軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第306話 新年の抱負

「皆、あけましておめでとう!今年もよろしくね!」

「あけおめことよろー。今年も頑張ろーぅ」

「コラッ!レオ兄ちゃん、新年初っ端の挨拶にそんなワケワカメな言葉で手抜きするんじゃありませんッ!やり直し!」

「ぐぬぅ……皆様、あけましておめでとうござります。本年も何卒よろしゅうお頼み申しますでござります」

「あけましておめでとう。俺の雇い主様のアクシーディア語は今年もおかしいようで何よりだ」

「えーと、あけまして、おめでとう、ございます?これがシンネンのガンタンに交わす挨拶なんですね!」

ラグナロッツァの屋敷で元日の朝を迎えた一同、広間にて顔を合わせて新年の挨拶を交わす。

だがしかし、その中で一番幼いはずのライトだけが真っ当な挨拶をし、それ以外の面々の挨拶が非常に怪しいというのはどういうことか。

マキシはまだ人里に来て半年未満で初めての正月を迎えるのだから致し方ないにしても、レオニスとラウルはいい年こいた大人なのだからもう少ししゃんとしてほしいものだ。

ここでライトが新年ならではの話題『今年の抱負』を皆に尋ねる。

「じゃあ、皆で今年の抱負を語りましょう!皆は今年どんなことをしたい?」

「んー、したいことかぁ……特に何も考えてなかったが、新年初日の元日に改めて何か目標を据えるのもいいかもしれんな」

「んじゃレオ兄ちゃんは考え中ってことで後回しね。ラウルは何かしたいことある?」

「そうだなぁ、俺はひたすら料理の道を極めるのみだが……オリハルコン製の包丁を手に入れたいな。前々から欲しかったんだが、今年の目標はその入手にするか」

「オリハルコン包丁とな……そらまた何とも贅沢な包丁になりそうだね……もし買うとしたら、いくらくらいになるのかなぁ?」

「まぁ普通の金物屋には売ってないからな。いくらあれば作れるか、今度ペレ鍛冶屋で聞いてみるわ」

特に考えてなかったレオニスは後回しにされ、ラウルはオリハルコン製の包丁が欲しいという。

貴重な金属として有名なオリハルコン。剣とか盾などの武器防具に用いるのが普通だが、料理用の包丁でオリハルコン製というのは聞いたことがない。

もし鍛冶屋でオーダーメイドで作るとしたら、一体いくらになるのだろう?全く想像もつかないが、絶対にお高い価格になるに違いない。

それでもまぁ『ヒヒイロカネ包丁欲しい!』と言い出さないだけマシというものか。

というか、値段以上にその性能が恐ろしいことになりそうだ。オリハルコン製なら、硬い食材どころか剣同様に鎧や盾でさえも切り裂いてしまうだろう。もしかしたら某斬鉄剣や聖剣並みの威力を誇るかもしれない。

とはいえ、切れ味抜群の包丁は料理人にとって必須アイテムであることはライトにも理解できる故に、ラウルの目標が叶うといいな、と願う他ない。

「うん、まずはペレ鍛冶屋で参考価格聞いてからだねー。はい、次、マキシ君!マキシ君は今年何かしたいことはある?」

「僕ですか?えーと、人里に来てまたまだ日も浅いので、勉強して覚えなきゃならないことがたくさんあって……あっ、でも、先日里帰りの際に買ったお土産のアクセサリー類。ぼくもああいう綺麗なものを作れたらいいな、と思いました!」

「見たり買ったりする側じゃなくて、作る側になりたいってこと?」

「はい!僕にできるかどうか分かりませんが、ラウルが美味しい料理を作るように、僕も何かを作り出せるようになりたいんです」

「目標を持つことはとても良いことだと思うよ!ぼくにも手伝えることがあったら、遠慮なく言ってね!」

「はい、よろしくお願いします!」

光り物が大好きな八咫烏のマキシ、宝石やアクセサリーを見るだけではなく作り手になりたいらしい。

マキシの手の器用さがどれくらいのものかは分からないが、まずは自分が興味を持てるものに目を向けるのは良い着眼点かもしれない。

「じゃあ、次はぼくの抱負ね!ぼくねぇ、たくさんやりたいことあるんだよね!」

「ラグーン学園の友達ももっとたくさん増やしたいし、学園で本をたくさん読みたいし、勉強も頑張りたいし」

「学園以外だって、したいことはたくさんあるよ!アイギスに納める紐作りももっと上手になりたいし、土日はカタポレンの森のを探検してもっと知りたいし」

「あ、パイア肉やお餅もたくさん食べて早く大きくなりたいな!冒険者は身体が資本、だもんね!ラウルの美味しい料理をたくさん食べて、一日でも早くレオ兄ちゃんといっしょに冒険しに行くんだ!!」

「……あーーーッ、やりたいことたくさんあり過ぎて困るぅー!!」

思いつくままやりたいことを列挙していったライト。自分でも思っていた以上にあれこれとあり過ぎて、思わず頭を抱えて天を仰いでいる。

未来ある子供ならではの姿に、他の三人は笑いながら眺めている。

「じゃあ俺のしたいことも決まったな」

「ん?レオ兄ちゃんの抱負も決まったの?」

「ああ。俺はお前がしたいことをサポートする。それが今俺が一番したいことだ」

「えー、そんなんでいいの?自分のためになることじゃなくて?」

「いやいや、これだって十分俺のためになることだぞ?だってライトがしたいことをどんどん叶えていけば、大きくなってすぐに俺と冒険しに行けるだろ?」

「……そうだね!レオ兄ちゃん、 頭(あッたま) いーい!」

「え?そ、そうか?頭いいなんて、俺初めて言われた……」

ライトからの思わぬ褒め言葉に、何やら照れるレオニス。

そう、レオニスは普段から脳筋脳筋言われていることもあり『頭が良い』といった類いの頭脳系への褒め言葉には基本無縁なのだ。

いや、レオニスとて決して頭が悪い訳ではない。それなりに知識は蓄えているし、特に地理や魔物の情報など冒険者稼業に関わることはかなり博識だ。

だが、それが霞んでしまうほどの脳筋っぷりなだけである。

「じゃあ今年も皆で頑張って、良い年にしましょー!」

「「「おーーー!」」」

ラグナロッツァのレオニス邸は、新年初日の朝から賑やかだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「で、今日というかこれから三が日はどうするの?皆どこか出かける予定とかあるの?」

「あー、俺は毎年市場の初売りで買い出しに出かけるぜ」

「初売りかー、何かいいものある?」

「福袋を売っている店もあるが、俺はそういうのはあまり買わんなぁ」

「福袋……うん、福袋ってのは別名『鬱袋』とも言うしね……」

「鬱袋……すんげー嫌な響きだな、今後も買わずに通り過ぎよう」

「うん、その方がいいよ」

お昼はラウル特製お節料理を食べながら、今度は三が日の予定を皆に尋ねるライト。

ラウルの市場の初売りに行くという話の流れの中に『福袋』という単語が出てきて、微妙な顔になるライト。何やら前世での福袋の苦い記憶を思い出したようだ。

『前世では母さんが毎年必ずデパートの福袋を買っていたが……微妙なセンスのものしか入ってなかったなぁ。その微妙なセンスが大好物な母さんには問題なかったが』

『でもって、BCOでも課金通貨の福袋を売っていたが……どれもこれも全部ゴミだったな。1000CPも出して髪型チェンジチケットだの攻撃力低い限定武器だののゴミを掴まされるとか、鬱袋以外の何物でもなかったわ!』

かつての苦々しい経験を思い出し、思わず渋い顔になるライト。

そう、福袋で本当に良いアイテムが入っている訳がないのだ。本当に良い品ならば、何も福袋に入れて投げ売りせずとも普通に売れるのだから。

だが、新年早々そんな嫌な思い出で苦虫を噛み潰すこともない、さっさと忘れよう!と気を取り直してレオニスの方に向くライト。

「レオ兄ちゃんはお仕事あるの?」

「仕事に関しては、緊急事態でも起きない限りは普通に休みだ。さすがに冒険者連中も、三が日くらいは呑んだくれたりバカ騒ぎして羽を伸ばしてるしな」

「そうなんだね。冒険者ギルドもお休みしてるの?」

「いや、冒険者ギルドは一年365日24時間営業してるぞ。万が一何か事件が起きた時、冒険者ギルドは休みだから対応できませーん!なんて言い訳できんからな」

「ああ、やっぱりそういうものなんだ……冒険者ギルドの運営側って本当に大変なんだね」

レオニスの言う通り、冒険者ギルドに休日はない。深夜などでも建物の正面玄関こそ閉まっているが、当直制で誰かしらいて裏口から入って連絡することができる。

冒険者ギルド以外にも警護隊や騎士団など治安維持のための団体はいくつかあるが、それでも冒険者ギルドが担う役割は大きい。

前世で言うところの警察や消防署みたいなもんなんだろうな、とライトは内心思う。

「そしたらぼく、明日か明後日に新年の挨拶も兼ねてクレアさん達に差し入れしに行こうかな」

「お、それ多分っつか絶対にクレアも喜ぶと思うぞ」

「だといいな。何を差し入れするか、今から考えておかないとなー」

「いくつも回るのか?」

「んー、とりあえずディーノ村のクレアさんとラグナロッツァのクレナさん?この二人にはいつもお世話になってるから、この二ヶ所は行くよー」

そう、他にもクレア姉妹の勤める冒険者ギルド支部はいくつもあるが、ライトがいつも世話になっているのは主にこの二ヶ所である。

「そうか、俺からもよろしく言ってたってクレア達に言っといてくれな」

「ン?何言ってんの?レオ兄ちゃんもいっしょに行くんですよ?」

「え?俺も行くの?」

「当ったり前でしょ?レオ兄ちゃんはぼく以上に冒険者ギルドのお世話になってるじゃん」

「うぐっ……そりゃ確かにそうなんだが……」

冒険者ギルドに新年の挨拶などしに行くつもりは全くなかったレオニス、ライトにともに行くことを宣言されてしまう。

だがライトの指摘通り、常に冒険者ギルドの世話になっているのはライトではなくレオニスの方なのだ。

もちろん世話になるばかりではなく、冒険者ギルドにとってもレオニスの戦力は貴重で手放せないのだから、そこは上下関係ではなくほぼ対等なのだが。いや、魔石供給者という立場を加味すればむしろレオニスの方が貢献度は高いかもしれない。

しかし、いくらレオニスが強くて基本単独行動で何でもできると言っても、いち冒険者であることに変わりはない。やはり冒険者というものは、冒険者ギルドあってこその存在なのだ。

「日頃お世話になってる人達に、新年の挨拶するのは人として当然のことです。レオ兄ちゃんもぼくといっしょに挨拶回りするんですよ?いいですね?」

「はい……」

「あ、そしたらアイギスにも行こう!去年はカイさん達にも散々お世話になったもんね!」

「はいぃ……」

「人間相手ばかりじゃなくて、イードやアル達にも会いたいな!そっちは新年の挨拶じゃなくてもいいけど、冬休みの間に一度は会いに行きたいな!」

「今年は一段と忙しい正月になりそうだな……まぁでもそれもいいか」

敬語混じりになった時のライトは怖ぇ……と思いつつ、こんな賑やかで忙しい正月もいいか、と内心思うレオニスだった。