軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1764話 新たな約束と級友達との再会

不思議世界の探訪に憤竜メテオリタとの邂逅等々、とんでもなく濃密な一日が過ぎた翌日。

この日は一月七日、ライトが通うラグーン学園の三学期が始まる日である。

昨夜はラーデやメテオリタ、リンドブルムとともにコテージに泊まったライト、朝早くからルーティンワークである魔石回収を済ませて七時にレオニスやラウル、マキシ、ラーデと朝食を摂った。

もちろんレオニスも朝の警邏を済ませ、ラウルはラウルでラーデといっしょに朝イチの野菜や果物の収穫を終えている。

リビングの人ダメクッションで未だ寝ているのは、メテオリタとリンドブルムのみである。

『我が妻と娘がだらしなく寝ていてすまん……』

「いやいや、そんなんラーデが気にするこたぁないさ」

「そうそう、客人に心ゆくまで寛いでもらえたらそれが一番だ」

「メテオリタさんだって、里帰りから帰ってきたばかりで疲れてるかもしれないし」

「ラーデ君、奥さんや娘さんに会えて本当に良かったですね」

『うむ……其方らの気遣い、感謝する』

嫁と娘がぐーすかと寝続けているのを恥じるラーデに、ライト達が口々に優しい言葉をかける。

ライト達は人ダメクッションに対する耐性が少しづつ養われているので、いつも通り朝に起きることができた。

ただし、それでも人ダメクッションから抜け出すのには相当の気力が要ったが。

ライト達でさえ人ダメクッションに抗うのに苦労するのだ、まだ耐性が少ないリンドブルムはもちろんのこと初体験のメテオリタに抗いきれる訳がないのである。

「ねぇ、ラーデ、ラーデはリンリンさんやメテオリタさんといっしょに不思議の森に行くの?」

『我は行かぬ。ファフニールのもとには昨日訪ねたばかりだしな』

「メテオリタさんが寂しがらない?」

『大丈夫だ、今はもう会いたいと思えばいつでも会えるし。ただ、また近いうちに会いに行けたらいいとは思うがな』

「そっか……」

ライトの問いかけに、ラーデが事も無げに答える。

昨日の様子だとメテオリタの方がラーデのことを熱烈に好いているようだったので、今日またここで離れ離れになることをメテオリタが悲しがってゴネるのでは?とライトは考えたのだ。

しかしラーデの言うことも正しくて、ラーデが邪竜の島から解放されてメテオリタも里帰りから戻ってきた今なら、お互い会いたい時にいつでも会える。

ならば多少の別離も問題なく過ごせるだろう。

そうしたライト達の会話に、レオニスやラウルも加わってきた。

「そういやもうすぐ公国生誕祭が近いだろ。てことは、ラーデがこのカタポレンの森に来て一年になるってことだ。誕生日代わりに盛大に祝ってやるか」

「お、それいいな。ラーデの嫁さんもこっちに帰ってきたことだし、ラーデの家族皆を招待して誕生日会をしようぜ」

「うん!それ、すっごく良いね!ラーデ、お誕生日会をしようよ!」

「その日は僕もアイギスがお休みになるので、皆でいっしょにお祭りやお誕生日会を過ごせます!」

レオニスの発案、ラーデの誕生日会に皆挙って大賛成している。

ラーデの本当の誕生日、いつ生まれたのかなど当のラーデすら知らないことだ。

しかし、だからといって何もしなくていいとは思わない。

むしろ彼がこの地上に戻ってこれた日を誕生日にしちゃえばいいよね!というのは、とてもいい口実であろう。

「ぼくも今日からラグーン学園が始まるから、しばらくはラーデといっしょにお出かけできないけど……公国生誕祭はラグーン学園もお休みになるから、お誕生日会は盛大に皆でお祝いしようね!」

『うむ。我もその公国生誕祭?とやらを楽しみにしておるので、ライトも勉学に励めよ』

「うん!」

ラーデの誕生日会を祝う約束を交わしたライト。

十日後の約束に思いを馳せつつ、席を立って朝食で使用した皿を流しに下ろし始めた。

「じゃ、ぼくはそろそろ学校に行くねー」

「おう、三学期も頑張れよー」

「冬休みの宿題、忘れずに持っていけよー」

「ライト君、僕も向こうに戻らなきゃなのでいっしょに行きましょう」

「うん!いってきまーす!」

レオニスとラウルに励まされながら、ライトはマキシとともにコテージを出た。

そしてラグナロッツァの屋敷に移動し、制服に着替えて元気よく登校していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ライト君、おっはよーう!」

「おはよう。皆、あけましておめでとう、今年もよろしくね!」

「あけおめことよろりんちょー☆」

「リリィちゃんのアクシーディア語が崩壊してる……」

「皆さん、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたしますね」

ラグーン学園初等部三年A組の教室で、久しぶりに会う級友達。

リリィの言葉遣いがおかしいのは、某謎の剣豪の影響であろうか。

イヴリン、リリィ、ジョゼ、ハリエットと今年初めての言葉を交わし合うライト。

いつもの場所でいつもの面々と何気ない会話を交わすのは、実はライトにとってはある意味安らげるひと時だ。

というのも、家にいる時のライトはついついBCOのことをあれこれと考えてしまう。

例えばそれはアイテム作りだったり、アイテム作りの材料のための魔物解体だったり、はたまた職業習熟度上げだったり。

とにかく何かしらBCOの作業を進めないと!と思ってしまうのだ。

だが、ラグーン学園にいる間はそれらを考えたり実行せずに済む。

考えたところで実際に何か作業できる訳でもないし、せいぜい休み時間の間にこっそりとバフスキルを無駄にかけて職業習熟度上げのためのSP消費に励むくらいだ。

土日や夏休み、冬休みなどの長期休暇に冒険三昧するのも楽しいが、それ以外のこうした何気ない日常生活も大事にしていきたいな、とライトは思っていた。

「皆はこの冬休み、何して過ごした?」

「私はお母さんの機織りの仕事をお手伝いしたわー。織物を作るお仕事って大変だけど、綺麗な織物が少しづつ出来上がっていくのを見るのは結構楽しいのよねー」

「リリィはいつも通り、宿のお仕事の手伝いよー。でも、お正月のお手伝いは大好き。だって常連客さんがリリィにお年玉をくれるから!」

「僕は冒険者ギルドで勉強してたよ。一昨日は初めての依頼を受けたんだ!」

「私も例年通り、プロステスでお正月を過ごしましたの。アレクシス伯父様にも羽根ペンを贈ったら、とても喜んでくださいました」

皆が語る冬休みの過ごし方に、ライトがニコニコ笑顔で聞いている。

イヴリンの話には「うんうん、その気持ちはぼくもよく分かるなー。ぼくもよく紐作りするんだけど、何かを作るのって楽しいよね!」と同意し、リリィのお年玉話には「へー、たくさんのお年玉をもらえるなんて羨ましいなー。どれくらいもらったの?」と尋ね、ジョゼの依頼話には「ジョゼ君、もう冒険者ギルドの依頼を引き受けたの!? すごいね、何の依頼をこなしたの!?」と興奮気味に食いついた。

もちろんハリエットの話にだって「あの羽根ペン、ウォーベック公爵様にも喜んでもらえたんだ、良かったね!」と我が事のようにライトも喜んでいた。

しかし、ライト自身はどこで何をしたかなど全く話さない。

炎の洞窟だの不思議の森だの、話に出せないような行き先ばかりだからである。

ただし、唯一この場の全員が語れる話の種がある。それは大晦日の聖なる餅話だった。

「そういや大晦日のお餅、皆のところは何か面白い餅はあった? ぼくのところでは、虹の形をしたお餅があったんだー」

「虹!? 何それ、面白過ぎるwww」

「プププwww リリィも今年の餅拾いで虹を探してみよっと!」

ライトが切り出した餅話に、イヴリン達が大ウケしている。

その後もしばらくは餅話で盛り上がった。

「うちで一番面白い形だったのは、目玉焼きだったかなー。お正月のお雑煮にするために焼いたら、黄身のところがぷくーっ!と膨れて面白可愛いかったー!」

「リリィんとこは、フォークの形をしたのがあったよ!どうせならスプーンとかレンゲの形のお餅も欲しかったんだけど、そっちは見つからなかったんだよねー。残念ー」

「うちは特になかったけど、イグニスのところで斧型の餅が見つかったんだって。イグニスのお父さんは今斧職人のところで鍛冶修行してるから、イグニスが『とーちゃんが作ってる斧みたいだ!』って言って、すっごく喜んでたよ」

「プロステスでもたくさんのお餅が降ってましたね。伯父様の領主邸に降ったお餅は、全て孤児院に寄付するために回収なさってましたわ」

級友達の餅話に、ライトも楽しそうに笑っている。

するとここで、教室のドアが開いて担任のフレデリクが入ってきた。

担任の入室に、それまで友達の席で話をしていた子供達が急いで自分の席に向かう。

「皆さん、おはようございます。そして、あけましておめでとうございます」

教壇に立ったフレデリクが、ライト達生徒に向けて挨拶をする。

この年始の挨拶を皮切りに、ライトの三月期が始まっていった。