軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第177話 お使いの成果

翌朝、学園に行くためにいつも通り自室にて支度を始めるライト。

外の天気は快晴で、青空に陽射しも出ててフォルの初お出かけの日にはもってこいの陽気である。

「フォル、今から使い魔システムの『旅に出る』のボタンを押すからね」

「時間や行き先はランダムで指定できないから、ぼくからは決められないけど」

「それでも、ちゃんと早く帰ってくるんだよ?遅くとも今日の夕方まで、空が明るいうちにこの家に戻っておいで」

「フォル、いいね。分かった?」

ライトはフォルに向けて言い含めるように、優しく話しかけながらマイページを開き、使い魔一覧のフォルの下に表示される『お使いに出す』のボタンを押す。

すると、それまでおとなしく聞いていたフォル、キュイ、と一声鳴くとライトが開け放った窓からフワッと軽やかに外に飛び出していった。

ライトが学園から戻ってくる頃には、フォルもお使いから戻ってきているだろう。

その成果としてどんなものをフォルが持ち帰ってくるか、とても楽しみなライトだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「今週の神殿訪問、楽しみだねー」

「うん、普段入る礼拝堂とはまた違う場所見れたらいいなー」

午前の授業が終わり、クラスの皆と学食で昼食を摂るライト。

話題は自然と今週の目玉行事である神殿訪問の話になる。

「十歳になったら、ジョブのテキセイハンダン?調べられるようになるんだよね?」

「そうそう。まぁ別に十歳になってすぐに調べなきゃいけないって訳でもないらしいけど」

「皆は十歳になったら、すぐに神殿調べてもらうの?」

誰からともなく、そんな話になっていく。

そしてその答えは様々だ。

「私は家のお手伝いがあるし、急いで調べなきゃならない訳ではないからすぐには判断受けない、かなぁ」

「へー、そうなんだね。まぁリリィちゃんは向日葵亭のお手伝いがあるもんね」

「そそ、そゆこと。イヴリンちゃんはどうするの?」

「私はすぐに受けたいなー。高等部にはいかないし、中等部卒業したらすぐに何かの仕事しなきゃいけないから」

ふぅ、とため息をつきながらリリィの質問に答えるイヴリン。

すると、イヴリンの横にいたジョゼがさらっとその会話に入り込む。

「イヴリンさえ良ければ、中等部卒業したら僕のお嫁さんになるという道もあるよ?」

「ジョゼのお嫁さん?やだー、平民の私が貴族と結婚できる訳ないじゃーん!」

「貴族といっても、僕の家は万年貧乏平子爵だからそんな堅苦しい家じゃないよ?」

「それでも貴族は貴族でしょ?無理無理、無ぅ理ぃー」

あっけらかんとジョゼの提案を断るイヴリン。

だが、ジョゼとて負けてはいない。

「んー、イヴリンってばつれないなぁ。身分に囚われずに僕自身のことを見てほしいんだけどなー」

「ジョゼのことは大好きよ?意地悪するような貴族様じゃないし、私や皆にも優しいからジョゼは皆からモテるし」

暖簾に腕押し、糠に釘、とはこのことか。

ジョゼのプロポーズにも近い口説き文句に、イヴリンはその真意に気づくことなくジョゼを褒めちぎる。

「……ま、いっか。別に今から焦ることもないしね」

「そうそう、神殿でのテキセイハンダンを受けられるようになるまであと二年はあるもんね!」

「そうだね、その先も僕は一生懸命に君を口説き続ける未来が見えるようだよ」

「えッ、ジョゼってば未来が視えるの!?それってスゴい魔術師になれるんじゃない!?今からテキセイハンダンが楽しみね!」

「「「「「………………」」」」」

イヴリンとジョゼ、相変わらず話が噛み合わない。特にイヴリン側から発生している齟齬が途轍もないレベルである。

だが、そんな齟齬やすれ違いすらもジョゼには楽しく思えるものらしい。明るい笑顔で快活に話すイヴリンのことを、めげることなく終始ニコニコとした笑顔で眺めるジョゼ。

彼のなかなかに困難そうな道のりを思うと、ライトを始めとした周囲の友人達は優しく見守る他なかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

午後の授業も無事終えて、急いでカタポレンの森の家に戻るライト。

今日はおやつもそこそこに、兎にも角にもカタポレンへの帰宅を優先する。

ラグナロッツァの屋敷から転移門で繋がってるカタポレンの家の自室に到着するなり、ライトは部屋の中をキョロキョロと見回した。

ライトの部屋の中には、まだフォルの姿はなかった。まだお出かけから帰ってきていないのだろうか?

まぁ、外はまだ明るいし、もう少ししたら帰ってくるかな……と思いつつ、ふと机の上を見ると何かが乱雑に置かれてある。

はて、今朝家を出た時にはちゃんと片付いてたはずだが、何ぞ?とライトは思いつつ机の上のものを確認する。

「ポーション、石ころ、チョコレートケーキ、草餅、薬草……」

今朝にはなくて今この部屋の机の上に出現したということは、それらはフォルがお使いで持ち帰りしてきたものに他ならなかった。

ちなみに食べ物系統であるチョコレートケーキや草餅は、ブレイブクライムオンラインでのイベント限定の回復剤だ。その効果はハイポーションと同等のHP500だったり、アークエーテルと同等のMP200回復だったりとアイテムによって様々だ。

フォルがこれらの品々を一体どこで拾ってきたかは定かではないが、フォルのお出かけ先は大抵は山や川、森、湖などの大自然溢れる場所である。

もちろんそんな場所には、ケーキ屋だの移動販売ワゴンだのが存在するはずもないし、行き先の中に大都会とか繁華街などの類いも一切ない。

ならば、森や湖の一体どこにチョコレートケーキや草餅が落ちてるの?でもって、そんな野外で拾ってきたケーキとか普通に食っていいもんなの?泥だらけとかでぽんぽん壊したりしないの?という真っ当至極な疑問が湧くところである。

だが、その真っ当至極な疑問に対して明確かつ納得のできる答えを得ようとしたり求めたりしてはいけない。

何故ならそれは、ライト自身ですら前世で散々ツッコミしてきていたことなのだから。

そもそもモンスターが何らかのアイテムをドロップする時点で、整合性などないのだ。さらに言えば、整合性など完全無視したイベントアイテムの使い回しもソシャゲあるある話なのである。

ぃゃー、相変わらず使い魔が拾ってくるアイテムは謎いのぅ、と思いながらそれらの品々を眺めつつ考える。

まず目の前にあるこれらの謎アイテム、収納はどうしよう?というのが今のライトの課題である。

ゲーム内では、入手したアイテム類は即時アイテム欄に反映されていた。

手のひらに草餅を乗せつつ、そういやマイページにも一応アイテム欄があったよなぁ、そこに入れることはできんのかなぁ……と考えながら、ライトはマイページのアイテム欄を開いてみた。

すると、手のひらに乗せていた草餅が瞬時に消えて、アイテム欄に『草餅 1個』という表示が現れたではないか。

突然の出来事に、ライトは「うおっ!」という驚嘆の声を上げながらも机を見ると、他のアイテム類はそのまま机の上に存在している。

どうやらマイページのアイテム欄を開きながらアイテムを持つなり手で触れるなりすると、アイテムとして収納される仕組みのようだ。

試しにフォルの持ち帰り品以外の物、部屋にある机や椅子、ベッドなどは収納されなかったが、書籍や服などはアイテム欄に収納された。

そして収納したアイテムを取り出したい時には、アイテム欄での名前の部分を指でタッチすると出てくるようだ。

新しく発見できたアイテム欄の使い具合を興奮気味にあれこれ試していると、窓からフォルがピョコン、と部屋の中に入ってきた。

「あっ、フォル!おかえり!」

「キュイィィィ」

ライトは帰ってきたフォルを迎えるために、窓に駆け寄りそっと抱きしめる。

「初めてのお外はどうだった?」

「フィィ」

「今日はもうお使い出なくていいからね、ゆっくり休もうね」

「キュアァァァ」

「フォル、怪我とかしてない?大丈夫?」

初めてのお使いを終えたフォル、その身体にどこか怪我をしてないかをライトは確かめるために、フォルを抱っこしながらあちこち見ている。

とりあえず怪我などはしてなさそうだが、やはり森の中を駆け回ってきたせいかところどころ土埃や泥などがついて結構汚れていた。

「幻獣って、お風呂入れてもいいのかな?」

「んー……アルも神獣だけどお風呂大好きだったしなぁ……」

「とりあえず、ぬるめのお風呂から試してみようかな」

そんなことをライトがブツブツと呟いていると、机の上に何かが現れてコトン、という音がした。

「ん?何だ?」

ライトが机の方を見ると、そこにはフォルが帰ってくる前に既にあったアイテム類とは別の品が出現していた。何とそれは―――

「……これは……もしかして、エネドリ、か?」

ライトにとってはよーく見覚えのある、見た目はほんのりとした明るいオレンジ色の瓶入りドリンク。それは、ブレイブクライムオンラインでも散々使い倒してきたアイテム『エネルギードリンク』、通称『エネドリ』と呼ばれるアイテムであった。たった今外から帰ってきたフォルの持ち帰りの品だろう。

試しに先程判明したばかりのアイテム欄に収納してみると、アイテム欄に『エネルギードリンク 1個』という新たなアイテム表示が出てきた。このオレンジ色の瓶入りドリンクが、間違いなくエネルギードリンクであることが確定した瞬間である。

この『エネルギードリンク』は、スキル使用に必要なSPを即時全回復させるアイテムだ。

この世界に職業やSPという概念が一般的でない以上、存在するかどうかも分からなかったSP回復剤が入手できたことは、ライトにとって思わずガッツポーズを取るくらいに朗報であった。

そして、どうやら使い魔は空間魔法陣に似たような方法でアイテム類を持ち帰ってくるらしい。

確かにゲームの方でも使い魔としては身体が小さい幻獣達でも、身の丈に合わない大きな品を持ち帰ってくることも多かった。

小さな使い魔達は、持ち帰るアイテムを手に持ったり口に咥えるにも限界がある。別空間に収納できる能力があるなら納得だ。

「フォル、お疲れさま。お使いでたくさんのお土産持って帰ってきてくれてありがとうね」

「さ、晩御飯の前にさっとお風呂入っちゃおっか!」

外でたくさん駆け回ってきたであろうフォルの汚れを、綺麗さっぱり洗い流してあげるべくライトはフォルを連れてお風呂に向かっていった。