軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1645話 白妖狼達の名

「はぁー……気ぃー持ちいーーーぃ……」

南の天空島初の温泉に浸かりながら、一息つくライト達。

源泉がある大きな風呂の方は、サマエルから念話で伝えられた天空竜達がおそるおそる水面を覗き込んでいる。

ライトとレオニス、ラウルは源泉からお湯が流れ込む湯温が高めの場所に浸かり、白妖狼や花の精霊達はラーデとともに排水路近くに陣取って泳いだりして遊んでいる。

源泉から遠い方がお湯の温度も少し冷めて、使い魔達にも入りやすいからだ。

「それにしても、このお湯は魔力回復効果が抜群に高いな」

「だな。このお湯自体に相当量の魔力が含まれているからな。何なら氷の女王からもらう氷の槍と同等かもしれん」

「てことは、ツェリザークの雪解け水や氷の女王の氷槍の水で風呂に入るようなもんか」

「そう考えると、かなり贅沢な風呂ってことだよな」

温泉に浸かりながら、その効能(魔力回復(大))を肌で実感するレオニスとラウル。

こうして雑談している間にも、ぐんぐんと魔力回復していくのが分かる。

湯に浸かるだけで魔力が回復するというのは、このサイサクス世界でも事例がない訳ではない。

ティファレトのような温泉の有名どころもいくつかあるし、パワースポットと呼ばれる場所の湧き水も魔力回復することで知られている。

しかし、ここまで高い効能を持つ湯など現役冒険者であるレオニスですら知らない。

魔力はエーテル類を飲むことでも回復できるが、入浴するだけで回復できるならこれもアリだよな!とレオニスは思う。

するとここで、ライトがお湯でちゃぷちゃぷと腕を撫でながらレオニスに話しかけた。

「レオ兄ちゃん、このお湯には美肌効果もあるみたいだよー」

「何? そうなのか?」

「うん。ここのお湯で肌を優しく撫でると、ぬるぬるするでしょ? こういう風にぬるぬるするお湯って、肌の汚れや古い角質を落としてすべすべにしてくれるんだって」

「…………確かに。何か腕がすべすべになっている気がするわ」

「そしたら顔もよく撫でておくか」

ライトのワンポイントアドバイスに、レオニスだけでなくラウルまでもが感心しながら腕や顔、首筋、肩などをお湯で念入りに撫でまくっている。

レオニスもラウルももう既に十分にイケメンだというのに、これでまた美肌効果まで追加されたら一体どうなるのだろう。

するとここで、ラーデがライト達のもとにふよふよと泳いで来た。

『花の精霊達はそろそろ風呂から上がるそうだ。我も逆上せる前に上がろうと思う』

「あ、うん、分かった!ラウル、ぼくもそろそろお風呂から上がるけど、皆の身体を拭くのを手伝ってくれる?」

「了解ー」

「お、ちょうど俺もそろそろ上がろうと思ってたんだ。ライト、俺も手伝うぞ」

「うん!レオ兄ちゃんもお手伝いよろしくね!」

花の精霊達が風呂から上がると聞き、ライト達三人も揃って風呂から上がる。

まず自分の身体をバスタオルで軽く拭き、水気を取ってから脇の下で身体に巻きつける。

それからお風呂の縁で白妖狼や唐種招霊達を迎え入れて、別のバスタオルで優しく包み込んで精霊達の身体を拭いてあげている。

ライトは四種の花の精霊達を担当し、ラウルは白妖狼とラーデ、そしてレオニスは妖魔ジンの担当になった。

ライトとラウルの甲斐甲斐しい世話は微笑ましいが、レオニスが妖魔ジンのムキムキマッチョの身体を拭いている図はかなり暑苦しい気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

使い魔達の風呂上がりの世話が完了したところで、ライト達は服を着る前に水分補給をした。

ライトはコーヒー牛乳、ラウルは麦茶、レオニスは牛乳。

右手に瓶やコップを持ち、左手は腰に当ててクイーーーッ!と飲み物を飲み干す。

これは風呂上がり、特に温泉入浴において絶対に欠かせない重要な儀式なのである。

そうしてライト達が身支度を整え終えた頃、ふと大きな溜池の方を見ると、五頭の天空竜達がサマエルとともにのんびりと湯に浸かっていた。

『……なかなかに、心地良きものよのぅ……』

「「「……グルルルルゥ……」」」

主従揃って温泉に浸かるサマエルと天空竜。

特に天空竜達にとっては生まれて初めての入浴であろうが、結構気に入ったようで何よりだ。

そんなサマエル達に、まずラーデが声をかけた。

『サマエルよ、この温泉とやらは気に入ったか?』

『ああ、父上、もう湯から出られたのですか。では私も上がるとしましょう』

『そのように慌てずともよいが、これからまたレオニス達が卵の孵化を始めるのでな。其方もともに来てくれ』

『承知しました』

サマエルがザバッ!と湯から上がり、右手人差し指をピッ!と立てた。

すると、サマエルの身体を風魔法が包み込み、濡れた身体や翼を十数秒で乾かしていったではないか。

傍目にはそこまで強力な風魔法に見えなかったのに、その絶大な効果は目を見張るものがある。

『父上、お待たせいたしました。参りましょう』

『うむ。……ああ、そうだ、サマエルよ。あの子達の名を、まだレオニス達には伝えておらぬ。サマエルの方から伝えてやってくれ』

「ン? もう白い狼達の名前をつけたのか?」

『ああ。其方らが排水路を作っている間に、サマエルがつけたのだ』

「そっか、そしたら早速紹介してくれ」

ラーデの言葉を聞いたレオニスが、早速白妖狼や花の精霊達の名前を尋ねた。

ライト達の手で身体を乾かした白妖狼達が、同じく自身の風魔法で身体を乾かし終えたサマエルに嬉しそうに寄り添っている。

そんな健気な仲間達に、サマエルも微笑みながら白妖狼の背中を優しく撫でた。

『白い狼の名は『ザフィエル』、黄色い花の精霊は『シャティエル』、桃色の花の精霊は『ファヌエル』、白い花の精霊は『ラティエル』、青い大きな精霊は『ザドキエル』だ』

「おおお……何かすんげーカッコいいな……」

「どれも皆素敵な名前だね!」

「おお、どこぞのご主人様の名付けとは大違いだ」

『うむうむ。さすがは我が子だ』

サマエルが告げた新しい仲間達の名前に、ライト達が全員感嘆している。特にラーデなど、誰よりも得意げに頷いている。

サマエルという自分の名の一部『エル』を取って全員共通でつけていて、どれも良い響きを持つ名前だ。

どこぞの某大陸最強冒険者がつけた『ドラ子』『ドラ恵』『ドラ代』、『ブル子』『ブル恵』『ブル代』『ブル美』とは天地の差である。

「よし、これなら卵を次々と孵化させても問題なさそうだな」

「そうだね、じゃんじゃん孵化させていこっか!」

「じゃ、早速始めるか」

新しい仲間達の名前が思いの外素晴らしいものになり、ライト達が安心して卵の孵化作業を再開した。

これから二十個近くの卵を孵化させるが、サマエルならば全ての子に良い名を与えてくれるだろう。

そうしてライト達は、茶色い卵を次々と孵化させていった。