軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1619話 ジョシュアの誓い

「「「「♪ハッピーバースデー、トゥーユー♪ハッピーバースデー、トゥーユー♪ハッピーバースデー、ディア、玄武……♪ハッピーバースデー、トゥーユー♪」」」」

玄武の誕生日を祝う歌が、氷の洞窟最奥の間に響き渡る。

歌うのはライト、レオニス、ラウルに加えてジョシュアの四人。

特にジョシュアなど、ツェリザークの守護神とばかりに崇め奉る玄武を祝うために超ノリノリで一番張り切っている。

一方で、祝われている玄武と氷の女王も嬉しそうだ。

彼女達には誕生日という概念が今までなかったので、ライト達が何をしているのかはイマイチ理解しきれていない。

だがしかし、それでも朗らかに楽しそうに歌うライト達を見ているだけで歓喜の感情がふつふつと湧き上がってくる。

そして誕生日を祝う歌が終わったところで、レオニスが玄武を手で持ち上げてケーキのろうそくの前に連れていく。

「そしたら玄武、このろうそくの火を消してくれ。息を軽く吹きかけるだけでいい」

「キュエァ!」

レオニスの指示に従い、玄武がフッ、と軽く息を吹きかけてろうそくの火を消した。

それを見届けたライト達が、一斉に拍手しつつ「玄武、お誕生日おめでとう!」「玄武様、誠におめでとうございます!」と祝いの言葉をかけている。

それからライト達はテーブルの上にあるご馳走を食べた。

いつも以上に豪華なご馳走の山に、皆で舌鼓を打つ。

特にラウルのご馳走を初めて食べるジョシュアは、そのあまりの美味しさに終始驚いては食べる手が止まらなかった。

「ラウル君の料理の腕前はすごい、と私も聞き及んではいたが……よもやこれ程のものとは、想像以上だ!」

「お褒めに与り光栄だ」

「さすがは『ぬるシャリドリンクの救世主』にして伝道師と呼ばれるだけのことはある!ラウル君はまさに『ぬるシャリドリンクの伝道師』と呼ばれるに相応しい逸材だ!」

「度重なるお褒めの言葉、誠に光栄だ」

「ラウル……お前のそれは、褒められてんのか?」

全身全霊でラウルを褒め称えるジョシュアに、ラウルもまんざらではない様子で受け答えしている。

ただし、傍から聞いているとそれらは何とも微妙な響きで、思わずレオニスが疑問を抱いてしまうのも無理はないのだが。

そして最後に、とっておきの巨大バースデーケーキを取り分けて食べ始めた。

生クリームたっぷりのホールケーキの上には、玄武が大好きだという林檎や桃のコンポート、ぶどうにバナナにキウイ等々、これでもか!というくらいにたくさんのフルーツが乗せられている。

彩りも豊かで、見ているだけで心が踊るケーキだ。

『おおお……赤に緑に桃に黄色……何と色とりどりで美しいケーキなのだ……』

「モキュッキャ!」

『ラウル、このケーキは玄武様のためのものなのだよな?』

「もちろんだとも。俺達もその喜びを分かち合うために、少しだけご相伴に与るがな」

『玄武様、ようございましたねぇ。ささ、どうぞ好きなだけお召し上がりください』

「……(もくもく)……」

ラウルが取り分けたケーキを、玄武が一心不乱に食べている。

玄武の本来の大きさは、既にこの最奥の間と同じくらいにまで成長しているらしい。

その身体の大きさでは、如何に50cm級の巨大ケーキであろうとも一口で食べ負えてしまうだろう。

しかし、こうして身体の大きさを小さくすれば、何口どころか何十口、百口以上に渡って美味しさを堪能できる。実に良いことだ。

玄武がバースデーケーキを食べている間に、氷の女王は桃のコンポートがあるところ、ライトはバナナ、レオニスはぶどう、ラウルとジョシュアはキウイの部分を食べている。

玄武が大好きな林檎のところは、全部玄武に食べさせてやろう!という皆の心優しい配慮である。

そうして一頻り美味しいご馳走を食べた後、ライト達から玄武への贈り物―――プレゼントを渡していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ぇー、コホン……まずは私が先陣を切らせていただこう」

プレゼント進呈の一番手はジョシュア。

この日ライト達が玄武の誕生日を祝うために氷の洞窟を訪れることを、ジョシュアも事前に聞いていた。

ラウルが冒険者ギルドツェリザーク支部でクレハとそんな話をしていた、というのをどこからか聞きつけていたのだ。

だからこそ、ジョシュアはレオニス達に「その日は!何としても!私も同行させていただきたい!」「仕事も、何が何でも片付けておく!」と必死に懇願し、レオニス達もジョシュアの願いを聞き入れた。

しかし、ジョシュアにはプレゼントを渡す前に一つ、しなければならないことがあった。

「玄武様の誕生日を祝う贈り物をお渡しする前に……まずは私からお二方に、人族が犯した無礼な過ちを詫びねばなりません」

「それらを未然に防げなかった私には、本来ならこのような目出度き宴席に参加する資格などない、と詰られても致し方ありません」

「ですが……愚かな人族の非は、ツェリザークという人里を治める領主である私が詫びるのが筋というもの。玄武様、そして氷の女王様、この度は本当に申し訳ございませんでした」

「愚か者達の背後にいる者については、まだ確証が得られていないため捕まえることができていませんが……今後二度とこの地で不埒な輩が過ちを犯さぬよう、防止策を施行するなど誠心誠意取り組んでまいりますことをお約束いたします」

大真面目に深々と頭を下げて、氷の女王と玄武に謝罪するジョシュア。

まずは、兎にも角にも氷の洞窟の主達に許しを乞わねばならない。氷の女王や玄武がその気になれば、ツェリザークの街を氷漬けにして滅ぼすことなど容易であろう。

先に開かれた誕生日パーティー、その豪勢な食事に皆とともにジョシュアも舌鼓を打ちはしたが、決してそれを忘れてはいなかった。

『……其方が謝らねばならぬことではない。確かに先だってから、不届き者達がこの洞窟に侵入してきているせいで、我らが不愉快な思いをしているのは事実だが……』

『人族の中にも、善い者と悪い者がいることを―――今の我は知っている。特にここにいるレオニスやライトは、人族でありながら我ら属性の女王全ての恩人であり、玄武様のご降臨にも尽力してくれた。レオニス達人族のおかげで、我は玄武様という掛け替えのない守護神様を得ることができたのだ』

『我だけでなく玄武様の恩人でもあるレオニス達に免じて、此度のことは氷水に流そうと思う。……玄武様も、それでようございますか?』

「ンキャッ!」

静かに語る氷の女王の問いかけに、玄武も右前肢を高々と挙げて賛成している。

今の氷の女王は、かつてのように人族そのものを毛嫌いしていた頃とは違う。

人族と十把一絡げにせず、個々の性質を見定められるようになったのだ。

彼女と玄武の温情に、ジョシュアが涙ながらに再び頭を深々と下げる。

「氷の女王様、玄武様……お二方の多大なるご温情、誠に、誠に感謝申し上げます。このジョシュア、命ある限りツェリザークと氷の洞窟の安寧に尽くすことをここに誓います」

『うむ。其方の働き、我も玄武様も期待しておるぞ』

「キュエッキュ、ンキャモキャ!」

ジョシュアの誓いに、氷の女王と玄武がにこやかな笑顔で励ます。

ツェリザーク領主と氷の洞窟の主達の間に、確たる絆が築かれた瞬間だった。