軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第51話 初めての直営食堂

食堂に入ると、先程の青年達は大きなテーブルについて待っていた。

レオニスとライトは、空いていた椅子にそれぞれ座る。

ライトにはテーブル面がちょっと高めだったが、レオニスが周辺の椅子にあったクッションを何枚か重ねて高さを底上げしてくれた。

おかげで、ライトでもちゃんと食事ができそうだ。

「待たせたな」

「いいえ、そんなに待ってませんからお気になさらず」

「何かもう注文したか?」

「いえ、今からです」

「じゃあ呼ぶか。おーい、注文頼むー」

「はいよー」

ハキハキとした、快活なおばちゃんがすぐに注文を取りに来た。

「おや、レオさんじゃないか。この食堂に来るの、ものすごく久しぶりじゃないかい?」

「ああ、ご無沙汰ですまないな。女将も元気そうで何よりだ」

「レオさんも元気そうで良かったよ。今日は何にするんだい?」

「食い物は女将のお勧めメニューを見繕ってくれ。飲み物は……お前ら、酒飲むか?」

「酒は僕達男二人分だけお願いします」

「じゃ、ビール2にぬるぬる橙2、ぬるぬる薄黄3で頼むわ」

「レオさんは飲まないのかい?」

「ああ、今日は遠慮しとくわ」

「はいよ、んじゃすぐに持ってくるね」

レオニスが、食堂の女将と挨拶を交わしがてらテキパキと注文を済ませる。

飲み物類がすぐに運ばれて、ビールは若手パーティーの青年二人に、女性陣三人とライトとレオニスはそれぞれに好きなぬるぬる系ジュースを手に取る。

グラスが7つ揃ったところで、することはひとつ。

「「「「「「「乾杯ー!」」」」」」」

皆それぞれ一気にグラスを煽る。

ライトは先日クレナの奢りで飲んだのと同じ、ぬるぬる橙を飲む。

名前は非常にアレだが、クレナの奢りで一度飲んだことがあるので味の面では安心できた。

ちなみに薄黄はリンゴ味らしい。

次回があれば飲んでみたいな、とライトも思ってはいるものの、どんなに美味しくてもやはりその名前の前に一度は怯んでしまう。ぬるぬるェ……

食べ物の方も、串焼にフライドポテト、手羽先揚げ、枝豆等々、居酒屋定番メニューが次々と運ばれてくる。

思い思いに好きなものを手に取り食べていく。

「いやー、やっぱこうして人間的な食事にありつけるってのは、いいもんですねぇ」

「まぁな、遠征やら遺跡調査なんかしてりゃ食事の用意も一苦労するからな」

早速冒険談義に花が咲こうかというところで、レオニスがパーティーの青年達に言う。

「お前ら、とりあえず自己紹介してくれ。ライトとは初めて顔を合わせる者同士だからな」

「あっ、そうですね。すみません、すっかり失念してました」

パーティーリーダーらしき青年が、ライトの方に改めて向き直る。

鳶色の髪に紫檀色の瞳は、高い教養と知性を感じさせる。

背筋もピシッと伸びていて、典型的な好青年である。

「僕はパーティー『龍虎双星』のリーダー、クルトだ。パーティーでは前衛担当、冒険者歴8年の18歳、現在黒鉄級だ」

リーダーの自己紹介を皮切りに、他のメンバーがそれぞれ自己紹介をしていく。

「俺はリーダーのクルトの弟、ガロンだ。兄さんと同じく前衛担当、冒険者歴6年の16歳、青銅級だ」

「私はモルガーナ、中衛担当、冒険者歴9年の19歳、黒鉄級よ」

「私はヴァハ、後衛担当、冒険者歴7年の17歳、青銅級よ」

「私はネヴァン、回復担当、冒険者歴5年の15歳、石級。私達皆、幼馴染なの」

それぞれが名前と担当役割、冒険者歴、年齢、冒険者階級を述べていく。

一通り終わった後に、ライトが自己紹介をする。

「ぼくは、ライトといいます。ぼくの父さんが冒険者で、その縁でレオ兄ちゃんといっしょに暮らしています」

「来月からラグーン学園に通う予定です」

「もうすぐ8歳になりますが、10歳になったらすぐに冒険者登録しようと思ってます」

「皆さんに、冒険者の先輩としていろいろ教えていただけたら、とても嬉しいです」

「よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げて、顔を上げて皆の顔をを見渡すと、全員が感心しきったような顔をしてライトを見ていた。

「……レオニスさん、この子すっごく賢いですねぇ」

「ホント、俺んちの末弟より年下なのに、とてもそうは思えない」

「いやーん、可愛いー!」

「私もこんな弟がほしかったー」

「……負けてらんないわ」

各々がライトに対する感想を口々にする。

「よしっ、このガロン先輩に何でも聞いてくれ!」

「おいこら、レオニスさんを差し置いて、何て口をきいてんだ」

「そうよぅ、私達なんかよりもっと身近にもっとすごい人がいるのよ?」

「私達なんて、成功例より失敗談の方がはるかに多いもんね」

お調子者っぽいガロンが、速攻で周囲に窘められる。

リーダーのクルトの弟だというガロンは、赤銅色の刈り上げに兄と同じ紫檀色の瞳の活発そうな青少年だ。

少年が青年になるほんの少し手前といった感じの、いかにもやんちゃ坊主な印象が何とも微笑ましい。

その姿を、ライトとレオニスはニコニコしながら眺めている。

「俺だって、失敗談なら腐るほどあるぞ?」

「えっ、レオニスさんでも失敗することなんてあるんですか?」

「えー、全然想像できないー」

「いやいや、お前らね、俺だって普通の人間だからね?」

「「「「「…………」」」」」

「えッ、なにその沈黙やめて?」

普通の人間は、魔の森と呼ばれるカタポレンの森になんて住めないと思う。

↑『龍虎双星』のメンバー達の全員は、こう思っていた。

皆口にこそ出さないが、顔にはその思考がダダ漏れである。

「……コホン。ま、冗談はともかくとして」

「そういう失敗談こそ、冒険者が生き残るための知恵や秘訣を学べるってもんだ」

「冒険者と言えば聞こえはいいが、一歩間違えば簡単に死んじまう、常に危険と隣り合わせの仕事だからな」

「宝物見つけただの魔物を倒しただのの成功話よりも、失敗した時の経験こそが成長に欠かせない」

「失敗を振り返り、反省して次に活かす。それこそが、危険を乗り越えて生き残る道に繋がるんだからな」

レオニスは何を自慢するでもなく、静かに滔々と語る。

若手パーティーの連中は、その言葉に聞き入っていた。

「……っと、年寄りが語ってばかりですまんな」

ハッと気づいたようにレオニスは顔を上げ、苦笑いとともに軽く謝る。

「い、いやいや、何言ってんですか!」

「そうですよぅ、レオニスさんだってまだ全然若いじゃないですか!」

「そうそう、レオニスさんが年寄りだったら、うちの父ちゃん母ちゃんや近所のおじさんおばさん皆ジジババなっちゃいますよ?」

うん、レオ兄、もうすぐ25歳だからね。

今日某所で散々おじちゃん呼ばわりされて、内心傷つきながらも自分から認めた方が気が楽なのかも。

そういう微妙なお年頃なのね。

「ライトもいい機会だから、何か質問してみるか?」

レオニスがライトに話を振ってきた。

そうだなぁ、現役の冒険者に聞いてみたいことはたくさんあるけど……

ライトはしばらく考え込み、つい、と顔を上げた。