軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1666話 レオニスの謝罪と火の姉妹の赦し

レオニスと火の姉妹の心温まるやり取りを、ラウルやフラム、ゼスとともに微笑みながら見守っていた風の女王。

両者のやり取りが一段落したところで、火の女王に声をかけた。

『火のお姉ちゃん、レオニスにまた木の枝を分けてもらってきたわ!』

『おお、先程其方に頼んだお遣いか。立派に果たしてくれてありがとう、これで炎の女王も妾もより完璧に体調回復が適う』

『エヘヘ、また褒められちった♪ ……あ、そうそう、レオニスとラウルが火のお姉ちゃん達に特別なご馳走を用意してくれたのよ!』

『『特別なご馳走???』』

ニコニコ笑顔の風の女王が、神樹の小枝を火の姉妹にそれぞれ一本づつ渡した。

その枝を『特別なご馳走』と言われたことに、火の女王と炎の女王が不思議そうな顔で首を傾げている。

パッと見は先程まで使っていた神樹の小枝と大差ないのだが、その違いにいち早く気づいたのは火の女王だった。

『ン……確かにこの小枝からは、途轍もない良質な魔力を感じる……』

『言われてみれば……確かに火の姉様の言う通りですね……』

火の姉妹がそれぞれ右手に持った神樹の小枝に、彼女達の身体から発している火や炎が移り燃え始めた。

エリクシルを一滴垂らした特別な小枝。燃え上がる火や炎は普通のものと違い、内側がキラキラと黄金色に輝いている。

それだけではなく、これまでにない芳しい香りが辺り一帯に漂っていた。

そうして神樹の小枝が燃え尽きる頃には、火の姉妹の体調は完全に回復していた。

『実に良い馳走であった……』

『ええ……私も先程まで感じていた怠さが、一気に吹き飛んだ気がします!』

『風の女王よ、確かにこれは特別な馳走だったが……先程までの小枝と比べて、何がどう違うのだ?』

『えーっとねぇ、レオニスとラウルがエリクシル?っていうお薬を葉っぱにつけてくれたんだよね』

『『エリクシル、とな?』』

エリクシルの存在を知った火の姉妹に、レオニスの方から説明した。

エリクシルとは人族が持つ秘薬であること、これを一滴垂らせばどんな病気や大怪我であろうとたちまちに治ることなど。

それを聞いた火の姉妹が、納得したように大きく頷いている。

『そのような秘薬が存在するとは……人族の叡智は底知れぬな』

『全くです……レオニス、そのエリクシルというものを妾だけでなく火の姉様にもくれてありがとう。おかげで妾の体調も完全に良くなった』

エリクシルについて礼を言う炎の女王に、レオニスが慌てて声をかける。

「いやいや、炎の女王、頭を上げてくれ。俺は俺ができることをしたまでだし、むしろ俺の方こそ炎の女王に謝らなきゃならん」

『ン? 妾を助けてくれた汝が、何故謝るのだ?』

「それは……炎の女王をこんな酷い目に遭わせたのは人族であり、その原因を作ったのが他ならぬ俺のせいだからだ。炎の女王……本当にすまない」

本当に申し訳なさそうに謝るレオニスに、炎の女王は戸惑いを隠せない。

しかし、火の女王はレオニスの謝罪の解説を求めた。

『レオニス、その話を詳しく聞かせよ』

「ああ。事の始まりは火の女王、あんたからもらった【火の乙女の雫】なんだが―――」

レオニスは懺悔するように、これまでの経緯を話して聞かせていった。

孤児院の再建資金を得るために【水の乙女の雫】と【火の乙女の雫】を競売にかけたこと、競売で乙女の雫を入手できなかった者がその獲得のために動いたこと等々。

それらを一切隠すことなく、レオニスは正直に明かしていった。

『ふむ……つまり、吾が其方に与えた乙女の雫を巡ってこのような事態になった、という訳だな?』

「そういうことになる……全ては俺のせいだ。本当に申し訳なかった!」

『『………………』』

レオニスが火の姉妹に向かって、ガバッ!と頭を深々と下げて謝罪した。

その様子を火の姉妹は静かに見ていたが、ここでラウルが擁護に回った。

「火の女王、そして炎の女王、うちのご主人様をあまり責めないでやってくれないか。確かに今回の犯行は、欲に目が眩んだ愚かな人族がしたことだが……人族にだって善いやつと悪いやつがいる」

「ラウル、言うな。俺を庇ってくれるのはありがたいが、その欲深い奴らが炎の洞窟を狙い出した原因は結局俺にあることに変わりはないんだから」

「でも……それはご主人様のせいばかりではないだろう。精霊を付け狙う奴らが一番悪いんだからよ」

「それでもだ。俺が大金目当てにオークションなんて目立つ場で売り捌いたりしなければ、こんなことにはならなかった」

「それは……」

レオニスを懸命に庇うラウルだったが、当のレオニスがそれを拒否してはどうにもならない。

実際にレオニスの言う通りで、レオニスが【水の乙女の雫】と【火の乙女の雫】を鑑競祭りという世界的イベントで出したりしなければ、ここまで乙女の雫が世間の注目を集めることはなかっただろう。

それはラウルにも分かるだけに、言葉に詰まっていた。

しばし沈黙が流れた後、最初に口を開いたのは炎の女王だった。

『……レオニス、汝が謝る必要などない。妾達がくれてやったものをどう扱おうと汝の自由。乙女の雫とてそれは変わらぬ』

「だが……そのせいで、人族が出入りしやすい炎の洞窟や氷の洞窟が狙われるようになったんだ。こんなことになるなら、乙女の雫を売るべきじゃなかったんだ」

『それだって、汝はその孤児院とやらを救うために致し方なく売ったのであろう? それを責めるなど、妾にはできぬ』

「「『『………………』』」」

静かに語る炎の女王の言葉に、レオニスだけでなくその場にいる全員が黙り込んでしまった。

レオニスは、決して私利私欲で乙女の雫を売ったのではない。

天涯孤独の子供達が身を寄せる孤児院、その再建のために必要な大金を得るためだった。

そして炎の女王に続き、火の女王も口を開いた。

『妾としては、人族の強欲さは腹に据えかねるし辟易もするが……レオニス、其方一人にその責を負わせるつもりはない』

「……二人とも、俺を許してくれるのか?」

『許すも何も。其方は吾等の恩人ではないか。なぁ、妹よ?』

『はい、火の姉様の言う通りです。レオニス、汝は妾の大恩人にしてフラム様の生みの親。この事実は、この先何があろうとも決して変わらぬ』

「……ありがとう……」

レオニスを一切咎めることなく赦すという火の姉妹に、レオニスは感謝の念に堪えなかった。