軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第52話 職業とジョブ

「そういえば、皆さんの職業は何ですか?」

ライトは思いきって、職業のことをダイレクトに尋ねてみた。

そう、この世界でライト自身未だによく分かっていない『職業システム』。その謎の一端が少しでも分かればめっけもんだ、とライトは考えたのだ。

ところが、ライトの意に反してクルト達はきょとんとした顔をしている。

「職業?」

「俺達の職業、か?」

「そりゃあ、見ての通り全員冒険者よ?」

「うん、全員冒険者」

「というか、冒険者以外に見えたりする?」

ん?話が通じない?

どういうことだ?

「えーっと、あの、ほら、【戦士】とか【闘士】とか【僧侶】とか、いろいろとあるでしょ?」

「戦士? 僧侶? そんなジョブ、あったっけ?」

どうしたことか、未だに話が通じない。

これは双方の間に、何か重大かつ決定的な齟齬が生じているような気がしてならない。

ライトが強烈な不安を覚え始めた、その時。

「……ああ、ライト君が言ってる職業ってのは、ジョブのことじゃない?」

モルガーナが『ピコーン!思いついた!』とばかりに、手をポン、と合わせながら言った。

モルガーナは錫色の艷やかな長いストレートの髪を、緩い三つ編みでまとめて右側に流している。

綺麗な若紫の瞳は、いつも皆をまとめ役を務めるしっかり者のお姉さん、というようなオーラを感じさせる。

「……ジョブ?」

「そう、ジョブ。私の場合は、火炎術師よ」

「ああ、そういうことね。俺はこぶしの方の拳士で、クルト兄さんは剣の方の剣士だ」

「私は弓士、ネヴァンは回復師よ」

モルガーナに呼応するように、ガロンとヴァハがそれぞれのジョブを明かす。

ヴァハは鮮やかな紅色のポニーテールに樺色の瞳、動きやすさを優先したのか少々肌の露出が多めの軽装が印象的な女性だ。

一方、質問した側のはずであるライトは、ぽけっとしていた。

「……火炎術師? 拳士? 弓士?」

「ああ、ライト君はまだ冒険者登録できる年齢じゃないし、ジョブのことは詳しくは知らないだろう」

クルトがフォローするように言う。

「ジョブというのはね、まず神殿で適性判断してもらうんだ」

「適性判断ってのは、その人が持つHPやMP、攻撃力や魔力、敏捷などの素質とか属性の傾向なんかだね」

「それらの結果を見て、その人にとってどれが最も適した役割を持てるかを総合的に判断して、スクロールを授けられるんだ」

「例えばほら、HPや攻撃力が高くてMPや魔力が少ない人が、魔法使いにはなれないだろう?」

「逆に、HPや攻撃力が低くてMPや魔力が高い人は、剣士にはなれない」

「いや、なろうとしてなれないこともないよ? 適性の合わないジョブでも、無理矢理なろうと思えばなれるはず」

「だけど、それはあまりにも効率が悪過ぎて、非現実的なんだ」

「それに、そもそも適性を無視した不向きなジョブのスクロールを、神殿が授けてくれるとも思えないし」

「ちなみに魔法のスクロールは、適性ジョブ以外の人でも入手できるよ。地水火風光闇、いわゆる六大属性の中級魔法までなら街の巻物屋で普通に売られていて、お金を出せば誰でも手に入れられるんだ」

「ただ、初級でも値段はかなり高いから、普通の人はあれこれたくさん買えないけど。それでも普段の日常生活に使える生活魔法として、とても重宝するんだ」

「上級以上になると、さすがに店売りはなくて適性ジョブでないと修められないけどね」

クルトが立て続けに丁寧に解説しているが、ライトはぽけっとした顔のままでちゃんと聞いているんだがいないんだか分からないような、何ともいえない表情をしている。

「……おっと、ライト君にはちょっと難し過ぎてついていけなかったかな? ごめんね、いきなりたくさん話して」

クルトはライトの気の抜けた表情に気づき、申し訳なさそうに謝った。

「……あ、いえ、そんなことはありません。ぼくが知りたかったことを聞けて、すごくためになりました。ありがとうございます」

「そうかい?だったらいいけど」

「クルト兄さんは超真面目だからなー、話が長過ぎて寝ちゃっても仕方ないと俺は思うぜ?」

横でいっしょに聞いていたガロンが、頭の後ろに手を組んで笑いながら茶化すように言う。

「そういうガロンは、もうちょっと真面目にクルトの話を聞いた方がいいと思うわよ?」

「そうそう、依頼完了後の反省会でいっつも怒られるのはガロンなんだからね?」

「絶対にガロンの方が、ライト君よりお子様だと思う……」

女三人衆に速攻でツッコミ連打されるガロン。

自分より年下の、パーティー最年少であるネヴァンにまで即時ツッコミを入れられるとは、ガロンの普段の行いというものが窺い知れる。

ネヴァンは黒に近い紺色のふんわりとしたショートボブに瑠璃色の瞳の少女、回復師らしく白のフード付きローブを着ている。

そんな活発な女性陣の勢いに若干たじろぎながらも、ガロンはへこたれない。

「う、うるせー!俺だってそれなりに成果出してるだろ!」

「失敗を振り返り、反省して次に活かす。それが生き残る道に繋がる。さっきレオニスさんが仰ってたことよ?」

「それをまるっと無視するつもり?」

「うわー、ガロンっていつからそんな偉くなったのー?」

目の前にいる、尊敬してやまないレオニスの言を引き合いにされて、ガロンは反論できずにぐぬぬとなるしかない。

「まぁまぁ、そう皆して責め立ててやるな。ガロンにだって、長所はたくさんあるさ」

「レオニスさぁぁぁぁんッ」

「だが、ガロンも仲間の苦言は素直に受けておけよ?皆お前のためを思って言ってくれてることなんだからな」

「……はいッ!!」

レオニスに上手に諭されて、涙目になったり感激したり、いろいろと忙しそうなガロン。

皆いい落とし所を得て、笑顔になる。

それと同時に、若手パーティー連中のレオニスを見る眼差しが更に尊敬度をマシマシにしていた。

「……さ、飯もだいたい食い終えたことだし、お前達も討伐から帰ってきたばかりなら疲れてるだろう。そろそろお開きにするか」

「はい!レオニスさん、今日は本当にありがとうございました!」

「ここの支払いは俺が出すから。お前ら、これからも頑張れよ」

「……!!ごちそうさまです!!」

「ま、お前達が今よりもっと出世したら、今度は俺に奢ってくれやwww」

「「「「「はいッ!!」」」」」

憧れの人とたくさん語りながらお腹いっぱい飲み食いしただけでなく、晩飯代まで奢ってもらった龍虎双星の五人。全員揃って本当に感激の面持ちだ。

「じゃ、またな。ほら、ライト、行くぞ」

「……あ、はい。皆さん、今日はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました」

「いや、こちらこそライト君と知り合えて、本当に嬉しいよ」

「ラグーン学園でたくさん友達できるといいな!」

「またギルドで会ったら、今度は外でお茶しようね!」

「そしたら次は、ライト君の学園話も聞かせてね!」

「またねー!」

ライトは慌てて挨拶をして、レオニスが飲食代の支払いを済ませてから共に冒険者ギルド総本部に向かう。

龍虎双星のメンバーも、それぞれライトに声をかけて別れの挨拶とともに二人を見送る。

時刻は午後の19時半を回った頃。夜の帳が音も立てずに、静かに舞い下りてくる。

ライト達は冒険者ギルド総本部の転移門を使い、ディーノ村からカタポレンの森への帰路に就くのだった。