軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第216話 一番のお手柄

その後四人は分かれて行動することにした。

ラキは議場に行って、自身の無事な姿を里の人達に見せることで皆を安心させる。

ニルは避難所に戻り、年寄り赤子を議場に連れて里の人達と合流する。

レオニスは屍鬼化の呪いを受けたラキと行動していたオーガを探し出して、念の為にエリクシルを一滴づつ飲ませる。

ライトは里のあちこちを回り、レオニスが撃ち落とした単眼蝙蝠の死骸を全てアイテムリュックに回収する。

各自それぞれの役割を果たしていった。

そしてそれらの作業が全て終わる頃には、だいぶ日が傾いてきていた。

「さ、もうだいぶ日も暮れてきたし、そろそろ俺達も家に帰るか」

「うん、そうだね」

「帰る前にラキとニル爺さんにだけでも挨拶しとくかー」

レオニスとライトも帰り支度を始める。オーガの人達はまだ議場にいるはずなので、二人して議場に向かった。

議場に到着し、扉をゆっくりと開けるレオニス。するとそこにはたくさんのオーガがいて、扉を開けたレオニスの方に一斉に視線が集まった。

一瞬の静寂の後、沸き立つような歓声とともにライトとレオニスはオーガの人達に一斉に取り囲まれた。

「おお!我が里をお救いくださった救世主達!」

「ありがとう!本当にありがとう!!」

「ライト君のおかげで怪我人もかなり良くなったわ!」

「目を負傷してた者も失明せずに済んだよ!」

「さすがは【角持たぬ鬼】、我等よりはるかに鬼しとるわい!」

「まっこと、名の内に鬼を抱えし『 冷鬼擂(レオニス) 』の名は伊達じゃないのぅ!」

数多の感謝の言葉の中に、不敬な単語がちらほらと混じる。不敬の主は年寄り達であろう。

そのうちにライトとレオニスを取り囲む輪が途切れ、ラキとニルが姿を現し二人のもとに近づいてきた。

二人づつで対面する格好となった、ライトとレオニスにラキとニル。

先に動いたのはラキとニルだった。

「里の者には先程事の顛末を大まかに話して聞かせた」

「お主達二人は、紛うことなき我等一族の大恩人じゃ」

「これほどの大恩、一生かかっても返しきれるものではないが。我等一族、いつか必ずこの大恩に報いてみせよう」

「レオニス、ライト。改めて礼を言わせてくれ。ありがとう」

ラキとニルが頭を下げると、他のオーガ達も一斉にライト達に向かって頭を下げた。

体躯の大きなオーガ達が、自分達よりもはるかに小柄な人族二人に対して一斉に頭を下げる。その図はまさに壮観としか言いようがなかった。

ライトが戸惑うようにレオニスの顔を見上げる。

レオニスはライトに向けて軽く微笑み、そしてオーガ達に向けて改めて語りかける。

「俺達は俺達のできることをしたまでだ」

「俺達はただの平凡な人族だが、同じカタポレンの森に住まう者同士。会話さえできれば種族を超えて手を取り合い、互いに認め合うことができると信じている」

「人族そのものは相変わらず愚かな点も多いが……それでも仲良くしてやってくれるとありがたい」

「俺達の方こそ、これからもよろしく頼む」

オーガ達に向けて頭を下げたレオニス。その姿を見たライトも、慌ててレオニス同様頭をペコリと下げた。

あちこちで「……平凡?」「あれが、か?」という疑惑の声が小声でひそひそと囁かれているが、多分気のせいだろう。キニシナイ!

「よせよ、レオニス。俺達はもうとっくに仲間じゃないか」

「そうだぞ。それにそこの養い子、ライトだったか?お前ももう俺達の立派な仲間だ」

「これからはいつでも気軽にこの里に遊びに来てくれ。いつだって歓迎する」

オーガの若者達が、レオニスとライトに次々と温かい言葉をかけてくれる。

そんな中、一人のオーガの少年がライト達のもとに近づいてきた。それは、オーガの里の危機を小人族ナヌスの里に伝えたジャンだった。

「…………」

しばし無言のまま、睨み合うように対峙するレオニスとジャン。

その無言の空気を破り、先に口を開いたのはレオニスだった。

「ジャン、オーガの中ではお前が一番のお手柄だな」

「……!!」

レオニスからの思いもよらぬ言葉に、ジャンの目は大きく見開かれる。

真剣な眼差しのまま、レオニスはジャンに向かって語り続ける。

「お前がナヌスにオーガの危機を知らせたからこそ、ウィカを通して俺達にも伝わったんだからな」

「お前がナヌスに伝えてくれなかったら、俺達はオーガの危機に駆けつけることはできなかっただろう」

「もしそうなっていたら、今頃この里はもっと酷いことになっていたはずだ」

「オーガ族の滅亡の危機を救うことができたのは、ジャン。お前の頑張りのおかげだ」

「お前のおかげで、俺はこの手で親友を殺さずに済んだ。本当にありがとう」

自分と同じくらいの背丈のレオニスから、深々と頭を下げられたジャン。

それまでずっと言葉が出なかったジャンだったが、レオニスに頭を下げられたことで途端に慌てだした。

「……!!そんなっ!お、俺の方こそあの時、あんな失礼なことを……」

「人族なんかにできる訳がないなんて言って……ごめん」

「俺達を助けてくれて、ありがとう」

最初の出会いこそ険悪だったが、最後にはこうして互いを認め合うことができたレオニスとジャン。

もっともレオニスの方はそこまで険悪だったつもりはなく、大人として子供を軽くあしらっていただけなのだが。

「お前も立派なオーガ族の男だ。これからもっと強くなって、里の皆を守れる頼もしい戦士になれよ」

「……ああ!これから絶対に、誰よりも強くなってみせる!!」

ジャンの胸を拳で軽く叩き、励ましの言葉を送るレオニス。

レオニスの言葉を受けたジャンも、胸を張るように大きな声でレオニスの激励に応える。

近い将来、オーガ族に頼もしい戦士が新たに増えることだろう。

「じゃ、しばらくは毎日俺が様子を見に顔を出すことにするが」

「もしまた何か異変が起きたら、ウィカチャに伝えてくれ。今日みたいな緊急事態なら、真夜中だろうと何だろうといつでも連絡してくれて構わん」

「このウィカチャはウィカって名前でな、目覚めの湖に住む水の精霊だ」

「ライトの友達だから、ウィカに伝えてくれればライトを通して俺にもすぐに伝わるって寸法だ」

「……あっ、ウィカさんや。その時はできればっつか絶対に、俺もライトと同時に連れてってね?今日みたいにライトだけ拉致るのは勘弁な?」

レオニスのご指名を受けたウィカ、ライトの肩に乗り目を細めながら「うなぁーん」とのんびりとした返事を返す。

そしてレオニスの方も、ウィカに『ライト単体拉致厳禁』の念押しをすることを忘れない。

その念押しにもウィカは糸目の笑顔で「うにゃっ」と返事をした。ウィカがレオニスのお願いをちゃんと理解しているかどうかは、もちろん定かではない。

「じゃ、またな!」

「ぼくもまた今度ゆっくり来ますね!さようなら!」

ライトとレオニスはオーガ族一同に見送られながら、オーガの里を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後二人はナヌスの里に一旦立ち寄った。

身の安全を考えてナヌスに置いてきたフォルを回収し、オーガ族の危機を知りそのままナヌスの里で待機しているヴィヒトを安心させてやらなければならないからだ。

ただしもうかなり日も暮れてきているため、あまり長居はできない。

ヴィヒトにはオーガの里の危機は去ったことだけ伝えて、詳しいことはまた明日ということにした。

ライトの姿を確認した途端、嬉しそうに駆け寄るフォル。それと入れ替えに、ウィカがライトの肩から下りて目覚めの湖に帰っていく。

今日のうちにやらなければならないこと全てを完了して、ライトとレオニスはようやくカタポレンの家に戻るのだった。