軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第374話 アクアのレベルアップ

「ンぁーーー……目の前一面に花畑が見えたわ……」

イードとウィカに介抱されたライト、目を覚ました後ゆっくりと起き上がる。

完全にKOしたライトを イード達はどうやって回復させたのか。それはアクアの持つ治癒魔法である。

そもそもアクアは水神アープで、BCOではレイドボスを務めていたほどの高位の存在だ。レイドに挑む 挑戦者(ユーザー) に向けて放つ強烈な全体攻撃の他に、自身を回復させる治癒魔法も使っていた強敵である。

今回はその治癒魔法をライトにかけるように、ウィカから言われたアクアはすぐに実行してくれたのだ。

頭を横に軽く振りながら起きたライト。ふと己の横を見ると、アクアがしょんぼりと項垂れているではないか。

ライトがこのように寝込んでしまったのは、会えた喜びで思いっきりダイビングアタックした自分が原因なのだ、ということをイード達から諭されて理解したようだ。

長い首を曲げてしょげるアクアの姿は、何ともいじらしい。ライトはそんなアクアを抱き寄せて、己の膝の上に乗せながら語りかける。

「アクア、そんなに落ち込まなくてもいいよ。ぼくに会えて嬉しかっただけでしょ?ぼくもアクアに会えて嬉しいもん」

「キュゥ……」

「ほら、ぼくももう大丈夫だよ?逆に皆に心配かけちゃってごめんね。アクアにタックルされたくらいでへばるとか、ぼくもまだまだ弱っちいなぁ」

「……キュゥ?」

「ぼくもこれからもっと修行頑張って、アクアに抱きつかれてもびくともしないくらい強くなるからね!」

「ピィ!」

ライトの懸命の励ましに、俯いて落ち込んでいたアクアも次第に顔を上げてライトの顔を真っ直ぐに見つめる。

そしてライトのもっと強くなる!発言に、アクアがとても嬉しそうに返事?をする。アクアもイードや使い魔同様、ライトの言葉をちゃんと理解しているようだ。

膝の上で嬉しそうな笑顔のアープを見ていると、ライトまで笑顔になってくる。

ライトはそのまましばらくアープの頭を撫でながら、心を癒やしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それにしても、アクア大きくなったなぁ……と、アープの頭を撫でつつライトは心の中で考える。

ライトがこの目覚めの湖で湖底神殿を発見し、神殿内部に安置されていた巨大な卵からアープを孵化させたのは、ラグーン学園の三月期が始まった日。今日から遡ること二週間弱ほど前のことだ。

その時のアープは、ライトが両腕で抱き抱えても余裕な程度の小さな身体だった。それが今ではどうだ、両腕を目一杯広げて抱き抱えてもアープの背中に届かない。

二週間弱でこの成長の早さは、びっくり仰天どころの騒ぎではない。

『んー……前に見た詳細では『条件が整えば人型や天使などに姿を変えられる』的なことが書かれてあったから、何とかアクアをレベルアップさせようと思って今日はここに様子を見に来たんたが……』

『特に何もしなくても大きくなってんだけど……何で?』

今まで前世のゲームBCOの知識を用いて、このサイサクス世界で様々なことをしてきたライト。だが、さすがにレイドボスを育てるなんてことは全くの未経験なので勝手が分からないのだ。

だがここでライトは『アープはレイドボス』という点に着目する。そう、レイドボスならモンスターとしてのステータスチェックが可能なのではないか?ということに気づいたのだ。

アープのステータスが確認できれば、他にも何か有用な情報が得られるかもしれない。

とりあえずライトは『アナザーステータス』でアープのステータスを見てみることにした。

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【名前】アクア

【種族】アープ

【レベル】5

【属性】水

【状態】通常

【特記事項】単独接触禁忌指定第一種

【HP】8680

【MP】2480

【力】560

【体力】710

【速度】830

【知力】400

【精神力】500

【運】280

【回避】750

【命中】420

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『あー、やっぱアープは特記事項が単独接触禁忌指定第一種なんだ……』

『そうだよなー、BCOでもアープはレイドボスだったもんなぁ……』

アープのステータスを見たライト、脳内で様々な考えを巡らせる。

ライトが真っ先に注目したのは【特記事項】だ。

この特記事項はいくつかの種類や法則があり、それを見ることでそのモンスターの持つ特性がある程度分かるのだ。

まず特記事項の頭に『第一類』から『第三類』がつくものは、冒険フィールド上に出現するレアモンスターである。レアモンスターの強さによって三段階に分けられており、強いほど数字が小さくなる。

以前ツェリザークで遭遇した邪龍の残穢、あれにも『第一類特殊警戒指定種』という特記事項がついている。これは、冒険フィールド上で遭遇するレアモンスターの中でも最強の部類ということだ。

次に、通常の冒険フィールドには現れない大型の討伐モンスターは【単独接触禁忌指定種】と称される。

それは主に、騎士団単位で一日一回挑戦できるレイドボスや、期間限定イベントで登場する臨時討伐モンスターなどが該当する。つまり【単独接触禁忌指定】とは個人で倒すものではなく、複数のユーザーが集まった騎士団というクランで一丸となり団体戦で倒すことを前提としたモンスターなのだ。

ちなみに最後尾についている【第一種】がレイドボスで、その他の期間限定の臨時討伐モンスターは【第二種】である。

アクアのステータスに書かれていた【単独接触禁忌指定第一種】とは、まさしくアクアがレイドボスであることを明確に指し示していた。

『にしても、レベル5でこのステータス……ヤバッ!』

『やっぱ中身はレイドボスなだけあって、レベル5でこれは洒落にならん……レベル100とか200なったらどうなるんだろ?』

『つーか、そもそもどうやってレベル5になったんだ?孵化直後のあの小ささは、おそらくレベル1だったろうに……』

『んーーーーー……よく分からん!』

アクアがレイドボスであるという事実を、そのステータスでも目の当たりにしたライト。

それは前もって己の持つ知識で知っていた事実で、頭では分かっていたことだ。だがこうして改めてその証拠を突きつけられると、ライトの胸中もまた複雑なものになる。

そもそもレイドボスとは、冒険フィールドで遭遇するモンスターよりも敵対度が明確かつはるかに上だ。ゲームの中で、徹頭徹尾ユーザーが倒すべき強大な敵として立ちはだかる。

そこに和解や融和の余地などないように見える。

だが、ライトの目の前にいる水神アープ、アクアはライトが孵化させた子だ。その可愛い仕草はもちろんのこと、ライトへの懐き方も半端ない。

ライトはアクアが孵化した時に一番最初に見た生き物だけに、もしかしたらライトを親だと思っている可能性も十分にある。

あれこれ考えた挙句、ライトの出した結論は『家族としてこれからも見守り続けていく』だった。

将来アクアがレイドボスとして覚醒する可能性も全くない訳ではない。以前グライフのところで教えてもらった水神アープの話も、普遍的な神話や伝説の域を出ないものだった。

アープのデータが全くない以上、この先どう転ぶか誰にも分からないのだ。

だが、ライトは卵から孵化させた以上、責任を持って見守り続けよう、と決心した。

要はアクアが周囲に害を及ぼさなければいいのだ。

そしてもし万が一、レイドボスとして覚醒して大暴れしだしたら、その時はライト自身の手で討とう―――そうした覚悟と決意を持った瞬間でもあった。

そう腹を括ったからには、アクアを良い子に育てなければならない。アクアを孵化させた親としての務めみたいな、使命感にも似たものだ。

イードやウィカ達水属性の仲間達ともより仲良くなって、楽しい時間を過ごそう!と考えたライト。改めてイードやウィカに向かってお礼を言った。

「イードもウィカも、いつもありがとうね。これからもアクアと仲良くしてやってね」

「あ、皆にもお土産持ってきてあるんだ。……そうだ、ここで皆でおやつとして食べようか!」

ライトはそう言うと、アイテムリュックから様々な品を取り出しては桟橋の上に置いて並べていく。

イードにはいつもの『魔物のお肉たっぷり激ウマ絶品スペシャルミートボールくん』、ウィカには前もってラウルに作ってもらっておいた海鮮丼やツナサラダ。

自分にもチョコレートドーナツと紫のぬるぬるドリンクを出して、はたと考える。

「ぼく達だけおやつ食べて、アクアに何もないのは可哀想だよねぇ……」

「アクアは何を食べるのかな?ウィカと同じ水産物系がいいのかな?それか……聖なる餅でも食べる?」

聖なる餅で作られた磯辺餅を、ライトはアイテムリュックから皿ごと取り出して膝の上にいるアクアに見せてみる。

この聖なる餅は、かつてアクアを孵化させる際に卵の段階で散々散々与えたものだ。その数二千個にも及ぶ大量投与でようやく孵化したのが、今ライトの目の前にいる水神アープである。

二千個も食べさせた後だと、さすがに飽きてしまっている可能性も無きにしもあらずだ。だが、ライトが出したのは磯辺餅。餅の王道アレンジである磯辺餅ならば、飽きずに食べてくれるかもしれない。

最初のうちは不思議そうに皿を眺めていたアクア。周りでイードやウィカがおやつを美味しそうに食べているのを見て、それが自分にくれた食べ物だということを何となく理解したようだ。

ライトが差し出した聖なる磯辺餅を、何の疑いもなくパクッ!と食いつくアクア。そのまままくまくと頬張る姿はまた何とも可愛らしく、その表情からも美味しく食べていることが見ていて分かる。

おお、美味しく食べてくれている!やっぱ聖なる餅は偉大だな!次の大晦日にもたくさんゲットしよう!などと、ライトが考えていた時。

ライトの膝の上にいたアクアが、急激に重さを増した。

「のごッ」

突然の重量増加に、ライトは思わず声を上げた。

いや、膝が潰れる!とかアクアの大きさが倍になった!とか、そこまで激変した訳ではないのだが、明らかに体重が増加したことへの精神面での喫驚が大きかったのだ。

それに改めてアクアを見ると、心なしかその体格も先程より少しだけ大きくなっているように見える。それは多分気のせいなどではない。膝で直接感じた重量増加の件と合わせて考えると、間違いなく体格が大きくなっているはずだ。

ここでライトははたと気づく。

『あー、アクアのレベルが5に上がってたのは、食事によるレベルアップか?』

『使い魔の卵だって、何かを食べさせることで経験値を与えてレベルアップさせて孵化に至るもんな。アクアは使い魔の卵じゃないけど、卵が孵化して生まれたんだからシステム的に類似してるのかも』

ライトは自分の考えが正しいかどうかを確認するため、再びアクアのステータスを見てみることにした。

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【名前】アクア

【種族】アープ

【レベル】6

【属性】水

【状態】通常

【特記事項】単独接触禁忌指定第一種

【HP】7360

【MP】1940

【力】440

【体力】570

【速度】940

【知力】340

【精神力】430

【運】470

【回避】280

【命中】670

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先程見た時はレベル5だったのが、6に上がっている。やはりライトの推測は正しかったようだ。

聖なる餅の磯辺餅がどの程度の経験値かは分からないが、これを食べてアクアのレベルが上がったことは間違いない。

そしてレベルが5に上がっていたのは、目覚めの湖での食事が原因だろう。普段目覚めの湖で何を食べているのかは知らないが、この広大な湖にはたくさんの食べるものがある。決して食事に困ることはないだろう。

聖なる磯辺餅を美味しそうに食べるアクアを眺めながら、ライトはアクアに話しかける。

「アクア、お餅美味しい?これからも美味しいもの食べて、元気に大きくなろうね!」

アイテムリュックから次々と聖なる磯辺餅を取り出し、アクアに与えながら皆で楽しいおやつタイムを過ごしたライトだった。