軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1642話 南の天空島での新たな仕事

南の天空島で休憩兼お茶会を始めたライト達。

自分達の分だけでなく、新たに生まれた白妖狼や花の精霊、ジンにももちろんちゃんとおやつを用意している。

唐種招霊を始めとした草木や花の精霊達には、カタポレン産巨大桃を一口カットにしたもの。

精霊達はサイズが小さいので、ライト達のテーブルのド真ん中に桃を置いて食べさせている。

一方で肉食系っぽい白妖狼とジンには、それぞれに冷ました唐揚げの山盛りを一皿づつ。

直径100cmの超大皿に盛られたピラミッド状の大ぶり唐揚げは、なかなかに壮観な図である。

甘い桃を大喜びしながら食べる様子は、何とも微笑ましい。

ちなみにこの超大皿は、ラキ達オーガ族から譲り受けた皿だ。

ライト達人族には規格外で大き過ぎる皿だが、オーガ族にとっては普段使いの通常サイズ。

食器マニアなラウルが、料理教室開催の謝礼代わりに是非にと頼み込んで譲ってもらったらしい。

こういうところで役に立つのだから、ラウルの食器好きという趣味もなかなか侮れない。

そして、サマエルの警護のために近くに侍る近衛の三頭の天空竜にもカタポレン産巨大林檎を一頭につき三個与えた。

この三頭はカタポレンの家でもサマエルの護衛をしていたので、ラウルが差し出した林檎の美味しさをよく知っている。

そのため、目をキラキラと輝かせながら林檎を無心で食べていた。

一方で、テーブルに着いてゆったりとお茶をするライト達。

テーブルのド真ん中でキャッキャとはしゃぎながら桃を食べる草木の精霊達を眺めながら、サマエルがラウルに話しかけた。

『この者達には、普段どのような食べ物を与えれば良いのだ?』

「基本的に、人族や俺達が食べられるものなら何でもイケる。野菜、肉、ケーキやお菓子なんかもOKだ。石や木、土、金属なんかの普通に食べられないものは、こいつらも食べない」

『水はたくさん要るのか?』

「普通に生きていく上で必要な量の水は要るな。ただ、花や草木の精霊は豊富で上質な水があればなお良しってところか」

『うぬぅ……水は何とかできるとしても、この天空島で食べられる物といえば山の木の実くらいしかないのだが……』

サマエルの質問に、ラウルが真摯に答える。

そしてその返ってきた答えに、サマエルが何とも渋い顔をしている。

確かにこの南の天空島には、およそ食べ物と呼べるようなものは見当たらない。強いて挙げるなら、山の木々が時折もたらす木の実がある程度か。

これでは白妖狼や唐種招霊達に食べさせてあげるものが全く無い!ということになってしまう。

そうなれば、生まれたばかりの仲間達が早々に餓えてしまうだろう。

これは非常に由々しき事態であり、早急に解決しておかなければならない問題である。

するとここで、レオニスが話に入ってきた。

「なぁ、サマエル。そしたらここの天空竜達は、普段は何を食ってんだ?」

『天空竜達に食事は基本必要ない。私との従属契約により、私の魔力が常時天空竜達に補給されているからな』

「え、何、まさかここにいる全部の天空竜をサマエル一人で養ってんの?」

『当然。その程度のことができずに、天空島の主を名乗れる訳がなかろう?』

「さいですか……さすがラーデの子だけあって、すげーんだな」

事も無げにサラッとすごいことを話すサマエルに、レオニスが心底感嘆している。

見たところ特に食べ物が豊富そうな様子もないこの島で、多数いる天空竜達は何を食べて過ごしているんだろう?とレオニスが不思議に思うのも当然だ。

しかしそれが、まさかサマエル一人で全てを賄っていたとは驚きだ。

これはやはりレオニスが言うように、竜の祖であるラーデが直に生んだ直系の子だからこその並外れた強さなのだろうか。

するとここで、ラーデがラウルに問うた。

『ラウルよ、ここに林檎や桃の木を植えることは可能だろうか?』

「ン? そうだなぁ……カタポレンの森程の大きさは望めんかもしれんが、やるだけやってみるか?」

『うむ、是非ともそうしてもらいたい。この地に新たな仲間を迎え入れるにあたり、彼ら彼女らが食せるものをたくさん用意しておけるなら、それに越したことはないからな』

ラーデの願いに、ラウルが思案しながら肯定的に答える。

この天空島で魔物の肉を用意するのは到底無理だし、毎回植え替えが必要な野菜類もサマエル達が栽培できるとも思えない。

故にラーデがラウルに助けを求めるのは当然の流れだし、ラウルがラーデの願いに応えたいと思うのも当然のことだった。

「そうなると、まずは林檎の木と桃の木の苗を用意しなきゃならんな。サマエル、それらを植えるとしたら何本要る?」

『ン? うーーーむ……ついでと言ってはなんだが、どうせ植えるなら私や天空竜達が食べる分もほしいし……うむ!できる限りたくさん植えてくれ!』

「たくさん、か……ま、こんだけ広い場所がありゃ三十本づつくらいは余裕で植えられるか」

なかなかに欲張りなサマエルの答えに、ラウルがぐるりと周囲を見回しながら呟く。

土地の広さで言えば、林檎や桃を百本くらい植えても全然問題ないだろう。

そして、野菜類と違って林檎や桃などの果樹であれば、細かい手入れなど毎日せずとも実をつけることが可能だ。

農作業に向かないであろう南の天空島の住人達には、まさにもってこいの作物である。

「しかし……この荒れ地にそのまま木を植えても、果物を育てるのはちと厳しいだろうな」

『何ッ!? ここではダメだと言うのか!? 貴様、先程は大丈夫だと言ったではないか!!』

「待て待て、そんなに慌てるな。土の状態が良くないってだけで、これから土魔法や肥料を用いて土壌の改良をしていく必要があるって話だ」

『そ、そうか……ならば良い』

ラウルの言葉に一瞬気色ばむサマエルだったがそれはただの早合点で、ラウルは何も南の天空島での果樹栽培を諦めた訳ではない。

まずは、兎にも角にも林檎や桃が育つ土壌を何とかするのが先決、という意味である。

逸るサマエルを制し、落ち着かせたところでラウルがレオニスに声をかけた。

「なぁ、ご主人様よ。ここに転移門を設置することは可能か?」

「ン? ンーーー…………分かった、明後日マスターパレンに会って話を通しておくわ」

「ありがとう、恩に着る」

ラウルの問いかけにレオニスが腕組みしつつしばし思案し、数秒後に承諾した。

ラウルが求めた転移門の設置は、ひとえにこの地に果樹を植えて育てるため。畑の運営と自給自足を始めた北の天空島の時のように、ラウルの積極的な指導及び協力なくして果樹栽培の成功はあり得ない。

そしてそれには、ラウルが南の天空島に自由に出入りできる環境が必須。

これを実現させるには、転移門設置は絶対に欠かせない。そのことはレオニスにもすぐに理解できた。

そして、できることならレオニスとしても南の天空島の面々達と交流を図っていきたい。

南の天空島の主であるサマエルはラーデの実子だから、レオニスとしても普通に仲良くしていきたいと思っている。

そしてそうした個人的な縁も大事だが、何よりサマエル達と敵対関係になりたくはない。

この強大な存在達を敵に回すのは、レオニス個人どころか人族全体にとっても悪手であることは明白だ。

そうした問題を回避し、今後もサマエル達と懇意になるためには転移門設置が必須であった。

ちなみにマスターパレンに許可を取るのが何故明後日なのか?というと、明日はラーデやサマエル達とともにファフニール達の見舞いに行くからだ。

ラーデの初孫の顔を拝みに行くのも大事な用事なので、それを済ませてからな!という訳である。

「さて、そしたら転移門設置の前に土魔法だけでもかけておくか。ライト、手伝ってくれるか?」

「もちろん!土魔法で土を柔らかくして、邪魔な岩や石を取り除いておかないとね!」

「その通り。ライトもよく分かってんじゃねぇか」

「そりゃあね!ばくだってカタポレンの家の畑で毎日お手伝いしてるもん!」

「いつもありがとうな」

「どういたしまして!」

助力を求めてきたラウルに、ライトが満面の笑みで快諾する。

土作りは畑仕事の基本中の基本であり、絶対に欠かすことのできない基礎工事のようなものだ。

ラウル程ではないが、ライトだってこれまでプランターや分けてもらった畑で様々な野菜類を育ててきたという自負がある。

そして何よりライトは、いつだって他者のために働くことを厭わない、心優しい万能執事ラウルの力になりたかった。

「よし、そしたら俺も手伝うぞ。でもって、土作りがある程度進んだら卵の孵化作業も再開しなくちゃな」

「うん!茶色い卵がまだ十九個あるもんね!」

「サマエル、俺達が畑の準備している間に狼や精霊達の名前を考えておけよ? でないとうちのご主人様が、とんでもねー名前を次々につけちまうからな?」

『ン??? ……う、うむ、迅速に考えるとしよう』

十分に一休みしたライト達、新たな仕事である南の天空島の土作りに早速取りかかる。

ライト達が畑作りの下準備をしている間に、サマエルとラーデには新しく生まれた白妖狼達の名前を考えてもらう―――まさに理に適った一石二鳥の策である。

ちなみにサマエルにはラウルの忠告の意味が今ひとつよく分かっていなかったが、サマエルの横にいたラーデが『うむ!その通りだ!』『サマエルよ、悲劇を味わいたくなければ早急に名前の候補をたくさん挙げるのだ!』と必死なまでに力強く肯定していた。

そうしてライト達は荒れ地の改善に向かい、ラーデとサマエルは白妖狼や草木の精霊達とともに彼ら彼女らの名前を考えるという使命を果たすべく、各々の成すべきことをしていった。