軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第324話 様々な報酬

「そうか、ペレ鍛冶屋でもファング行きを勧められたか」

「うん、レオ兄ちゃんのようにユリウスって職人さんの名前までは聞けなかったけどね」

「やっぱ武器防具に関しては職人の街一択ってことなんだな」

「そうみたいだねー」

「近いうちにファングに行くか」

カタポレンの森の家で、晩御飯を食べながら情報収集の成果を報告しあうライトとレオニス。

二人の情報は一致しており、ライト用のワンドを作るためにファング行きが確定したようだ。

ちなみにラグナロッツァにも武具を扱う職人がいない訳ではない。ヨンマルシェ市場の四つのエリアのうち、一つはペレ鍛冶屋他職人が集まり専門店街を構えている。

だが、それらの店の多くはペレのようにファングで修行を終えた者が店舗を構えているに過ぎない。

武具における真の超一流職人は、一生涯を通じて己の道を極めるためにファングで終生を過ごすのだという。

「でさ、レオ兄ちゃん。ファングって、アレだよね?」

「ああ、アレだな」

「てことはさ、やっぱ今回もまとめてアレをこなすの?」

「多分そうなるだろうな」

ライト達が『アレ』と言っているのは、例のラグナ教案件である。

ラグナ教ファング支部からも魔の者が出た。そのため、年の瀬のプロステス訪問同様にファングという街も調べなければならなかった。

「一応また明日、冒険者ギルドの総本部マスターにお伺いを立ててはくるがな。ま、十中八九は『ついでにまとめて調査してきてくれたまえ!』と言われるだろうさ」

「そっかー。じゃあぼくはレオ兄ちゃんがアレの調査している間、他の職人さんのお店とか見て回ってていい?」

「おう、そりゃいいが……ワンド以外にも何か見てみたい武具でもあんのか?」

ライトの要望に、レオニスが何事かと問いかける。

それに対しライトは、イグニスという同級生の子がペレ鍛冶屋の息子であること、そのイグニスの父親が鍛冶修行のためにファングに行っていること、ファングに行くなら父母への手紙を届けてほしいとイグニスに頼まれたことなどをレオニスに話して聞かせた。

「そうか、そういう話なら行っても構わんが。ただ、全く知らない街をライト一人で出歩かせるのはちと不安だな……そうだ、ラウルについてきてもらえ」

「ラウルに?んー、そうだねー、ラウルが大好きな包丁の職人さんもいるかもしれないねー」

「だろう?その話をすれば、ラウルも喜んでファング行きについてくるだろう」

ファングに包丁専門の職人がいるかどうかは分からない。だが

包丁も刃物であることには違いないのだから、立派な武器と言えなくもないだろう。

そうした観点から言えば、武具の聖地であるファングに包丁の職人がいる可能性もそれなりにあるはずだ。

「ぼくはもう明後日からラグーン学園の三学期が始まっちゃうから、ファングに行くのは土曜日にしてね」

「了解。つか、もう冬休み終わりか。早ぇなぁ」

「ホントだよ、冬休み終わるの早過ぎるよ……」

「今年の年末年始はとんでもねー忙しさだったしなぁ……」

「うん……」

ライトとレオニス、二人してほんのりと遠くを見つめる。

「じゃあ明日は冬休み最後の日か。ライトは何して過ごすんだ?」

「家でゴロゴロする!」

「おう、そうか……まぁそれもいいかもな」

ライトの『絶対に!何が何でも!ゴロ寝する!』という決意に満ち満ちた表情に、レオニスは苦笑しつつもそれもいいかと認める。ここ最近の多忙さを考えたら、学園が始まる前に一日くらいはのんびり過ごしてもいいだろう、とレオニスも思ったからだ。

「じゃあ俺はさっきも言った通り、明日はマスターパレンに会ってくる。お前は家でのんびりと留守番な」

「うん!レオ兄ちゃんも話し合い頑張ってきてね!」

「おう、でもまぁマスターパレン相手だと何だかんだ結局言いくるめられちまうんだがな」

正月三が日のお年賀の買い出しの際に、【Love the Palen】でマスターパレンと初めて会ったライト。

その風貌は全ての冒険者の頂点に立つ冒険者ギルド総本部マスターに相応しい、如何にも屈強かつ筋骨隆々な体躯がまず目につく。だがレオニスの話では、彼は体格が良いだけの人物ではなさそうだ。

でもまぁ、文武両道全てにおいて優秀な人でなければ冒険者ギルドの総本部マスターなんて大役は務まらないだろうな、とライトは内心思う。

明日はもう絶対にゴロゴロ過ごす予定だからレオ兄ちゃんにはついていかないけど、そのうちマスターパレンにも個人的に会いに行きたいなー、と思うライトだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌日の朝。

カタポレンの森の家で朝食を食べた後、冒険者ギルドに出かけるレオニスを見送ってからライトは自室に向かう。

ベッドの上で大の字になりながら、念願のゴロ寝を存分堪能する。

「はーーーッ!これよこれ!寝正月できなかった分、今日は思いっきりゴロゴロしまくるぞー!」

「あ、でもクエストイベントのチェックだけはしとこう。この程度、ベッドで寝ながら眺めてもいいもんね!」

ライトは良いこと思いついた!とばかりに、ベッドで寝転びながらマイページを開く。

マイページの中のイベント欄から【湖の畔に住む小人達の願いを叶えよ】を選択する。

====================

★小人族の危機に備えよ act.3【退魔の聖水】を作ろう!★

〔退魔の聖水 原材料〕

【26.紫牙蘭の花弁10個 報酬:スキル書【詳細鑑定】 進捗度:10/10】

【27.濃縮イノセントポーション1個 報酬:甚三紅色の香炉1個 進捗度:1/1】

【28.黄泉路の池の水3個 報酬:エネルギードリンク1ダース 進捗度:0/3】

【29.濃縮セラフィックエーテル1個 報酬:水縹色の香炉1個 進捗度:1/1】

【30.緑のねばねば1個 報酬:魔法のフラスコ1個 進捗度:1/1】

====================

28番目のクエスト以外は達成済みなので、まずは受け取れる報酬を全て受け取っていく。

それらの報酬も『詳細鑑定』に『魔法のフラスコ』等々、その名称だけで有用そうなことが分かるというものだ。

「何ナニ、スキル書【詳細鑑定】とな……まぁ開かなくてもその効果は丸わかりだけども」

「鑑定スキルが得られるのは嬉しいな!」

「どれどれ、早速スキル書を使用して読み込むか」

ライトはマイページ内のアイテム欄にある『【詳細鑑定】』をクリックし『使用する』を選択する。

ちなみにBCOでは、職業でスキルを得る以外にも冒険討伐やクエスト報酬などでスキル書を得ることができる。そしてそれらの書は全てアイテムとして分類される。

書物というくらいなら、読んで勉強するもんじゃないの?と思われがちだ。だがそこはゲームアイテムという性質およびゲームシステムとしての機能で、アイテムを使用することでスキルを取得する仕組みだ。

いわばパソコンソフトのインストールのようなものか。

スキル書を使用して得たスキル内容を把握するため、今度はスキル欄に移動する。

====================

【詳細鑑定】

アイテムや武器防具などの詳細なデータを鑑定する。

スキルレベルを上げることで、人物や建物、地名、魔法なども鑑定できるようになる。

使用SP:1 使用MP:10

====================

「おおお、これってなかなかにすごいスキルじゃね?」

「BCOでは見たことのないスキルだったけど、これも多分生産職用のスキルなんだろうな」

「そうとなれば、詳細鑑定のレベルもガンガン上げていかないとね!」

単なるアイテム鑑定に留まらず、スキルレベルが上がれば人物や地名なども鑑定で知ることができるようだ。

予想以上に使えそうなスキルだったことに、ライトは歓喜する。

「さて、次は『魔法のフラスコ』なるものだけど……これも魔法のスポイトの上位互換みたいなもんかな?」

ライトはアイテム欄から『魔法のフラスコ』を選択し、取り出してみる。

見た目はごく普通のフラスコにしか見えない。ライトは早速このフラスコを【詳細鑑定】で見てみることにした。

====================

【魔法のフラスコ】

中に入れたものを自動で撹拌、滅菌、保存する特殊なフラスコ。

金属や宝石などの高硬度物質でも液化することができる。

常に滅菌作用が働くので、中身が腐敗する心配が一切ない。

時間停止機能付き保存容器である。

使用SP:1 使用MP:20

====================

「おおお……これも何だか面白いというか、結構使えそうなアイテムだな」

「入れっぱなしでいいってところが特にいいな!」

自動撹拌、滅菌、そのまま保存。こちらも如何にも生産職専用アイテムといった内容である。

フラスコというアイテムの構造上、大きなものをそのまま入れられないだろうが、細かく砕くことができるものならば投入も可能だろう。

しかも金属や宝石まで液化可能とは、何気にすごい代物ではなかろうか。使い方次第で活用法は無限に広がりそうだ。

「さて、残すアイテムは甚三紅色の香炉と水縹色の香炉だが……うーーーん、香炉とかどうすべ」

ライトはアイテム欄の中の『甚三紅色の香炉』と『水縹色の香炉』という文字を眺めながら、うんうん唸っていた。

BCO世界の香炉とは、早い話が『魔物を出現させるアイテム』である。言うなれば『アラジンの魔法のランプ』のようなもので、それの魔物召喚アイテムと考えていい。

香炉の色によって出てくるモンスターは決まっており、香炉をアイテムとして使用すると特定のモンスターが現れて召喚者と戦闘するのだ。

何のためにそんなものが必要なのか?というと、クエストイベントなどで『○○を倒せ!』というお題がしばしば出てくることがある。この○○とは、冒険フィールドで極稀に見つけることのできる中ボスのレアモンスターを指す。

そして、レアモンスターというだけあってエンカウント率がかなり低いが、倒すと有用なスキルを落とすこともある。

故にBCOの 勇者候補生(ユーザー) 達は、レアモンスターのスキル目当てに召喚したりイベントを早く進めるために香炉を使うのである。

ちなみに以前クレアがツェリザーク近郊で遭遇し、その場で倒した『邪龍の残穢』、あれもレアモンスターであり特定の色の香炉で呼び出せる。

「まぁ、今すぐ香炉を使う必要なんてないしな……そのままアイテム欄に入れとけばいいか」

「つか、甚三紅色と水縹色の香炉って何が出たっけ?」

ライトが該当アイテムをタップし、詳細をチェックする。

====================

【甚三紅色の香炉】

【???】甚三紅色をした、古びた香炉。

この香を焚くと、特定の魔物を呼び寄せると言われる。

====================

【水縹色の香炉】

【???】水縹色をした、古びた香炉。

この香炉を焚くと、特定の魔物を呼び寄せると言われる。

====================

「あッ!香炉って中身の詳細一切書いてないんだった……そんなん忘れてたよ、チクショー!」

ライトがのけぞりながら、ベッドの上でジタバタともんどり打つ。

そう、サイサクス世界を創り給うた 創造神(うんえい) は基本的に 仔羊(ユーザー) に対して優しくないのだ。

こんな異世界に来てまで、あの企業の手抜きや不親切さを目の当たりにしようとは……思わぬ事態にライトは歯ぎしりする。

「ああああ、香炉の色に対応する出現モンスターなんてもう全然覚えてねぇよ、あれ二十種類以上あったし……」

「でもなー、確かここら辺て禍精霊のどれかあたりだった気がするんだよなぁ」

「とはいえ、蓋を開けて見るまでは何が出てくるか分からん物騒なもんを今ここで開ける勇気はない……つか、そもそも今すぐ使う必要なんざ全くないしなぁ」

「……よし、香炉はしばらく封印ね!」

クエストイベントの報酬も、すぐに使える良いものもあればお蔵入りしそうなものがあることを、改めて思い出したライトだった。