軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1724話 銀碧狼親子との再会

氷の女王やアトラとともに、氷の洞窟の入口に出たライト達。

外に出ると、ちらほらとした雪が降っていた。

「おぉおぉ、今日もツェリザーク近郊は雪が絶えんな」

「ライト、アルの居場所は分かるか?」

「ンー、ちょっと待ってね……」

ライトが『マップ』と念じ、目の前に開いたマップを見る。

これは以前フェネセンからプレゼントされた魔導具で、同型のイヤーカフを持つ者を探知してホログラムのマップに映す、というものだ。

それによると、マップのかなり端の方に青色の点=アルの反応があるのを確認した。

「あ、アルの反応があった!ここから結構離れてそうだけど」

「そしたらラウルといっしょに迎えに行くといい。この雪の中をライト一人で出かけるのは、さすがに危険だからな」

「うん。ラウル、お願いしてもいい?」

「もちろんだとも。小さなご主人様の護衛もまた、執事の務めのうちだからな」

「ありがとう!」

レオニスの提案とライトのお願いに、一も二もなく承諾するラウル。

執事という職業に主人の護衛が含まれるかどうかは微妙なところだが、今のラウルならば問題なくこなせるだろう。

何しろラウルは立派な現役冒険者で、ツェリザーク最大の脅威である邪龍の残穢すらブチ抜く実力があるのだから。

ライトがその胸に抱っこしていたアトラを氷の女王に渡す。

アルの捜索に、アトラまで連れていく訳にはいかないからだ。

ライトとラウルがふわり、と宙に浮き、レオニス達に声をかける。

「じゃ、いってきまーす!」

「おう、気をつけていってこいよー」

『ラウル、ライト、気をつけて出かけるのだぞ!』

「すぐに戻ってくるから、ご主人様も氷の女王とエレの護衛をよろしくな」

「おう、任せとけ。ここで留守番してる間に、氷の女王にも例の件の報告をしてるからよ」

「了解」

留守番組への挨拶後、ライトが飛んでいった方向にラウルが後追いでついていく。

結構な勢いで飛んでいく二人を見て、氷の女王は『おお、ライトも空を飛べるようになったのか。人族の子供の成長というのは、実に早いものだな』と感心しているが、アトラは『……ン? 人族って、空を飛べる生き物だったっけ?』と怪訝そうな顔で不思議がっている。

しかしその後、すぐにニパッ☆と笑いながら『……ま、いっか!』と受け入れるあたり、なかなかに楽観的な一面も持っているようである。

「さて、そしたら氷の女王にも話しておかなきゃならんことがある。さっきエレにも話したが、例の事件……氷の洞窟で精霊達を拉致しようとした奴等の件だ」

『うむ、是非とも聞かせてもらおう』

アルを探しに出かけたライト達を見送った後、レオニスは氷の女王にも精霊達を付け狙う輩達の末路や人族の対応などを話して聞かせていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトとラウルが氷の洞窟入口から飛び立ち、目当ての方向に向かって飛び続けること約十分。

ライトは雪景色の向こうにアルを見つけた。というか、アルの方も猛烈な勢いでライト達の方に向かってきていた。

どうやらアルの方も、ライトが近づいてきていることに気づいていたようだ。

ライトが飛行スピードを急速に落とし、ライト目がけて一直線に走ってくるアルをガシッ!と抱きとめた。

大ジャンプで胸に飛び込んできたアルに、ライトも嬉しそうに頬ずりする。

「アル!久しぶり!」

「ワォンワォン!」

久しぶりの再会を喜ぶライトとアル。

親友達の再会を、ラウルも微笑みながら見守っている。

すると、しばらくしてアルが走ってきた方向から声が聞こえてきた。

『アルー、待ちなさぁーい!貴方、どこに行くのー!? というか、走るの早過ぎよー!?』

アルよりだいぶ遅れて到着したのは、アルの母シーナであった。

我が子のもとにようやく追いついたシーナ、肩で息をしていて完全に息切れ状態だ。

『ハァ、ハァ……アル、貴方って子は、全く……って、ン? ライトにラウル、ですか?』

「はい!シーナさんもご無沙汰です!」

「よう、シーナさん、久しぶり。何だ、アルに置いてけぼりにされたのか?」

『ええ……突然走り出したかと思ったら、とんでもない勢いでずっと走り続けましてね。一体何事が起きたかと思いましたが……そうですか、ライト、貴方の存在を感知したからだったのですね。合点がいきました』

ぐったりとしながら、挨拶もそこそこにこれまでの顛末を語るシーナ。

アルがライトの存在に気づいた瞬間、一言も発さずに一目散で駆け出したらしい。

それを追いかけるのにシーナは必死に苦労した、という訳だ。

やんちゃな子供相手の子育ては、本当に大変そうである。

そうした育児に奮闘するシーナを見て、ラウルが徐に空間魔法陣を開いた。

「シーナさんもご苦労さん。さ、これで一息ついてくれ」

雪原の上でへたり込むシーナの前に、ラウルが差し出したのは大きなバスケット。

そのバスケットの中には大量の唐揚げが入っていた。

極寒の地で御開帳されたバスケットから、大量の湯気がもうもうと立ち上る。

そして湯気に負けないくらいに美味しそうな匂いが辺り一面に広がり、シーナの鼻をこれでもか!とばかりにくすぐる。

『あらまぁ、これは嬉しい差し入れですね』

「アルを散々追っかけて草臥れただろう。一休みがてら摘んでくれ」

『ありがたくいただきましょう』

「あ、揚げたてで熱いと思うから気をつけてな」

『大丈夫、この雪の中では熱々の唐揚げでもすぐに冷めましょう』

熱々唐揚げで口の中を火傷しないよう、ラウルが忠告する。

シーナもそれは重々承知していて、フー、フー、とバスケットに向かって息を吹きかけている。

大好物の唐揚げを冷ますために、一生懸命に息を吹きかける銀碧狼。滅多にお目にかかれない、レアで可愛らしい場面である。

シーナが一休みしている間に、ライトはアルとシーナに向かって今日の目的を話して聞かせた。

「アル、シーナさん、今日はぼく達、氷の女王様やエレに会うために氷の洞窟に来たんです。でも、それだけじゃ寂しくて……アルとシーナさんにも会いたかったんです」

『そうでしたか……(もぐもぐ)……レオニスも、氷の洞窟に来ているのですか?……(もぐもぐ)……』

「はい。アル達に会うことを話すと、氷の女王様もシーナさん達に会いたい!と言って、氷の洞窟の入口でエレやレオ兄ちゃんといっしょに待っています」

『まぁ……(もぐもぐ)……滅多なことでは外に出ることのないあの子が……(もぐもぐ)……』

唐揚げを頬張りながら、ライトの話に聞き入るシーナ。

シーナは氷の女王と長い付き合いがあるだけに、彼女の性格や取る動向などもよく知っている。

シーナが知る氷の女王は、人見知りを通り越した人嫌いで、それが故に氷の洞窟の最奥の間から出ることもほとんどなかった。

そんな氷の女王が、シーナに会いたいがために最奥の間から出て、エレとともに洞窟の外で待っているというではないか。

これはシーナにとっても驚くべき変化であり、喜ばしい話であった。

バスケットの中の唐揚げを、一つ残らずペロリ☆と平らげたシーナ。

舌で口の周りを舐めながら、すくっ!と立ち上がった。

『では、こんなところでのんびりしていられませんね。あまり長く待たせても可哀想ですから、すぐに向かいましょう』

「了解。シーナさん達は、氷の洞窟がとっちの方向にあるか分かるか?」

『もちろん。この地に住む者で、氷の洞窟が発する特殊な魔力を感知できない者などおりませんよ』

「上等だ。そしたら先導はシーナさんとアルに任せるか」

ラウルの問いかけに、シーナが自信満々で答える。

確かに氷の洞窟はこの一帯でも非常に特殊な場所であり、特異点ならではの異質さは野に生きる者達にも大きな影響を与えていた。

そしてライトもまたアルに問いかけていた。

「アル、今から氷の洞窟に行くんだけど、まだ走れる?」

『バウワウ!』

「そっか!じゃあどっちが早く氷の洞窟に着くか、競争だね!」

『ワォーン!』

「ぼくだって負けないからね!」

ライトの質問に、元気いっぱいに応えるアル。

その元気さは有り余るほどで、これならまだまだ余裕で走れそうなことがライトにも分かる。

そして『競争』という言葉を聞いた途端、アルがものすごい勢いで駆け出した。

フライング気味のスタートだが、ライトはそれを責めることなく瞬時に駆け出した。

しかし、子供達が元気いっぱいなのはいいが、それを見て慌てるのはシーナである。

猛烈な勢いで走り去るアルとライトを見て、ギョッ!とした顔で追いかけ始めた。

『え? ちょ、アル!? ちょっと待ちなさーい!』

人目も憚らず、わんぱくな我が子の後を慌てて追いかけるシーナ。

威厳もへったくれもない銀碧狼親子のドタバタ追走劇を、ラウルがくすくすと笑いながら飛んで追いかけていった。