちゃんにプレゼントを渡す番なんだが……」

ライトとマキシが、ユグドラツィにプレゼントを渡した後のこと。

レオニスが立ち上がりながら徐に口を開く。

「俺の場合、ライトやマキシのように何かを作り出すってことが割と苦手でな。金で買える物なら、一通りの物は手に入れられるんだが……神樹のツィちゃん相手に、金銭で買えるようなもんで満足させてやれる自信がなくてな」

「あー……ツィちゃんに何を贈ればいいか、すっごく迷うよねー」

「だろう? 服とか靴とか論外だし、宝石やアクセサリーを買ってもライト達の心を込めた手作りには到底敵わん。武器や防具なんて尚更意味を成さんしな」

『そんな……私は既に、貴方方からたくさんのものをもらってばかりいるのだから、そんなことを気にしなくてもいいのに……』

レオニスの話にライトが相槌を打ち、ユグドラツィは心配そうにレオニスに声をかける。

ユグドラツィからしてみれば、レオニスはライトとともに他の神樹の枝で分体を届けてくれた恩人だ。また、普段からユグドラツィの分体入りのタイピンやカフスボタンを身に着けて、様々な景色を見せてくれる。

そんなレオニスに恩義を感じこそすれ、誕生日プレゼントがないことに文句を言うはずもなかった。

「いや、ツィちゃんがそう言ってくれても、俺の方の気が済まん。そこで、ラウルと組んでこれからツィちゃんを守る結界を作ろうと思う」

『ラウルと組んで……ですか?』

「ああ、ラウルもちょうど今ツィちゃんにプレゼントできるものが全くないってんでな。この際俺と組んで、ツィちゃんの結界作りをしようって話になったんだ」

レオニスの話によると、昨日の夜にユグドラツィへの誕生日プレゼントの話をした時に、そう決まったのだという。

レオニスの話を補完するように、ラウルも話に加わってきた。

「恥ずかしながら、俺もツィちゃんにプレゼントしてやれそうなものが何も思いつかなくてな……ツェリザークの雪や氷はこないだ全部使ってしまって、次の冬になるまで入手できないし。他に俺にできることと言ったら料理くらいしかないんだが、樹木のツィちゃんに飲み食いさせてやれるようなものもないし」

『ラウルも、そんなこと気にしなくていいのに……』

「いや、ツィちゃんがそう言ってくれても、俺もご主人様同様気が済まん。だからご主人様とも話して、ツィちゃんの結界作りを手伝うことにしたんだ」

ラウルが最も得意とする料理。人間や精霊、神獣、霊鳥など、料理を食べることのできる相手なら、いくらでもその腕を振るってご馳走を振る舞えるのだが。樹木の神樹相手となるとそうもいかない。

どれ程ラウルが美味しい料理を作ろうとも、さすがに樹木に食べさせることはできないのである。

そんな中、唯一プレゼントとして最適だったのがツェリザークの雪や氷だった。だがそれも、先日のユグドラツィ襲撃事件後にユグドラツィを目覚めさせるために全部使ってしまって、手元にはもう本当に砂粒一つほども残っていない。

レオニスやライトが持っていた分も、全てユグドラツィの回復に当ててしまって本当にすっからかんなのだ。

「まぁ、プレゼントに結界ってのもおかしな話だとは思うんだが……どの道ツィちゃんの身を守る新たな防衛策が、この先必要だからな」

「そうそう。だからそれをプレゼント代わりに、来年の誕生パーティーまでにご主人様とともに結界を作ろうと思ってな」

『二人とも、そこまで私のことを考えてくれるなんて……本当にありがたいです……』

レオニスとラウルの話を聞き、ユグドラツィは静かに感動している。

実際、先日のユグドラツィ襲撃事件を機に、ユグドラツィの守りをもっとしっかりしなければならない、という話はユグドラツィの昏睡状態の間にも出ていた。

守りを固めるというと、選択肢は主に二つ。物理的な壁を作るか、あるいは目に見えない結界を作るか。

しかし、身の丈100メートルを超えるユグドラツィに、多少の壁を作ったところで段差程度にもならない。それに、空中から襲われたら壁など何の役にも立たないだろう。

そうした諸々の状況により、やはり結界を作るのが一番現実的で有効だろう、ということになったのだ。

「本当は他の神樹達のように、ツィちゃんを中心として里を形成して守ってくれるような存在がいてくれれば一番いいんだがな。さすがにそれは一年や二年でどうこうできるもんじゃなさそうだし」

「そうだよねぇ。精霊や妖精なんかがツィちゃんの周りに里を作ってくれるといいんだけど……」

「そのうち地上に住むドライアドでも見つけて、移住話を持ちかけようか、とも考えてはいるんだがな。それもいつ実現できるか分からんので、まずは結界作りを先にするつもりだ」

大神樹ユグドラシアは八咫烏が里を形成して守り、竜王樹ユグドラグスにも白銀の君や中位ドラゴン達がすぐ傍にいる。天空樹ユグドラエルには天空島の仲間達がいるし、海樹ユグドライアにだって男性型人魚達が付き従い守っている。

そう、神樹ユグドラツィだけが、これまでそういった他の守護的存在が全くいなかったのだ。

「結界って、どんなものを作るの? ナヌスの結界をもっともっと大きくするような感じ?」

「ああ、今度ナヌスにも相談してみるつもりだ。ナヌスは結界作りの名人だからな」

「それがいいね!素材集めとか、ぼくも手伝う!」

「おう、ありがとうな」

積極的に手伝いに名乗り出るライトに、レオニスが微笑みながらライトの頭を撫でる。

そして話題は次の段階に移る。

「ツィちゃんへのプレゼントが出揃ったら、次はライトへのプレゼントだな!じゃあ、マキシから出してもらおうか」

「はい!僕からライト君へのプレゼントは、フォルちゃんの毛で作ったフェルトのマスコットです!」

「うわぁ、可愛い!これ、フォルの毛で作ったの?」

「はい!フォルちゃんのブラッシングをする時に出る抜け毛を、ラウルといっしょに集めてまして。その毛でフェルト生地を作って、マスコットを縫ってみました!」

レオニスからトップバッターのご指名を受けたマキシ。

早速懐から取り出したそれは、手のひらサイズのフェルト製マスコット。垂れ耳のフォルの顔を模していて、青と緑のオッドアイはそれぞれの色糸を用いた刺繍で表現している。

ニッコリとした口元は茶色の刺繍。可愛いフォルがさらにデフォルメされていて、とても愛らしい出来上がりである。

頭の天辺にはループ状の紐がつけられていて、鞄などにストラップとしても付けられそうだ。

あまりにも素晴らしい出来栄えに、ライトの顔までパァッ!と明るくなる。

「マキシ君、こんな可愛いものを作れるなんて、本当にすごいね!」

「ぃゃぁ、僕なんてまだまだです……フォルちゃんの毛をフェルト生地にするのも、カイさん達に手伝ってもらいましたし」

「だってマキシ君は、まだ人里に出てきてから一年くらいしか経ってないんだよ? それなのに、こんなに素敵なマスコットを作れるようになるなんて、すごいことだよ!」

「ありがとうございます……ライト君にそう言ってもらえると、僕も嬉しいです」

ライトからの大絶賛に、マキシは照れ臭そうにはにかんでいる。

ライトの横にいたレオニスやラウルも、ライトの手のひらの中にすっぽりと収まったフェルトマスコットを見て感心している。

ラウルの肩にいるフォル、レオニスの頭に乗っかっているウィカまでもが興味深そうに覗き込んでいるのは、ご愛嬌というものである。

「おおー、こりゃまたフォルにそっくりで可愛いな!」

「マキシ!俺にもこれと同じものを作ってくれ!」

「う、うん、またフォルちゃんのブラッシングで抜け毛が貯まったら、今度はラウルにも作ってあげるね」

「約束だぞ!ずっと待ってるからな!」

フンス!と鼻息も荒く、マキシに迫るラウル。

レオニスの絶賛はともかく、兎にも角にもラウルの熱意が半端ない。

さすがはフォル教信者第一号である。

マキシもラウルの勢いにタジタジになりながらも、親友の頼みを断ることなどない。

これからも、二人してフォルのブラッシングで癒やされつつ抜け毛を貯めていくのだろう。

「マキシ君、ありがとう!大事にするね!」

「はい!もし良ければ、アイテムリュックにつけてください!」

「それいいね!フォルの毛だから、何か運気が爆上がりしそうー」

マキシのプレゼントを、ライトが早速アイテムリュックの持ち手部分に付ける。

フォルは幻獣カーバンクルである。その別名『幸運をもたらす瑞獣』はかなり有名だ。

そんなフォルの毛で作られたマスコットなら、ライトのステータスの中の『運』も数値が跳ね上がりしているかもしれない。

マキシのプレゼント進呈が終わり、その次は自分だ、とばかりにラウルが立ち上がる。

「じゃ、次は俺な。ライトには俺のイチ押しの包丁をプレゼントしよう」

「え。ラウルイチ押しの包丁?」

「おう、切れ味に耐久性、使い心地や手入れのしやすさ等々、全てが完璧な逸品だぞ」

ラウルの言葉に、ライトはしばしきょとんとしている。

かと思うと、だんだんと目を見開きながら、プルプルと慄き始めるライト。絞り出すような声で、ラウルに問いかけた。

「あ、あのラウルが、イチ押しする程の包丁を人に譲るなんて…………ねぇ、ラウル、大丈夫!? どこか具合悪いんじゃない!? 熱でもあるの!?」

「何気にこの小さなご主人様も、大きなご主人様に似てきているな……」

ライトのあまりの言い様に、ラウルがぽつりと零す。

しかし、ライトがラウルの身を心配するのも無理はない。

ラウルにとって、調理器具は命の次に大事なもの。包丁類だって何十本、何百本と持っているが、どれもラウルが気に入って購入したものでずっと大事にしながら使っている。

そんなラウルが調理器具を手放すなど、本来なら絶対にあり得ないことなのである。

「俺のイチ押しの包丁はな、ペレ鍛冶屋で特別に作ってもらったものなんだ」

「ペレ鍛冶屋さん? え、何、あの鍛冶屋さん、包丁も作れるの!?」

「ああ。ペレ鍛冶屋は武器防具全般を取り扱ってて、包丁なんかは専門外だそうだ。だが、ペレのおやっさんの腕を見込んで、俺が頼みに頼み込んで一振り作ってもらったんだ」

「そうなんだ……」

ライトと会話をしながら、ラウルが空間魔法陣を開いて一振りの包丁を取り出した。

それは革製の鞘に収められていて、刃渡りは20cm程度。形からしても、一般的な三徳包丁のようである。

「包丁の刃はミスリル製で、柄はツィちゃんの枝を使わせてもらった」

『まぁ、私の枝がこんなところでも役立ったのですね。嬉しい限りです』

「ミスリル製の包丁に、ツィちゃんの枝まで使われてるなんて……すっごい贅沢な包丁だね!」

ラウルが語るライト専用包丁の解説に、ライトも興奮気味に喜んでいる。

そして包丁の柄に使われたユグドラツィも、自分の枝がライトへのプレゼントに使われたことに喜びを表していた。

「ライトも将来冒険者になるなら、料理の知識は必須だ。野営の時に役立つのはもちろんのこと、これからの時代は男だって料理ができなくちゃな」

「そうだよね。ぼくもラウルに料理を習いたいと思っていたんだ!」

「そうだろう、そうだろう。だから、ライトにも良い包丁を持たせておいてやりたかったんだ。この包丁で、俺といっしょに料理しような」

「うん!!」

ライトもいずれはラウルに料理を習いたいなー、と常々思ってはいた。

とはいえ互いに日々なかなかに忙しく、ともに料理をしたことは未だにない。

だが、ラウルもオーガ族相手に料理教室を開くようになり、料理そのものだけでなく料理を教える楽しさを知るようになった。

将来レオニスのような立派な冒険者を目指すならば、ライトにも料理の知識は必ず要るはずだ。そう考えたラウルは、ラグナロッツァで一番信頼できるペレ鍛冶屋でライトのための包丁をオーダーメイドしたのだ。

「ラウル、ありがとう!夏休みの間に、一度はラウルといっしょに料理したいな!」

「おう、いつでも教えてやるぞ。夏休みだけじゃなく、平日でも土日でも、ライトが料理をしたいと思った時に教えてやるから。遠慮なく俺に言えよ」

「うん!!」

ラウルに料理を習う約束をしたライト。

ラウルからのプレゼントであるミスリル製包丁を、アイテムリュックに大事そうに仕舞う。

ラウル程の凄腕料理人に教えを請えるというのは、ものすごく幸運なことだ。しかも幼いうちから料理のイロハを教えてもらえれば、ライトもまた超一流の料理人になれる可能性も十分にある。

ライトは将来冒険者になるつもりだが、冒険者を引退した後の第二第三の再就職候補として料理関連の職に就くことも可能になるだろう。

生涯に渡って役に立つ知識を得る、それはライトの今後の人生をより安泰なものにしてくれるのだ。

ラウルのプレゼント進呈が無事完了し、最後のレオニスの番になった。

レオニスは空間魔法陣を開き、何かをを取り出した。

「じゃ、最後は俺な。ライト専用の肘当てを、カイ姉に作ってもらった。天空竜の革で作られているから、すごく丈夫だぞ」

「肘当て!? 天空竜の革!?」

レオニスが空間魔法陣から取り出したのは、黒い革でできた一対の肘当てだった。

レオニスから手渡された肘当てを両手に持ちながら、ライトはとてもびっくりしている。

天空竜の革といえば、ラウルの冒険者登録祝いにレオニスから送られた黒の装備一式が記憶に新しい。

その時に使った天空竜の革の余剰部分で、ライト専用の肘当てを作ったらしい。

余りの生地といえば聞こえが少々悪いが、それを差し引いてもなお天空竜の革自体がものすごく貴重な素材である。

そんな貴重な素材で、肘当てという装備品を自分のために作ってもらえたことが、ライトにはとても嬉しかった。

「本当はマントやベスト、ブーツなんかもいいかと思ったんだがな。マントはカイ姉達に作ってもらったやつがあるし、ベストもブーツもいずれサイズアウトしていくしな……って、肘当てだってライトが大きくなったら、いずれは小さくなって使えなくなるけど。それでもカイ姉達にその都度直してもらえば、十年くらいは使えるだろう」

「ううん、肘当て嬉しい!マントの次に作ってもらった、ぼく専用の装備品だもん!」

「そうかそうか、ライトならきっと喜んでくれると思ったぞ」

花咲くような笑顔で喜ぶライトに、レオニスも嬉しそうに破顔しながらライトの頭をくしゃくしゃと撫でる。

まだ成長期にあるライトには、レオニス達のように一生使える装備品というものはまだない。ライトがこれからどんどん成長して、背も伸びて体格も良くなれば子供の時に作ったものは全て身体に合わなくなってしまうからだ。

だがそれでも『将来は立派な冒険者になる!』というライトの意思に添い、数年の間しか使えないものであっても贈ってくれるレオニス。

それは、既にライトを冒険者仲間として扱ってくれている証であった。

『ライトも心尽くしの贈り物がもらえて、本当に良かったですね』

「はい!ツィちゃんと同じ日に誕生日を祝ってもらえて、本当に嬉しいです!レオ兄ちゃん、ラウル、マキシ君、本当にありがとう!」

ユグドラツィの言葉に、ライトが全力で頷きながらレオニス達に礼を言う。こんなに嬉しい誕生日は、サイサクス世界に生まれついてから初めてのことだ。

それまでの誕生日は、カタポレンの森の家で毎年レオニスと二人きりでささやかなお祝いをしていた。

それが、今年はこんなにも賑やかで大勢の友に祝ってもらっている。

ラグナロッツァのラグーン学園に通うようになって、本当に良かった!とライトは心から感謝していた。

「どういたしまして。ライトもこれからも鍛錬がんばれよ。もちろん学園の勉強もな」

「うん!修行も勉強も、全部頑張る!」

「よし、今日家に帰ったら早速何か料理するか?」

「うん!……って、まずはラウルの横で見てていい?」

「フォルちゃんのおかげで、ライト君にとっても喜んでもらえて良かったです!フォルちゃんもありがとうね!」

「そうだね、あのフェルト生地はフォルのおかげだもんね!フォル、ありがとう!」

「フィィィィ♪」

「……あ、ウィカもいつもありがとうね!」

『うにゃッ!』

大勢の仲間に囲まれて、それぞれとやり取りを交わすライト。

ライトの人生の中で一番幸せな誕生日であり、それを皆と笑い合いながらともに過ごせる喜びを噛みしめていた。