軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第314話 ギルドマスターへの報告

「何ッ!?」

レオニスの衝撃的な報告に、パレンも驚きを隠せない。

その後レオニスは、教会堂で魔力を喰われる感覚に襲われたこと、そのもとを辿ると聖具室に行き着きその中に怪しい司教杖があったこと、そしてその司教杖を通して廃都の魔城の四帝の一角【賢帝】と会話をしたことなどを話していく。

「何と……ラグナ教プロステス支部の調査で、廃都の魔城の四帝【賢帝】などという大物が出てくるとは……」

「ああ、俺もびっくりしたぜ」

「で、その後司教杖が変貌した、と」

「ああ、これがその司教杖だ」

レオニスは空間魔法陣から黄金色に輝く司教杖を取り出して、テーブルの上に置いた。

「ふむ。これがその司教杖か……今は聖気に包まれた光の聖杖である、とエンディ大教皇は仰ったのだな?」

「ああ、当代の大教皇がそう断定した。この杖は初めて見た時には銀色で、宝玉の色もオレンジ色だったのは俺もこの目で直に見ている」

「ならばこれは間違いなく聖杖なのだろう。そして聖魔両面を併せ持つということから、これを聖遺物とお認めになったのだな」

光り輝く司教杖をその手に持ちながら、パレンが呟く。

パレンはラグナ教信徒ではないが、ラグナロッツァの神殿に祀られている大剣が聖遺物と言われる理由―――『光と闇を行き来する狭間の剣』という伝説を知っているようだ。

「で?ラグナ教としてはこの聖遺物である聖杖をどう扱うつもりなのだ?」

「レオニス君の空間魔法陣から出てきたということは、ラグナ教はその所有権を放棄した、ということかね?」

パレンがその糸目を鋭く光らせながら、レオニスに問うた。

さすがマスターパレン、糸目の付け所が違う。

「んー……いや、放棄というよりは黙認、かな」

「黙認、か?それは見て見ぬふりとか、知らぬ存ぜぬを通すということか?」

「ああ、そういうことになるな。もともと大教皇ですらこの司教杖の存在を全く知らなんだらしい。新しい聖遺物の発見を公にしたところで、今のラグナ教にはさらに混乱に拍車をかけることにしかならんだろう」

「そうか、それもそうだな」

「それに……これはあんたに言うべきかどうか、迷いに迷ったんだが……」

レオニスは、意を決してパレンに打ち明ける。

【賢帝】との会話で、司教杖を通行手形と言われたこと。そのことを受けて、大教皇やオラシオンもレオニスが司教杖を所持すべきだと強く主張したこと。

「もしオラシオンの推測通りなら、廃都の魔城の四帝を殲滅するためにも俺がこの杖を持っていなきゃならん」

「さらにはまだ他にも二つはあるであろう聖遺物を探し出して、神殿にある『深淵の魂喰い』も含めて全ての聖遺物を光属性に戻す必要もある」

「そして、これはマスターパレンにも伝わっているはずだが。廃都の魔城が世界中で魔力を搾取していることが分かり、その動力源を潰すためにフェネセンが旅に出ていることは知っているよな?」

レオニスがフェネセンの名を出し、パレンも彼の旅の目的を知っているかどうかを問うた。

「フェネセン師か……その話は以前クレア君から聞いたよ」

「廃都の魔城の殲滅のために世界中を旅して回ってるから、もしフェネセン師が冒険者ギルドに立ち寄った時には支援するように、と要請が来てな」

「もちろん私を含めて冒険者ギルドとして、総力を挙げてフェネセン師を支援するつもりだ。冒険者ギルド各支部にもそのように通達してある」

以前クレアがフェネセンの新たな旅の目的を知った際に、冒険者ギルドとしてフェネセンのサポートをするように上に掛け合っておく、と言っていたが。ちゃんとギルドマスターのパレンにも伝わっていたようだ。

パレンの力強い返答を聞き、レオニスも安堵したように頷く。

「そうか、それはありがたい。そして、ここからが本題なんだが」

「フェネセンが無限にも等しい廃都の魔城の魔力供給源を断ち、俺が光の聖遺物で四帝を討ち滅ぼせば―――」

「今度こそ、奴等の息の根を完全に止めることができるかもしれん」

「!!!!!」

レオニスの言葉に、パレンがその糸目を見開き驚愕する。

冒険者ギルドがこれまでに何度廃都の魔城へ討伐隊を派遣してきたことか。パレンがギルドマスターになる以前、現役冒険者だった頃にも何度か討伐隊に参加してはその都度殲滅してきた。

だが、廃都の魔城から溢れ出そうとする数多の魔物をどれほど殲滅しようと、幾許かの月日が経てばまたいつの間にか復活する。まさしく不死者の如き存在、それが廃都の魔城。

「それは……本当に可能なことなのかね!?」

「そりゃもちろんやってみないことには分からんさ。だが、奴等が何度でも復活するからくりが判明した以上、そのからくりを全て潰せば今までのように復活できなくなるだろう」

「……そうだな、理屈としてはそういうことになるな」

パレンが興奮気味にレオニスに問い質す。

パレンとしても、八年前に聖銀級を含む多数の有能な百人近い冒険者達を一挙に失うという煮え湯を飲まされた苦い経験がある。その時のことを思うと、今でもパレンの胸中には強い悔恨と憤りが猛烈に沸き起こる。

だが、そんな不死者の化身である不俱戴天の怨敵を今度こそ、完全に葬り去ることができるかもしれない。それはパレンにとって、いや、サイサクス大陸に生きる者全ての紛うことなき悲願である。

それが叶うかもしれない、と聞いて興奮するなという方が無理な話だ。

「だが、聖遺物に関しては謎も多い。どうやって聖遺物を光属性に変えるか、その方法も全く分かっていないし」

「確かにな。神殿の大剣もあの魔剣状態が百年以上は続いているはずだ」

「まずは聖遺物を発見して確保することを目指そうと考えている」

「ならば残りの支部の調査を急ぐべきだな。エンデアンとファングにも早めに調査に向かってくれたまえ」

「そのことなんだが。俺ももうちょい装備を整えてから調査に挑みたいから、少し時間をくれ」

調査を急かすパレンに、レオニスが待ったをかける。

レオニスの意外な返答に、パレンは不思議そうな顔で問うた。

「ンフォ?何か問題でもあるのかね?」

「ああ、今後も新たな聖遺物が出てくることを想定して、その対策を練ってから行きたいんだ。何しろ聖遺物は俺の魔力を喰いやがる。神殿の大剣もそうだったが、この司教杖にもだいぶ喰われてな。俺も毎回毎度聖遺物に魔力を喰われてばかりじゃ敵わん」

「ふむ、それもそうだな。調査も大事だが、レオニス君の体調も万全でなければならないな」

レオニスの主張に対し、パレンは理解を示した。

「いいだろう、レオニス君の準備が整ってから調査再開するとしよう。レオニス君も万全の態勢になったらまた教えてくれたまえ」

「すまんがそうさせてもらう。俺の方もなるべく早めに準備を整える」

ラグナ教調査に関して一通りの報告を聞いたパレンは、椅子の背凭れにドカッと凭れながらふぅ、と一息ついた。

これで重要な話が終わったと思ったのだろう。だが、レオニスにはまだパレンに話しておかなければならないことがあった。

「で、マスターパレン。まだ話は終わっちゃいないんだが」

「ンフォ?まだ他にも何かあったかね?」

「プロステス領主の件」

「……あ」

「ぉぃぉぃ、忘れるとか酷ぇな。同じ日に行けって日程詰め込んだのはマスターパレン、あんたじゃねぇか」

「ぃゃぃゃすまん、聖遺物の話が強烈過ぎて思考が飛んでしまった」

「まぁいいけどよ、マスターパレンが驚くのも無理ねぇし」

パレンの表情からするに、本気で忘れていたようだ。

レオニスはため息をつきながら、プロステス領主邸での調査内容を報告する。

領主であるウォーベック一族は白で問題なさそうなこと、だが悪魔の痕跡はごく微量ながら領主邸内に残っていたこと、そしてラグナ教の神殿で悪魔を発見した頃と同じ時期に領主邸の筆頭執事とメイド長が不在になったことなど。

「ふむ……確かにその筆頭執事とメイド長は怪しいな。そもそも侯爵家に仕える重職の者が年末年始に長期不在など、よほどのことでもなければあり得ないことだ」

「俺もそう思うんだがな。不在ならすぐに害になることはなさそうだし、俺もこれからしばらくプロステスに何度か通うことになりそうだから、都度領主邸に出向いて様子を確認するつもりだ」

「ンフォ?レオニス君がプロステスに通う?」

「ああ。領主から炎の洞窟の調査依頼を受けてな」

話の流れで、アレクシスから直接請け負った炎の洞窟調査のこともパレンに明かすレオニス。

請け負った経緯や炎の洞窟の現状を話して聞かせると、パレンもしばらく考え込んでいた。

「確かにここ近年、プロステスの夏の暑さはかなり異常だと聞いている。冒険者ギルドのプロステス支部にも何度か炎の洞窟の調査依頼が来たことがあったが、どれも満足な調査ができずに終わった覚えがある」

「プロステスへの派遣はもう冬以外の季節は無理と判断し、近々白金級か聖銀級でパーティーを組ませて派遣する計画がプロステス支部の方であったはずだが……」

「そうか、プロステス領主自らがレオニス君に直接依頼を出したのか……」

パレンは顔を上げると、眩く輝く白い歯を見せながらニカッと笑う。

「レオニス君が引き受けてくれたのなら、もはや我等の出番はなかろう。頑張ってくれたまえ!」

「ああ、プロステス領主の了承が得られたら、マスターパレンにも調査結果を伝える」

「よろしく頼んだぞ!」

「ああ。すまんがマスターパレンも、ラグナ教の聖遺物の件とプロステスの炎の洞窟調査のことはくれぐれも内密に頼む」

「分かっている、それらについてはまだ不確定要素も多いからな。確たる展望が得られないうちは、ラグナ大公相手でも話すつもりは一切ない」

レオニスとパレン、どちらからともなく手を差し出し硬い握手を交わした。