軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第149話 フェネぴょん閣下の背丈問題

ライトが氷の洞窟周辺に出かけた翌日の昼下がり。

ライトはフェネセンとともに、アイギスを訪ねていた。

もちろんその目的は、前日にツェリザークで購入したアイギス三姉妹への土産を渡すためである。

「こんにちはー」

「あら、ライト君にフェネセン、いらっしゃーい」

いつものように、店頭での接客担当のメイが二人を元気良く迎え入れてくれる。

今日は買い物目的ではないので、店内ではなく奥の方の部屋に通してもらう。

「氷の洞窟には昨日行ったんでしょ?どうだった?」

「はい、無事にぼくの友達にも会えましたし、ツェリザークの街もいろいろ見て来れてとても楽しかったです!」

「そう、それは良かったわね!」

「カイさん達に作ってもらったジャケットやパンツもすっごく温かくて、ツェリザークでも氷の洞窟周辺でも全然寒くなく過ごせました。本当にありがとうございました!」

ライトがカイ達に向かって、改めてお辞儀をしながら礼を言った。

「私達の作った服が役に立ったのなら、とても嬉しいわ」

「そうそう。あの服ね、氷の洞窟周辺どころか洞窟内部に入っても耐えられるように作ってあるのよ」

「だから、いつか氷の洞窟内部に行く時にも着れるからね!」

「その頃にはライト君、もっと大きくなってて丈が合わなくなってるかもしれないけど」

「その時にはサイズのお直しもできるから、いつでも言ってね!」

カイ達三姉妹が、それぞれライトに声をかける。

それを聞いたフェネセンが、メイ達に問うた。

「ねぇねぇ、吾輩も身長伸びてサイズ合わなくなったらお直ししてくれる?」

キラッキラに輝く瞳で問うてきたフェネセンに対し、セイやメイは見るからに石化したような固まり方をする。

「えーっと……フェネセン?あのー、そのー、とーっても言いにくいんだけどー……」

「私達があんたと知り合ってから、かれこれ十数年は経ってると思うんだけどー……」

「出会った当初から、その身長……」

「全然変わってなくない??」

Σズガーーーン!!

戸惑いながらも口にしたセイとメイの容赦ない問い返しに、数多の落雷に打ちのめされるフェネセン。

みるみるうちに、その瞳に涙が溜まっていく。

「うわぁぁぁぁん!カイにゃーん!」

「セイにゃんとメイにゃんが吾輩をいぢめるぅぅぅぅ!」

「びえええええええん!!」

本気で涙ぐみながら、カイのもとに飛び込むフェネセン。

終いには号泣モード突入である。

「あらまぁ、困ったわ……どうしましょう」

号泣するフェネセンを抱きとめながら、おろおろとするカイ。

だが、『そんなことないですよ!』と即時否定しないあたり、カイもセイとメイと同様のことを思っているのかもしれない。

そんなフェネセン達の様子を見かねたライトが、助け舟を出す。

「まぁまぁ、フェネぴょんも落ち着いてよ。今までは身長伸びてなくても、もしかしたらこれから伸びるかもしれないよ?」

「ううう……」

「だってほら、先のことなんて誰にも分からないじゃない?」

「ぐすぐす……」

「もしかしたら伸びないかもしれないけど、絶対に伸びない!なんてことも誰にも言い切れないよね?」

「……そうかな……?」

「そうだよ!ね、カイさん達もそう思うよね?」

ここでライトがカイ達に同意を求める。

キッ!とした顔つきは、幼いながらも有無を言わさぬ迫力に満ち満ちている。

「ええ、そうね。フェネセン閣下、私もそう思いますよ」

「そ、そうよね、フェネセンだってこれから背がニョキニョキ伸びるかもしれないわよね!」

「あ、そうだわ、何なら『誰でも身長が伸びる魔法』の研究なんてしてみてもいいんじゃないかしら?ほら、フェネセンは天才大魔導師なんだから、魔法の研究や開発はお手の物でしょ?」

セイとメイは慌てて取り繕うような形だが、カイだけは本当にそう思っているかのような穏やかな口調だった。

「ですから、もしフェネセン閣下もこれから背が伸びてジャケットのサイズが小さくなったとお感じになったら、遠慮なく言ってくださいね」

「いつでもお直しいたしますから」

いつもと変わらぬ優しい笑みと語り口で、フェネセンをあやすようにそっと頭を撫でるカイ。

その言葉に安堵を得たのか、フェネセンはカイの腕の中で小さく呟く。

「うん……やっぱりカイにゃん大好きぃ……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ちょっとした騒ぎが一段落ついたところで、本日の主目的であるツェリザーク土産を渡すことにする。

ライトはフェネセンに預ってもらっていた土産を空間魔法陣から取り出してもらい、カイ達に見せる。

「これ、ツェリザークの街で買ってきたお土産です」

「カイさん達の好みとか、ぼくまだ全然分かんなくて」

「でも、ツェリザーク特有のものなら喜んでもらえるかな?と思って……」

そう言いながらライトは毛皮をカイに渡し、反物生地をセイとメイに渡す。

「こちらは狗狼の毛皮で、そちらは凍砕蟲の吐く糸で織られた生地です」

「どちらもツェリザーク近辺に棲息する魔物由来の品で、こちらではあまり売っていないと思うので」

「ぼく、こういうのの品質とかさっぱり分かんないですけど、もし良いものならお店の売り物用に何か作ってくれてもいいし」

「お好きなように使ってください」

ライトの解説を聞いているのかいないのか、一見では分からないくらいに三姉妹は目をキラキラと輝かせて毛皮や反物生地の手触りを堪能している。

「これで売り物を作るなんて、とんでもない!そんなもったいないことできないわ!」

「そうよ、こんな素敵な毛皮や生地、ここら辺じゃ滅多にお目にかかれないもの!」

「ええ、そうね。それに何より、ライト君が私達のために選んで買ってきてくれた、大事なお土産ですもの」

「ライト君、ありがとう!」

「でも……」

三姉妹全員が喜び、口々にライトに礼を述べたが、セイが真っ先に心配そうな顔つきになる。

「こんないい品、すごくお高かったんじゃない?」

「あっ、そういえばそうね。毛皮もだけどこの素晴らしい生地で長さも反物って、ものすごく値が張るんじゃない?」

「ライト君、こんなに良い物をお土産としてもらっちゃっていいの?」

三姉妹がもっともな疑問を口にした。もちろんそれはライトのくれた土産に対してケチをつけるものではなく、それらの価値の高さ故にそのままもらってしまってもいいものかどうか、純粋に迷ったからだ。

そしてそのことに真っ先に気づいたのがセイというのは、資材調達担当ならではの目利き故だろう。

「もちろんです!カイさん達にはいろいろとお世話になってますし」

「今回のジャケットも、ボタンにヒヒイロカネを使ってくれたってフェネぴょんから聞きました」

「それって全部ぼくのためですよね?ぼく、それがすっごく嬉しくて……」

「ていうか、ヒヒイロカネの価値に比べたらぼくのお土産こそ安物ですし……」

「だから、ぼくからのお土産も受け取ってくれると嬉しいです!」

ライトの言葉に、カイ達は小さく笑いながら応える。

「そうね、ヒヒイロカネのことを言われちゃったらどうしようもないわね」

「ええ、そのヒヒイロカネだって私達が勝手にしたことだけど」

「私達がライト君のことを大事に思っているように、ライト君も私達のことを大事な友達だと思ってくれているのよね」

三姉妹は納得したように、頷きあう。

「ライト君、この毛皮と生地はありがたく受け取らせていただくわね。とっても素敵なお土産、ありがとう」

「どういたしまして!気に入ってくれたなら、ぼくも嬉しいです!」

「フェネぴょんもありがとうね、ぼく一人じゃこんな大きなお土産運びきれないもの」

最終的に三姉妹に快く受け取ってもらえたことに、ライトは破顔した。

そして横でまだ若干拗ね気味のフェネセンにも、ちゃんと礼を言う。

「ううッ……ンぬ?吾輩何か役に立った??」

「もちろん!昨日氷の洞窟周辺で無事友達に会えたのも、フェネぴょんのおかげだもの!本当にありがとう!」

「ン……ンフフフ……ライトきゅんにそう言われたら、吾輩も嬉しいな!また吾輩と、どこか日帰り旅行行こうねーぃ!」

「やったぁ!絶対に約束だからね!」

ようやく機嫌が直ってきたフェネセンに、フェネセン以外の全員が安堵する。

きゃらきゃらと笑い合いながら楽しそうに話すライトとフェネセン、二人の姿を微笑ましく眺めるアイギス三姉妹であった。