作品タイトル不明
第670話 五人の美女達との再会
ライトめがけて猛烈なスピードで泳ぎ寄ってくる、五人の美麗人魚達。
ここが陸上だったら、ズドドドド!という盛大な轟音と地響きが起きそうな勢いだ。
「アリッサさん、ボニーさん、キャサリンさん、ディアナさん、エリーゼさん、こんにちは!お久しぶりです!」
『いやーーーん、私達全員の名前覚えててくれたのーーー!?』
『すっごーーーい!お利口さんねーーー!』
『ライト君も元気にしてたーーー?』
『お姉さん達もライト君に会いたかったわーーー!』
「おごごごご……く、苦ちぃ……」
先程の三人の美女達に続き、今度は五人の美女達に囲まれてギュウギュウのおしくらまんじゅう状態になるライト。
せっかく水の勲章のおかげで水中でも呼吸や会話ができるようになったというのに、別の意味で溺死しそうである。
さすがにその有り様を見かねたレオニスが、美女達に埋もれたライトを救い出すべく助け船を出す。
「おいおい、それくらいにしといてやってくれ。これ以上押し潰されたら、いくらうちのライトが丈夫だといっても気絶しちまう」
『……え?』
『あらヤダ、それは困るわ!』
『ご、ごめんね、ライト君!』
『お姉さん達、ライト君に会えて嬉しくってついはしゃぎ過ぎちゃったわ!』
レオニスの言葉に我に返った人魚達、皆慌ててライトから離れた。
かなりヘロヘロになりつつも、KO寸前で何とか助かったライトは改めて人魚達に話しかける。
「ぷはぁ……お姉さん達の熱烈過ぎる歓迎で、危うく失神するところでしたぁ」
『本当にごめんなさい』
『海の女王ちゃんから、『お客人が来たから、迎えに行ってちょうだい』って言われて、神殿の外に出たらライト君の姿が見えたものだから、つい嬉しくなっちゃって……』
『どこか怪我はしてない? 痛いところはない? 大丈夫?』
「全然大丈夫ですから、気にしないでください」
しおらしく謝る人魚達を、苦笑いしつつも責めることなく許すライト。
人生初の超モテ期到来というのも、なかなかに大変なものである。
「でも、お姉さん達も変わらず元気そうで良かったです。今日は前に約束したものも、ちゃんと持ってきたんですよ」
『ホント!?』
『私達との約束を忘れずにいてくれたのね!とても嬉しいわ!』
『ねぇ、今ここで見せてもらってもいい?』
失態を許してもらっただけでなく、約束の品を持ってきたというライトの言葉に、アリッサ達は一瞬にしてパァッ!と明るい顔になる。
早速品物を見せてほしい!という人魚達のおねだりに、ライトは背中のアイテムリュックを下ろして約束の品を取り出す。
「えーとですね、髪飾りに耳飾り、首飾りに腕輪、いろんなのを持ってきたんですよー」
『まぁぁぁぁ、何て素敵なの……』
『模様細工がすっごく繊細で可愛らしいわ……』
『この色のついた石?も、とっても綺麗ね……』
『わぁー、いいなー……羨ましいー』
『次は私達にもちょうだいね!』
ライトが取り出した、金銀細工のアクセサリー達。花や羽根を模した繊細な模様や色石の美しさに、アリッサ達はうっとりしながら眺めている。
もちろんこれらはアイギス製で、ライトが己の稼ぎで購入した品々である。
そしてアリッサ達の後ろで、フラウら三人の人魚達が羨ましそうに見ている。早速次回の手土産としてライトにおねだりするあたり、実にちゃっかりとした人魚達である。
ちなみに色石は、宝石ではなくガラス製だ。海中で人魚達が身につけるためのものなので、海の中での品質保持が難しそうな宝石よりもガラスの色石の方が良いだろう、というカイのアドバイスにより石を変更したものだ。
地上世界では宝石とガラスではその価値に天地の差があるが、海の中ならば宝石の価値観なども特にないだろう。
そして金銀細工の方は、純金やプラチナでできている。金やプラチナは海水浴などでも変色しにくいためだ。
金属素材はレオニスにお願いして鉱石を譲ってもらい、アイギスに持ち込んだ。その鉱石類は幻の鉱山で採取したもので、その純度は100%。
金属素材を直接持ち込んだので費用が抑えられるだけでなく、製錬する必要がないのでアイギスでの加工も省ける。まさに一石二鳥のスグレモノである。
「誰がどれとか喧嘩しないでくださいね? 話し合いで仲良く分け合ってください」
『もちろんよ!』
『私達仲良しだもの、そんなことで喧嘩なんてしないわよねー』
『『『ねーーー♪』』』
アクセサリーの取り合いで喧嘩しないように、先んじてライトが注意しておく。
人魚達は仲良しなので喧嘩なんてしない、と言ったが、先に言っておかないと取っ組み合いの喧嘩で奪い合いなんてしたら目も当てられない。
「あ、あと、これらには付与魔法はつけてないので、アリッサさん達の方で好きなように付与してくださいね」
『分かったわ!』
『海の女王ちゃんといろいろ相談してみるわね!』
『……って、そういえば、今日も海の女王ちゃんに会いに行くのよね?』
手土産のアクセサリーには付与魔法がついてないことをライトが言うと、話の流れで海の女王の名が出てきた。
それでアリッサ達がはたと思い出したのか、ライト達のこれからの行動を確認してきた。
もちろんライト達の答えは『YES!』である。
「はい、今から海の女王様のところに行くつもりです」
『そうよね、だから海底神殿の近くまで来たんですものね』
『海の女王ちゃんも、貴方達が来るのを神殿で待ってるわ』
『女王ちゃんのところに早く行きましょ!』
『……あ、その前にちょっと待っててね、今お土産にもらった装飾品を早速着けるから!』
『あら、そしたら私も今着けちゃおうっと♪』
『私も私もー♪』
五人の人魚のうちの一人、エリーゼの言葉に人魚達が全員その場で一旦泳ぎを止めた。
人魚達はライトが渡したアクセサリーを一人一つづつ適当に取り、早速それらをすぐに己の髪や耳、腕などに飾りつけ始めた。
誰がどれを取るとかの相談は一切していなかったが、アイギス製のアクセサリーはどれも綺麗で可愛らしいものばかりなので、どれをもらってもオールオーケー!らしい。
人魚達の銀色の髪や耳、首元などにアイギスの美しい装飾品が映える。
煌びやかな装飾品を身に着けたアリッサ達は、それはもう見るからにご機嫌だ。
キャッキャウフフ♪と喜ぶ五人の華やかな人魚を見て、三人の人魚が再びライトに迫る。
『ライト君!絶対に私達にもアレちょうだいね!』
『私は髪飾りが欲しいわ!』
『私は腕輪!』
「わ、分かりました。そしたら、次にお姉さん達に会う時のために、お姉さん達の名前を教えてもらっていいですか?」
先程おねだりしたばかりなのに、再び強くおねだりする人魚達。アイギス特製の美麗アクセサリーを手に入れたアリッサ達のことが、余程羨ましいようだ。
ズズィッ!と迫る人魚達に、ライトはタジタジになりながらも三人の名前を問うた。
次にまた手土産を持っていくにしても、渡したい者の名前すら知らないのでは話にならない。
『あらヤダ、ごめんなさい。私達まだちゃんと名乗ってなかったわね。私の名はフラウ。ライト君、よろしくね』
『私はガーネットよ』
『私はヘレナ!』
「フラウさんにガーネットさん、ヘレナさんですね。ちゃんと名前を覚えておきますね!」
ストレートのセミロングのお姉さんがフラウさん、右側一本三つ編みのお姉さんがガーネットさん、縦ロールっぽいふわふわロングのお姉さんがヘレナさん……フラウ、ガーネット、ヘレナ……よし、覚えたぞ!
ライトはブツブツと呟きながら、今日出会ったばかりの人魚達の名前を懸命に覚える。
『さぁ、皆で海の女王ちゃんのところに行きましょ!』
アイギスのアクセサリーを身に着けた五人の人魚達と、次回それらをもらえる約束をした三人の人魚。どちらもウッキウキの超ご機嫌である。
鼻歌交じりのルンルン気分な人魚達に手を引かれながら、ライトとレオニスは海底神殿に向かっていった。