作品タイトル不明
第1750話 不思議世界の不思議な光景
不思議の街の家具屋を出たライト達。
その後もリンドブルムとフレア・ジャバウォックの買い物について行きながら、街の中を見て回っていった。
例えば服屋では、リンドブルム達は買い物しなかった。
何故なら彼女達の場合、人化した時の服装は竜形態の皮膚が変化しているので、いちいち服に着替える必要などないからだ。
だが服を見ること自体は好きらしく、ショウウィンドウに飾られた服を見ては『まぁ、面白い服ねー』『これ、どうやって着るのかしら?』などと楽しそうに話している。
いわゆるウィンドウショッピングというやつである。
そんな女子ドラゴン達に、レオニスが声をかけた。
「なぁ、もし良ければこの服屋に寄っていってもいいか?」
『ン? 何か買うの?』
「ああ。サイサクス世界で、俺の姉にも等しい人達が服作りを生業としていてな。せっかくだから、その人達にも何か土産を買っていってやりたいんだ」
『まぁ、そうなのね。あの奇天烈な服が服作りの参考になるかどうかは怪しいけど……』
「そこら辺は大丈夫。カイ姉達ならきっと喜んでくれるさ」
レオニスの申し出を承諾し、皆で服屋に入った。
店の中には、ショウウィンドウに飾られていた服を上回る奇天烈な服がたくさん並べられていた。
「これ、袖が八本あるが……まさか蜘蛛用の服とかか?」
「おお、こっちのは背中と尻の二ヶ所に大きな穴が開いてるぞ。翼と尻尾を出すための作りか?」
「うわぁ…… 十二単(じゅうにひとえ) っぽいけど、三十枚以上あるー……三十単?」
「……何で服屋に布団カバーがこんなに山程置いてあるんだ?」
面白い作りの服に、ライト達が感嘆しながら見ている。
色はビビッドなものが多く、宝石やスパンコールもついていないのにやたらと眩しい服なんかもある。
ちなみにレオニスが訝しがっていた布団カバー、実は布団カバーではなく『トランプ兵の服』である。
そうしてレオニスが何着かの服を選び購入した。
この服屋は家具屋と違い、宝石大歓迎!だったので服一枚につき二個の宝石と交換した。
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド等々、多種多様な宝石を服屋店主に渡すレオニス。
サイサクス世界の金額にして一枚ウン十万Gの洋服ということになるが、宝石なら幻の鉱山で頑張ればまた採掘できるので問題はない。
そして会計時にチョシャ猫が『うにゃー…… 何(にゃん) て美味しそうにゃ宝石にゃ……』とヨダレを垂らしそうな目で見ていた気がするが、多分それは気のせいではない。
『毎度ありー♪』
ご機嫌な服屋店主に見送られながら、店の外に出たライト達。
その後もチョシャ猫オススメの生地屋でアイギス三姉妹への土産を爆買いしたり、スイーツ屋で休憩がてらリンドブルム達がおやつを食べたりして過ごした。
スイーツ店の外のカフェテラスで、パフェっぽい何かとプリンっぽい何か、そしてパンケーキっぽい何かを食べながら楽しげに会話する女子達。
パクパクと美味しそうにパフェもどきを食べるリンドブルム、同じく久しぶりの 甘味(プリン) もどきに頬が緩みっぱなしのフレア・ジャバウォック、顔の髭でフォークとナイフを器用に操りパンケーキもどきを切っては頬張るチョシャ猫。
どの女子達も楽しそうで、実に微笑ましい光景だ。
一方のライト達サイサクス世界組は、この場で同じおやつを食べることはできない。
だが、スイーツの注文自体は禁忌ではない。
空間魔法陣に入れて持ち帰りできそうなクッキー、パンケーキ、アイスクリームなどを注文し、ラウルの空間魔法陣に収納していた。
実際に食べるのは、ライト達のホームであるサイサクス世界に帰ってからのお楽しみである。
ちなみにここのお代は、全て『リンドブルムの 鬣(たてがみ) 五本』で支払った。
レオニス達の分まで奢ってもらった格好だが、リンドブルム曰く『貴方達はパパンの大家さんですもの。日頃パパンがお世話になっているのだから、これくらいご馳走して当然よー』ということらしい。
そう言われれば納得なので、リンドブルムの厚意をありがたく受けることにした。
そうして不思議の街でのショッピングを大いに楽しんだライト達。
道の端にあるベンチのような椅子に皆で座って、ひと息つく。
サイサクス世界より薄く、ほんのり緑がかった淡い水色の空をぼんやりと眺める。
空だけでなく、道を行き交う人々?を見ていると、様々な種族が共生しているのが分かる。
懐中時計を片手に『ああ、忙しい忙しい』と言いながら走り回る白ウサギ、フリフリの可愛らしいワンピースを着たビッグワームにそっくりのイモムシ。
手足がついて服まで着た鶏卵が普通に歩く様子は、思わずライト達も目を丸くしてガン見してしまう。
そして、そうした不思議世界の住人達に混じって街を闊歩するトランプ兵達。
長方形のトランプの胴体に、人間の頭や手足がついている。
チョシャ猫曰く『アレは街の治安を担う衛兵にゃ。賄賂大好きにゃ困ったヤツらにゃが、それでも一応ちゃんと街の見回りはしているからまだマシな方』らしい。
しかし、不思議世界のトランプ兵は出で立ちが少々風変わりだった。
というのも、皆が皆黒の着流しを着ていたのだ。
一際目を引く異様な格好に、レオニスがチョシャ猫に問うた。
「なぁ、チョシャ猫、あのトランプ柄の衛兵達が着ている黒い着物? あれがこっちの世界の制服なのか?」
『ンにゃ、アレは最近流行りだした格好にゃねー。ちょっと前までは、誰もあんにゃ服着てにゃかったけど…… 何(にゃん) であんにゃのが流行してるんにゃかねぇ?』
四角いトランプの胴体に黒の着流し。この不思議世界の中でも一等奇抜なスタイルで、何しろちぐはぐさが半端ない。
見れば見る程おかしな格好は、レオニス達だけでなく不思議世界の住民であるチョシャ猫でさえも理解不能らしい。
そして次の瞬間、レオニス達の背後から声がした。
「それはね、あちしのおかげですよ」
「『!?!?!?』」
突如声をかけられたことに、竜族女子二人組以外が椅子の上でビクンッ!と飛び跳ねた。
慌ててレオニスがガバッ!と後ろを振り向くと、何とそこには眠狂七郎がいた。