軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第641話 初めての外の世界

ライト達がドライアドの里の泉に向かった後。

そのまま天空樹のもとに残ったレオニスは、ユグドラエルや白銀の君と話をしていた。

それは主に、先程天空神殿で光の女王と雷の女王が決意した、邪竜の群れの討滅戦のことである。

「―――そんな訳で、光の女王と雷の女王は邪竜に占拠された天空島を取り戻すべく、近々討滅戦を仕掛けるそうだ」

『ほう、それは良いことを聞きました。もちろん私達も参戦させていただけるのですよね?』

「もちろんだ。俺も参戦するし、白銀の君や他のドラゴン達にも助太刀してもらえるなら、これ程心強いことはない」

『もちろん参戦しますとも。我が君のみならず、その姉君ユグドラエル様の住まう天空諸島にまで害を及ぼす輩……その本拠地を叩ける、まさに千載一遇の好機。その日が来たら、何をさて置いても真っ先に馳せ参じましょう』

レオニスの話に、白銀の君の双眸がギラリ!と光る。

白銀の君は以前もレオニスに『次に邪竜の群れが来た時には、徹底的に蹂躙し尽くす』と息巻いていた。

そしてレオニス達が天空神殿に出かける前に、天空樹と交わしていた会話の中でも『邪竜の拠点に討って出るなら私も呼べ!』と言っていたくらいだ。

白銀の君にとっても、不倶戴天の怨敵を滅する絶好の機会。これを逃すなど絶対にあり得ないのである。

『して、討滅戦の決行日はいつ頃になるのです?』

「警備隊隊長のパラスの話では、半年後あたりに邪竜の拠点の島とこの天空諸島が最接近するらしい」

『では、その頃に先制攻撃に討って出るのですね』

「多分そうなるだろうな」

『分かりました。では 私達(・・) も半年後の討滅戦に備えて、明日から鍛錬することにしましょう』

討滅戦の大凡の時期を聞いた白銀の君。その双眸がさらにギラリ!と光を増す。

『私』ではなく『私達』と言っているあたり、おそらく中位ドラゴン達もその鍛錬の参加者に加えられているのであろう。

もちろん彼らに拒否権などあろうはずもない。問答無用の強制参加確定である。

己の与り知らぬところで参戦決定とは、何ともご愁傷さまな話ではあるが。鍛錬を積むことは、シュマルリ山脈の防衛にも繋がることでもある。

なので、ここは是非とも中位ドラゴン達にも奮起してもらいたいところだ。

『我が君に仇なす不逞の輩どもめ……今こそ我が鉄槌を下す時!その長い首を洗って日々震えながら待つがよい!』

天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら、高らかに宣言する白銀の君。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

既に竜の女王という覇者なのに、どこまでも高みを目指すその姿勢はもはや神々しい。

業火の如き燃え盛る火焔を背後に宿した白銀の君。いつになく情熱的に燃えている。

そんな頼もしい白銀の君を見て、レオニスは「おおー」と拍手を送り、ユグドラエルは『えーと……南の天空島そのものを壊さない程度にお願いしますね……』と若干不安そうに心配していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして様々な話をしているうちに、ドライアドの里の泉に向かったライト達が戻ってきた。

「レオ兄ちゃん、ただいまー!」

「おう、おかえりー……って……ぇ?」

「ユグドラエル様も白銀さんも、お待たせしてすみません!」

『おかえりなさい。泉に無事行ってこれたようですね』

「はい、おかげさまで!」

ユグドラエルと白銀の君の歓迎に、ライトが満面の笑みで答える。

だが、レオニスだけは何故か固まっている。

目も口もあんぐりと大きく開いたその顔は、先程ライトとラウルが泉の前でしていたのとそっくり同じ表情である。

「ちょ、ラ、ライト?……お前、一体誰を連れてきたんだ……?」

「あ、水の女王様? 何かね、泉でウィカを呼んだら、ウィカといっしょにくっついてきちゃったみたいなんだ!」

「くっついてきたって、お前……」

『…………』

ライトのノリの軽い説明に、レオニスは半ば絶句する。

あまりにも驚くレオニスに、水の女王は思わずササッ!とライトの後ろに隠れる。隠れるといっても、ライトはまだ小さな子供なので隠れようもないのだが。

「水の女王、こんなところに来て大丈夫なのか?」

『……大丈夫、くない……』

「体調が悪いのか? ならすぐに帰った方が……」

『あッ、体調の方は大丈夫なの!……でも……ウィカちーがライトに呼ばれた場所が天空島だったなんて、私ちっとも知らなくて……』

心配そうに覗き込むレオニスに、モジモジしながら答える水の女王。

体調は大丈夫ということで、少し安心したレオニス。

そして水の女王のモジモジした様子から、どうやらこれは初めての外の世界で緊張してるだけなんだな、ということを察した。

水の女王は、褥という特定の位置を長時間離れると様々な不調が起こるという。

目覚めの湖を離れることにより起こる、強烈な不安感や体調不良―――そういったものでなければ、様子を見ながら過ごせばいいだろう。レオニスはそう判断した。

「そっか。まぁ、ついてきちまったもんは仕方がない。せっかくだから、天空樹や竜の女王にも会っていきな」

『……ぅぅぅ……ウィカちーやライト、ラウルにもそう言われたの……』

「良い機会じゃねぇか!目覚めの湖の外の世界なんて、生まれて初めてだろう? ならば、目一杯楽しまなくっちゃな!」

再び緊張してきたのか、俯きがちにぼそぼそと喋る水の女王。目覚めの湖から一歩も外を出たことがないだけに、やはり人見知りの気もあるようだ。

そんな不安そうな水の女王を元気づけるかのように、レオニスがワシャワシャとその頭を撫でる。もっとも水の女王の場合、髪も水でできているので『ワシャワシャ』というよりは『ぷるんぷるん』と言うべきか。

レオニスに頭を撫でくり回された水の女王は、顔を上げて上を見る。そこには、ニカッ!と爽やかに笑うレオニスがいた。

その眩しい笑顔はまるで太陽のように朗らかで、水の女王は何とも言えぬ安堵感に包まれていく。

その安堵感は、水の女王が抱えていた緊張感や不安感、くよくよとしていた陰鬱な気分、そういった様々な負の感情をみるみるうちに解かしていった。

『……そ、そうね。せっかくここまで来たんですもの、目覚めの湖にはないものを見ていかなくっちゃね!』

「おう、その意気だ」

そんな話をしていると、ライト達より少し遅れてラウルとウィカが到着した。

森の中から息一つ乱れることなく、優雅に登場するラウル。さすがは万能執事である。

「ただいまー」

「おかえりー。ウィカのお迎えご苦労さん」

「うなにゃーん♪」

「ウィカも来てくれてありがとうな」

ラウルとウィカに、レオニスが歓迎兼労いの言葉をかける。

遅れて到着したラウル達の後ろからは、ドライアド達がわらわらとついてきた。彼女達はライトやラウルのような素早い移動ができないようで、皆ヘロヘロになりながらの到着である。

『た、たらいま……』

「おう、ドライアド達もおかえりー」

『な、何か、黒猫とか、水の精霊っぽいのとか……』

『泉から出てきたと思ったら……』

『ライトが走り出して、ラウルもそれについていっちゃって……』

『私達を置いてっちゃうんだもの……』

『し、しどい……』

「お、おう、そりゃご苦労さん……」

フラフラになりながら飛んでいたドライアド達にも、レオニスが労いの言葉をかける。

ようやくユグドラエルのもとに戻ってきて気が抜けたのか、あるいは完全に力尽きたのか、バタバタと地面に伏していく。

だがそれは命に関わるような深刻な事態ではなく、ただ単にスタミナ切れのようだ。

「おお、そりゃ悪かった。お詫びのマカロンを出すから、ちょっと待っててな」

『マカロンッ!? い、いくらでも待ってるから、たくさん出してちょうだいね!』

「おう、お安い御用だ」

それまでぐったりと地面に転がっていたドライアド達が、ラウルの発した『マカロン』という言葉に反応して、ガバッ!と顔だけ上げる。

その熱い眼差しは、残念ながらラウルを見つめているのではなく、マカロンへの期待感のようだ。

ラウルがドライアド達の相手をしている間に、水の女王は改めてユグドラエルに向かって挨拶をする。

『初めまして、天空樹ユグドラエル様。私は目覚めの湖に住まう水の女王と申します』

『水の精霊の頂点たる女王よ、よくぞいらっしゃいました』

『原始の神樹、ユグドラエル様にお目通りできましたこと、光栄の極みに存じます』

『堅苦しい挨拶は要りませんよ。珍しいお客人に会えて、私もとても嬉しいのですから』

『ありがとうございます!そう言っていただけると、私もとても嬉しいです!』

恭しく頭を下げながら、ユグドラエルと言葉を交わす水の女王。普段の彼女からは想像もつかないような、しっかりとした挨拶だ。

やはりそこは属性の女王、やれば出来る子なのだ。

水の女王はユグドラエルに挨拶した後、今度は白銀の君の方に身体を向き直し挨拶をする。

『竜の女王にもお初にお目にかかります。私は水の女王、ウィカの住まう目覚めの湖にて、全ての水の精霊の長を務めております』

『丁寧な挨拶をありがとう。私は白銀の君、シュマルリの山々にて竜を統べし者。水の女王、私も貴女に会えて光栄です』

こちらも和やかな雰囲気で初対面の挨拶を交わす。

原始の神樹と竜の女王、超大物二者に快く歓迎してもらえたことで、水の女王の緊張はすっかり消え失せて満面の笑みになる。

楽しげに女子トーク?を交わす三者を、ライトとレオニスも温かい眼差しで見守っていた。