軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1642話 新たな仕事の先に待ち構えていたもの

その後ライト達は、三人で手分けして土魔法を駆使して荒れ地を開拓していった。

地表に転がっていた石はもちろん、大きめの岩も根こそぎ動かして退けておく。

レオニスが土を柔らかくするために、土魔法を広範囲かつかなり深くまでかけて地面を耕す。耕した地面から出てきた石も全て取り除き、一ヶ所にまとめておく。

この石がどうなるかと言えば、もちろん『ライトが全部いただく!』が正解である。

何の変哲もない石ころを、嬉々としてアイテムリュックに仕舞い込んでいくライトを見て、レオニスは「おぉおぉ、そんな石ころを拾って喜ぶなんて、ライトにも子供らしいところがあったんだな!」と嬉しそうに笑い、ラウルは「一見無価値な物に価値を見い出せるとは、さすがは小さなご主人様だ」と大絶賛していた。

しかし当のライトは、内心で『ヤッター!これでまたロレンツォさんのところでたくさんの砥石と交換してもらえるぞ!ウヒョヒョ☆』とほくそ笑んでいたりする。

無邪気な子供の体で、今日もライトはちゃっかりとあれこれ計算高く動いているのだった。

そしてこれも余談ではあるが、畑の開拓中に何と温泉が噴き出した。

林檎や桃の木を植えるのだから、少しでも大きく育つために根を張り巡らせられるように、とかなり深く土を掘り起こしたせいだろう。

地中に向けて土魔法をかけ続けていたレオニスが、ふと違和感のような謎の手応えを感じ「……ン???」と首を傾げたその瞬間。レオニスの目の前で、噴水の如く大量の水が湧き出したではないか。

突然の出来事にレオニスは「おわッ!」と仰け反り、尻もちをついてしまった。

破裂した水道管のように、勢いよく出てくる大量の水がレオニスの頭や身体にも降り注ぐ。

その水は冷たくなく、むしろお風呂のような温かい水だった。

「ぅぉー、びっくりした……って、これ、温泉か?」

「レオ兄ちゃん、大丈夫!?……って、これ、温泉?」

「ご主人様、どうした!?……って、これ、温泉か?」

『レオニス、何事か!?……って、これ、風呂水か?』

それぞれ離れた場所で作業をしていたライト達が、レオニスの身を案じて一斉に駆けつけてきた。

そしてレオニスのもとに集まった全員が、すぐにこの水が温泉であることに気づく。

ただし、ラーデだけは温泉と風呂水の区別がつかなかったようだが。

そしてこの温泉、どういう泉質かは今のところ全く分からないが、無味無臭なのに何故か力が湧いてくるような気がする。

これは、南の天空島全体がサマエルの豊富な魔力に満ちているせいだろうか。

しかし、そうと知らずに温泉を掘り当てたとなれば、この先の作業が俄然変わってくる。

これまた大喜びのライトが、興奮気味にレオニス達に提案し始めた。

「ねぇねぇ、せっかく温泉を見つけたんだからさ、ここにお風呂場を作っちゃおうよ!」

「お、それいいな。……って、風呂作ったとしても誰が入るんだ?」

「そりゃもちろん!サマエルさんや天空竜さん、それにさっき生まれたばかりの白い狼さんや花の精霊さん達が入るんだよ!」

「そうだなー、ここにいる皆が風呂に入れるようになるってのもいいかもな」

「でしょでしょ!」

「よっしゃ、そうと決まればここに巨大な溜池を作るか」

「賛成ー!」

ライトの提案に、レオニスとラウルが頷きながら同意する。

サマエルや天空竜達に入浴の習慣があるとは思えないが、それでもせっかくこうして温泉が噴き出たのだ。これを活用しない手はない。

早速ライト達は三人で一斉に土魔法をかけて、温泉が出た周囲の地面を大きく抉り取るように土を一気に取り除いていく。

ここで取り除いた土は、後で乾かして旧荒れ地を耕した際に石を取り除いて目減りした畑に補充する予定だ。

穴がある程度大きな面積になったら、レオニスが土魔法で岩を作り出し、これまた一気に器状態にもっていく。

器の面積は、ライト達が住むカタポレンの家とラウルが管理する周囲の畑全部を合わせたより大きい。

深さもレオニスの身長の五倍以上、約10メートルくらい掘り下げた。

これは、身体が大きい天空竜達でもいっぺんに何頭も入れるような考慮した結果である。

そして、水が器に貯まりきる前に別途で排水路を作り始めた。

今回の温泉は、今まで水の女王達が作ってきたような泉ではなく自噴した天然温泉なので、水量の調整機構が必要なためだ。

急いで排水路を作り、その先にももう一つ溜池を作り始めたライト達。

その面積は、先程の入浴用温泉の半分程度で深さは50cm程度。

こちらは新しい仲間である白妖狼や花の精霊達用の水場だ。

貯めた温泉水はこちらに入る頃にはある程度温度も冷めているはずなので、これから植える林檎や桃の木への灌水に使えるだろう。

そしてその先にも排水路を作ったが、その先には山がありそれ以上排水路を作れなかった。

ここまでの作業で約一時間が過ぎた。

三人は一旦作業する手を止めて、今後の作戦会議を始めた。

「ンー、このままだと温泉から出た水がここで溢れちまうよな……」

「本当はこの山に筒状の排水路を作って、島の外に水を出せれば一番いいんだが……ここに今からトンネルを一から作っていくってのは、さすがにちとキツいよなぁ」

「どうしようね? 日を改めてまた作業しにくる? でも、平日だとぼくはお手伝いできないけど……」

「戦力が一人減るのはキツいな……かと言って、一週間も先延ばしできるかどうかってーと微妙なところだし」

「「「……ぬーーーん……」」」

ライト達が三人してうんうんと呻りつつ悩んでいると、そこにラーデが来た。

『温泉とやらの支度はこれで完了なのか?』

「いや、実はな―――」

今ある問題をラーデに聞かせるレオニス。

それを聞いたラーデが、ふむ、と頷きながらサマエルを呼んだ。

『サマエル、ちょっとこっちに来てくれ』

『はい、父上、何でしょう?』

ライト達が苦戦していた温泉整備作業などキニシナイ!とばかりに白妖狼達と戯れていたサマエルが、ラーデの呼びかけに応じてライト達のもとに駆けつけてきた。

そんな現金なサマエルに、ラーデが一つ頼みごとをした。

『サマエルよ、この先にある山の麓に穴を開けることはできるか?』

『穴? どのくらいの穴でしょう?』

『径の太さは問わぬが、この水の道の続きを作る必要がある。故に山の向こうの外まで通じる一本の穴を開けてもらいたい。先程あちらで湧き出た水の最終的な出口を作っておかないと、ここら辺一帯がいずれ水浸しになってしまうかもしれぬのでな』

『一本の穴を開ければよろしいのですね、承知しました』

ラーデから事情を聞いたサマエルがライト達が作った排水路の先にある山に向けて徐に右手を翳した。

そして次の瞬間、サマエルの右手のひらからものすごい光量のビームが発生したかと思うと、目の前にある山にドカーーーン!と盛大にぶつかった。

その煽りで発生した爆風と衝撃波に、ライト達が「うわッ!」「うおッ!」と思わず喫驚している。

爆風と衝撃波どころかものすごい砂埃まで起きて、ライト達はしばらく目を開けられない状態に陥った。

そしてしばらくして砂埃も収まり、開けてきた目の前には―――

文字通り、山の向こうの景色が見える大きな穴が開いていた。

その大きさは、高さ、幅ともに2メートルくらいはあろうか。

高身長のレオニスやラウルでも、十分に普通に歩いて通れそうな大きさである。

『父上、これでよろしゅうございますか?』

『う、うむ……次はもう少し威力を抑えてくれると助かる』

『では、私は名付けの思案に戻ります』

ラーデの頼みを聞き届けたサマエル。これまたさっさと白妖狼達のもとにすっ飛んで戻っていってしまった。

まさに暴風のようなサマエルに、ライト達はしばしぽかーんをと呆気にとられていた。

「サマエルさんの魔法? すごいね……」

「ああ……山の土手っ腹にあんなでけぇ穴を一撃で開けるなんざ、只事じゃねぇわ。こりゃ俺も負けていられんな」

「ご主人様よ、まさかサマエルと張り合う気か? それだけはやめとけ、本当に人族じゃなくなるぞ……」

目の前に現れたできたてほやほやの一本の穴を眺めつつ、ライト達がそれぞれ呟いている。

しかし、ここでずっと呆けていても仕方がない。

いち早く気を取り直したレオニスが、ライト達に向かって発破をかけた。

「……さ、そしたらサマエルが開けてくれたこの穴をとっとと整備しちまうか」

「そうだね!今日中に何とかできるように、今からもっともっと頑張らないと!」

「だな。明日は明日で皆でファフニール達のところに見舞いに行かなきゃならんもんな」

「よーし、皆で頑張ろーーー!」

「「おーーー!」」

ライトの元気いい掛け声に、レオニスとラウルもまた勢いよく応える。

こうして突発的に始まった南の天空島での温泉整備作業に、ライト達は邁進していった。