軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第674話 とあるアイテムの知られざる効能

水の姉妹とともにいた場所から、海底神殿祭壇前の天蓋付きベッドに移動するライトとレオニス。

そこではアクアとウィカが、人魚達とともに仲良く会話していた。

「おお、何だ、皆もう元気になったのか?」

『あら、ライト君に無愛想君じゃない』

『さっきはここまで連れてきてくれてありがとーぅ』

「お姉さん達、具合が良くなったようで良かったです!」

『ライト君も心配してくれてありがとうね』

『さっき無愛想君からもらった飲み物を飲んだ後、さらにアクアちゃんが魔力を分けてくれたのよー』

『おかげでこの通り、すっかり元気を取り戻したわ!』

『アクアちゃん、本当にありがとうねッ!』

「クルルァ♪」

自分達を介抱してくれたライトとレオニスに、それぞれ感謝の言葉を述べる人魚達。

ライトとレオニスが水の姉妹と会話をしている間、アクアがダウンした人魚達に魔力を分け与えていたらしい。

水に住む者達にとって、水神の魔力はとびっきり極上でさぞ効いたに違いない。

そんな極上の魔力を惜しむことなく分け与えてくれたアクアに、人魚達は感謝の意を込めて喜びのハグをしている。

数多の美女達にモテモテのアクア、すっかりご機嫌である。

「ま、完全回復したなら何よりだ。そしたらアクア、ちょっとこっちに来てくれるか?」

「キュルキュイ?」

「あのね、アクアにお願いしたいことがあるんだ。いっしょに海の女王様のいるところに来てくれる?」

「モキュモキュキュルル!」

ライト達の要請に、アクアは笑顔で応える。

アクアはライト達とともに泳ぎだし、水の姉妹のいるソファのところに向かう。

そのアクアの後を、元気になった八人の人魚達までぞろぞろとついていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『……そんな訳で、アクア様にデッちゃんの説得をしていただきたいの』

『クルルマキュモキュ!』

『アクア様、ありがとう!海の女王ちゃん、アクア様も協力してくださるって!良かったわね!』

『…………』

アクアに事の次第を話していく水の女王。

その最後にディープシーサーペントへの説得を頼み込むと、キリッ!とした顔で返事をするアクア。どうやら『任せて!』とばかりに快諾したようだ。

アクアの快諾を得られたことで、水の女王が海の女王に向けてニコニコ笑顔で報告する。

一方の海の女王は、その眦にうっすらと涙を浮かべている。

『アクア様、ありがとうございます……本当に本当に、ありがとうございますぅ……』

「キュルキュイキュイ!」

『海の女王ちゃん、泣くのはまだ早いわ。何とかデッちゃんに、事の重大さを認識してもらわないとね!』

『はい、そうですね……姉様の仰る通りです……』

妹の涙をそっと拭う水の女王。

普段は甘えん坊の妹キャラなのに、姉となると途端に頼もしく見えてくるから不思議なものだ。

彼女達の近くで見守っていたライト達も安堵する。

だがその次の瞬間、ライトはゾワッ!という得体の知れない感覚に襲われた。

「!?!?!? ……レオ兄ちゃん、これは…………」

「ああ……来たな」

ライト達は立ち上がり、一目散に海底神殿出入口から外に出る。

その様子を見た水の姉妹も、急ぎ外に駆けつける。

外に出た数秒後に、それは皆の前に姿を現した。

『……デッちゃん!おかえりなさい!』

ライト達の目の前に現れたのは、海底神殿の守護神ディープシーサーペントだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『うわぁ……本物のディープシーサーペントだ……つーか、デカッ!』

目の前に現れたディープシーサーペントの実物に、ライトは心の中で感嘆する。

全長100メートルはあろうかという、とても長くて巨大な海蛇。胴体もかなり太く、神樹の幹と大差ないくらいの極太だ。

背中側の鱗はくすんだ紫色で、角度によって紅色にも光って見える不思議な色をしている。腹側は淡い黄土色で、横板のように並ぶ腹板が如何にも蛇らしい姿である。

その姿は、冒険者ギルドエンデアン支部の依頼掲示板に貼られてあった特殊案件の依頼書の絵姿そのもの。

そしてライトが前世でも散々ゲームの中で見てきた、レベル2のレイドボス、ディープシーサーペントと全く同じであった。

そのディープシーサーペント、愛称デッちゃんが鎌首をもたげてライト達の前に聳え立つ。スマホの画面越しで見るのとは違う、圧倒的な大きさと存在感。

ものすごく巨大な海蛇を前に、ライトは思わず立ち竦み、レオニスは腕組みしつつ悠然と立つ。ここら辺の肝の座り方は、現役冒険者ならではの賜物か。

ライト達の横にいた海の女王が、ふらり、とライトの横を飛び出す。

そしてディープシーサーペントに駆け寄り、その胴体に思いっきり抱きついた。

『デッちゃん!おかえりなさい!』

「>#◆ゝ@≦⊿∴∞!」

人間が持つのとそっくりな歯をニッ!と剥き出しにして、何かを喋っているディープシーサーペント。

造形的にはあまり可愛らしい方ではないのだが、どことなく愛嬌も感じられて憎めない顔つきにも見える。これはいわゆる『ブサカワ』というやつか。

久しぶりの帰還に思わず喜びながら抱きついた海の女王だが、すぐに頬を膨らませてディープシーサーペントに文句を言っている。

『全くもう、どこに行ってたの?』

「▲♭※ゞ☆≫≠」

『えッ!? そんな遠い海域にまで行ってたの!?』

「⊇∪∉⌒≡∽」

ニヨニヨとした笑顔のディープシーサーペントに、行き先を聞いて驚きを隠せない海の女王。余程遠い海域まで出かけていたのだろうか。

そうして再会の喜びを一頻り噛みしめた海の女王は、呼び出した本題に入る。

『……ねぇ、デッちゃん。貴方最近、人里に頻繁に出没してるんですってね?』

「Å↑⇒ѲД%Ё」

『どうしてそんなに人里に行くの? 私がいつもデッちゃんに言ってるわよね? 人里にばかり行ってると、そのうち人族から痛い目に遭わされるって』

「И▽仝♁〓ヾ」

海の女王の言葉は分かるのだが、ディープシーサーペントが何と言っているのかライト達にはさっぱり分からない。何とももどかしい限りである。

だがここで、ライトはふと思う。アクアの言葉が分かる水の女王様なら、ディープシーサーペントの言葉も分かるのではないか?と。

試しにそのことを、横にいる水の女王にそっと尋ねてみた。

「水の女王様、デッちゃんが何て言ってるのか分かりますか?」

『ン? ええ、もちろん分かるわよ。私達は同じ水属性仲間ですもの』

「そしたら、今デッちゃんが何て言ってるのか翻訳してもらってもいいですか? ぼく達はデッちゃんの言葉が分からないので、話の流れもさっぱり見えなくて……」

『……ああ、そしたらアレを使うといいわ』

ライトが海の女王達の会話の翻訳を頼むと、意外なことに水の女王は別の提案をしてきた。

何やら彼女の中には、翻訳などよりも余程良い解決策があるようだ。

「アレって、何ですか?」

『貴方達、以前アクア様から『水神の鱗』をいただいたわよね?』

「はい、アクアから信頼の証として? 鱗をもらったことはありますが……」

『その鱗をほんの一欠片飲み込めば、アクア様達の言葉が理解できるようになるはずよ』

「えッ!? そうなんですか!?」

ライトも知らなかった『水神の鱗』の新たな活用方法を聞かされたライト、びっくり仰天である。

しかし、水の女王のもたらした新情報は実は理に適っている。

『水神の鱗』とは、アクアの身体の一部である。神の身体の一部を飲み込むということは、神の力をその身の内に取り込むに等しい。

神の力を取り込めば、その者は何らかの新たな力を得ることは十分に可能であり、むしろ必定とも思える。

ただし、正真正銘神であるアクアの力をその身に宿すとなれば、それと同時にライトとレオニスの人外度数も爆上がりするだろう。

現時点でも既に相当なアレだというのに、それにますます拍車をかけることになる。

もっともそれももう今更というか、二人にとっては多少のリスクなどよりも新たな力を手に入れることの方が重要だ。

そう、力とは生き延びるための手段であり、正しき力を正しき方法で得られるならば何でも取り入れる―――それが冒険者たる者の取るべき道なのである。

「レオ兄ちゃん、今の水の女王様の話、聞いた!?」

「おう、聞いた聞いた。早速鱗を取り込むか」

ライトとレオニスは、早速『水神の鱗』をアイテムリュックや空間魔法陣から取り出す。

ライトの手のひらよりも一回り小さい『水神の鱗』。円鱗と呼ばれる典型的な魚の鱗で、帆立の貝殻の形にも似ている。

それをほんの一欠片飲めばいいという話なので、鱗の根元の方を爪でちょっとだけ折り取る。

ちなみにこの『水神の鱗』、かなり硬くて常人の力ではとても折ることなどできない代物だったりする。

そんな硬い鱗の根元を、右手の親指と人差し指の爪で難なく折り取るライトとレオニス。鱗を取り込む前から人外ブラザーズの本領発揮である。

そうして爪の先よりも小さい、一粒の岩塩ほどの大きさの鱗の欠片をすぐに口の中に入れて舐め取ったライトとレオニス。

口中の唾液で飲み込んでしばらくすると、それまで雑音のようにしか聞こえなかったディープシーサーペントの言葉が明瞭に聞こえてくるようになった。

「おおお……ディープシーサーペントの声が聞こえるぞ……」

「うん……ちゃんと言葉として聞こえるね……」

ライトとレオニスが小さな声で、ひそひそとその感動を語り分かち合う。

特にライトの感動は一入だ。BCOでは、レイドボスとして敵対するしかなかったディープシーサーペント。敵であるディープシーサーペントの言葉を理解できる日が来るなんて、一体誰が予想し得ただろうか。

ディープシーサーペントの言葉が分かるようになったライト、試しにアクアにも話しかけてみる。

「ねぇ、アクア……ぼくの言葉が分かる?」

『うん、分かるよー』

「「!!!!!」」

ライトとレオニスはさらに驚愕する。

水の女王が言った通り、ディープシーサーペントだけでなくアクアの言葉もちゃんと分かるようになったからだ。

そう、アクアの鱗を飲み込んでディープシーサーペントの言葉が分かるようになったのならば、鱗の元であるアクアの言葉も分からないままのはずはないのだ。

それまでは、彼らの話している言葉が分からない故に蚊帳の外にいるしかなかったライト達。

だが、こうしてアクア達の言葉を聞き取れるようになったからには、積極的に彼らの会話に参加することもできる。

ディープシーサーペントの説得だって、アクアとともにできるかもしれないのだ。

ライトとレオニスは早速、海の女王と話しているディープシーサーペントのもとに寄っていった。