作品タイトル不明
第1726話 かつての何気ない話
ライト達とアル達銀碧狼親子、そして氷の洞窟の主達が勢揃いしたところで、まずはシーナに対する詫びのブラッシングをすることにした。
というのも、シーナがアルの人化の術を披露した後、再びヘロヘロと雪原に腹這いになってしまったからだ。
わんぱく坊主な息子とその友達の全速力のかけっこ、しかも雪が降り続く視界の悪い雪原を追いかけるのはかなりしんどいらしい。
『ンふぅ……このブラッシングなるものは、いつ如何なる時でも本当に気持ちいいですねぇ……』
「シーナさんの毛は、相変わらずすっごく綺麗だな」
『フフフ、ラウルは口がお上手ですねぇ」
「俺は本当のことしか言わんぞ?」
『ああ、そういえばそうでしたね……あ、レオニス、首の後ろと肩、背中、腰を重点的に櫛ってくださいね』
「はいよー。ラウル、お前は腰から下の方をブラッシングしてくれ」
「了解ー」
シーナの要望に応えるべく、レオニスとラウルがちょこまかと飛びながらブラッシングをしている。
その間ライトは何をしているかというと、人化の術を解いて銀碧狼の姿に戻ったアルのブラッシングをしていた。
「アル、どこか痒いところとかあったら言ってねー」「ワゥワゥ!」と、それはもう仲睦まじい両者。
そんな二人を、アトラが羨ましそうに眺めていた。
『アル君の銀色の毛、いいなー。すっごくもふもふしてて気持ち良さそうー』
「そうかな? エレの濃茶の甲羅だって、すべすべのツヤツヤですっごくカッコいいよ!尻尾の蛇だってとっても可愛いし」
『えー、ホントー?』
「ホント、ホント!ボクから、見ても、エレちゃんは、すっごく、キレイで、可愛くて、カッコいい!」
『ンまッ、ライト君もアル君もお上手ねッ♪』
エレの容姿をべた褒めするライトとアルに、アトラが照れ臭そうに前肢で顔を覆い隠す。
尻尾の蛇もクネクネ動きながら嬉しそうに「キシャーッ☆」と小さな声を上げて喜んでいる。
もしこれが『カッコいい』という評価だけだったら、アトラはむくれて怒るところだ。
しかし、ライトもアルもちゃんと『可愛い!』という言葉も入れていたため、アトラが照れ笑いしていたのである。
そうして銀碧狼親子のブラッシングが完了した。
するとここで、氷の女王がふと何かを思いついたような顔でラウルに声をかけた。
『……ああ、そういえばラウル、我は先程思い出したことが一つあるのだが』
「ン? 何だ?」
『其方、前に言っていたよな? レオニスやライト、アル達と雪合戦でもするか、と』
「あー、そういやそんなことも言ったっけな…………!?!?!?」
氷の女王の問いかけに、ラウルが記憶の糸を手繰っていたその時。
ただならぬ圧を感じて背筋が凍ったラウルが、思わずガバッ!と後ろを振り返った。
その殺気にも近い謎の圧は、シーナの巨大な身体の向こう側にいたレオニスから出ていた。
「何ィ? 雪合戦、だとぅ?」
ニヤリ……と笑いながら立ち上がったレオニス。
雪原を蹴って高く飛び上がり、ラウルの前にストッ!と降り立った。
ただでさえ普段から勝負には全力で挑むレオニスのこと。『雪合戦』と聞いて黙っていられる訳がない。
かつてラウルが氷の女王との会話で何気なく口にした、ご主人様達やアル達と雪合戦でもするか、という言葉。
それを知ったレオニスが、真正面から受けて立つ時がきた。
「面白ぇ、やろうじゃねぇか」
「え、何ナニ、レオ兄ちゃんとラウル、雪合戦するの!? ぼくもやるー!」
やる気満々のレオニスに、ライトがいの一番で参戦表明をした。
この兄にしてこの弟あり、である。
ライトの参戦を受けて、レオニスもますますやる気のボルテージが上がりまくる。
「よーし!そしたら今から皆で雪合戦をやるぞ!」
「「『ヤッターーー!!』」」
「まずはチーム分けをするぞ!俺チームとラウルチーム、戦力が拮抗するように分けるからな!」
「「『はーい♪』」」
雪合戦開催の音頭を取るレオニスに、ライト、アル、アトラのお子様三人組は両手を上げて大賛成&大喜びしている。
その後ろで、シーナと氷の女王がゴニョゴニョと小声で相談し合っていた。
『……わ、私もその雪合戦とやらに参加が確定しているのですかね?』
『た、多分……』
『というか、それは私だけではなく……氷の女王、貴女もですよね?』
『そそそそれは……』
『だってほら、ご覧なさい。既にエレ様がやる気満々なんですもの……』
『ぉぉぅ、何ということでしょう……』
美女二人の戸惑いつつも現状把握に務める姿は立派なものだ。
そうして程なくして、レオニス主導の雪合戦開催準備が整って行った。