軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1712話 アレクシスの大暴走

アレクシスの真摯な謝罪を、炎の洞窟の主達は受け入れた。

これにはアレクシスも心底ほっとしたようで、土下座体勢から尻もちをついたような姿勢で座っている。

そんな格好のつかないアレクシスに、レオニスがそっと手を差し伸べた。

「……さ、あんたも無事炎の女王達に許してもらえたことだし。緊張して疲れただろ? ここらで休憩にでもしようじゃないか」

「ぁ、ぁぁ……本当に、本当に許していただけて良かったよ」

レオニスの手を取り、ゆっくりと立ち上がったアレクシス。

その隙に、それまでレオニスに抱きついていた朱雀が何を思ったか、アレクシスの肩の上に飛び移ったではないか。

幸いにも今のアレクシスは耐火耐熱仕様のマントを羽織っているから無事だが、これがもし丸腰状態なら火だるまになること間違いなしである。

「おい、フラム、アレクシスは何の加護も持たない普通の人間なんだから、身体に飛び移ったら危ないじゃないか」

『……ぁ、そっか、そうだよね、ごめんね』

レオニスからの注意に、フラムがはたとなり慌ててアレクシスの身体から離るべく飛び立とうとした。

だがその瞬間、アレクシスもまた慌てて叫んでいた。

「フラム様!私のことなら、どうかご心配なさらず!このアレクシス、フラム様の聖なる炎に焼かれるのであれば!我が生涯に一欠片の悔い無しにて、本望にございます!」

「ぉぃぉぃ、アレクシス、そんなんしたら普通に焼け死んじまうだろうが……」

「いいや!大丈夫と言ったら大丈夫だ!エクスポーションの百本も飲めば問題ない!」

「ぉぃぉぃ、エクスポ百本なんて飲みきれる量じゃねぇだろうよ……うちのご主人様ならともかく」

興奮気味に無事を強調するアレクシス。

これはあれか、最推しから自分の方に寄ってきてくれたことや肩に乗っかってもらえたことの喜びから来ているのか。

いずれにしてもアレクシスの尋常ではないハイテンションぶりに、レオニスだけでなくラウルまでもがツッコミを入れている。

ただしそのツッコミは、流れ弾となってレオニスにまで向かう凶弾と化しているような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

正常な判断が全くできていないアレクシスと、フラムを含むレオニスとラウルのやり取りを見ていたライト。

アレクシスは普段は優秀な領主なのに、炎の洞窟の主達を前にして大暴走するとは何とも意外だ。

しかし、長年ずっと敬愛してきた対象を前にすれば、誰しもがアレクシス同様に歓喜で舞い上がるだろう。

そんなアレクシスの微笑ましくも意外な一面に、ライトはついくすくすと笑ってしまう。

あー、アレクシス侯爵様って本当にフラム達のことが大好き過ぎるよね!

うんうん、その気持ち分かるよー。だってフラムはすっごく可愛いし、炎の女王様は超絶美麗な上に性格もすっごく優しいもん!

でもまぁね、レオ兄達が心配するのも当然だよな。だって侯爵様の身体にフラムの炎が燃え移ったりしたら、それこそ洒落になんないし……

……よし、ここは一つ、俺が一肌脱ぐとするか!

ライトはそんなことを考えながら、炎の女王に声をかけた。

「炎の女王様、とりあえずこの洞窟内にいる間だけでもいいので、アレクシス侯爵様に炎の女王様の加護をつけてあげていただけませんか? でないとこの先、ここでいっしょにお茶をするにしても何かと差し障りがありそうですし」

『ン? そうだな……妾もまずはその者の話をきちんと聞きたいしな。良かろう、ひとまずこの者に妾の加護を与えよう』

ライトの進言に、炎の女王が頷きながらアレクシスに向けて右手を翳した。

これによりアレクシスは炎の女王の加護を獲得し、フラムの炎に焼かれない状況を得た。

己の身の内から湧き出る熱い何かに、アレクシスが感激の面持ちで呟く。

「おおお……この熱く無限に迸るかのような力が、炎の女王様のご加護なのか……何という栄誉か」

『うむ。ただし、その加護は一時的なもので永劫ではない。もし汝がフラム様と会話するに相応しくないと妾が断じれば、その時は今しがた与えた加護を取り消すからそのつもりでいるように』

「もちろんです!炎の女王様、例え今限りのものであろうとも、このように素晴らしいご加護をいただけただけで光栄にございます!このご恩、終生忘れませぬ!そしてライト君、炎の女王様に口添えしてくれてありがとう!」

「どういたしまして!」

炎の女王の忠告も何のその、非常にご機嫌な様子で炎の女王の加護を大喜びするアレクシス。

もちろんその橋渡し役をしてくれたライトへの礼も忘れない。高位貴族にしては珍しい、実に誠実な人柄である。

そしてアレクシスは、今も自分の右肩に乗っているフラムに早速声をかけた。

「ささ、フラム様。肩などと言わず、どうぞ我が頭上にお乗りください!」

『ン? いいの?』

「はい!フラム様に乗っていただけることは、これ以上ない誉れにございますれば!どうぞ遠慮なくお越しください!」

『そっかー、ンじゃお言葉に甘えてそうするね☆』

アレクシスのフラムを下にも置かぬ歓待ぶりに、フラムが喜んで応じる。

右肩からぴょい☆とアレクシスの頭の上に飛び移ったフラム。何故だか分からないが、とても嬉しそうだ。

砂の女王の相棒であるガベリーナも、レオニスの頭の上に乗っかるのが大好きだったが。神殿守護神には、そうした共通の嗜好傾向でもあるのだろうか?

敬愛して止まないフラムを頭の上に乗せたアレクシス。

突如くるっ!と身体の向きを変えて、今度はラウルに声をかけた。

「ラウル君、折入って一つ相談があるのだが」

「ン? 何だ?」

「フラム様や炎の女王様とともに、美味しいおやつを食べながら今後の話をしていきたい。ついてはラウル君、君におやつタイムの支度を依頼したいのだが。頼めるだろうか?」

「おう、いいぞ。俺もフラムに渡すものがあるからな、皆でゆっくりとお茶でもしたいと思っていたところだ」

「快諾ありがとう。この報酬は、また後ほど改めて用意すると約束しよう」

「期待してるぜ」

休憩を兼ねたおやつタイムの準備に、アレクシスはラウルを指名した。

アレクシスもラウルの作るスイーツ類の虜の一人。

最推しとの交流を図れるおやつタイム、その非常に重要性の高いひと時を任せるに相応しい適任者はラウルを於いて他にはいないのである。

「さ、じゃあそしたらテーブルやら何やらを出すか。ライト、マキシ、準備を手伝ってくれるか?」

「「うん!」」

ラウルに手伝いの指名を受けたライトとマキシ。嬉しそうな笑顔で一も二もなく快諾する。

そうして炎の洞窟の最奥の間で、プロステス領主アレクシス・ウォーベックも交えたお茶会が開かれることとなった。