軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第575話 魔法付与とその報酬

ヴァレリアが姿を消した後、ライトもミーアとミーナに別れを告げて一旦カタポレンの家に戻ったライト。

本当は転職神殿を出た後すぐに素材集めをするつもりだったのだが、ヴァレリアとの会話が予想以上に長引いてしまった。

お昼ご飯を食べた後に、また素材集めに出かけよう……と思いつつ食堂に行くと、ちょうどレオニスが昼食の支度をしていた。

「お、ライト、どっか出かけてたのか?」

「あ、うん、ちょっと森の中を走り込んできたりしてたんだー」

「そうかそうか、真面目に修行して基礎体力を上げるのはいいことだぞー。冒険者は一に体力、二に体力、三四も体力、五六も体力だからな!」

「それ、体力全振りなだけじゃ……」

ライトの誤魔化した答えを聞きながら、二人前のパスタやサラダなどをテーブルに並べていくレオニス。

昼食の支度をしながらレオニスが語る冒険者論は、どこからどう見ても1000%脳筋至上主義者丸出しである。

そりゃもちろん体力が一番必須にして最も重要なのは分かる。攻撃力に直結することはもちろん、危険な場面から脱出する時にだって逃げ切るだけのスタミナは必要不可欠だ。

だがそれにしたって、もうちょい頭脳面や魔力とかも必要だよね? と思うのは、きっとライトだけではないはず。

ちなみにこのレオニスの言う『一に ○○(ホニャララ) 、二に ○○(ホニャララ) 』は、先程の『体力』の他にも『気合い』や『根性』、『知識』、『情報』など様々なバージョンがあり、その時々によって異なるものに入れ替わる。

つまりは基本脳筋を大前提に、どんな場面にも対応できるオールマイティな冒険者を目指せ!ということである。

一見欲張り過ぎな気がしないでもないが、常に危険と隣り合わせな稼業に身を置く者が元気に長生きしようと思ったら、それくらい貪欲かつ周到でなければならないのだろう。

「ライト、昼飯食った後に何か予定入ってるか?」

「ン? 一応やろうと思ってることはあるけど……レオ兄ちゃんの方も何かあるの?」

「午後からラウルといっしょに、ラグナロッツァ孤児院に行く予定なんだ。だからライトもいっしょにどうかと思ってな」

「あー、そういえば時期的にそうだねー」

「他にも孤児院の建物再建の話も進めなきゃならんしな」

レオニスの言葉にライトも納得する。

ラグナロッツァ孤児院への食糧支援は、毎月中頃あたりに行くことになっている。

黄金週間も終わり、時期的にそろそろ訪問する頃合いだった。

本当ならライトも、今日の午後は素材集めに出かけるつもりでいた。

だが、ラグナロッツァ孤児院を訪問するのは月に一度のこと。素材集めはまた来週の土日にすればいいし、ここは孤児院訪問の方を優先すべきかな……とライトは考えた。

「うん、じゃあぼくもレオ兄ちゃん達といっしょに孤児院に行く!」

「そうか、子供達も同じ年頃のライトが行くと喜ぶしな。じゃあ昼飯済んだら、すぐにラグナロッツァに移動するぞ」

「はーい」

話がまとまったので、二人は再びモリモリと昼食を食べていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

昼食後、ラグナロッツァの屋敷に移動したライトとレオニス。

ラウルと合流し、早速ラグナロッツァ孤児院に向かって三人で出かけた。

今日は三人ともラフな私服で、レオニスもラウルも冒険者仕様ではない。

「ラウルは今日はあの燕尾服着ないのー?」

「あれは基本的に冒険者向けの仕事をする時に着るもんだしな。孤児院に行くにはちと物々し過ぎるだろ」

「そう? ラウルの格好良い姿を見たら、皆喜ぶと思うけどなー」

「ま、そのうちな。それに俺、あの孤児院ではほぼ毎回調理場に立つからな。多分今日も何らかのおやつ作るだろうし」

「「…………」」

ライトとレオニスは、黒の天空竜革装備一式を着たラウルがエプロンをして厨房に立つ場面を思わず想像してしまう。

うん、まぁ確かにね、いくら格好良い装備でも厨房には若干そぐわないかもね……とライトは思う。

「そういえば、ジャケット類へ魔法付与はしたの?」

「おう、今日の午前中にご主人様とっ捕まえて付与してもらったぞ」

「おう、朝イチでラウルにとっ捕まって今日の午前中はずっと付与魔法繰り出してたわ」

ライトが転職神殿であれやこれやをしている間、レオニスとラウルは天空竜革装備一式への付与魔法のあれこれをしていたらしい。

ご主人様をとっ捕まえるという執事も大概どうかとは思うが、とっ捕まった側のご主人様もさほど気にしてはいないようなので問題ないだろう。

付与魔法は主に金属類に施すのが最適とされるので、服装に仕込む場合はボタンやベルトのバックル、チェーン、スタッズ、ハトメなどに付与するのが定番となっている。

ラウルの天空竜革装備は執事をイメージとした燕尾服スタイルとなっているので、主にジャケットの飾りボタンやパンツのベルト、カイ達にもらったタイピンなどに付与することになる。

「何の魔法を付与してもらったの?」

「まず体力自動回復に魔力自動回復、麻痺毒無効、耐熱、耐水、物理攻撃反射に……他は何だっけ?」

「浄化魔法、火炎吸収、水氷反射、雷撃吸収、重力魔法反射、石化無効、だったかな」

「うひょー……てんこ盛りに付けたねぇ」

かつてライトの制服やフォルの護身用アクセサリーなどに、様々な防御系魔法をレオニスに付与してもらったことがある。今回もラウルのために、あらん限りの治癒系および防御系魔法をモリモリに付与したようだ。

だが、それだけ付与してもらえばラウルの身の安全もより強固となって安心だ。もし万が一、先日のポイズンスライム変異体のような強大な魔物に出くわしても、あの時のような大怪我に至る前に倒せるに違いない。

「そんなにたくさん付けてもらえて良かったね!」

「ま、さすがに全部タダで付けてもらった訳じゃないがな」

「え、そなの?」

「魔法付与一回につき、俺様特製スイーツ五十個との交換で手を打ってもらったわ」

「あー、そうなんだ……まぁレオ兄ちゃんも、前からラウルのスイーツ欲しがってたもんね」

「いや、たまには俺だってそれくらいの報酬もらっても罰は当たらんだろ?」

二人の会話に、レオニスが慌てて言い募る。

酒は飲まない代わりに、甘い物が好きなレオニス。ライトが何かしらラウルに作ってもらったスイーツを出す度に、レオニスがそれを見ては毎回「ラウルの奴め、何で俺には持たせてくれんのだ」と愚痴りながら羨ましがっていた。

今回ラウルの装備一式に魔法付与を施すことで、ようやく念願叶ってラウル特製スイーツを大量にゲットしたようだ。

「レオ兄ちゃんも、ラウルのスイーツ大好きだもんね。報酬でたくさんもらえて良かったね!」

「おう!こんな機会でもないと、ラウルの奴はなかなか俺にスイーツ持たせてくれんからな!」

ニカッ!と笑い嬉しそうに答えるレオニスに、横にいたラウルが不服そうな顔で反論する。

「いやいやいやいや、ご主人様よ、人聞きの悪いことを言うんじゃない。俺は頼まれればいつだって作ってやるぞ?」

「頼まなきゃ作ってくれない時点で、執事として十分にダメでしょうがよ……」

「ご主人様からの依頼なら、しっかりと材料費もいただいた上で誠心誠意心を込めて作らせていただくぞ?」

「へいへい、お前ホントそういうところだけはちゃっかりしてるよね……」

平然と受け答えするラウルに、レオニスがブチブチと小声で文句を垂れる。

だが二人の会話には、剣呑さや不穏な空気などは全く感じられない。

普通に仲の良い友人同士というか、レオニスがその広い心でもってラウルの不躾な言動を受け入れている、といった感じだ。

レオニスとラウル、一応表向きは雇い主と使用人という主従関係にある。だがこの二人は、そもそもそんな堅苦しい間柄ではない。

人族と妖精族、種族を超えた友情で繋がっているのだ。

そんな仲睦まじいレオニスとラウルの会話を、ライトは微笑みながら見守っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そんな風にのんびりと移動している間に、目的地であるラグナロッツァ孤児院に到着したライト達。

相変わらず限界ギリギリまでボロい建物。その入口の前にレオニスが立ち、扉を開こうとする。

だが何しろ建付けが悪く、一回や二回押したくらいではまともに開かない。この手の難物相手には、きっと高度な熟練の 技(コツ) が要るのだろう。

取っ手を壊さないように、慎重にガチャガチャと動かしてようやく扉が開いた。

その次は床を踏み抜かないよう、ギシギシと大きな音を立てながらゆっくりと奥に入っていく三人。

ただ孤児院を訪問するだけなのに、至るところでスリリングを味わえるのが何とも複雑なところだ。何ならもうレオニスとラウルは、床から5cmくらい浮いて空中移動したほうが床にとっても人にとっても安全かもしれない。

「おーい、シスター、いるかー?」

礼拝堂の真ん中あたりで、レオニスが大きな声で奥の方に呼びかける。

すると、奥からパタパタと軽い足音が聞こえてくる。どうやら子供達が来客に気づいたようだ。

そうして出てきた子供達が、レオニスの顔を見て明るい笑顔になる。

「あッ!冒険者のお兄ちゃんだ!」

「お料理の先生もいる!」

「小さい兄ちゃんも、いらっしゃい!」

わらわらと出てきた子供達に、あっという間に囲まれたライト達。

子供達の歓迎を受けて、ライト達も嬉しそうだ。

「今日もお餅を届けに来てくれたのー?」

「ああ、それもあるが、今日はシスターに大事な話があって来たんだ。シスターはいるか?」

「うん、いるよー。奥のお部屋でお仕事してるー」

「そうか、じゃあ俺の方からシスターに会いに行くか。皆はラウルやライトと遊んでてくれるか?」

「「「うん!」」」

子供達の元気な返事を受け、レオニスはライトとラウルの方に向き直る。

「ライト、ラウル、子供達の相手をよろしくな」

「うん!」「おう、任せとけ」

ライト達にそう言うと、レオニスは奥の方に向かっていった。

レオニスに頼まれたライトは、集まってきた子供達に声をかける。

「じゃあ今日は何をする? 皆でいっしょに今から今日のおやつを作る?」

「「「賛成ー!」」」

「ラウル、今日もお料理教室の先生よろしくね!」

「料理のことなら万事この俺に任せろ。じゃあ皆で厨房に行くか。他の子供達も呼んできな、皆で美味しいおやつを作るぞ」

「「「はーい!」」」

ラウルの頼もしい言葉に、ライト他子供達は大喜びしながら厨房に向かうラウルの後をついていく。

こうしてレオニスはマイラのいる執務室に、ライトとラウルはおやつを作るために子供達と厨房に、それぞれ分かれていった。