軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1644話 南の天空島初の温泉の効能

サマエルが山の麓に開けた穴の壁面を、レオニスが土魔法で形を整えてからラウルが同じく土魔法で岩を生み出して、隙間なく覆い敷き詰めていく。

畑作りの時から魔法をガンガン使っているので、二人とも薬師ギルド製の三倍濃縮アークエーテルを時折ぐい飲みしては魔力を補充しながらの作業だ。

「カーーーッ!この濃縮アークエーテル、味はともかく一本で三本分の効果ってのが素晴らしいよな!」

「全くだ。これのおかげで助かっている冒険者はたくさんいるだろうな」

「ああ。特に魔法使いにとっては、もはや必需品になりつつあるらしいな。ピースも「ンー、マズい!もう一本!」とか言いながら、呪符作りの時にガンガン愛用してるってよ」

「そりゃすげーな」

本日五本目の濃縮アークエーテルを飲み干した後、レオニスは空き瓶を空間魔法陣に仕舞いながらラウルとともに大絶賛している。

レオニスが薬師ギルドで聞いた話では、この新商品である濃縮回復剤類が飛ぶように売れているのだという。

今のところ薬師ギルドで販売しているのは『三倍濃縮エクスポーション』と『三倍濃縮アークエーテル』の二種類だけだが、いずれ五倍濃縮や十倍濃縮も開発して販売するのが目下の目標なのだとか。

レオニスと話をしていた薬師ギルドマスターであるロイドが「クックック……私が薬師ギルドマスターを務めていられるうちに、何としても十倍濃縮と錠剤型のグランドポーションとコズミックエーテルを開発してみせますよ……」と、それはもう怪しい笑みを浮かべていた。

四十代半ばのロイドが『ギルドマスター在任中には』と語るくらいだから、きっとそれは数年どころか十年、二十年単位での開発時間を要するビッグプロジェクトなのだろう。

壮大なビッグプロジェクトに意気込むロイドに、レオニスも「ぉ、ぉぅ……無理しない程度に頑張ってな」と励ます他なかった。

そして今日は、薬師ギルドの努力の結晶である三倍濃縮アークエーテルのおかげで南の天空島の天然温泉の排水路を確保できた。

排水路の出口、天空島の外壁側からもレオニスが空中を飛んでしっかりと確認した。

ここから余分な水が外に排出される訳だが、毒入りの水を垂れ流す訳でもないので問題はなかろう。

排水路が完成し、レオニスとラウルがライト達のもとに戻ると、二つ目の溜池の方にお湯が入り始めたところだった。

そのすぐ横にある一つ目の超巨大な溜池、サマエルと天空竜達のための浴槽?にはたっぷりとお湯が貯まっている。

「おー、だいぶ温泉らしくなってきたな!」

「ねぇねぇ、レオ兄ちゃん。せっかくだから、こっちの溜池にお湯が溜まったら皆でお風呂にしない?」

「お、それいいな。畑作りや排水路作りで散々働いたしな。家に帰る前に、ここでサッと汗を流していくか」

「ヤッター♪」

ライトの提案に、レオニスがパッ!と明るい顔で賛同する。

一番最初に温泉水を全身に浴びたレオニスが、臭いや色、指につけて少し舐めた限りでは毒や有害成分は感じられなかった。

これなら入浴しても大丈夫だろう、という判断をきちんとした上での許可である。

ちなみにライトの方でも、この温泉水が『単純温泉』であることを【詳細鑑定】で把握済みだ。

レオニスとラウルが山の麓から島の外までの排水路を作っている間に、こっそりと調査していたのだ。

【詳細鑑定】で出たのは、以下の通りである。

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性質:アルカリ性単純温泉(ph8.5)

特徴:サマエルの膨大な魔力が溶け込んだ水。

入浴、飲用ともに可。

ただし、魔力の少ない者はすぐに逆上せるので長湯不可。

効能:魔力回復(大)、美肌効果、胃腸改善

コップ一杯の飲用でセラフィックエーテル一本分のMP回復効果がある。

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この結果を見たライトが、思わず「おおおッ!こりゃすげー!」と大絶賛した。

入浴だけでなく飲用も可で、しかもコップ一杯で高級回復剤のセラフィックエーテル一本分に相当するMP回復効果が得られるというのだから驚きだ。

これもサマエルの膨大な魔力を貯め込み続けてきた恩恵か。

するとここで、ライトがはたとした顔でアイテムリュックを漁りだした。

「あ、お風呂に入る前にお持ち帰り分を確保しとこうっと」

「お、そうだな、俺もツィちゃんへのお土産や自分用に持ち帰りしなきゃ」

「なら俺もバケツに汲んでおくか。こんだけ魔力が満ちた水だ、いつかどこかで役に立つかもしれんし」

ライトのお持ち帰り発言を機に、ラウルどころかレオニスまでいそいそと水の持ち帰りの支度を始めた。

綺麗な水を確保するなら、お風呂に入る前の今のうち!という訳である。

三人して大量のバケツをそれぞれに取り出し、温泉水を汲んではアイテムリュックや空間魔法陣に仕舞い込んでいく。

子供一人と大の男二人が、一人バケツリレーをせっせと繰り広げる様はなかなかにシュールな図である。

そうして一人三十杯ほど温泉水を確保した後は、いよいよ入浴の準備だ。

二つ目の溜池にはまだ水が貯まりきっていないが、その間にもすべきことがある。

少し離れた場所で待機?していたラーデとサマエルに、レオニスが大きな声で呼びかけた。

「おーい、ラーデ、サマエル、ちょっとこっちに来てくれー」

レオニスの呼びかけに応じ、ラーデとサマエルがライト達のもとに来た。

「サマエル、この大きな方の温泉は天空竜達に使ってやってくれ」

『うむ。湯に浸かるという習慣は我らにはないし、その是非や好き嫌いはあるだろうが……好きな者が自由に使うよう、天空竜達に通達しておこう』

「おう、そうしておいてくれ。でな、こっちの小さくて浅い方。これはさっき生まれた白い狼や花の精霊、青いムキムキマッチョ達用の泉だ。湯温は大きい方の源泉より下がるだろうが、ま、特に花達にはその方が都合が良いだろ」

『承知した』

湧き出た温泉の活用方法をサマエルに伝授するレオニス。

白い狼や花の精霊はともかく、妖魔ジンのことを『青いムキムキマッチョ』呼ばわりするのは如何なものか。

とはいえ、今彼ら彼女らの正体を知っているのはライトだけで、レオニスには知りようもない。

さらにはサマエルの名付けもまだ済んでいないので、青いムキムキマッチョと呼ぶのも致し方なしか。

「さ、そしたら俺達もこのお湯に浸かりたいんだが。サマエル、いいよな?」

『うむ。ここにある一連の器は、お前達が作ったものだしな。ここで浸かっていくが良い』

「よーし、そしたらさっき卵から生まれたやつら全員、産湯代わりに風呂に入ろうぜ!もちろんラーデとサマエルもいっしょだ!」

『ぬ? 私まで入るのか?』

「そりゃそうさ。だってサマエル、お前はこの天空島の主なんだからよ。ここに出た温泉の浸かり具合とか、気にならんか?」

『うぬぅ……そう言われれば、気になってくるではないか……』

レオニスの思わぬ提案に、サマエルがびっくりしたような顔をしている。

しかしレオニスの言うことも尤もで、天空島に湧き出た温泉の効能が全く気にならないと言えば嘘になる。

強引なようでいて尤もなレオニスの誘いに、サマエルとしても乗らざるを得なかった。

「じゃ、早速風呂に入るか。俺達が入浴の支度をしている間に、サマエルは天空竜達にも風呂に入るよう言っといてくれ」

『承知した』

「ラーデは白い狼達をこっちに連れてきてくれ」

『うむ、任せよ』

テキパキと指示を出すレオニスに、サマエルもラーデも素直に応じている。

その間ライトはいそいそと服を脱ぎ、ラウルは人数分のタオルや服を入れる篭、タオル置き場代わりのテーブルを出すなどの準備を万端に整えていた。

「よーーーし、天空島初の温泉に皆で入るぞーーー!」

「「『おーーー!』」」

レオニスの掛け声に、ライト達が元気よく加勢する。

全員すっぽんぽんとなったライト達のテンションはアゲアゲだ。

そうしてライト達は、南の天空島で湧き出た温泉にドボーーーン!と飛び込んでいった。