軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第537話 レオニスとラウルのおねだり

黄金週間突入前日の土曜日。

この日の晩御飯は、ラグナロッツァの屋敷で皆で揃って食べていた。

「ガラス温室完成したんだな。これから家庭菜園頑張れよー」

「おかげさまでな。これからいろんな野菜を作る予定だから、皆楽しみにしててくれ」

「ラウルのお料理がもっともっと美味しくなるんだね!すっごい楽しみー!」

「ラウルの夢が叶って良かったね!僕もラウルに負けていられないな、アイギスでの修行頑張ろう!」

今日完成したガラス温室の話で盛り上がる四人。

ライトにレオニス、ラウルにマキシ、テーブルには木の実をポリポリと食べるフォルもいる。

レオニス邸に住む全員で晩御飯を共にするのは、かなり久しぶりのことだ。

今日全員が一堂に会した理由は、黄金週間の予定を話し合うためである。

ガラス温室の話題で一頻り盛り上がった後、早速ライトが黄金週間の話を切り出した。

「ラウルやマキシ君は、黄金週間中に何か予定はあるの? というか、マキシ君はアイギスのお仕事あるの?」

「俺は焼窯作りをするつもりだ」

「アイギスは黄金週間中はお店がお休みになるんです。だから僕もお休みになります」

ラウルは今日手に入れた煉瓦で早速焼窯作りを進めるようだ。

そしてマキシはアイギスの店休日に伴い、マキシも休暇になるという。

「あ、そなの? アイギスは明日から八日間お休み?」

「いいえ、明日から五日間ですね。黄金週間中は皆さんでバカンスに行くのが恒例だそうで。ですが今年はラウルのお祝いのジャケット作成があるので、お店は開けないけど早めに帰ってきてジャケット作りをする、とは言っていましたが」

「そうなのか? そりゃ何だか申し訳ないことをしたな」

「ううん、カイさん達もとても楽しそうにジャケット作りしてるから、ラウルもそんなに気にしなくてもいいと思うよ」

マキシの話によると、アイギス三姉妹は毎年この時期に店を休んでバカンスに出かけるのだという。

連休中は休みなく店を開くところが多いが、そんなことをしなくてもアイギスは年中多忙で繁盛しているので、休みの日こそリフレッシュ!ということなのだろう。

話を聞いていたレオニスも、マキシの話を肯定する。

「そうそう、カイ姉達が毎年黄金週間中にどこかにバカンス行くのは俺も知ってるが、だいたいいつも前半に出かけて後半は家でのんびりしてるはずだぞ。……って、マキシ、今年のカイ姉達の行き先は聞いてるか?」

「えーとですね、確かメイさんが『今年は早めの海よー!』とか言っていましたが……どこだったかな、ラギロア島?」

「ほう、ラギロア島か」

マキシからカイ達の行き先を聞いたレオニス、その場所がラギロア島と聞いて目を光らせる。

そんなレオニスの眼光に気づくことなく、マキシはライトと会話を続ける。

「だから僕もお休みの間に、一度里帰りして家族の皆に会いに行こうかと」

「それがいいね!何日か泊まってくるの?」

「いいえ、しても一泊程度ですね。本当に家族の顔を少しだけ見に行く程度なので……」

ライトの問いに、マキシは苦笑いしながら答える。

マキシとしては、家族の顔は見たいが里にはあまり長居したくないのだろう。

マキシが八咫烏の里を飛び出した後、家族のために一度だけと里帰りしたのが、去年の暮れも押し迫った頃。それからもう四ヶ月が過ぎた。

あの里に御座す大神樹ユグドラシアや、マキシの父母に兄姉、双子の妹ミサキ、皆元気にしているだろうか。

ライトも懐かしい気持ちで八咫烏の里の面々を思い出している。

するとここで、レオニスがマキシに声をかける。

「なぁ、マキシ。その里帰りに、俺もついていっていいか?」

「え? レオニスさんといっしょに里帰り、ですか? それはもちろん大歓迎ですけど……八咫烏の里なんて、人里に比べたら本当に何もないところですよ?」

「そんなことないさ。大神樹ユグドラシアがいるだろ?」

八咫烏の里に随行したいと言うレオニスに、歓迎の意を示しつつも不思議がるマキシ。

それに対するレオニスの答えは『大神樹ユグドラシアがいる』だった。

その答えに一同納得する。

八咫烏の里の生まれであるマキシはもとより、ライトやラウルも前回のマキシの里帰りで大神樹ユグドラシアに会っている。

この四人の中で、ユグドラシアに唯一一度も会ったことがないのはレオニスだけなのだ。

「そっか、レオ兄ちゃんもシアちゃんに会いたいよね。ぼくも久しぶりにシアちゃんに会いたいな!」

「ああ、まだ俺だけユグドラシアに直接会ってないからな。マキシが里帰りするなら、俺がユグドラシアに会いに行くのにも良い機会だろ?」

「そういうことでしたら、尚の事大歓迎です!レオニスさんもライト君も、是非とも八咫烏の里にお越しください!」

ライトやマキシが頷きながらレオニスの同行を歓迎する中、何故かそこにラウルまでもが参戦する。

「ご主人様達が揃って行くなら、俺もその日いっしょに行くぞ」

「え? ラウルも行くの?」

「当たり前だろう。皆がシアちゃんに会いに行くのに、俺だけ留守番とか置いてけぼりにする気か? そんなの仲間外れみたいで寂しいじゃないか」

前回の里帰りでは、ライト達の護衛としてラウルが同行していた。

護衛という点で言えば、今回はレオニスの同行が決定しているのでこれ以上最適な護衛はいない。

だが、ラウルもまたユグドラシアに会いに行きたいらしい。

留守番や置いてけぼりを嫌がるとか、まるで子供のような駄々のこね方だ。だが、素直に『寂しい』と口にするあたり、本当に正直者である。

ラウルという妖精は、見た目に反して寂しがり屋な妖精なのだ!と思えば、案外可愛らしく見えてくる。

「シアちゃんはツィちゃんが慕う姉ちゃんなんだからな」

「え、シアちゃんてお姉さんなの?」

「こないだツィちゃんが酔っ払った時にそう言ってた」

「そうなんだ……樹木でも雌雄の性別あるんだね」

ユグドラシアがユグドラツィの姉、つまりは雌であることに驚くライト。

だが、八咫烏の里で会話したユグドラツィの声や口調はとても柔和で、確かに女性的な雰囲気だったな、と思い浮かべる。

「ツィちゃんも、本当は他の神樹に会いに行きたいんだ。だけどツィちゃんは神樹だから、あの地から一歩も動けない。だから動けないツィちゃんの代わりに、俺がこのツィちゃんの分体とともにシアちゃんに会いに行くんだ」

「……そっか、ツィちゃんの代わりってんなら確かにラウルが最適かもね」

「そうだな、ラウルはツィちゃんの一番のお気に入りだしな」

「ン? 何のことだ?」

ラウルが語る理由に、ライトもレオニスもニコニコ顔で納得している。もっともラウルから見たら、二人してニヨニヨと笑っているようにしか見えないのたが。

大小二人のご主人様達を訝しげな目で見るラウルだが、反対されるのでなければ別に問題ないか、と内心で開き直る。

「じゃあ、皆でいっしょにお出かけだね!……って、この四人でどこか遠くにお出かけするのって、もしかして初めて?」

「そういえばそうですね、公国生誕祭以来ですね」

「マキシもアイギスで働くようになってから、ライト達となかなか休みが合わないからな」

「ま、それは仕方ないな。俺も基本カタポレンの森の警邏とかそれなりに忙しいしな」

四人でマキシの里帰りについていくことが決まり、ライトがはたとこの四人で遠出をするのはこれが初めてだということに気づく。

思えば三人で出かけることはよくあった。ライトとレオニスとラウルとか、あるいはライトとラウルとマキシとか。

これは主にレオニスとマキシの都合が合いにくいのと、ラグーン学園生のライトとアイギスで働くマキシの休みがなかなか一致しないことが原因である。

「そしたらいつ行く?」

「レオニスさん達は、黄金週間最終日のお祭りに出るんですよね? そしたら前半の早いうちの方がいいですよね?」

「そうだな。公国生誕祭の時のように、冒険者ギルドにガッツリ詰めていなきゃならん訳じゃないんだがな。それでも黄金週間の期間中にあまり長くラグナロッツァを空けないでくれ、とは言われている。ま、二日程度なら大丈夫だろうがな」

レオニスの黄金週間中の予定はまだちゃんと聞いていなかったが、あまり長い間首都を離れてもらっては困るらしい。

公国生誕祭ほどではないが、レオニス自身も出場する鑑競祭りを中心に他国からのVIPや豪商がたくさん集まるせいだろう。

もし万が一何か事件が起きれば、レオニスを始めとして冒険者ギルドの実力者が駆り出されることになる。

そうした不測の事態に備えて、なるべくならばすぐに連絡できないような遠くには行かないでくれ、ということなのだ。

「じゃあ、明日か明後日には行く? 八咫烏の里への移動は、ウィカにお願いして近くの巌流滝まで飛べばいいし」

「そうさせてもらうか。それが一番手っ取り早くて良いな」

「じゃあ、今度ウィカちゃんにも何か御礼しないとですね」

「ウィカには俺が美味しいものをご馳走してやろう。魚介類のフルコースなんてどうだ?」

「それいいね!ウィカも絶対に喜んでくれるよ!」

ラウルの名案に、ライトが大喜びしながら今度はマキシやレオニスに向かって問う。

「マキシ君は今回のお土産は買った?」

「はい。今回もアイギスの小物を中心に、家族の分のお土産は購入してあります」

「そしたらもう明日から行っちゃう? あーでもせっかくの黄金週間だから、鑑競祭りの初日ってのも見てみたいなー」

「じゃあ明日は皆で鑑競祭りその他を見に行って、里帰りについていくのは明後日にするか」

「そうだね!それでいこう!」

こうして四人の黄金週間前半の予定が決まったのだった。