軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第326話 ウィカへの御礼

昼までツェリザークの雪やその他素材を採取しまくったライトとラウル。

黄泉路の池の周辺は、見事なまでに雪がごっそりと消えていた。

二人とも空間魔法陣やアイテムリュック持ちで、いくらでもアイテムを持ち運びできるとはいえ、さすがにそれは取り過ぎなんじゃないの?と疑われそうなレベルの消えっぷりだ。もしこのサイサクス世界に空中撮影マップがあったら、広大な雪原の中この周辺だけぽっかりと穴が開いたような有様になっていることだろう、

だがここは極寒の地ツェリザーク。氷の女王が御座す氷の洞窟のお膝元であることを忘れてはならない。

如何に今この瞬間珍しく地面が見えていようとも、季節は冬。ライト達が去ってから二日もすれば、また新たな雪にガッツリ覆われてすっかり元の景色に戻るのだ。

つまり、どれほどライト達が根こそぎ雪を採取しようとも、この地の冬将軍にとっては全く痛くも痒くもない些事なのである。

「はーーー、結構採ったね!」

「そうか? 俺はまだ採り足らんなぁ。あと五回はここに来てもいいくらいだ!」

「えッ、そんなにこのツェリザークの雪の味が気に入ったの!?」

「おう!しかも氷の洞窟に近くなるほど、雪に含まれる魔力も高くなるんだろ?だったらきっとその味わいも違うだろうからな、いろんな濃度の雪を集めてみたくなるってもんだ」

「ラウルって、ホントに料理のこととなるととんでもなく熱心だよねぇ……」

先程まで樹々の上を飛び回りながら、樹上の雪をどんどんと自分の空間魔法陣に放り込んでいたラウル。かなり動き回っただろうに、その作業が料理に繋がることだからか全くへばった様子がない。いや、それどころかむしろ上機嫌ですらある。

「でもまぁ、ツェリザークの雪ならいくらでも取り放題だし。冬真っ盛りの今が旬だからね、春になる前にまた二、三回くらい採りにこようか!」

「おおっ、本当か!?ライト、今日はここに連れてきてくれてありがとうな!また雪採りに来ようぜ!」

「う、うん、分かった。約束ね!」

雪に旬などというものがあるかどうかは定かではないが、季節的に言えば冬が雪のシーズンであることは間違いない。

ラウルはいつも自分の願いを叶えてくれるんだから、ぼくもラウルの願いに応えてあげたい。そんな気持ちでライトはまたツェリザークでの雪採りをする約束を交わす。

そしてライトの心遣いがラウルにも分かるのだろう、極上の笑顔ではしゃぎながらライトに礼を述べる。

「さ、じゃあラグナロッツァの家に帰ろうか。ウィカ、お願いできる?」

「うにゃぁーん」

「いつもありがとうね、ウィカ」

ライトは片手でウィカを抱っこしながらもう片方でラウルと手を繋ぎ、黄泉路の池にダイブした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ウィカの水中瞬間移動で、ラグナロッツァの屋敷に戻ってきたライトとラウル。

時刻はもう昼の十二時を回っているので、浴室から食堂に向かう二人と一匹。

「ウィカ、いつもありがとうね!」

「うなぁん♪」

「俺までツェリザークに連れてってもらって、本当にありがとうな」

「うにゃにゃーん♪」

ライトやラウルにお礼を言われたウィカ、いつものように目を細めてにこやかな笑顔で返事をする。それはまるで『これくらい大丈夫よー』『いつでも頼ってね』と言っているようだ。

「ウィカにも何か御礼ができればいいんだけどなぁ」

「うにゃ?」

「そうだなぁ、何か好物の食べ物でもあればいくらでも用意するんだがなぁ……ウィカって水の精霊なんだよな?」

「うん、そうだよ。……精霊って、そもそも何か食べるもんなのかな?」

「「……うーーーーーん……」」

「うにゃにゃ?」

一度でも訪れている水場さえあれば、いつでもどこでも移動してくれる水の精霊ウィカ。ライトやラウルは心優しいウィカの厚意に何らかの形で報いたいと思いつつ、さりとて精霊相手に何を礼として差し出せばいいのやらさっぱり分からない。

ウィカの愛らしい顔を眺めつつ、うんうんと唸る二人を不思議そうに眺めるウィカ。

そのうちにライトは、ふとこのウィカを孵化させた時のことを思い出す。

もともとこのウィカは水の精霊であると同時に、BCOゲームシステムにおける【使い魔の卵】に餌を与えて孵化させた、ライトの使い魔だ。餌は基本的に人族が食べるものなら何でも良くて、肉や魚、野菜や植物などを与えて卵を大きくしていく。

ウィカはライトにとって二番目の使い魔で、主に魚介類や水藻などを与えた結果生まれてきた。

水の精霊ということで、普段のウィカは目覚めの湖で過ごしている。多分食事を摂るにしても、孵化の際に与えた餌同様に目覚めの湖で捕れるものが主食となっているだろう。

ライトはラウルに向かって話し始めた。

「ウィカは普段目覚めの湖で過ごしてるから、もし何か食べるとしたら魚介類や水藻なんかが多いかも」

「魚介類や水藻類な、よし、俺の空間魔法陣からそこら辺を選んで出してみるか」

ライトの意図がきちんとラウルに伝わったようだ。

ラウルは空間魔法陣を開き、魚介類系の料理をテーブルの上にいくつか出してみた。サンマの焼き魚にパエリア、ぶり大根、帆立とツナの海藻サラダ、海鮮丼等々。

中には熱々の料理もあるので、小皿に取り分けてからウィカの前に並べて置いた。

ラウル特製料理の数々を目の前に並べられたウィカ、不思議そうに小首を傾げてから料理の匂いをスンスン、と嗅いでいる。

一通り匂いを嗅いだ後、一番初めに食べたのは帆立とツナの海藻サラダだった。

「食べてくれたね!やったぁ!」

「ああ、ウィカの口に合うといいがな」

「ラウルの料理だもん、大丈夫だよ!それにほら、見て、ウィカもどんどん食べてくれてるし!」

ウィカがご馳走を食べてことに大喜びするライトとラウル。

ウィカの方も、サラダに続き他の料理もどんどん食べ進めていき、全て完食してしまった。

「うなぁぁぁぁん♪」

満足そうに一鳴きしたウィカ、ラウルの肩にヒョイッ、と飛び乗り頬ずりした。きっとご馳走を出してくれたラウルに『ありがとう!』と礼を言っているのだろう。

「ラウル、懐かれたねぇ」

「お、おう……まぁ、悪い気はしねぇな」

『悪い気はしない』などと言いつつ、耳まで真っ赤になっているラウル。このようにダイレクトなボディタッチ付きの礼など言われ慣れてないので、照れまくっている。

しかもその相手はウィカ、幻獣カーバンクルのフォルにも負けぬ魅惑のつやもふボディだ。つやもふに弱いラウルなど、間違いなくイチコロKOである。

そんなイチコロKOされているラウルとウィカの仲睦まじい様子を、ライトはニコニコしながら見守っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて、と……」

ウィカを浴室の浴槽から目覚めの湖に送り出し、ひとまずカタポレンの森の家に戻ったライト。自室にて早速マイページを開く。

「念願のゴロ寝返上で素材採取してきたんだ、クエストイベントも進められるところは全部今日のうちにやっておかないとな」

「まずは28番目のクエスト報酬を受け取って……ポチッとなー」

「さ、6ページ目の最後の仕上げといきますか」

黄泉路の池の水3個の報酬、エネルギードリンク1ダースを受け取ったライトは、6ページ目の総仕上げである退魔の聖水の作成に取り掛かる。

手順は以前闘水を作成した時と同じだ。6ページ目のクエストで要求された原材料を全て混ぜ合わせて【遠心分離】をかければ出来上がる。

まずは紫牙蘭を二株取り出し、十枚分の花弁を用意する。黄泉路の池の水は、洗浄済みの空のポーション瓶三本に注ぐ。

緑のねばねばは、クエストクリアのために作成しておいたものを使う。これは以前スライム飼育場の直売店で購入した『緑のねばねばの源』を使用して戻したものだ。

その作り方は、小さじ1杯の粉末状の源を大きめのボウルに入れ、ポーション瓶一本分の水に浸す。

スプーンでかき混ぜながらしばらく練り練りと捏ねて、十分にねばねばしてきたらOKだ。

【遠心分離】スキルを発動し、目の前に現れた半透明の大きな器に用意した材料を全て投入する。

ライトの目線の高さにある『開始』というボタンを押し、8秒待てば遠心分離の完了である。

苔色に輝く有効成分部分を空のポーション瓶に収納し、残りの水分の方も空のポーション瓶に収納していく。全ての瓶に蓋をして、一連の作業は終了した。

ここでライトは念の為に苔色の液体の入った瓶を、先日入手したばかりの新スキル【詳細鑑定】で見てみることにした。

スキルを発動させて出てきた結果は、以下の通り。

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【退魔の聖水】

魔物を退ける効果のある、霊験あらたかな聖水。

これを建物の周囲や地面に撒くと、一定時間魔物を寄せ付けなくなる。

飲用不可。

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「よーし!これで退魔の聖水の完成でーーーッす!」

詳細鑑定で間違いなく退魔の聖水であることを確認したライト、両手を挙げて完成の勝鬨を上げた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「そしたら次は、久しぶりのクエスト最新ページチェックだー!」

クエストイベント6ページ目を完遂した勢いで、新しく開けるようになった最新7ページ目を早速開くライト。

7ページ目の各種お題は、次のようなものだった。

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★小人族の危機に備えよ act.4【アンチドートキャンディ】を作ろう!★

〔アンチドートキャンディ 原材料〕

【31.毒茨の球根10個 報酬:スキル書【解体新書】 進捗度:0/10】

【32.濃縮イノセントポーション1個 報酬:グランドポーションレシピ 進捗度:0/1】

【33.黄大河の原水3個 報酬:エネルギードリンク1ダース 進捗度:0/10】

【34.濃縮セラフィックエーテル1個 報酬:コズミックエーテルレシピ 進捗度:0/1】

【35.紫のねばねば1個 報酬:解体千本刀 進捗度:0/1】

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「ほーん、アンチドートキャンディか。これ、要は麻痺回復薬だったよな」

「んー、このサイサクス世界にも同じ効果のアイテムや魔法があるかどうかも分からんが……まぁそこら辺は後で調べればいいし、アイテムとして作れるなら作れるに越したこたないよね」

「よし、またクエストクリア目指して頑張ろう!」

ライトは必要になる素材や個数をメモに書き留め、次なるクエストへの意欲に燃えていた。