軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第342話 飛竜と竜騎士団

翌土曜日。冬休みが終了してから初の、待ちに待った土日である。

この日レオニスはアイギスに頼んだ品物を受け取るために出かけており、家ではライトが一人でいた。

土日なら遠出もできるので、本当ならライトの方もクエストイベンの最新7ページ目33番のお題『黄大河の原水』を採取しに出かけたいところなのだが。地図で調べたところ、この黄大河という川がかなり遠いのだ。

黄大河とはシュマルリ山脈に端を発し、中央レンドルー地方を斜め袈裟斬りのように流れていずれは海に至るという、サイサクス世界で最も大きな河川である。

そして世界最大級の河川というだけあって、氾濫した時の被害が洒落にならないので最寄りの街や村というものが存在しない。故に冒険者ギルドの転移門を使用して最寄りの街に移動する、というお手軽な手段が使えないのがライトにとってはかなりの痛手だった。

そうした厳しい条件の中で、今取れる手段を強いて挙げるとすれば翼竜籠での移動だ。

中央レンドルー地方ならば、マキシの故郷である八咫烏の里に帰省した際にもその上空を通り過ぎたことがある。その時にライトも籠の中から下に広がる大きな河、その雄大な景色を感歎の面持ちで眺めた覚えがある。

「あー、くっそー、あん時に黄大河の原水採れてりゃ良かったのになぁ」

「……って、あん時はまだお題に出てくるとはこれっぽっちも思ってなかったし」

「そもそもシグニスさんやプテラナちゃんのいる前で水汲んだり、ましてやアイテムリュックに収納とか絶対にできんからどの道無理筋だけどさ」

地図とにらめっこしながら、ぶちぶちと呟くライト。

さて、どうしたもんか、としばし頭を悩ませ続けた結果。何か閃いたようだ。

「よし、ダメ元でシグニスさんに頼んでみよう!」

そうと決まれば話は早い。早速ライトはラグナロッツァの翼竜牧場に向かうことにした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「こんにちはー」

「いらっしゃいませー!……あ、ライト君じゃないですかぁ。こんにちは!」

ライトはラグナロッツァ郊外にある翼竜牧場の門を叩いた。

そんなライトを、翼竜牧場の受付嬢であるナディアが元気な声で明るく出迎える。

「今日もビッグワームの大顎の買い取りですか?」

「いえ、今日はシグニスさんにちょっとお話したいことがありまして……シグニスさん、いらっしゃいます?」

「兄ちゃんにお会いしたいんですか?えーとですね、今朝朝イチで近くの街に届け物の仕事に出てますが、お昼前には帰ってくると思いますー」

「そうなんですかぁ」

ライトが会いに来たシグニスは、あいにく不在のようだ。

しばらく考えた末、ライトはナディアにひとつお願いをしてみることにした。

「そしたらシグニスさんが帰ってくるまで、翼竜の見学をしながら待っててもいいですか?」

「もちろん構いませんよー。今ライト君以外のお客さんもいないので、私がご案内しましょう」

「ありがとうございます!」

ナディアの厚意に甘えることにしたライトは、二人で翼竜達のいる牧場に歩いていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「いつ見ても翼竜って格好いいですよねぇ!」

牧場でのんびりと過ごす翼竜達を眺めながら、ライトが興奮気味に語る。

そんなライトを、ナディアは不思議そうに眺める。

「ライト君は本当に変わったお子さんですねぇ」

「えッ!?そ、そうですか!?」

「ええ、翼竜を見ると怖がるお子さんの方が多いんですよー。もちろんライト君のように喜ぶお子さんもいるにはいますが、やはり少数ですねー」

「えー、それは残念だなぁ。翼竜に乗って空を飛べるなんて、浪漫そのものなのにー」

自分が少数派であることを知り残念がるライトに、ナディアは微笑みながら話を続ける。

「公国直属の竜騎士団になら、憧れるお子さんも多いんですけどねぇ」

「竜騎士団の竜とここにいる翼竜って、何が違うんですか?」

そう、このアクシーディア公国にも公国直属の騎士団というものが存在する。

それは近衛騎士団だったり、宮廷魔導師団だったり、様々な種類の軍団がある。その中でも花形でエリートとされるのが竜騎士団だ。

「竜騎士団が乗る竜は『飛竜』と呼ばれる大型種で、うちにいる翼竜は竜種の中では小型種です」

「翼竜は二脚二翼で体格は小さめですが、飛竜は四脚二翼で翼竜より一回りも二回りも身体が大きいんですよ」

「そしてここが一番の違いなんですが。飛竜は国が独占するもので、一般人が乗ったり飼育することは許可されないんです」

ここにいる翼竜達も人間に比べたらかなり大きいと思っていたが、飛竜ともなるとそれよりさらに上回る大きさらしい。脚も翼竜は二脚、飛竜は四脚と形態も異なる点があるようだ。

そして飛竜は国家が独占する生き物だという。翼竜以上に力を持つであろう飛竜を国家が独り占めするというのは、何ともずるい話に聞こえるが。反面当然というか致し方ないことでもある。

そもそも一個人に飛竜を扱えることなどまずないし、あったとしても過ぎた力を個人にそのまま持たせておくのはかなり危険なのだ。

もしその個人がならず者にでもなったら、それこそ反乱分子として暴れだしかねない。個人の資質によって国家の治安が大きく左右されるようなことがあってはならないのだ。

故に飛竜を国家直属とすることで、その手の不安要素を取り除いているのだろう。

「竜騎士団の飛竜、かぁ。いつか飛竜も見てみたいなぁ、平民でも見る機会とかあるんですか?」

「もちろんありますよ!『アクシーディア公国生誕祭』では、竜騎士団の飛行ショーが目玉企画として毎年大盛況ですしね!」

「アクシーディア公国生誕祭って、確か来週でしたっけ?」

「そうですそうです。1月17日がアクシーディア公国の建国記念日で、その前後の日と合わせて三日間は『アクシーディア公国生誕祭』という盛大なお祭りが開催されるんですー」

ライトもアクシーディア生誕祭のことは知っている。その三日間は祝祭日として、ラグーン学園も休みになるのだ。

ライト自身はこれまでずっとカタポレンの森で過ごしてきたので、ラグナロッツァで行われるという生誕祭は未経験で全く知らない。だが、イヴリンを始めとする同級生達から聞く話ではかなり大規模な祭りらしい。

まぁ確かに考えてみれば、三日に渡って開催される祭りだというのだから盛況な祭りなのだろう。

「ぼく、ラグナロッツァに住むようになったのは去年からなので、アクシーディア生誕祭はまだ一度も見たことがないんですよねぇ」

「まぁ、そうなんですか?でしたら今年から是非とも楽しんでくださいね!」

「はい!……ちなみに、さっきのお話にあった竜騎士団の飛行ショー?の他にも、何か見所とかあったりします?」

ライトはナディアにアクシーディア生誕祭の見所を尋ねてみた。この手の情報は、生粋の地元民に聞くのが一番確実にして間違いがないのだ。

「そうですねぇ……一番の目玉はやはり、建国記念日である1月17日に行われる竜騎士団の飛行ショーですねー。ですが17日には鷲獅子騎士団のショーや美姫揃いの踊り子達が舞い踊る華麗な舞台もあって、それらも大人気ですよ!」

「おおお……鷲獅子……踊り子……」

「あと、街中たくさんの屋台や露店が出ますから、それらを見て回るだけでも楽しめますよ!お店の数もすごく多いから、丸一日かけても見きれないくらいなんですよー」

「そんなにたくさんお店が出るんですね!」

「この期間は公国中の商売人が集まりますからねー。なんといっても建国を祝う日ですし」

竜騎士団だけでなく、鷲獅子騎士団や華麗な踊り子達がショーや舞台で活躍するという。しかもそれは全て建国記念日当日である1月17日に集中しているようだ。アクシーディア公国の建国記念日を全身全霊全力で祝おう!といる心意気がひしひしと感じられる豪華なプログラムだ。

ナディアの語る話を聞くだけでもワクワクしてくるライト。ライトが予想していたよりもはるかに賑やかな祭りのようだ。

「あ、ちなみに生誕祭の間はうちも『翼竜わくわくふれあい広場』として三日間ずっと無料開放してまして。最初は怖がって泣いたりおっかなびっくりしているお子さん達も、帰る頃にはおとなしくて可愛いうちの子達と仲良くなってメロメロになっちゃうんですよ!」

「ふれあい広場ですかぁ。すっごく楽しそうですね!」

「ええ、ライト君も是非遊びに来てくださいね!」

「はい!絶対に行きます!」

ナディアの魅惑の営業トークに、ライトはすっかり骨抜きのようだ。

数日後にはアクシーディア公国建国記念日、その建国を全力で祝う生誕祭が今から楽しみでしかたないライトだった。