作品タイトル不明
第1593話 秘密の冒険
ライトが念願のマナクリスタルを手に入れた翌日。
今度はウィカとルディとともに、シュマルリ山脈のド真ん中にいた。
「ウィカ、ここまで送ってくれてありがとうね!」
『ぃぇぃぇ、どういたしまして。他ならぬライト君の頼みだもの、断るなんてあり得ないからね☆』
『一瞬でこんな遠くに来れるなんて……ウィカ兄様、すごいです!』
『ムフフ……ルディ君もホンット可愛いよねぇ♪ 『ウィカ兄様』って呼ばれるの、すっごいステキ☆』
ライトからは礼を言われ、ルディからは絶賛を浴びて大満足そうなウィカ。
そんな三者の後ろには、ドドドドド……という轟音とともに大量の水が流れ落ちている。
この巨大な滝は『善十郎の滝』である。
何故ライトが善十郎の滝に来たか。
それはひとえに『善十郎の滝から南下して、ドラゴタイラントが出没するポイントに行く!』ためだった。
昨日ライトは念願のマナクリスタルを入手した。
それは、ライトが取り組んでいるクエストイベントのエクストラページで出てきた『身代わりの実レシピA』を入手するためのアイテムの一つ。
全部で五種類の強化素材を揃える必要があり、マナクリスタルを入手したことで残り一つとなった。
その残り一つの強化素材とは『 青生生魂(アポイタカラ) 』。
これを交換所で入手するには『暴君竜の鋭爪』、つまりドラゴタイラントの爪が必要なのだ。
『身代わりの身レシピA』に王手がかかった今、なるべくならば夏休み中に残りの素材を採取したい。
もし直接採取まではできなくても、採取の段取りや手筈だけは整えておきたい。
夏休みも残り一週間。夏休みが終わったら、ラグーン学園に通う生活がまた始まる。
そうなったら、ライトが丸一日出かけられる機会は土日祝日のみ。
冒険三昧生活ができる今のうちに、ドラゴタイラントの爪を採取するための下準備だけでも固めておかなければならないのだ。
しかし、この件に関してはレオニスやラウルの助力は一切得られない。
動機がBCO由来のイベントであり、何故ドラゴタイラントなどという危険な魔物と戦わなければならないのか、その理由を彼らに 詳(つまび) らかに説明することができないからだ。
ライトが勇者候補生であることは、先日のラグナロッツァビースリー勃発未遂事件でレオニス達にも知られるところとなった。
しかし、ライトの重大な秘密がバレたのは『勇者候補生である』という一点のみ。
それ以外のBCO関連については、まだ秘密を明かせていないのだ。
故にライトは、クエストイベント関連はこれまで通り秘密裡に、一人で動かなければならない。
ドラゴタイラントの出没ポイントについても、本当ならシュマルリ山脈南方にあるラグスの泉を経由した方が早く辿り着けるはずだ。
しかし、このラグスの泉を使うことはできない。
ラグスの泉を使うと、どうしたってその近辺にいる中位ドラゴン達や白銀の君、ひいては竜王樹ユグドラグスにまでライトの単独来訪がバレる。
そうなったら、レオニスにまでバレるのも時間の問題となるのは必定。彼らに口止めなどできるはずもないのだから。
シュマルリの竜族達に対する有効な来訪理由=誤魔化す言い訳を用意できない以上、ライト一人でラグスの泉を使うことなど許されないのだ。
ならば、どうやってドラゴタイラントの出没ポイントまで行くか。
ライトが散々散々悩んだ挙句、思いついたのは『レオ兄がシュマルリの竜族達に会うために、一番最初に使ったルート『善十郎の滝』に移動して自力で探す!』であった。
善十郎の滝に行くだけならウィカに頼めばいいし、ウィカならライトの秘密を誰にも言わずに守ってくれる!という訳である。
『パパ様、ここから南に移動すればいいのですか?』
「うん、どちらかというと西寄りの南だね。他の生き物を刺激しないようになるべく低空飛行で行くから、目当ての場所を探し当てるまでに二日か三日はかかるかもしれないけど」
『大丈夫です!パパ様のために、僕も一生懸命頑張ります!』
「ルディもいつもありがとうね」
ドラゴタイラント出没ポイント探しに張り切るルディ。
昨日の『呪われた聖廟』行きではミーナが活躍したので、今回は自分の出番!と思っているのだ。
ルディも大きく成長し、見た目はキラキラと金色に輝く厳つい東洋型の龍だが、中身は姉と張り合う弟という何とも可愛らしいものだ。
『ではパパ様、ウィカ兄様、僕の背にお乗りください!』
「うん!ルディ、よろしくね!」
『お邪魔しまーす☆』
ルディの呼びかけに応じ、ライトとウィカがルディの背に乗る。
本当はウィカまでライト達の探検に付き合う必要はないのだが。
ウィカに言わせると『こーんな楽しい機会を逃すなんて、それこそあり得なーい!』とのこと。
レオニスのシュマルリ遠征にも付き合ったウィカだ、主であるライトの同様の冒険に付き添わないなどという選択はないのである。
「よーし、出発進行ー!」
『パパ様、ウィカ兄様、僕の 鬣(たてがみ) にしっかり掴まっててくださいねー!』
『はーい☆』
ライトの出発の掛け声に、ルディの身体がふわり、と宙に浮く。
こうしてライトと使い魔二体の秘密の冒険が始まっていった。