軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第701話 次の対策

「ピース!どこにいる、ピース!いたら返事をしてくれ!!」

レオニスがユグドラツィの周囲を周回しつつ、大きな声でピースの名を呼び続ける。

上から少しづつ下に降下していき、高さを変えながら二周か三周した頃箒に乗ったピースがレオニスのもとに飛んできた。

「レオちん、呼んだー!?」

「おう、あの黒炎の元らしきものが見えたぞ!!」

「ホント!? それは一体何!? どこにあんの!?」

レオニスの報告に、ピースも身を乗り出しつつ食いついてきた。

二人は空中で、臨時の作戦会議をする。

「ツィちゃんの幹の真ん中あたり、その中心に繭みたいなものが見えた。そしてその繭の中には、とんでもなく禍々しい何かがいる」

「ふむ、繭、か……それがこの神樹の生命力を食いながら成長している、てことかな」

「おそらくはそうだろう。で、ピースの方はどうだ。浄化魔法の呪符『究極』百枚ではやはり足りなさそうか?」

「うん。今半分くらい使ったところだけど……最初の一枚目なんて、幹に貼る手前、近づけただけで一秒も持たずに真っ黒焦げになった……小生こんなの初めて見たよ……使うにつれて少しづつ保つ時間は延びてるけど、それでも一分……いや、三十秒も保たない」

レオニスはユグドラツィの中に巣食うものを報告し、ピースはレオニスから預かった浄化魔法呪符『究極』を使用した状況を告げる。

レオニスの方はともかく、ピースの方はかなり苦戦しているようだ。歯噛みしながら悔しげに俯くピースの顔は、相当分が悪い状況であることを如実に物語っていた。

しかし、ここで立ち止まっている暇はない。

すぐに顔を上げたピースが、レオニスに向かって提案をする。

「……よし。まずはその巣食うものを見つけただけでも良しとしよう。そしたらレオちん、次はこの蟲どもの殲滅だ。こいつらの邪魔があるうちは、浄化魔法をかけることに専念できない」

「そうだな。しかし……こいつらをいくら狩っても減った気がしねぇんだが……一体どこから涌き続けてやがるんだ……」

「だよねぇ……ラウル君や八咫烏達も懸命に蟲狩りしてるってのに、未だにあんなにうじゃうじゃいるなんて……」

未だにユグドラツィの樹体のあちこちには、いくつもの首狩り蟲が群がっている。その光景を見遣りながら、レオニスもピースも小さくため息をつく。

この首狩り蟲が一向に減らないせいで、浄化魔法を集中してかけることができないでいる。文字通りお邪魔虫であるそれらを完全駆除しなければ、ユグドラツィの中に巣食う邪悪な代物を祓うことなど到底できないだろう。

「これ、多分どこかに転移門と同様の魔法か何かが張られてて、そこから送り込まれてるんじゃないかなぁ? でなきゃこんなにずっと涌き続けるはずないよ」

「確かにな……それなら蟲が一向に減らないことにも説明がつく……だがしかし、転移魔法があるとして一つや二つじゃないだろうな」

「だね……蟲が転移してくる間隔は分からないけど、少なくとも三つ……いや、五つくらいはありそうだ」

二人は改めてユグドラツィと周囲の森を観察する。

ユグドラツィを狙う首狩り蟲は、周辺の森から涌き出ている。それは地面を這い歩いて出てくるものもあれば、近くの木の隙間から突如空中に飛び出てくるものもある。

今夜は月明かりでかなり明るく見通しが良いとはいえ、それでも夜の闇に包まれた森の中に潜む転移装置を探し出すのはかなり手間取りそうだ。

しかし、どんなに困難であろうとも、それをやらないという選択肢はない。

ユグドラツィを救うためならば、どんなことでもする———強い決意に満ちたレオニスは、早速ピースに向かって指示を出す。

「……こうして突っ立ってる時間も惜しい。俺とお前とラウルで蟲どもが出てくるからくりを見つけて全て潰すぞ!」

「分かった!」

「俺はラウルを見つけてから向かうから、ピースは先に森の探索を始めててくれ」

「あいあいさー!」

今後の方針をサクッと決めたレオニスとピースは、早速二手に分かれて行動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その頃ライトは、アラエルの傍で主に回復剤のサポートをしていた。

時折アラエルのもとに戻ってくる八咫烏達。アラエルに浄化魔法をかけ直してもらうついでに、体力回復のエクスポーションや魔力回復のアークエーテルをぐい飲みしていく。

最初ライトにそれらを勧められた時には、皆一様に戸惑っていたものの、アラエルから「それを飲むと魔力や体力がものすごく回復するから、絶対に飲んでいきなさい!」と喝を入れられた。

妻や母から厳命が下ったとあれば、それに従うしかない。皆おっかなびっくりしながら、回復剤を飲む。

そして一度飲んでしまえば、それらの効き目を実際に己の身を以て体感していく八咫烏達。

「おおお……これは……何という素早い効き目……」「かなり飛び続けてて、少し疲れが溜まってきていたところだったけど……こんなに回復できるならまだまだ戦えるわ!」等々、全ての八咫烏達に好評を得ていた。

そしてマキシが戻ってきた時には、ライトとも少し話して現状認識を共有する。

「マキシ君もお疲れさま!」

「ライト君もお疲れさまです!母様や僕達のサポートをしてくれて、ありがとうございます!」

「蟲の方はどう? 少しは減ってきた?」

「それが……僕とラウルがここに到着した時に比べたら、まだ減っている方だとは思いますが……」

やはりあまり芳しくない状況に、マキシだけでなくライトの顔も曇る。

だが、落ち込むのはほんの一瞬だけ。ライトはすぐに前を向き、明るい声でマキシを元気づけるように話しかける。

「そっか…………でも、少しづつでも減っていってるなら、確実に良い方向に向かっているってことだよね!」

「……そうですね。僕ももっと頑張ります!」

ライトに励まされたマキシも、己を奮い立たせるように元気な返事をする。

そしてマキシが再び蟲退治に飛び立った後、ライトは背後にある森の木々を眺めながら考える。

『ラウルやレオ兄だけでなく、八咫烏の増援を以てしても減らない首狩り蟲……リポップなんて生易しいレベルじゃねぇし、これ絶対にどっかから蟲が転送されてると見て間違いないよな?』

『だとしたら、その転送装置を破壊しないと、いつまで経ってもこの蟲地獄が終わらんってことに……』

『とりあえず、この周辺だけでも少し見て回るか……』

実はライトがアラエルと合流してから、一度も首狩り蟲に襲われていない訳ではない。後方の森の中から時々首狩り蟲が出てきている。

だが、それらはライトやアラエルに見向きをすることもなく、ユグドラツィ目がけて飛んでいく。それはまるで、ライトやアラエルの姿が全く見えていないかのようだ。

最初のうちこそ、後ろから首狩り蟲が出てくる度に「おわッ!」と驚いていたライトだった。その間に首狩り蟲はユグドラツィに飛びかかっていったのだが、ユグドラツィを害する蟲をそのまま見過ごす訳にはいかない。

それに、向こうがライト達を無視するならば、それはそれで好都合だ。ライトはアラエルに気づかれないように背後の森を常に警戒し、首狩り蟲が出てきた瞬間に物理系必中スキル【手裏剣】を数発繰り出して仕留めていた。

そして八咫烏達が回復に来ていない隙を見て、ライトは時折森の中を少しづつ探索していくことにした。