軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第240話 お土産探し

その週の土曜日。

ライトは約束通り、八咫烏の里に帰る際のお土産をマキシとともに買いに出かけた。ラウルも護衛と称してついてきている。

「マキシ君、お土産は何がいいか考えておいてくれた?」

「えーと、それが……市場にどんなものがあるのか、僕よく分からなくて……」

「じゃあ、お土産になりそうなものがあるお店に入ってから考えよっか」

「はい!」

まだ人族の街に慣れていないマキシ。最近はラウルに連れられて市場を歩いたりしてはいるようだが、どんなものがいくらで売られているかもまだよく分からないのは致し方のないことだ。

「そういえば、カラスって光る物が大好きって聞くけど。マキシ君達もそうなの?」

「光る物、ですか?」

「そう、例えば宝石とかガラス玉とか、キラキラと光ったり輝いたりするもの」

「そうですね……嫌いじゃないとは思いますが、森の中ではそんなにキラキラ光る物ってなかなか見つけられないので……」

ライトが前世で知っていたカラスの習性を思い出して聞いてみるも、マキシはいまいちピンとこないらしい。

まぁ確かにマキシの言う通りで、魔の森カタポレンに人族が拵えたような宝石やガラス玉があるはずもない。人族の中ではキラキラと輝く宝石類とて、人の手で研磨してこそ煌めきを放つのであって、原石のままではただのくすんだ石に過ぎないのだから。

「じゃあ、マキシ君で試してみよっか」

「ん?僕で試すって、どういうことですか?」

「それはね、行ってみれば分かるよ!」

ライトに連れられるがまま、マキシとラウルも素直についていく。

ライトが向かった先は、アイギスであった。

「おお、アイギスか。ここなら確かに光る物とかたくさんありそうだ」

「でしょでしょ?ここには綺麗なアクセサリーもたくさんあるからね!お値段はちょっとアレだけど」

「……ライト君、大丈夫なんですか?僕、そんなお高いもの買えませんよ……?」

「大丈夫大丈夫!見るだけならタダだから!」

ライトは何事もないかのように明るく言い放つ。

本来なら王侯貴族御用達のアイギス相手に、ウィンドウショッピングなど恐れ多くて普通の神経なら到底できない芸当なのだが。

アイギスのオーナー三姉妹とライトは懇意な間柄なので許されるのだ。

「こんにちはー」

「いらっしゃいませー。……あらー、ライト君じゃない!今日はどうしたの?紐の納入日じゃないわよね?」

「はい、今日はちょっとだけ品物を見たくて来ましたー」

「そうなのね、好きなだけ見ていってね!……って、ラウルさんにマキシ君もいるのね、二人ともお久しぶり!」

ライト達を迎えたメイ、品物を見ることに快く応じてくれた。

それと同時に、ライトといっしょにラウルとマキシもいることに気づき、メイは明るく挨拶した。

「こんにちは。アイギスの美しき女神に再びお会いできて光栄です」

「やだー、もう、ラウルさんってば!その手でお作りになる極上スイーツと同じくらい甘い言葉をサラッとお言いになるのね!」

「…………」

「あら?マキシ君、どうしたの?」

ラウルが万能執事モードに突入し、優雅な仕草で礼をしながら貴婦人に対する美辞麗句をさらりと囁く。普通なら歯が浮いてしまいそうな台詞でも、黒髪巻き毛の美青年が言うと嫌味もなく自然に聞けてしまうから不思議なものだ。

その一方で、マキシは頬を赤らめながら興奮気味に店内をキョロキョロと見回している。どうやらキラキラと光り輝くアクセサリー等の陳列商品に、すっかり目を奪われているようだ。

「アイギスの皆さんの作る品って、とても綺麗で美しいものばかりですね!」

「僕、こんなに綺麗なアクセサリー初めて見ました!」

「こんな素敵なものを作れるなんて、すごい!僕、皆さんを尊敬します!」

特に宝石類のついたアクセサリー類を、それはもうキラキラとした瞳で眺め続けるマキシ。そのキラキラ度はもはや宝石類に負けないくらいである。

「マキシ君、やっぱり宝石とかキラキラ光る綺麗なもの好きなんだねー」

「うん、そうみたい……このお店にあるキラキラ輝くもの見てると、ものすごく楽しくてワクワクが止まらないんだ!」

「そっかー、そしたらお土産に何か買ってく?」

「えっ、でも僕……買えるようなお金持ってませんし……」

ライトからの突然の提案に、マキシは驚きつつも慌てて否定する。

確かにラウルのように働いてお給金を貰っている訳ではないマキシには、ライト以上に自由にできる人族用の貨幣など持っていなかった。

ましてやここは超一流ブランドアイギス、そんじょそこらで売っているようなちゃちな安物とは訳が違うのだ。

だが、ライトには何らかの秘策があるらしく、にっこりと笑いながらマキシに言った。

「それなら大丈夫!マキシ君でも……いや、マキシ君だからこそお金を稼げる方法があるよ!」

「メイさーん、ちょっといいですかー?」

そう言うと、ライトは接客業務担当のメイを呼んだ。

「ライト君、どうしたの?買い物のご相談?」

「ええ、実はちょっとご相談したいことがありまして。カイさんやセイさんにも聞いてもらった方がいいと思うので、奥でお話してもいいですか?」

「ええ、いいわよ。奥へどうぞ」

「じゃ、ぼくちょっと奥でカイさん達とお話してくるから、マキシ君はラウルといっしょにお店の中をのんびり見ててね!」

「あ、はい……」

ライトとメイが店の奥に引っ込んで行くのを、マキシは呆気にとられながら見送るしかなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「マキシ君、ラウル、お待たせー!」

ライト達が店の奥に行ってから、約10分後。

にこにこ笑顔のライトやメイだけでなく、奥で作業していたであろうカイやメイもともに出てきた。

ライト達が奥に行った後、言われた通りに店内の品々を眺めてはうっとりとしていたマキシ。人の気配にハッ!と我に返り、ライト達が来た方に身体を向き直した。

「マキシ君、こんにちは。お久しぶりね、その後体調は如何?」

「あっ、ありがとうございます!皆さんのおかげでもうすっかり良くなりました!」

「マキシ君、全快祝いの時にはラウルさんのお手伝いでとても忙しそうだったわよね!あの時はあまりお話できなくて、申し訳ないことをしてしまったわ」

「い、いいえ、そんな!あの日はぼくもとても楽しかったです!」

カイとセイが、それぞれにマキシに向かって声をかける。

最近はラウルに市場を連れ回されているせいか、以前よりは人見知りが緩和されたマキシ。それでもやはり、アイギス三姉妹のような美女達に囲まれるとそれなりに緊張してしまうらしい。

マキシのSOS視線を受けたライトは、カイに向かって話しかけた。

「カイさん、先程お話したことを今ここでマキシ君に説明してもいいですか?」

「ええ、いいわよ。ちょうど今は他のお客様もいないことだし」

カイの了承を得ると、ライトはマキシの方に身体を向き直した。

「あのね。ぼく、カイさん達に素材買い取りをお願いしたんだ」

「素材買い取り、ですか?」

「そう!マキシ君の羽根!大きさや色艶、保存状態にもよるけど、最低でも一枚につき10000Gで買い取ってくれるって!」

「「…………!!」」

当のマキシだけでなく、ラウルも大きく目を見開いた。二人とも、ライトの意図するところを瞬時に理解したようだ。

そう、マキシは八咫烏だ。その羽根は幸運の御守として書籍にも掲載されるくらいに、力のある素材として有名である。

そしてその羽根を御守としたラペルピンを、旅立つフェネセンとライトのお揃いでアイギス三姉妹が作成したことも記憶に新しい。

「先日ライト君とフェネセンへの贈り物のために使用したあの羽根。それはもう美しくて綺麗だったわ!」

「ええ、あの艶やかさは唯一無二と言っても過言ではないわ」

「しかもね、あの羽根はなかなか市場に出回らないものなのよ。それくらいにあれは貴重な品なの!」

アイギス三姉妹が、こぞって八咫烏の羽根を絶賛する。

確かに霊鳥である八咫烏の羽根など、そうそう簡単に出回るものではないだろう。

そもそもカタポレンの森の奥深くに住まう種族であり、人族がそう簡単に狩れる対象でもないのだ。

「そういう訳でね?マキシ君の羽根をアイギスで買い取ってもらえば、そのお金でマキシ君の好きなものを買えるってことなんだ」

「ええ、私達もあの素晴らしい羽根を手に入れられるなら、とっても嬉しいわ」

「そうそう、あの美しい羽根は高貴な装いに絶対にぴったりよ!」

「あ、でも安心してね?ライト君達に作ったラペルピンとは違うデザインにするから」

嬉しそうに話すライトとアイギス三姉妹。

そこにラウルも参戦する。

「マキシの羽根なら、10枚ほどとっといてあるぞ」

「「えッ、そうなの!?」」

「ああ。ライトに収集を頼まれた後、ずっと気をつけながら掃除してたからな」

「……ラウル、ありがとう!さすがはマキシ君の親友だね!」

「人族にとって、マキシの羽根は貴重な品なんだろ?だったら捨てるなんて勿体ないことせずに、ちゃんととっておくさ」

「……ラウル……」

ラウルがそんなことをしていたなんて、ライトもマキシも初耳である。

だが、魔物素材として貴重品であることを知ったラウルの行動は真っ当至極だ。ラウルはこのラグナロッツァに住んで早十年以上、人族の貨幣価値や金銭のあれこれもそれなりに熟知していたのである。

誰に何を言われずとも、マキシの羽根を大事にとっておいてくれたラウル。その適切な判断をライトは手放しで大絶賛し、マキシは感激のあまり言葉を失っていた。

「そしたらカイさん、また次に来た時にお約束の羽根を持ってくるので、今日はマキシ君の欲しいものを予約しておいてもいいですか?」

「ええ、もちろんいいわよ。好きなだけ選んでいってね」

「ありがとうございます!さ、マキシ君、お土産に何がいいか選ぼう!ラウルが10枚もとっておいてくれたなら、10万Gはお買い物できるよ!」

「おお、そりゃすげぇな!良かったなぁ、マキシ。10万Gもありゃ家族全員分の土産をここで買えるぞ?」

「……皆さん、僕のために……本当にありがとうございます」

涙ぐんでいたマキシの手をライトが取り、店の陳列棚の方に引っ張っていった。

ライトとマキシ、ラウルの男三人だけではセンス面で心もとないので、メイがアドバイザーとしてあれこれと説明しながらオススメの品をどんどん惜しげもなく見せていく。

カラスの大好物である光り物に囲まれたことも楽しかったが、それだけでなくライトやラウル、アイギス三姉妹、皆の思い遣りがとても嬉しいマキシだった。