軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第621話 火魔法のテスト

カタポレンの家から目覚めの湖に移動するライトとレオニス。

「ほれ、ライト。目覚めの湖に着く前に、これ飲んどけ」

「はーい」

レオニスが歩きながら開いた空間魔法陣から、一本のアークエーテルを取り出してライトに渡す。

これは、先程使った土魔法で消費したであろうMPを補充しておけ、ということだ。

せっかくライトの魔力テストをするのだ、より万全な態勢で挑むべきである。

アークエーテルをくぴくぴと飲みながら、MP回復していくライト。

実は今のライトのMPは3000を超えていて、魔法攻撃も魔法防御も既に四桁代になっている。それもこれも、全て各種称号のステータス加算によるものだ。

なので、先程の畑の土のマシマシ程度なら痛くも痒くもないのだが。間違ってもそんな種明かしは口にできないので、ここは素直にレオニスの指示に従っておく。

そうして到着した目覚めの湖。

いつものように二人して桟橋に立ち、ライトが湖の中央に向かって大きな声で呼びかけた。

「おーーーい、イード、ウィカ、アクア、水の女王様、ぼくだよーーー、ライトだよーーー」

そうしてしばらく待っていると、陽の光がキラキラと反射している静かな水面が揺れて波紋が浮かぶ。

湖面から出てきたのは、ライトがその名を呼んだいつもの面々である。

「キシュルルル!」

「うなぁーん♪」

「キュイキュイ!」

『ライト、レオニス、こんにちは!』

ライトに呼ばれた目覚めの湖の仲間達が、ライトとレオニスを笑顔で迎える。

『レオニスはともかく、ライトは久しぶりね!』

「水の女王様、ご無沙汰してます!」

「おう、ここ最近はシュマルリ行きでずっとウィカに世話になってるからな」

「うにゃにゃーん!」

水の女王が一歩前に出て、ライト達と会話をする。

ライトは前回のピクニック以来で二ヶ月ぶりくらいの訪問だが、レオニスはシュマルリ山脈で中位ドラゴン達や竜王樹、白銀の君と親睦を深めるために、ウィカとともに出かけていたため結構な頻度で目覚めの湖を訪れていた。

するとここで、水の女王がライトに問いかけつつキョロキョロとライトの周りを見回した。

『今日はどうしたの? 皆と遊びに来たの? ……ていうか、今日はラウルはいないの?』

「ラウルは今日は別のお仕事があって、来れなかったんです」

『あら、そうなの。それは残念ね……』

ちょっとだけしょんぼりとする水の女王。

ラウル特製の美味しいご馳走やスイーツがもらえないことに、がっかりしているのだろうか。

「あッ、でもラウルから目覚めの湖で皆でおやつに食べるようにって、美味しいものをいっぱいもらってきてます!」

『そうなの!? それはとても楽しみね!』

しょげていた水の女王、一転して俯いていた顔を上げて花咲くような笑顔になる。

やはり美味しいものを食べたかったようだ。

「あ、でもおやつの前に、ぼく達ちょっとここで試したいことがありまして」

『試したいこと? なぁに?』

「実はですね―――」

ライトが水の女王に、今日の来訪目的を伝えていく。

ふむふむ、と静かに聞いていた水の女王、ライトの話を聞き終えてから徐に口を開いた。

『魔力のテストをここでしたいのね、いいわよ』

「本当ですか!? ありがとうございます!」

『私も人の子が使う魔法というものに興味があるし、実際に使っているところを見たいわ。だから、そのテストを横で見ててもいい?』

「もちろんです!」

ライトの申し出に、目覚めの湖の主の一人である水の女王が真っ先に承諾した。

そして水の女王は周囲を見回して、他の面々に同意を求めた。

『アクア様、よろしいですわよね? イーちゃん、ウィカ、貴方達もOK?』

「クルキュア!」

「シュルリルゥ!」

「にゃうにゃう!」

水の女王の問いかけに、他の主達もそれぞれ快諾する。

全員からテスト実施の許可をもらえたことに、ライトも大喜びだ。

皆が好意的かつ協力的なのも、きっと日頃のコミュニケーションによる良好な関係構築の賜物だろう。何ともありがたいことである。

「そしたら、早速いつもの小島に移動していいですか?」

『もちろんよ!皆でイーちゃんの背中に乗りましょ!』

「シュルキュイキュイ!」

ライト達は早速イードの背中に乗り、皆で小島に移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『魔力テストって、具体的にはどんなことをするの?』

「ぼくが持つ魔力で、どれだけのことができるかをまず確認したいんです。土魔法はさっき家の近くで確認しました。他にも火魔法や水魔法、風魔法を使ってみたいんです」

『なるほどね。水はもちろん風も火も、ここでなら安全に使えるものね』

「はい。さすがにカタポレンの森の中で火魔法が使えるのは、この目覚めの湖くらいしかなくて……」

ライトの説明を聞いていた水の女王が、頷きながら納得している。

森の中で火魔法を使うなど、常識的にはあり得ないことだ。だがこの広大な目覚めの湖、しかもその中央に浮かぶ小島ならば、万が一力加減を誤って森の木々を焼いてしまう心配もない。

『じゃ、早速ライトの魔法を見せて!』

「はい!……レオ兄ちゃん、どの魔法からやればいい?」

「そうだな、まずは火魔法を出してみな」

「分かった!やり方はさっきのように、火が着いてるところをイメージすればいいんだよね?」

「ああ、手のひらの上に丸い小さな火が浮かんでるところを想像してみな」

レオニスにやり方を確認したライト、両の手のひらを上に向けてその中に小さな球状の火が灯っているシーンを頭の中で思い浮かべる。

目を閉じながら丸い小さな火を懸命にイメージしていると、ふと手のひらが温かくなってきた。

手のひらの中の異変に気づいたライトが目を開くと、そこには小さな火球がふよふよと浮きながら灯っていた。

「レオ兄ちゃん、できたよ!」

「おお、本当だ。一発でできるなんて、やっぱライトはすげーな!」

『これが、火というものなのね……』

球状の火を浮かべることに成功したライト。

横でみていたレオニスも大喜びし、水の女王はライトが灯した火をとても物珍しそうに眺めている。

水の女王が火を珍しがるのも無理はない。ここは目覚めの湖、水ならたくさんあるがそれ故に火はほとんど存在することがない。

先日のピクニックの昼食で、目覚めの湖産の貝を浜焼きにしたことがあったが、その時にラウルが用いた特大七輪の炭火ですらずっと珍しそうに眺めていたくらいだ。

本来ならこの界隈で存在するはずのない火。水属性の対極に位置する現象は、さぞや興味を唆られるに違いない。

水の女王の知的好奇心が刺激されたのか、彼女がライトに向かってワクテカ顔で問いかけた。

『ねぇ、ライト、この火をもっと大きくすることはできるの?』

「ン? 多分できると思いますけど……」

『なら、是非とも見せて!この湖にいて火が見れるなんてこと、滅多にないもの!』

水の女王の要望に、ライトは躊躇いつつレオニスに聞いてみた。

「レオ兄ちゃん、どうしよう? やってみてもいい?」

「ンー……まぁいいだろう。ここなら多少大きな火を作っても、湖面に触れさせりゃ普通に消えるだろうし」

「分かった、やってみる!」

「その火の球をもっと高い位置に浮かせて、火が少しづつ大きくなっていく様子を想像してみな」

「うん!」

ライトは再び目を閉じ、両手を上げて今ある火の球が自分よりもっともっと上空に浮かんで大きくなる場面をイメージしていく。

火の球はライトのイメージ通りにゆっくりと上空に上がっていき、少しづつ大きくなっていく。

『わぁ……まるでちっちゃな太陽みたいね!』

「一回説明しただけで、こうもすんなりと理解して実行できるとは……やっぱライトは天才だな!」

水の女王は初めて見る大きな火に興奮気味に喜び、レオニスはレオニスでライトの才能を大絶賛している。久しぶりの兄バカモード突入である。

だがそれも最初のうちだけで、どんどん巨大化していく火に慄くようになるのに然程時間はかからなかった。

ライトが作り出した火球は、みるみるうちに巨大化してあっという間に3メートルを超えてしまったのだ。

空に浮かぶ火球のあまりの大きさに、レオニスと水の女王はもとより小島の傍でライト達を見守っているアクアやウィカ、イードまでもが目を見張りながら火球を眺めている。

『……え、ちょ、これ……まだ大きくなるの?』

「ラ、ライト!そろそろイメージを止めろ!」

「……ンぁ?」

ライトは目を閉じながら懸命にイメージしていたので、そこまで大きくなっていたとは思っていなかったのだ。

レオニスの叫び声に、何事かと思いながらふと目を開けて上を見た時、ライト自身もその赤々とした火球の巨大さにギョッ!とした。

「おわッ!」

「その火を湖の中に放り込め!」

「ぁ? ……ぇ、えいッ!」

レオニスの指令通り、ライトは咄嗟に上に上げていた両手を前に振り下ろし、巨大な火の球を湖に放り込んだ。

腕を勢いよく振り下ろしたせいか、巨大火球はポーン!と遠くに投げ飛ばされていく。

そしてかなり遠くに投げられた火球が湖面に触れると、ジュッ!という大きな音を立てて消えていった。

火球を投げ飛ばす際に、思いっきり前に振りかぶったライト。

予想外の出来事に、前のめりになりつつ地面に座り込んでしまった。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

『ライト、大丈夫!?』

「鎮火が間に合って良かった……って、ライト!魔力切れを起こしてないか!?」

「う、うん、大丈夫……」

「そ、そうか、なら良いが……いきなりあんなにデカい火球を作っておいて、魔力切れを起こさんとは……信じられん」

少し離れたところで見てたレオニスと水の女王が、慌ててライトの傍に駆け寄り体調を気遣う。

ライトはびっくりし過ぎて息が上がっているが、受け答え自体はしっかりとしていて体調に異常は来たしていないようだ。

ライトが無事なことを確認したレオニスと水の女王は、ほっと一安心しながらも半ば呆然としつつ呟く。

『ひ、人族が使う魔法って、こんなに強力なのね……』

「ぃゃ、これはライトの魔力量がおかしいだけだ……」

「ナニそれしどい」

他の人ならともかく、人外代表格であるレオニスにまで「魔力量がおかしい」と言われてしまったライト。ガビーン!顔の大ショックである。

レオ兄だけには言われたくない!と思うライトだが、ライトの方にもやらかしてしまった自覚は一応あるので抗議できずにいる。

「こういうことがあるから、魔力のコントロールの訓練が必要なんだ」

「うん……そんなに大きな球にするつもりはなかったんだけど……ごめんなさい」

力加減を間違えてしまったことに、しょんぼりとするライト。

落ち込むライトを慰めるかのように、アクアが長い首をライトに寄せて頬ずりしたり、ウィカもアクアが頬ずりしている反対側の肩に乗り、アクアと同時に頬ずりしている。

目覚めの湖の仲間達が懸命にライトを慰める様子を見て、レオニスも落ち着いてきたのか、ふぅ、と小さくため息をついてからライトに話しかけた。

「別に謝らんでもいい。皆無事で怪我一つないんだから」

「……でも……」

「もともとちょっとくらい大きな魔法を使っても大丈夫なように、この目覚めの湖の小島を使わせてもらってるんだからな。本当に、魔力テストをここでやることにして良かったよ」

「……うん……」

まだしょげているライトに、レオニスが話を続ける。

「とりあえず、お前の魔力量は俺の予想をはるかに上回ることだけは分かった。でもって、お前もお前自身が持つ魔力がとんでもないレベルだってのは、今ので理解できたな?」

「うん」

「そしたらこれからは、魔力のコントロールができるように鍛錬しろ。あと、ライトの場合イメージする力が強過ぎるようだから、目を閉じてイメージするの禁止な。必ず結果を目視しながら魔法を使え。その方が魔法の出力も弱まってちょうどいいだろう」

「分かった。魔法を使う時は、もう目を閉じないようにする」

レオニスの適切な指導に、ライトは頷きながら全てを肯定する。

瞑想するように目を閉じることで、様々なイメージを頭の中で浮かべながら展開しやすいことは確かである。だがライトの場合、それでは出力が強く出過ぎてしまうようだ。

ならば、目を開いた状態で行えば目の前で魔法が展開するので、結果を見ながら出力のコントロールをしやすくなるはず、とレオニスは読んだのだ。

「ま、早めに分かって良かったと思おう。それに、魔力量が多いことは絶対に悪いことじゃない。むしろ良いことだ。もし悪いことが起きるとしたら、それは魔力コントロールの鍛錬を怠った故の結果だ。そうならんように、これからはより一層修行に励まなきゃな」

「……うん、そうだね。ちゃんとコントロールできるように、これからは魔力の訓練も頑張る!」

「おう、その意気だ」

レオニスの温かくも優しい励ましに、ライトもだんだん気持ちが上向いてきたようだ。

そこに、水の女王が心配そうに二人に問うた。

『ねぇ、そしたらもう今日の魔力テスト?は、これでお終い?』

「ン? いや、他にもさっき言った通り、水魔法と風魔法のテストはするぞ」

『中断は、しないのね?』

「ああ。さっきの火魔法のテストはちょっと驚かされただけで、別に何かを壊したり誰かに怪我をさせた訳じゃないからな。このまま続行する」

『そうなのね、良かった!』

魔力テスト続行を宣言したレオニスの言葉に、水の女王は心から安堵したように笑顔になる。

そしてその笑顔のまま、水の女王がライトに向かって励ましの声をかける。

『ライト、次のテストも頑張ってね!』

「この教訓は、次の水魔法や風魔法のテストで活かせよ」

「うん、分かった!水の女王様も、ありがとうございます!」

水の女王とレオニスからの激励に、ライトは改めて奮起するのだった。