軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第329話 破壊神の善意

午前中の始業式や冬休みの宿題の提出、新たなお知らせプリント類の配布等が滞りなく終わり、帰宅時間となった。

明日からは通常の授業時間となるが、三学期初日の今日は午前中で終わりだ。

お昼はラグナロッツァの家でラウルと食べるとして、さて午後は何しようかなー、とライトが考えながら教室を出ると、廊下でイグニスが待っていた。

「あっ、ライト!一昨日うちの店で話したこと、覚えてるか?」

「うん、覚えてるよ!ファングの斧職人のガラルドさんのところにいる、イグニス君のお父さんのスヴァロさんに手紙を届けるって話だよね?」

「ああ、覚えててくれてよかった!とーちゃんとかーちゃんへの手紙、ちゃんと書いて今日持ってきたんだ!」

イグニスが鞄から手紙を二通取り出して、ライトに差し出す。

二通ともかなり分厚くて、イグニスが一生懸命たくさん手紙を書いたであろうことがライトにも伝わる。

「ファングには来週の土曜日に行くことになったんだ。その時に、必ずイグニス君のお父さんに渡してくるからね!」

「よろしく頼むな!……でさ、報酬は何を出せばいいかな?」

「ん?報酬?何のこと?」

「じいちゃんが言ってたんだ。普通冒険者とかに手紙を届けてもらう場合には、お金とか報酬を出さなきゃいけないって」

確かに遠くの街にいる人に手紙を出す場合、冒険者ギルドでその街に行く予定の商隊や冒険者パーティーを募集して託すのがこのサイサクス世界での通常だ。もちろんそれなりの報酬も用意し支払わなければならない。

だが、ライトはまだ冒険者にもなっていない、ごくごく普通の少年である。他の冒険者のように、依頼として請け負って報酬を取る訳にはいかなかった。

「報酬なんて要らないよ。そんなの気にしなくていいよ」

「えっ、いいのか?」

「うん。だってぼく、まだ冒険者じゃないしね。それに、イグニス君はぼくの友達だもん。出かけるついでに手紙を届けるくらいで報酬なんか取らないよ」

「そ、そうか……ありがとう!」

ライトが報酬不要なことを伝えると、イグニスはしばし呆気にとられる。だが、ライトの『友達だから報酬なんていらない』とはっきり言い切った言葉に、だんだんと嬉しいような照れくさいような何とも面映い顔をした。

「よし、分かった!そしたらおいらもいつかライトのために、何かスゴい武器とか防具作ってやるからな!」

「……えっ!?イグニス君の作る武器!?」

「ああ!だってライトは将来冒険者になるんだろ?おいらもじいちゃんやとーちゃんの跡を継いで立派な鍛冶屋になるのが夢なんだ!」

「う、うん、それは立派なことだね」

「で、おいらが将来冒険者になるライトのために強くて頑丈な武器を作って、手紙を届けてくれた御礼として必ず渡すからな!」

「そそそそんな……ここここれくらいのこと、ききき気にしなくていいよ?」

「ライトは本当に気前が良くて優しいんだな……」

イグニスの微笑ましくも健気な恩返し発言に、突如ライトの顔が驚愕に染まり挙動不審になる。

そんなライトの様子を、イグニスはただ単に遠慮しているだけと思っているようだが、実は全く違う。ライトの挙動不審は、かつて彼から散々受けた被害の甚大さを思い出しての恐怖から来ていた。

そう、イグニスが鍛冶の 大鎚(ハンマー) を振るうと本来なら壊れないはずの聖剣や魔剣の類いまで壊してしまうことを、ライトは身に沁みて嫌というほど知っているのだ。

前世のゲームBCOで、貴重な武具を強化のためにイグニスに預けては散々散々壊されまくってきた。その字面以上に凶悪な悪夢がライトの中でまざまざと蘇る。

成功確率90%の武具強化を、一体どれほど失敗して無に帰されたことか。

そして失敗する度に『あー、その、何だ……次いくぞ、次!』とシレッと言い放ち、悪びれもしなければ懲りもしない様子のイグニスに何度殺意を抱いたことか。

貴様!よくも失敗確率10%をそこまで何度も引き当てやがるな!!お前、絶対分かっててわざとやってるだろ!?俺達 勇者候補生(ユーザー) に対する嫌がらせか!?嫌がらせなんだな!?

あああああッ、俺の皇竜剣返せええええッ!!

フラッシュバックのように蘇る悪夢により、ライトは本気で目眩がしてきた。

「でも、遠慮なんてしなくていいぜ!いつか必ずおいらが世界一の名剣打ちになって、ライトに世界一の剣を作ってみせるから!楽しみにしててくれよな!」

「い、いや、あの、もう、本当に、お気遣いなく……」

「じゃ、よろしく頼むな!手紙の返事ももらってきてくれよな!」

「イ、イグニス君、ま、待って……お願いだからホントに待って……ぁぅぅ……」

人差し指で鼻の頭を擦りながら、ニカッ!と眩しい笑顔でライトに頼みつつ校舎の玄関にタタッ、と走り去っていくイグニス。

そんな爽やかなイグニスとは真反対の、恐怖に怯え慄く顔面蒼白のライト。プルプルと小刻み震える右手をイグニスの背に向けて伸ばすも、その手は勢い良く走り去るイグニスには届かない。

『待て、待つんだ、イグニス!』

『君自身は知らんだろうが、君には生まれながらにして破壊神という恐ろしい 素質(せってい) が 創造神(うんえい) から与えられているんだ!』

『頼む、頼むから大鎚だけは持たないでくれぇぇぇぇ!』

そう声を大にして叫びたいが、上手く言葉が出てこない。もっとも、この場で本当にそれを口にして叫ぶ訳にもいかないが。

イグニスの善意からくる恩返しは、ライトにとっては兎にも角にも恐怖の破壊神顕現に他ならなかった。

ライトはその後、後から教室を出てきたイヴリン達に「ちょっと、ライト君、どうしたの!?」「すんげー顔色悪いよ!?」と発見されるまで、半分以上魂が抜けかけたまま立ち尽くしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「あーーー……ホンット、ひでぇ目に遭った……」

まだ若干クラクラする頭を軽く左右に振りながら、ライトはラグナロッツァの家の門を潜る。

あの後ライトの具合を心配したイヴリン達が、ハリエットの通学馬車にいっしょに乗せてもらうように提案したのだ。

もちろんハリエットも快く承諾し、先程までウォーベック家の馬車に乗って家まで送ってもらっていた。

「ハリエットさん、迷惑かけちゃってごめんね……」

「いいえ、そんなことはないですよ。我が家はライトさんのお家からも近いですし、帰る方向だって同じなんですから。どうぞお気になさらないでくださいね」

「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ……また今度何か御礼するからね」

「ふふふ、ライトさんは本当に律儀な方ですね」

馬車の中でハリエットとそんな会話をしながら、ラグナロッツァの家に帰ってきたライト。ハリエットとの和む会話のおかげで、気分的にもだいぶ良くなった気がする。

ラグナロッツァの屋敷の自室に戻ったライトは、制服を脱いで私服に着替えてからベッドの上にぽすん、と寝転んだ。

「さて、今日はこれから何しよう……自由時間が半日あるとはいえ、あまり遠出はしたくないなぁ」

「……とりあえず、こないだようやく進んだクエストイベントの最新ページを改めてよく見てみるか」

ライトはそう呟くと、マイページを開いてイベント欄のクエストイベントを選択、最新ページをチェックする。

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★小人族の危機に備えよ act.4【アンチドートキャンディ】を作ろう!★

〔アンチドートキャンディ 原材料〕

【31.毒茨の球根10個 報酬:スキル書【解体新書】 進捗度:0/10】

【32.濃縮イノセントポーション1個 報酬:グランドポーションレシピ 進捗度:0/1】

【33.黄大河の原水3個 報酬:エネルギードリンク1ダース 進捗度:0/3】

【34.濃縮セラフィックエーテル1個 報酬:コズミックエーテルレシピ 進捗度:0/1】

【35.紫のねばねば1個 報酬:解体千本刀 進捗度:0/1】

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「んー、この中ですぐにでも達成できそうなのは……濃縮二種に、紫のねばねばか」

「毒茨は確か、目覚めの湖の近くにあったよな。オーガのラキさん達が大珠奇魂の素材集めで毒茨の花粉を採取しているはずだし」

「そしたら今日は毒茨の球根採取に行くかなー。イードにもしばらく会ってないから、久しぶりに会いたいし」

「よし、昼ご飯食べた後に目覚めの湖に行こうっと!」

午後のお出かけ先が決まったライトは、昼食を摂るべく早速階下に下りていったのだった。