軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1493話 ラーデの寝床の広さ問題

昼過ぎに起きたリンドブルムとサマエルを連れて、ライト達はラーデのために開拓した場所に移動した。

移動中、リンドブルムはフォルを抱っこし、サマエルがラーデを抱っこしている。

昨晩初めてカーバンクルを見たリンドブルムが、『何この可愛過ぎる生き物!』とフォルのことを甚く気に入り、隙あらばフォルを抱っこし続けていて手放さないのだ。

そのおかげでラーデの抱っこ係はサマエルとなり、サマエルはサマエルで大好きな父を抱っこできてご機嫌である。

カタポレンの家の南側に広がる平地は、ライト達が住むエリアの五倍くらいは大きい。

これは、この先ラーデの身体が大きくなっても大丈夫なように予めかなり大きく開拓してあるのだ。

この広々としたエリアを見たリンドブルムとサマエル。

キョロキョロと周囲を見回しながら呟く。

『ンー……これだとパパンには少し狭い、かも?』

『ですねぇ。全盛期の父上のお身体からすれば、少々手狭なのは否めませんねぇ』

「「「え"」」」

これでは狭い、という二者の言葉にライト達が唖然としている。

ライト達にしてみたら、かなり余裕をもった広さに開拓したつもりだったのだが。これでも狭いとは、全盛期のラーデは一体どれほどの巨躯を誇るというのか。

するとここで、ラウルがリンドブルムに声をかけた。

「リンドブルム、試しにここでドラゴンに戻ってみてくれるか?」

『いいわよー』

ラウルの要請に、リンドブルムが快く応じる。

リンドブルムが抱っこしていたフォルをラウルに預け、南の開拓地のド真ん中に立ち変身を解いた。

それまでグラマラスなナイスバディ美女だったリンドブルムが、あっという間に巨大なドラゴンの姿に戻っていく。

そうしてドラゴンになったリンドブルムは、開拓地にすっぽりと収まった。

すっぽりといってもギリギリ窮屈なものではなく、四辺全てにそこそこ余白があって十分寛げる広さだ。

それを見たレオニスが、渋い顔をしながら呟く。

「とりあえず、リンドブルムの大きさなら十分余裕があるようだが……本来のラーデはこれより大きくなるってことか?」

『当然だ。父上はリン姉様より一回り以上身体が大きいのだ、この程度の寝床では到底足りぬ。というか、皇竜が過ごすにはここは狭過ぎる。寝返りの百周や二百周打てるくらいの広さもないではないか!』

「無茶言うんじゃねぇ」

レオニスの呟きに、サマエルが鼻高々で肯定する。

その肯定ついでにとんでもない無茶振りまでしてきたが、これに対してラーデが異を唱えた。

『こら、サマエル、適当なことを言うでない。我の寝相はそんなに悪くはないわ』

「ラーデ、そこは寝相云々の問題じゃねぇと思うぞ……」

不服そうにプンスコとサマエルを窘めるラーデに、ラウルが呆れつつツッコミを入れている。

そう、いくらレオニスがこのカタポレンの森の家をある程度自由にカスタマイズできると言っても、さすがにサマエルが言うような無茶振りまで実現するのは無理だ。

トンチキなサマエルはもとよりラーデも頼りにならぬ、とばかりにレオニスがリンドブルムに問うた。

「リンドブルム、そしたらここをもう少し広げるくらいで何とかなるか?」

『そうねー、いくらパパンでも私の倍以上大きいってことはなかったから、もうちょい広げれば問題ないと思うわー』

「分かった。今度折を見てまた少しづつ広げておくわ。ラーデもそれでいいか?」

『もちろん。それに、今の我には十分過ぎる程の広さだ。急いで拡張する必要もない』

レオニスの問いかけに、リンドブルムもラーデも問題ないと頷く。

その後リンドブルムが再び人型に戻り、今度は皆で森の中を歩いて魔石生成の結界外に出た。

カタポレンの家は、ライト達人族でも住めるよう意図的に魔力を薄められた範囲内にある。

その外に広がるカタポレンの森の本来の姿、魔力の濃さを姉弟に体感して知ってもらう必要があるのだ。

ちなみに何故空を飛ばずに歩いたかというと、木々の上を飛ぶよりも地面の上を直接歩いた方が大地から溢れ出す魔力をしっかり感じ取れるからである。

そうして魔石生成ポイントの輪から出て、しばらくした頃。

リンドブルムとサマエルが驚愕の声を上げた。

『え、ちょ、待、何? この森の魔力って、こんなに濃いの!?』

『うぬぅ……この濃さは、我らが住まう天空島に引けを取らんではないか……』

『引けを取らんどころの話じゃないわ、これならパパンが失った力を取り戻すに十分相応しい療養地よ』

『……悔しいですが、認めざるを得ませんね……』

森の中に漂う魔力の濃さが一気に上昇したことに、姉弟は驚きを隠せない。

ラーデが失った力を取り戻すには、兎にも角にも大量の魔力が必要だ。

もちろん天空島にだって魔力は満ちているが、それでも天空諸島の限られた面積では到底賄いきれない。

というか、天空諸島が持つ魔力をラーデが全部吸い取ってしまったら、天空島が墜落してしまう。

それに比べてカタポレンの森は、天空島とは比較にならない程の広大な面積を持つ。

その上天空島のような墜落の心配も一切要らない。

ラーデの療養地として、どちらに軍配が上がるか―――机上の空論ではなく、実際に己の身体で体感したサマエルに、もはや異論を挟む余地など残されていなかった。

悔しそうに歯ぎしりしつつも、カタポレンの森の有用さを認めたサマエルにレオニスが声をかけた。

「とりあえず、ラーデがこの森で療養するのが最適だってことは分かってもらえたか?」

『ああ……私とて、ただ我儘を言っている訳ではない。父上には、一刻も早くかつての雄姿を取り戻していただきたいと思っている。この森は、天空島以上に父上の療養に適しているのは理解した』

「そりゃ良かった。こっちもあんた達にお出ましいただいた甲斐があったってもんだ」

気難しいサマエルの理解を得られたことに、レオニスが安堵している。

これ以上屁理屈を捏ねられたら、手の打ちようがねぇな……と内心考えていたのだが、これなら無事円満に解決しそうだ。

もっとも、サマエルの後ろにはサマエルを子供扱いできるリンドブルムがいるので、サマエルが駄々を捏ねて無理難題を吹っかけたところで彼女が力尽くで説得してくれるだろうが。

「リンドブルムとサマエルの理解も得られたことだし。とりあえず家に戻って、ちょいと早めのおやつにでもするか」

「わーい!皆でおやつ、いいね!」

「そしたら今日は、ラーデ用の寝床でピクニック風と洒落込むか」

『おお、それはいいな』

レオニスが発したおやつ宣言に、ライトは大喜びし、ラウルとラーデもそれに追随する。

リンドブルムとサマエルにはおやつという概念はないので、双方とも『はて、おやつとは何ぞ?』という顔で不思議そうにしている。

そうしてライト達は、カタポレンの森の中をのんびりと歩きながら再び家に戻っていった。