軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第204話 不穏な響き

その日もライトはナヌスの小人達と存分に交流を楽しんでから帰宅した。

特にクエスト10のお題『黄色のぬるぬる』の代用品である『黄色のぬるぬるドリンク』。

これを遊んだ後の飲み物として小人達とともに飲んだ時など、まさに最高傑作だった。

「うわっ、すんげー酸っぱぁーい!」

「こないだはオランの実の味の、甘酸っぱくて美味しい飲み物だったけど」

「今度のは酸っぱいねぇ、こりゃレイモンの実か!」

黄色のぬるぬるドリンクの、酸味とパンチの効いたレモン味。その衝撃の酸っぱさに、小人達は目をギュッと閉じ口をこれでもかというくらいすぼめる。

人族のライトにとってのレモン味は、ナヌス族にはレイモンの実というものと同等らしい。オレンジとオランの実同様、ほとんど同じ響きの名がついているというのもなかなかに面白い。

酸味が際立つレモン味は。子供達には大不評だった。だが、ライトの次の言葉で今度は大人達の食いつきがよくなる。

「まぁ確かにオレンジ味の橙よりは飲みにくいですけどね。この黄色のレモン味には、疲労回復や骨を丈夫にするなどの健康効果があるんですよー」

「何っ、疲労回復に効くのか!?」

「あらやだ、私最近疲れがなかなか取れないのよねぇ。私の身体にも効果あるかしら?」

「あ、レモンには美肌、肌を白く美しくする効果もあるんですよー」

話の流れでライトがレモンの美肌効果についても何気なく語った途端、小人達の中の大きなお姉さん達の目の色が瞬時にして激変した。

「何ですって!?肌を美しくすることができるのッ!?」

「何ソレ私肌荒れ酷いから絶対に必要じゃない!!」

「シミとかシワにも効くかもしれないってこと!?」

「「「ライト君!このレイモン味の何とかドリンク、ありったけ置いていってちょうだいッ!!」」」

小人マダムや小人マドモアゼルが、子供達ばりにライトによじ登る勢いで迫る。そのギラつく瞳とド迫力は、人族のマダム&マドモアゼルのそれとほぼ変わりない。というか、完全に同じである。

やはり世の女性の多くは美に対する意識を持っているんだなぁ、そしてそれは人間に限らず異種族でも同じなんだなぁ。女の人って大変だぁ……

ライトはギンギラギンに瞳を輝かせるナヌスの女性陣に迫られながら、つくづくそう感じていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さて、と……クエスト2ページ目の具合は……」

今日の出来事を振り返った後は、その成果の確認作業である。

ライトは早速マイページを開き、イベント欄のクエストイベントを閲覧する。

クエスト2ページ目のお題も、初日同様全て進捗度が満了になっていたので報酬受け取りボタンを押してクエスト6から10を完了させた。

そして新たに出てきたクエスト3ページ目は、次のような内容だった。

====================

★小人族の盟友を救え!★

【11.ポーション100個 報酬:10000G 進捗度:0/100】

【12.エーテル100個 報酬:10000G 進捗度:0/100】

【13.ハイポーション100個 報酬:50000G 進捗度:0/100】

【14.ハイエーテル100個 報酬:50000G 進捗度:0/100】

【15.水色のぬるぬる1個 報酬:シルバーダガー 進捗度:0/1】

====================

今までのように1個や10個という少量ではなく、今回は100個という大量の個数がお題になっている。

そしてラストのお題にぬるぬるが登場するのは、もはやお約束事だ。

「んー、ポーションエーテルハイポハイエ全部を100個づつ、かぁ……結構時間かかりそうだな」

「でもまぁ補充という形で何回かに分けて譲っていけば、そのうち到達するっしょ!」

「クエスト15の水色のぬるぬる、これも冒険者ギルドで購入しておかないとなー……あれ、ソーダ味だから割と人気出るかもしれないし、多めに用意しておこう」

人口200人程度の小人族の里で、4種類合計400個もの回復剤が果たして必要か?と問われれば、否と答えざるを得ない。

だが、一回で済ませようとせず複数回に分けて譲渡していけばいずれはクエストの要求値に届くだろう。

このイベントは幸いにしてゲームと違い、開始後100日までの期間限定という設定はないようなので日数や期限を気にする必要もない。

これまで通り、ナヌスの里の人達とのんびりとした交流を続けていけばいいだけである。

しかし、ライトにはひとつだけ気がかりなことがあった。

「この、ページタイトルにある『小人族の盟友を救え!』ってのは……どういうことだ?」

「小人族の盟友ってのは、オーガ族のこと、だよ、な?」

「しかも『救え』ってのが何とも不吉というか……何か事件でも起こるのか?」

クエストページに漂う不穏な響きを、ライトは目敏く察知する。

だが、現時点ではどういう意味なのか分かる由もない。

とりあえずいつでも回復剤4種計400個を出せるように、400個よりもかなり多めの数のそれらをアイテムリュックに詰め込んでおくことにした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌日の日曜日。

ライトはレオニスとともに、のんびりとした昼下がりを過ごしていた。

「レオ兄ちゃん、午後は何するー?」

「んー、そうだなー……フォルの好きな木の実やキノコを集めがてら、あちこち散策でもするか?」

「そうだねー、そろそろ木の実が旬の時期も終わりそうだから今のうちにもっと集めとこうか」

「よし、じゃあそれで決まりな」

「はーい」

昼食を食べながら、午後の予定を話し合うライトとレオニス。

木の実拾いとキノコ狩りと決まり、食べ終えた後は各自出かける支度を始める。

準備も整い、さぁぼちぼち出かけるかー、とライトが部屋を出ようとしたその時に異変は起きた。

「うなあああぁぁぁん!」

大きな鳴き声を上げながら、風呂場の方からウィカがライトのもとに駆け寄ってきたのだ。

「えっ、ちょ、ウィカ?」

「うにゃぁ、うにゃぁ、うにゃにゃにゃにゃ!!」

「どどどうしたの、ウィカ、そんなに慌てて。何かあったの?」

「うにゃにゃああぁぁん!!」

突然の騒ぎを聞きつけたレオニスが、ライトの部屋に入ってきた。

「何だかえらく騒がしいがどうした、何かあっt……」

「……おい、ライト。その黒猫は一体何だ?」

騒がしさの原因をライトから聞こうとしていたレオニス、ライトの足元で必死にライトのズボンを口に咥えて引っ張り続ける黒猫姿のウィカを見て一瞬固まる。

レオニスが固まるのも無理はない。ウィカは秘密の使い魔であり、まだレオニスとは一度も対面してなどいないのだから。

飼ってもいない黒猫が突然家の中に現れたら、レオニスでなくとも驚愕すること間違いなしである。

ウィカを凝視するレオニスに、ライトは慌てながらも前もって用意していた答えを返す。

「あ、えっとね、この子は目覚めの湖に住む水の精霊ウィカチャっていってね?こないだフォルと目覚めの湖に行った時に友達になったの!」

「ウィカチャだから、ウィカって名前で呼んでるんだけど」

「お風呂場の水からここに来たみたいで……ほら、水の精霊だからたくさんの水があるところはどこでも移動可能みたい」

何とか無難な答えを返すライト。

これは、もしレオニスとウィカが鉢合わせた時のことを想定してライトが事前に頭の中でシミュレートしていた答えだ。

レオニスとともに目覚めの湖に遊びに行ったら、ウィカを友達として紹介しよう!とは前々からライトも考えてはいた。

だが、カタポレンの家の風呂場にいつでも来れるウィカがいつ何時出現するか分からないので、こうした問答も想定しておかなければならなかったのだ。

実際こうして即時臨機応変に対処できたのだから、やはり備えあれば憂いなし!なのである。

「そ、そうなのか……にしても、水の精霊ウィカチャとはまた何とも珍しい精霊と友達になったもんだな……」

レオニスは半ば呆然としながらも、ライトの言を信じて受け入れたようだ。

その一方で、当のウィカは相変わらず懸命にライトのズボンを引っ張り続けている。どうもライトにどこかについてきてほしいようだ。

そのどこかとは考えるまでもなく、目覚めの湖もしくはナヌスの里のどちらかだろう。

「レオ兄ちゃん、どうやらこの子、ぼくに目覚めの湖かナヌスの里のどちらかに来てほしいみたい」

「そうなのか?」

「うん。この子水の精霊で目覚めの湖に住んでるし、ナヌスの人達にも『もしぼくに用事があったらウィカに伝えてくださいね』って言ってあるんだ」

「そうか……その様子じゃ急いで行った方がよさそうだな」

ウィカの必死の姿を見て、レオニスにもその緊張感が伝わったようだ。

「ぼく、ちょっとウィカといっしょに行ってくるね。レオ兄ちゃんもいっしょに来てくれる?」

「おう、もちろんだ。このカタポレンの森の中で何かが起きているなら、それこそ俺の出番だ」

「ありがとう!」

レオニスの頼もしい言葉と真剣な眼差しを受けて、ライトは心から感謝した。

そうと決まれば話は早い。ウィカが引っ張る方向に、ライト達もついていく。どうやらウィカは風呂場に戻りたいようだ。

一匹と二人が風呂場に到着すると、ウィカは浴槽の水の上にトトッ、と降り立ちライトに向けて手招きをする。

「ん?どうするの?そっちに来いってこと?」

ウィカがどうしたいのかいまいち分からぬまま、ライトは手招きしたウィカの手にそっと触れる。

すると、ウィカとライトの身体はあっという間に浴槽の水に吸い込まれてしまった。

それこそ驚きの声を上げる間もなく、トプン、とひと雫分の水紋とともに消えたウィカとライト。

「あっ!おい!ライト!ライト!!」

横で見ていたレオニスが慌てて浴槽に駆け寄り水を覗き込むが、そこにはウィカチャもライトもいなかった。

おそらくは転移門のように、目覚めの湖に瞬間移動したのだろう。大量の水あるところならどこにでも移動できる水の精霊ウィカチャならば、造作もないことだ。

「くそっ、油断した……目覚めの湖か!!」

置いてきぼりにされたレオニスは、急いで目覚めの湖に向かって走り出した。