軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1503話 不思議の森の洞窟でのお茶会

ファフニールが外に出かけた後、ライト達は卵の巣から離れたところで話をすることにした。

しかし、卵から目を離すことはできないので、フレア・ジャバウォックの目の届く範囲の距離を保つのが肝要だ。

フレア・ジャバウォックがここだ、と思う場所にリンドブルム達を誘う。

すると、リンドブルムがフレア・ジャバウォックに一つの提案をし始めた。

『あ、ねぇねぇ、フレジャちゃんも人型に変身できたわよね?』

『ン? ええ、一応できるわよ』

『そしたら人型になって、皆でお茶にしない? この人族達が出すお茶や食べ物がね、すーっごく美味しいのよ!』

『まぁ、そうなの? それは私も興味があるわー』

リンドブルムの誘いに、フレア・ジャバウォックが思いの外好意的な反応を示している。

そうしてリンドブルムとフレア・ジャバウォックが立ち上がり、シュルシュルと人型に変身していく。

人の姿を取ったフレア・ジャバウォック、その見目麗しさにライト達は思わず目を奪われる。

服はカジュアルなサンドレスで、本来の皮膚の色と同じくルビーを思わせる深い赤色がとても美しい。

スカートは膝丈より長く、すっきりとした中にもたっぷりとしたギャザーが優雅さを感じさせる。

髪は肩より少し長いくらいで、頭頂部が薄桃色で毛先にいくに従って赤くなっていくツートンカラー。これは、頭に生えている四本の薄桃色の角が髪の毛に紛れて含まれているから、らしい。

瞳はサファイアブルーで、睫毛や眉毛は髪と同じ赤色。くっきりとした二重と長い睫毛に、ふっくらとした艶やかな唇が相まってかなりの美貌である。

人間で言えば、二十歳半ばくらいの若々しい美女に変身したフレア・ジャバウォック。

彼女とともに変身し終えたリンドブルムが、ライト達に向かって声をかける。

『ねぇ、レオニス、ラウル、ここでフレジャちゃんとゆっくりお話ししたいから、お茶したいんだけど。用意してもらえる?』

「ああ、いいとも。ラウル、お茶会の支度を始めるぞ」

「了解」

リンドブルムの要請に快く応じ、レオニスとラウルの二人でお茶会の準備を進めていく。

ちなみにライトはラーデを抱っこしているので、今回の準備には加わっていない。

その代わりに、ラーデといっしょにリンドブルムやフレア・ジャバウォックの近くにいて話をしていた。

「リンリンさんだけじゃなくて、フレア・ジャバウォックさんも人型になれるんですね!」

『まぁねー。この不思議世界の他の街に行く時には、人型になることの方が多いわね。元の姿のままだと、大き過ぎてどこに行くにも不便だもの』

「そしたら、旦那さんのファフニールさんも人型になれるんですか?」

『もちろん!ファフ様にとって、その程度のことは児戯に等しいわ』

いつの間にかフレア・ジャバウォックとも普通に会話しているライト。

何とも豪胆なことである。

そして、フレア・ジャバウォックが人型になれるのは主に他の街で行動するためだという。

確かに本体のままでは、行ける場所が相当限られてしまうことだろう。

しかし、不思議世界の他の街とは、一体どのような街なのだろう。

おそらくそれは、ライト達が住むような普通の人族の街とは異なるはずだ。

「不思議世界の街って、どんなところなんだろう……いつかぼくも行ってみたいなぁ。……あ、ラーデもいっしょに行く?」

『そうだな、我もこの不思議世界のことはあまり分からぬし、もし旅行できるものなら皆でいっしょに出かけるのも良いな』

「それ、良いね!レオ兄ちゃんやラウルも誘って、皆で不思議の街にお出かけしようね!」

まだ見ぬ世界に思いを馳せるライト。

抱っこしているラーデとともに、大いに話が盛り上がっている。

そんなライトに、後ろにいたサマエルが毒づく。

『フン、お前のようなひ弱な小僧や人族どもがあの街に出向いてみろ、あっという間にトランプ衛兵にとっ捕まるに決まっている』

「え、そんな物騒な街なんですか?」

『そうだとも。だから、もしお前達が父上とともに不思議世界の街に行くとしたら、その時は私に言え。そうすれば、私が護衛としてついていってやるから有り難く思え』

「『………………』」

前を向きながらシレッと宣うサマエルに、ライトだけでなくラーデまで呆気にとられた顔をしている。

口では悪しざまかつ居丈高に振る舞っているサマエルだが、言っていることは『お前達を守ってやるから安心しろ』である。

あのサマエルがライト達のために護衛を買って出るとは、俄には信じ難いことだ。

それをライト達の横で聞いていたリンドブルムが笑いだした。

『アハハハハ!サミーってば、相変わらず照れ屋さんねぇー』

『リ、リン姉様!私は照れてなどおりません!』

『ハイハイ、パパンの御身が心配だから護衛してあげるのよねー』

『そうですとも!父上の御身大事のためです!これ以上父上の御身を危険に晒す訳にはいきませんからね!』

「『『………………』』」

笑う姉に懸命に反論するサマエル。

ラーデの身を危険に晒す訳にはいかないとか、数日前にラーデを殺そうとした張本人がそれを言うのか?という無粋なツッコミは、今のところ誰もしていない。腹の中では全員ツッコミしていそうだが。

そして、もしこの場にレオニスとラウルがいたら速攻でツッコミするところであろう。二人はお茶会の準備で忙しくて、この場には不在なのが幸いである。

そんな話をしているうちに、お茶会の準備が整ってレオニスとラウルがライト達を呼びに来た。

「おーい、お茶会の準備ができたぞー。皆、こっちに来ーい」

「はーい!じゃ、皆で行きましょうか!」

『うむ』

『はーい♪』

レオニス達の呼びかけに、ライト達はいそいそとテーブルの方に歩き出した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニス達が用意したテーブルと椅子に着き、不思議の森の洞窟内でのお茶会が始まった。

テーブルの上に並べられたたくさんのお菓子に、ラーデやリンドブルム、サマエルまでもが舌鼓を打つ。

一方でお茶会初参加のフレア・ジャバウォックは、最初のうちは少しだけ戸惑っていた。

たが、大親友であるリンドブルム達がもっしゃもっしゃと遠慮なく食べているのを見て、おずおずとアップルパイに手を伸ばした。

その後は推して知るべし、である。

『ンまッ、この四角いお菓子、美味しいわね!』

『でしょでしょー? 私はこの丸いのが好きなのよねー!』

『どれどれ…… 美味(ンま) ッ!何コレ!?』

『これはねー、シュークリームというものらしいわ』

『シュークリーム!? 不思議の街にも同じ名前の食べ物があるけど、あっちのは石ころの味しかしなかったわよ!?』

アップルパイやシュークリームを頬張りながら、フレア・ジャバウォックの目が大きく見開かれている。

というか、石ころ味のシュークリームとは一体何であろうか。いや、そもそも石ころに味があるのか?

石ころ味のシュークリーム、全く以って想像もつかないが、不思議世界ならばそんなものが当たり前のように存在していそうでもある。

不思議世界の街は、その名の通り相当不思議な街のようだ。

アップルパイやシュークリームの他にも、ドーナツやチーズケーキ、たい焼きにみたらし団子等々、リンドブルム達はありったけのスイーツを食べまくった。

美味しいものをたくさん食べて、大満足な様子のフレア・ジャバウォック。

ケプー☆と可愛らしいゲップを出しながら、レオニスとラウルに声をかけた。

『はー、すっごく美味しかったー。……そういえば、貴方達の名前を聞いていなかったわね。何ていうの?』

「俺はレオニス、人族だ」

「俺はラウル、プーリアという妖精族だ」

『レオニスにラウルね、美味しいものをご馳走してくれてありがとう!さっきの魔力譲渡の疲れもだいぶ軽くなったわ!』

「そりゃ良かった」

フレア・ジャバウォックの礼に、レオニスとラウルの顔が綻ぶ。

初対面の時こそライト達のことを『三匹』と呼んでいたが、このお茶会を通して彼女の態度もかなり軟化したようだ。

「ていうか、どうして人族と妖精族がお義父様といっしょにおられるの?」

「あー、それはだな……」

『それは我の口から話そう』

事情を全く知らないフレア・ジャバウォックの質問に、問われたレオニスではなくラーデ自らがこれまでのことを語って教えていった。

邪竜の島で囚われ続けていた日々、天空島での熾烈な戦いから地上での療養生活、そして今日リンドブルムやサマエルとここに来るに至った経緯。

それらをラーデが淡々と語り、フレア・ジャバウォックはただ静かに聞き入っていた。

『まぁ……不思議世界の外では、そんなことが起きていたのですね……』

『うむ。そんな訳で、今はこのレオニスのもとでカタポレンの森の魔力を日々蓄えておるのだ』

『お義父様がこれまで受けていらっしゃった、想像を絶する艱難辛苦……それら全てを乗り越えて復活なされたこと、祝着至極に存じます』

『ありがとう』

ラーデのこれまでの話を聞き終えたフレア・ジャバウォックが、改めて頭を下げながらラーデに敬意を表する。

フレア・ジャバウォックも竜族であり、竜の祖であるラーデは無条件で敬愛の対象だ。

そのラーデが受けた凄絶な苦難は、話に聞くだけでも心情的に耐え難いことである。

心を痛めながらも、ラーデの苦労を思い懸命に労おうとするフレア・ジャバウォック。

彼女の健気な姿に、ラーデが気安く声をかける。

『しかし……フレアよ、其方はファフニールの番にして我が娘になったのだから、もう少し砕けた口調で話してくれても良いのだぞ?』

『娘……そうですね、畏れ多いことではありますが……私はお義父様の娘になったのですものね!』

『そうとも。そこにいるリンドブルムやサマエル、そしてファフニールと同じく其方は我が子となったのだ』

『はい!お義父様、これからもよろしくお願いいたします!』

先程まで苦悶の表情だったフレア・ジャバウォックの顔が、次第に喜びに満ちていく。

フレア・ジャバウォックは、ラーデの息子ファフニールの妻にしてラーデにとって義理の娘。

ラーデの家族がまた増えたことに、当事者達だけでなくライト達もまた嬉しそうに彼らを見守っていた。