軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第615話 中位ドラゴン達との親睦

その後レオニスは、週に一回か二回くらいの頻度でシュマルリ山脈の中位ドラゴン達のもとに通うようになった。

というのも、いつかその背に乗せてもらって天空島に行くには、中位ドラゴン達とより親睦を深めておかねばならないからだ。

『野良ドラゴンと友達になろう!大作戦』は大成功のうちに完了したが、これはあくまでも『友達になろう』であって、『従魔化』や『隷属化』ではない。

サイサクス世界の激レアジョブ【魔物使い】ならば、従属関係になれればすぐにでも背中に乗せてもらうことも可能だろう。

だが、レオニスの場合はそうではない。あくまでも友達という対等な立場なのだ。

そして、昨日今日出会ったばかりですぐに乗り物扱いするのは、いくら神経が図太いレオニスでもさすがに気が引ける。

天空島に行くならライトが夏休みに入ってからの方がいいし、それまでの約二ヶ月の間に、中位ドラゴン達ともっと仲良くなっておこう!という訳である。

その日もレオニスはウィカの協力を得て、朝からラグスの泉に瞬間移動していた。

もう何度目の訪問になるか、少なくとも片手指分以上は訪れているレオニス。シュマルリ山脈での闊歩もだいぶ慣れてきたようだ。

このラグスの泉がある一帯は、誰の縄張りでもない中立地帯である。

先日白銀の君が言っていたように、この近辺でドラゴン達が利用できるような水場はここくらいしかないためだ。

唯一の水場で縄張り争いしていたら、それこそ敵対種族が滅びるまで血で血を洗う抗争が続くだろう。

そうした不毛な戦を回避するため『泉は誰のものでもない・皆が使うもの』という不文律がいつしかできたのだ。

ちなみに、ラグスの泉から最も近くに縄張りがあるのは迅雷竜だ。

その次に獄炎竜、鋼鉄竜、氷牙竜と続く。

ラグスの泉に移動したレオニスは、迅雷竜の塒に向かって歩き出す。

すると特に呼んでもいないのに、迅雷竜の方からレオニスの前に姿を現した。

「よう、迅雷」

「ヨウ、レオニス。今日モ、可愛コチャンヲ、肩ニ乗セテ、羨マシイナ!」

「うにゃーん」

「ササ、ウィカチャン、コッチニ、オイデー」

「うなぁーん♪」

レオニスへの挨拶も早々に、ウィカが乗っているレオニスの肩のド真ん前にその大きな爪を出す迅雷竜。

ウィカはその爪に飛び乗り、トトトッ、と迅雷竜の肩まで移動する。

迅雷竜の巨躯に乗るウィカ、ほとんど豆粒のようにしか見えない。だが迅雷竜は「アア、今日モ可愛エエ……」とご満悦だ。

迅雷竜の塒でそんなことをしていると、ドスドスとした地響きが立て続けに起こる。

どうやら他の中位ドラゴン達が来たようだ。

「ウィカチャーーーン!」

「俺ラニ、会イニ、来テクレタノー?」

「迅雷!独リ占メナンテ、絶対ニ、許サンゾ!」

獄炎竜、鋼鉄竜、氷牙竜が続々と迅雷竜の塒に集まってくる。

レオニスそっちのけなのは迅雷竜だけでなく、他のドラゴンも全く同じである。

「お前ら、ホントにウィカのことが大好きだねぇ……」

「ソンナン、当タリ前ダロ!」

「コンナ、可愛ラシイ生物、コノ辺ニハ、絶対ニ、イネェカラナ!」

「「「「可愛イハ、正義」」」」

大真面目な顔で、口を揃えて『可愛いは正義』を唱える中位ドラゴン達。

確かにこのシュマルリ山脈には、ウィカほど愛らしい生物はいないだろう。

『可愛いは正義』―――それは古今東西異世界のみならず、異種族にも通用する認識らしい。

このように、レオニスがラグスの泉経由でシュマルリ山脈南方に出かける度に、中位ドラゴン達に囲まれるのが常となっていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて、腹も減ってきたし昼飯にするか。今日はお前ら向けの美味しい土産を持ってきたぞー」

「エ、何ナニ、美味シイ、土産?」

「エクスポヨリモ、美味シイノカ?」

「おう、エクスポなんかよりもっともっと美味しいぞ?」

少し早めの昼御飯を食べるレオニスとウィカ。

その横で、中位ドラゴン達もレオニスが持ってきたご馳走を食べている。

今日レオニスが中位ドラゴン達に土産として持ってきたのは、クレアレシピの特大肉まんボールである。

先日クレアのもとを訪ねた時に、魔物由来の素材の買取査定をしてもらったついでに、肉まんボールのレシピを聞いておいたのだ。

そのレシピをもとに、ラウルに頼んで特大サイズを山ほど作ってもらっての持参である。

肉まんボール―――それは言わずと知れたクレアのペット、クー太ちゃんの主食。

ドラゴンの幼体であるクー太ちゃんの大好物なら、シュマルリ山脈の中位ドラゴン達にも気に入ってもらえるだろう、というのがレオニスの考えであり推察だった。

そしてその推察は、見事に 半分正解(・・・・) であった。

初めて肉まんボールをご馳走になった中位ドラゴン達の反応は、概ね好評であった。

「オオ、コノ白クテ丸イノモ、カナリ美味ェナ!」「中カラ汁ガ溢レテクルー」と、皆口々に絶賛した。

だが、その後に続く言葉は「デモヤッパ、エクスポノ方ガ、俺ハ、好キダナー」「俺モ俺モ!」「奇遇ダナ、我モ、ソウ思ッテイタ、トコロダ」であった。

肉まんボールよりも、エクスポーション瓶丸ごとの方が美味いとはかなり意外な結果だ。というか、想定外にも程がある。

だが、肉まんボールもそれなりに好評のようなので、それはそれで良かったと思うレオニス。

中位ドラゴン達の腹を満たす程の量は用意できないが、この特大サイズは人の頭ほどもある大きさである。

肉まんのサイズとしては壮絶におかしいが、身長5メートルほどもある中位ドラゴン達にはちょうどいい手のひらサイズくらいか。

ちょっとしたおやつとして、中位ドラゴン達に満足してもらえれば上等である。

こうして親睦を深めつつ、レオニスは中位ドラゴン達に問うた。

「ところでさぁ、お前らも普通に空を飛べるんだよな?」

「ソリャ、モチロン」

「竜ノ名ヲ、持ッテテ、飛ベネェヤツナンテ、一頭モ、イネェゼ」

「鋼鉄ダッテ、チャント、飛ベルシナ」

「飛バネェ竜ハ、タダノ、蜥蜴ダ」

皆背中に立派な皮膜型の翼を持っており、その翼は決して飾りではないようだ。

しかも地属性の鋼鉄竜でさえもちゃんと飛べるという。これはレオニスにとってもかなり意外な事実だ。

「へー、地属性の鋼鉄も空を飛べるのか。すげーな!」

「フフン。我トテ、竜ノ端クレ、飛ベヌ訳ガ、ナカロウ?」

「デモ、飛ブノハ、一番、下手ッピダケドナ!」

レオニスの称賛に得意気にドヤ顔になる鋼鉄竜。

だがその得意気さも、他のドラゴンの下手っぴ暴露により打ち消されてしまう。

「ウ、煩イ!モトモト、我ハ、地属性ノ、鋼鉄竜、ナノダカラ、仕方ナイダロウ!」

「マァナー。鋼鉄ハ、飛ベルダケデモ、スゲーヨナ。ソレハ、間違イナイ」

「鋼鉄ノ、場合、一族ノ、半分クライハ、飛べナイモンナ」

「ソウソウ、鋼鉄ハ、一族ノ中ジャ、カナリ、優秀ダヨナ!」

「ワ、分カッテオルデハナイカ、オマエラ」

プンスコと怒る鋼鉄竜と、それを宥めるようにフォローする他のドラゴン達。

落としてから持ち上げるなら、最初から落とさなければいいものを、と思わなくもない。

だがそこは中位ドラゴン、あまり深く考えずに口にしてしまうようだ。

きゃんきゃんと騒がしいドラゴン達に、横でその会話を聞いていたレオニスが問いかけた。

「飛ぶのに上手い下手があんのか?」

「ソリャ、アルサ。人族ダッテ、走ルノガ、早イトカ、遅イトカ、アルダロウ?」

「ああー……そう言われてみりゃ納得だな」

「我ノ場合、飛ブコトハ、出来ル。ダガ、アマリ、高クハ、飛べナイシ、ソンナニ、速クモ、飛べナイ」

飛ぶのにも上手い下手があるのか?というレオニスの素朴な疑問に、獄炎竜や鋼鉄竜が適切な答えを返していく。

鋼鉄竜の場合、飛んでも高度や速度などは全く期待できないらしい。飛べても竜王樹がいる山の頂上より少し上程度が限界なのだそうだ。

しかし、それでも人族であるレオニスからすれば羨ましい限りである。

「そうなのか……でも、自分の翼で自由に飛べるってだけでもすげーことだよな!俺達人族には決してできないことだから、自由自在に飛べるお前らが羨ましいよ」

「エ、何言ッテンノ? オマエ、空飛ベルジャン?」

「あれはこの服に付けている付与魔法の効果で、少々の時間飛べるってだけのもんだ。鳥や竜族のようにずっと飛び続けられるもんじゃねぇ」

「ニシタッテ、オマエ……俺ガ知ル、人族ッテノハ、普通ハ、空ヲ、飛バン生キ物ノハズ、ダゾ?」

獄炎竜が呆れ果てたように、レオニスに異を唱える。

他のドラゴン達も「ソウダ、ソウダー」と獄炎竜に同意し、やんややんやと囃したてる。

ちなみに獄炎竜他、全ての中位ドラゴン達とレオニスは対戦済みだ。鋼鉄竜がどーーーしても一度は全員と戦え!と煩いので、仕方なく対戦した、という経緯である。

だがしかし、渋々とはいえ戦い始めれば両者本気を出して全力でぶつかっていく。

そうして獄炎竜、氷牙竜、迅雷竜とも対戦していったレオニス。その戦績はレオニスの全勝、四勝零敗である。

鋼鉄竜との対戦のように、身体強化魔法とエクスポーションを駆使して素早い動きでドラゴンを翻弄し、攻撃魔法を繰り出してダメージを与えていく。

獄炎竜には氷魔法や水魔法、氷牙竜には雷魔法、迅雷竜には火魔法というように、それぞれの弱点を突く魔法を繰り出すレオニスに中位ドラゴン達は手も足も出なかった。

「オマエ!ヤッパ、人族ジャネェダロ!」

「何言ってやがる。何処からどう見ても人間だろうが!」

「嘘ツケ!コンナ、馬鹿ミテェニ、強イ人間ガ、イテタマルカ!」

「うっせー!人族舐めんじゃねー!」

対戦の度に交わされた、レオニスと中位ドラゴン達の罵詈雑言の応酬。

しかし、そこを乗り越えれば拳で語らい合った者同士、気の置けない仲間となるのだ。

今日も中位ドラゴン達におやつ代わりのエクスポーションをねだられ、その口にポイポイ、ポイー、と二十本づつ瓶ごと放り込んでいくレオニス。

全員分を放り込んだところで、もっしゃもっしゃと美味しそうに食べる中位ドラゴン達にレオニスが問いかけた。

「なぁ、物は相談なんだが。この中で、天空島まで飛べるやつはいるか? いたら、近々俺達を天空島に運んでもらいたいんだが」

「天空島? 何ダ、ソレ?」

「文字通り、天空に浮かぶ島だ。俺達が住む地上からは見えないが、この空のどこかにずっと宙に浮いている島があるんだ」

「ヘー、ソンナ、島ガ、アルノカ!」

「竜王樹ノ旦那ナラ、知ッテルカナ?」

「知ッテルンジャネ? 竜王樹ノ旦那ッテ、俺ラト違ッテ、メチャクチャ、賢イシ」

「ヨシ、今カラ、聞キニ、行ッテミヨーーー!」

「「「オーーー!」」」

中位ドラゴン達はノリノリのテンションでそう言うと、早速レオニスとともに竜王樹のもとに向かっていった。