軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第241話 暴走機関車の如き何か

翌日の日曜日。

ライトはレオニスとともに、朝から素材採取の準備に勤しんでいた。

何の素材採取か?と問われれば、もちろんそれはオーガの里に新たな結界を作るために必要な『大珠奇魂』のための素材だ。

先日の三種族会談の際に、素材採取担当は次のように振り分ける話し合いがなされていた。

……

………

「サファイアは幻の鉱山で得たものを俺が出せばいいとして。他の素材を手分けして集めないとな」

「高原小鬼の牙と毒茨の花粉、これは我らオーガが集めよう。蒼原蜂の前翅と狗狼の牙はレオニス、頼めるか?」

「了解。狗狼の生息地は氷の洞窟よりもうちょいこっち寄りだが、オーガ達が行き来するにはちと遠過ぎてキツいだろうからな。蒼原蜂の前翅も、ガタイの良いオーガ達じゃ毟るのにも苦労するだろうし」

「すまんな、レオニス。よろしく頼む」

………

……

オーガの里の襲撃事件の後、ナヌス族の協力で結界を張ることが決まったのはいいものの。フェネセンの未到着やラグナ教の悪魔事件等、様々な出来事が重なりなかなか素材採取に着手できずにいた。

今日の素材採取は、ようやくその役割を果たすためのものなのだ。

ちなみにライトの同行については、レオニスは最初は渋っていた。魔物相手の仕事なので、ライトに危険が及ぶかもしれないからだ。

だが、ライトもおとなしく引っ込んではいられない。

「ぼくも行きたい!結界作りの手伝いをしたいんだ!」

「それに、立派な冒険者になるための勉強にもなるし!」

「何よりレオ兄ちゃんの傍にいれば安全でしょ?レオ兄ちゃんがそこら辺の魔物に手こずる訳ないし」

そこまで熱心に食い下がられては、レオニスも折れるしかなかった。実際今日行く予定の場所には、遭遇したらマズいような強力な魔物は生息していない、という好条件もあっての判断でもある。

ただし、絶対にレオニスの傍を離れないこと、勝手にあちこち動き回らないこと、この二点を厳守することを条件とした。

出かける前に、レオニスが地図を開き改めて場所を確認する。

「蒼原蜂は朝靄の草原に生息している。朝靄の草原ってのは目覚めの湖を真南に10kmほど下ったところにある」

「まず目覚めの湖に行って、そこから南に移動すればいいんだよね?」

「そうだ。そしたら目覚めの湖に行きついでに、先にオーガの里にも寄っていくか。オーガ達の素材採取がどれくらい進んでいるかも確認したいしな」

「了解ー」

二人は支度を整えると、早速目覚めの湖に向かって出発した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「よう、ラキ。あれから里の様子はどうだ?」

「おお、レオニスか。おかげで復興は順調に進んでいる」

「そうか、そりゃ何よりだ」

オーガの里に入ってから、真っ先にラキの家に向かったレオニス。

ちなみにライトは別の部屋でラキの子供達と遊んでいる。遊ぶといっても初対面なので、自己紹介したりお互いの家族自慢の話など当たり障りのない会話が主なのだが。

「ところで例の素材集めの方はどうだ?」

「ああ、高原小鬼の牙と毒茨の花粉は順調に集めている。だが、牙はともかく花粉の方は鮮度が落ちやしないか、そこだけが心配でな」

「ああ、そういやそうだな……植物系の素材は鮮度の問題もあるな」

「一応瓶に満杯に入れて密閉してはいるんだがな……」

確かに植物系の素材には鮮度という問題がある。花弁や茎などに比べたら、花粉の鮮度なんてあってないようなものかもしれないが、それでも普通に考えれば採取後の鮮度が保たれる方が良いに決まっている。

「よし、そしたら今ある分は俺が預かって空間魔法陣に入れておこう。そうすりゃ鮮度の問題は心配なくなる」

「そうだな、そうしてもらう方が良さそうだ。ただ、そうなると……毎回レオニスに預かってもらうために、こちらに来てもらわなくてはならなくなるが……」

「あー、そしたら当分は保存面で問題のない高原小鬼の牙だけ先に集めといてくれ。次にここに来る時にアイテムバッグ持ってくるわ」

レオニスの提案に、ラキは不思議そうな顔つきで尋ねる。

「アイテムバッグ?何だ、それは?」

「空間魔法陣のついた袋だと思ってくれりゃいい。それをラキ、お前個人に貸すから集めた素材はそこに入れるようにしてくれ」

「何と……お前がいつも使っている空間魔法陣、それがついている袋とは……そんな素晴らしいものがあるのか」

「最近作ったばかりだがな。だからそれは譲渡する訳にはいかん、あくまで結界を作り終えるまでの貸し出しだ。すまんな」

「いや、それだけで十分だ」

ラキがアイテムバッグの詳細を知り、感心したように呟く。

そう、オーガ族は魔法全般が不得手なのだ。故に空間魔法陣も使いこなせるはずもない。

だが、空間魔法陣の効果を持つアイテムバッグがあれば、集めた素材の鮮度を保てて収納場所を気にする必要もない。

レオニスもラキという個人を信用して貸し出しを決断したのだ。

「レオニス、お前の方の素材集めはどうだ?」

「ああ、俺の方は別件のゴタゴタが起こっててな、申し訳ないことに今日ようやく採取開始だ」

「そうか……お前も多忙だろうに、我等のためにいつもすまない」

「気にするな、ライトといっしょに今日ガッツリ採っていく予定だしな!」

「我等も負けてはおられんな。まずは言われた通りに高原小鬼の牙の方を揃えておこう」

「おう、よろしく頼むぜ」

「何、我等の里のためだ、我等自身が努力せずにどうする」

「そうだなwww」

「そうだぞwww」

「「ワーッハッハッハッハ!!」」

レオニスとラキ、二人の会話はよほどの緊急事態でもない限り、大抵は豪快な高笑いで締め括られる。

大体の話を終えた二人は、ライトのいる子供部屋に向かう。

子供部屋の扉を開けると、そこには色とりどりのドリンク類に囲まれたライト達がいた。

「あっ、レオ兄ちゃん、お話はもう終わったの?」

「ああ、だからそろそろ素材採取しに行くぞ。……って、お前達は一体何してたんだ?」

「ぬるぬるドリンクの飲み比べ大会だよ!」

「レオちゃん、この黄色酸っぱーい!」

長女のルゥが目を >< にしながら、黄色のぬるぬるドリンクのレモン味の強烈な酸味に悶絶している。

「おう、そいつは罰ゲームのドリンクに使われることもあるくらいだからな。肌や美容には良い効果があるらしいが」

「そうなのッ!?ならルゥも毎日飲まなくちゃ!ライト君、また今度黄色のドリンクたくさん持ってきてね!」

「う、うん、また今度来た時に渡せるように用意しとくね」

『肌や美容には良い』、この言葉を聞いてルゥが目の色変えてライトに迫る。

美容に関する情報に鋭く反応するあたり、小さくても女の子なんだなぁ、とライトは微笑ましく眺めている。

ンッキャー!という小さな悲鳴とともに、口を * にしながらも黄色のぬるぬるドリンクを飲むルゥ。その傍らで、ルゥの弟の長男レンがブドウ味の紫のぬるぬるドリンクを美味しそうにちびちびと飲んで味わっている。

オーガの里で起きた、単眼蝙蝠襲撃事件に屍鬼化の呪い事件。

そんな凶事がつい先日起きたことなど、まるで嘘だったかのような平和な光景。

だが、それらの出来事は決して嘘や 夢幻(ゆめまぼろし) などではない。本当にラキ達の身に起きたことなのだ。

この平和で穏やかな日常を壊さないためにも、結界作りは何としても成功させねば―――

キャッキャと仲良くはしゃぐ子供達の姿を見ながら、レオニスとラキは改めて思いを強くした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さーて、そんじゃ素材集めに取り掛かりますか」

「了解ー」

オーガの里を出たライトとレオニス。目的地である朝靄の草原に向かう。

二人とも日々カタポレンの森の中を走り回っているため、足の速さは健脚どころのレベルではない。しかも二人とも、身体強化魔法が付与された魔導具や装備品をこれでもか!というほど身につけている。

そんな猛者達が、カタポレンの森の外で何遮るものもない平坦な場所を走ればどうなるか。その答えは

『暴走列車の如き何かが、砂塵をたなびかせつつ襲い来る魔物をいとも簡単に弾き返し蹴散らしまくる』

である。

ちなみにライトはレオニスの少し後ろを走り、レオニスが蹴散らした雑魚魔物達をアイテムリュックに収納しながら走っている。

どんな魔物も、大抵は何かしらの素材がひとつふたつは採れるもんだからね。それを捨て置くなんてもったいない!クエストイベントでこれから先、どんな素材を要求されるか分かんないし。採れるものは今のうちに何でも集めておかねばならんのだ!という、ライトの密かな思惑込みの収集作業である。

グラスセンティピードやメドウウィング等々、ライトがかつてゲームとして遊んでいたブレイブクライムオンラインの懐かしの雑魚モンスターの面々。

これらが無謀にもレオニスに向かって襲いかかってくる。何と命知らずなことか。

とはいえ、それらの命知らずの突貫攻撃もレオニスの手刀ひとつで敢えなく撃沈という、何とも哀れな結末にしかならないのだが。

その哀れな結末を、今日はアイテムリュックを背中ではなく前面に抱えたライトがポイポイー、と器用に収納していく。それはまるで幻の鉱山での鉱物拾いの時のように、ひとつも余すことなく全てを拾い集めている。ライトの『もったいない精神』は、異世界に転生しても健在なのだ。

この日の収穫が、いつかまたクエストイベントなどで役に立つ日が来るのだろう。……多分。

こうしてライト達は順調に素材集めを進めていった。