軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1731話 同級生との約束

ライト達がツェリザーク近郊で手に汗握る雪合戦を繰り広げた翌日。

ライトは朝九時に、とある場所でとある人物と待ち合わせをしていた。

待ち合わせ場所はラグナロッツァの冒険者ギルド総本部。

約束の時間十分前に、ラウルとともに冒険者ギルド総本部入口前に立って待ち人が来るのを待っている。

そうして待ち合わせ時間の五分前に現れたのは、ライトの同級生であるジョゼ・リールだった。

最初はのんびりと歩いていたジョゼ。

目的地である冒険者ギルド総本部の前にライト達が既にいることに気づき、パタパタと急ぎ駆け寄ってきた。

「ライト君、おはよう!」

「ジョゼ君、おはよーう」

「ラウルさんも、おはようございます!」

「おはよう」

「ごめんね、待たせちゃった?」

「ううん、ぼく達もさっき来たばかりだから大丈夫だよー」

まずは朝の挨拶をするジョゼに、ライト達が笑顔で返す。

今日ライトがジョゼとこの場で待ち合わせをしたのは、以前ジョゼと交わした約束を守るため。

その約束とは『冬休みに冒険者の初心者講座を受ける時に、ライトもいっしょに受けてほしい!』というものだ。

ジョゼによると、彼の誕生日は十一月二十八日で、そこから一番早い日曜日の十二月一日に冒険者登録を済ませたという。

しかし、ライトもそうだが十歳になったばかりのジョゼは現役のラグーン学園生。すぐに冒険者活動を始める訳ではないので、『冒険者のイロハ講座』は冬休みに入ってからこなすつもりでいた。

「さて、そしたらライト達は今から『冒険者のイロハ講座』を受けてくるんだろ?」

「うん。ラウルもいっしょに受ける?」

「そうだな。せっかくだから復習がてら受けておくか」

「ラウルさん、僕のわがままに付き合ってくれてありがとうございます!」

「何、ジョゼはうちの小さなご主人様の親友だからな。二人まとめて護衛を務めるのも執事の仕事のうちの一つさ」

ライト達の初心者向け講座受講に付き合ってくれるというラウルに、ジョゼが深々と頭を下げる。

今日ラウルがライトとともに冒険者ギルド総本部を訪れたのは、ライト達を守るためである。

ライトはもともと『レオニスの養い子』として冒険者界隈では既に有名だし、総本部内でもそこそこ顔が知られている。

だがそれでも、十歳の子供二人だけで冒険者ギルド総本部内を彷徨くのはさすがに危険だ。

ライトのことを全く知らない余所者に変な絡まれ方をするかもしれないし、ライト以上に正真正銘本物の初心者であるジョゼはもっと容易いカモネギにしか見えないだろう。

そしてこの程度のことは、ライトも最初から想定済みだ。

なので、ジョゼから冒険者のイロハ講座に付き合ってほしいと頼まれた時にすぐにレオニスとラウルに相談し、その結果ラウルに用心棒としてついてきてもらうことになったのである。

建物の中に入ると、そこそこ人が多くて混雑しているように見える。

年の瀬も迫る中、冒険者ギルド総本部内が活気に満ちているのは果たして良いことなのかどうか。

そこかしこにいる強面の冒険者達に、ジョゼが思わずビクッ!としている。

周囲の大人達全てが、自分のことを冷たい目でジロリ!と睨んで見下しているような気がして、内心ではビクビク震え上がっていた。

しかし、ライトの方はそんなことキニシナイ!とばかりに、ジョゼに声をかけた。

「じゃ、まずは受付窓口で初心者向け講座の受講手続きをしなくちゃね。ジョゼ君、頑張って!」

「う、うん……い、行ってくる!」

ライトの励ましに、ジョゼが緊張の面持ちで受付窓口に向かう。

本当はライトやラウルが話しに行った方が早いのだが、それではジョゼのためにならない。

ジョゼは将来の選択肢として、冒険者になることをかなり本格的に検討している。

ならば受付窓口の職員達とも今から懇意になっておくべきだし、様々な手続きの仕方を彼自身がきちんと覚えるためにもライト達の手出しは無用なのだ。

そうしてジョゼは、クレナがいる窓口に単身で向かった。

「お、おはようございます!冒険者の初心者講座を受けに来ました!」

「おはようございますぅー。『冒険者のイロハ講座』の受講希望ですね、少々お待ちくださいー」

大きな声で挨拶するジョゼに、クレナがにこやかな笑顔で応対している。

クレナがカウンターの下にある引き出しから書類を取り出し、備品のペンとともにジョゼに差し出した。

「こちらの書類に必要事項をお書きの上、ご提出くださいー。受講希望はお一人ですか?」

「いえ、僕の友達二人もいっしょに受けます」

「では、お友達のお二人にも書類を……って、ライト君とラウルさん、ですか?」

クレナから渡された書類に、カウンターで一生懸命に記入しているジョゼ。

そこから少し離れた後ろにライトとラウルがいるのを、クレナは見逃さなかった。

「クレナさん、おはようございます!」

「よ、クレナさん、この窓口で話をするのは久しぶりだな」

「ホントですねぇー。ライト君はともかく、ラウルさんはもう少しこちらに会いに来てくださってもいいんですよ?」

「ハハハ……そうしたいのは山々なんだがな。このラグナロッツァでは、俺が依頼を受けるとどうにも碌なことにならんことが多くてな」

「ハハハ……確かにそれは否めませんですぅー」

チクリとしたクレナの物言いに、ラウルが苦笑いしつつ応じる。

ラウルが言うように、彼がラグナロッツァで依頼を引き受けると何故か大事件に発展してしまうことがしばしばあった。

もちろんそれはラウルが悪い訳ではないし、ただ単に運が悪かったとしか言いようのないことなのだが。

他の街ではそんなことにはならないのに、どういう訳かラグナロッツァでの仕事運が悪過ぎるのがラウルの悩みの種である。

「……まぁでもな、そうは言っても地元の依頼もこなさんとな。そのうち薬草採取とか家事手伝いなんかの、無難な依頼をやるつもりだ」

「それがいいですねぇー。是非ともその方向でお願いいたしますぅー。特に薬草はまだまだ不足してますから、現在でも高値買取りキャンペーン継続中ですよー」

「そっか、そりゃいいことを聞いた。つーか、薬草は天然物じゃなくて栽培したものでも可能か?」

「品質に問題がなければ、全然オッケーですぅー」

仕事に前向きなラウルに、クレナの顔も綻ぶ。

ラウルの有能さは全冒険者ギルド内でも評判だし、優秀な戦力は是非とも地元で遺憾なく実力を発揮してもらいたい!とクレナが思うのも当然のことだ。

そんな他愛のない雑談をしながらも『冒険者のイロハ講座』の申込書をサラサラと書いていくラウル。

ライトやジョゼもほぼ同時に書き終えたようで、二人して「クレナさん、できました!」と申込書を提出した。

「はい、はい……大丈夫、問題ありませんねー。本日のイロハ講座は二階の大会議室で、午前十時から始まります。開始十分前に大会議室の扉が開放されますので、それまで皆さんご自由にお過ごしくださいませー」

「「はーい!」」

クレナの流れるような案内に、ライトとジョゼが元気な声で応える。

現在の時間は午前九時を少し過ぎたところ。

冒険者ギルド総本部内でも、小一時間の余暇でできることといえば二つ。『ギルド内売店の見学』と『依頼掲示板の見学』の二択である。

「ジョゼ君、売店を見るのと掲示板を見るの、どっちがいい?」

「ンー、そうだなー……今日はお金を持ってきていないし、依頼掲示板を見る方が有意義かなー」

「なら、皆で依頼掲示板を見に行こっか!」

「うん!」

ライトの提案に、ちょっぴり迷いながらもすぐに依頼掲示板を選択したジョゼ。

今のラグナロッツァにはどんな依頼が出ているか、依頼掲示板を見て学んでおくのもとてもいいことだ。

そうして三人は、午前十時から始まる『冒険者のイロハ講座』を受ける前に依頼掲示板を見に行った。