軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1441話 湖底神殿でのお茶会

湖底神殿の中で、目覚めの湖の愉快な仲間達が総出で気泡作りを続けた。

その甲斐あって、十分程で神殿内の半分くらいが空気で埋まってきた。

湖底神殿はそこそこ広い上に天井も高いため、体積的にもかなり大きいはずなのだが。目覚めの湖の愉快な仲間達にかかれば、このくらいのことは造作もないに違いない。

そうして湖底神殿内の水位がライトの膝より下になったところで、今度はレオニスとラウルが空間魔法陣を開き、テーブルや椅子を取り出し始めた。

そう、何も湖底神殿内の水を完全に抜ききる必要はない。床から数cm程度の水なら、椅子に座れば全く問題ないのである。

大きなテーブルを二つ出し、椅子も十脚出して適宜並べる。

水の女王と闇の女王は隣同士で座り、闇の女王の隣にクロエ、その横にアクアが座る。アクアには、彼用に特別に背凭れ無しの椅子を用意した。

特にアクアと水の女王の前には、気泡作りの労いの意味も込めてたくさんのスイーツや山盛りピラミッドのスペシャルミートボールくんがそれぞれの目の前にドドン!と置かれていた。

そしてレオニスとラウルは、八咫烏母娘達と交互になるように座った。

ちなみに八咫烏母娘達は、朝食時と同様に人化した姿でお茶会に挑んでいる。

これも人里での活動を見据えた修行の一環なのだが、一度こうすると決めたらとことん貫き通す。八咫烏達の勤勉さが如実に現れている。

一方でライトとマキシは、湖底神殿の中に入れないイードのためにスペシャルミートボールくんを神殿入口の近くに山積みし、ウィカやラーデとともにイードと仲良くお茶を始めた。

湖底神殿の真横にいるイードが、触腕の先端を伸ばしミートボールくんをヒョイ、と掴んではパクッ☆と己の口に運び、もっしゃもっしゃと美味しそうに食べていた。

そして水の女王と闇の女王もまた、親睦を深めるべく積極的に会話を交わしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『闇のお姉ちゃん、天空島で大活躍したんですってね? ライト達からその時の話を聞いたわよー』

『まぁな。いつもの吾なら、洞窟の外での出来事には滅多に関与しないのだがな。邪皇竜の封印が解かれるとあっては、さすがに黙って見過ごす訳にはいかなんだからな』

『そっかー。ホントは私も闇のお姉ちゃんのように、光のお姉ちゃんや雷のお姉ちゃんを助けに行ければよかったんだけど……ごめんね、お手伝いできなくて』

二人の女王は互いの近況や最近の出来事を話している。

特に闇の女王がクロエとともに活躍した天空島襲撃事件について、水の女王は一大事に駆けつけることができなかったことを悔やんでいるようだ。

しょんもりとする水の女王に、闇の女王が紅茶を優雅に啜りながら慰めの言葉をかける。

『何、気にするな。其の方は其の方で、吾ら女王が持つ奥義の宝珠でレオニスを助けたと聞いておるぞ』

『ぁー、あれねー……あれも実は私の負けだったから、今度は何としてでも勝ちたいんだけど……』

『ン? 【水の宝珠】作りやレオニスを助けることに、勝ち負けなんぞあるのか?』

『うん、あるのよー』

『???』

闇の女王が水の女王の働きを褒めるも、水の女王は納得していない。

水の女王がレオニスのために【水の宝珠】を作ったのは、レオニスが真っ二つに折れた【晶瑩玲瓏】を元通りにするために復元魔法を使う際に、魔力供給源としてレオニスの助けとなるように提供した。

その際に【水の宝珠】一つだけでは足りず、光の女王に作ってもらった【光の宝珠】も結局使用したことを、水の女王は『敗北である!』と思っているのだ。

しかし闇の女王にしてみたら、何故そこで彼女が納得せずに謎の勝ち負けに拘っているのか、さっぱり分からない。

難しい顔をしながら、悔しそうにアップルパイをもっしゃもっしゃと頬張る水の女王に、闇の女王が小首を傾げながら不思議そうにしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

水の女王と闇の女王が仲良く会話をしている一方で、アクアとクロエも神殿守護神同士ということで和やかに会話を交わしていた。

『へー、アクア君もココと同じで、生まれてからまだそんなに経っていないのねー』

『うん。僕はこの湖底神殿の祭壇に、卵のままずっといたんだけど。ある日ライト君がここに来て、僕が卵から孵る手伝いをしてくれたんだ』

『そうなのね!それもココと同じなのね!』

『ココちゃんも、ライト君に孵化させてもらったの?』

『うん!ココもずっと暗黒神殿の祭壇にいたんだけど、レオニスパパとライトお兄ちゃんにたくさん美味しいものを食べさせてもらって、卵から出ることができたの!』

アクアとクロエ、互いに生まれた時の状況を話しては盛り上がっている。

実際アクアはライトが初めて孵化させた神殿守護神だし、クロエはその次にライトとレオニスが孵化させた。

互いの共通点の多さにびっくりすることしきりである。

『僕達、生みの親までほとんど同じなんだねぇ』

『そうねー。ここまでそっくりだと、アクア君ももうココの家族みたいよね!だって生みの親が同じなんだもの!』

アクアの何気ない呟きに、クロエがニコニコ笑顔で嬉しそうに同意する。

『ココちゃんと家族かぁ……うん、ライト君達や目覚めの湖にいる仲間達も僕の大事な家族だけど、もしココちゃん達とも家族になれるならすっごく嬉しいな』

『なれるわよ!ココのママも水の女王さんとは姉妹だし、姉妹ってのは家族でしょ? ママの姉妹で家族なら、ココにとってもここにいる皆は家族よ!』

『……うん、そうだね。ココちゃんの言う通りだ』

暗黒の洞窟組と目覚めの湖組の家族説を力強く説くクロエに、アクアも納得しつつ頷く。

確かにクロエの言う通りで、属性の女王達は他の女王のことを姉妹と呼び互いに尊重し合っている。

母や仲間と慕う女王同士が家族ならば、神殿守護神達にとっても立派な家族。反論の余地など全くない完璧な理論に、アクアも微笑みつつ認めた。

するとここで、ココがふと素朴な疑問を口にした。

『そしたらココ達も、兄妹ってことになるわよね』

『そういうことになるのかな?』

『アクア君がお兄ちゃん? それともココがお姉ちゃん? どっちなのかしら?』

『それは先に生まれた方がお兄ちゃんかお姉ちゃんで、後に生まれた方が弟もしくは妹ってことになるんじゃないかな』

『どっちが先に生まれたのかな?』

『ライト君かレオニス君なら知ってるんじゃない?』

『それもそうね!』

アクアとクロエが家族になることが決まった今、次に気になるのは『どっちが兄姉でどっちが弟妹か』問題。

これによって互いの呼び方が変わるだけに、何気に重要問題だ。

兄弟姉妹の位置づけは、ひとえに生まれた日時による。

これを知るには、アクアとクロエが生まれる瞬間に立ち会っていたライトかレオニスに聞くのが最も早く確実である。

そんな訳で、早速クロエが向かいのテーブルにいるレオニスに話しかけた。

『ねぇ、パパ、一つ聞きたいことがあるんだけど』

「ン? 何だ?」

『ココとアクア君、先に生まれたのはどっち?』

「ぁー……確かライトから聞いた話だと、アクアが生まれたのは去年の一月で? ココはその三ヶ月後の四月生まれだから、アクアの方が先に生まれてるはずだ」

『そうなのね!じゃあ、アクア君の方がお兄ちゃんなのね!パパ、教えてくれてありがとう!』

「どういたしまして」

クロエの素朴な疑問に、レオニスが的確に答える。

たった三ヶ月しか違わないが、それでもクロエが生まれるより先にアクアが生まれたことに変わりはない。

クロエとアクアの兄弟姉妹問題にあっさりと決着がついた横で、アクアが何故かプルプルと震えている。

『お、お兄ちゃん……僕が、お兄ちゃん……』

『うん!アクア君はココのお兄ちゃん!これからはアクア君のことを『アクアお兄ちゃん』って呼んでもいい?』

『も、もちろん!こんな可愛い妹ができるなんて思ってもいなかったから、すっごく嬉しいよ』

『ココもお兄ちゃんが増えて嬉しい!』

クロエからお兄ちゃんと呼ばれたことに、感動に打ち震えるアクア。

アクアはまだ生まれてから一年半弱で、これまで出会ってきた高位の存在達は皆何百年何千年と生きてきた超年上ばかり。

まだまだ若輩者の自分が、こんなに早く兄と呼んでもらえる日がくるとは夢にも思っていなかったのだ。

『あ、そうだ、さっきのココの加護をあげるって約束、今ここでしちゃうね!』

『うん、よろしくね』

『………………はい、完了!』

『ありがとう。何だか身体の芯から新しい力が湧き出てくるようだよ』

湖底神殿に向かう道中で交わしていた、クロエもアクアに加護を与えるという約束。

その約束を果たすべく、クロエが両手でアクアの頬を優しく包み込み、鋼鉄の包帯で覆われた額をアクアの額の宝石にコツン、と当てた。

その瞬間、アクアの身体の中に今まで感じたことのない不思議な力が満ちていた。

先程クロエが言っていたような、石化や魅了の防止ができるのかどうかまではよく分からない。

だが、先程までかなり薄暗く感じていた湖底神殿の中が、まるで陽の光に照らされているかのようによく見える。

自分達が今いるテーブル周辺はもちろんのこと、柱の凹凸や神殿上部に施された模様の彫刻の細部までくっきりと見えるようになった。

それが先程クロエが語っていた、数々の加護の効果のうちの一つ『暗闇の中でも夜目が効いて、まるで昼間のようによく見えるようになる』であるということだけは、アクアにも即実感できていた。

そうした神殿守護神同士のやり取りを、少し前から見守っていた二人の女王。

ふと闇の女王が、微笑みつつ口を開いた。

『ふむ……うちのココ様もとても賢い御方だが、水の女王よ、其の方のところのアクア様も実に立派な御仁と見た』

『でしょでしょー!うちのアクア様はねぇ、まだ生まれてから日も浅いけど、それはそれは立派な水神様なのよ!というか、闇のお姉ちゃんのところのココ様、すーっごく綺麗な見た目をしていらっしゃるのに、中身はとても可愛らしい御方なのねぇ』

『そうだろうそうだろう。うちのココ様は、見た目は妖艶な美女だが、それに反して中身は実に愛らしい御方なのだ』

水の女王と闇の女王、互いの神殿守護神を褒めつつ己の守護神のことをさらにベタ褒めしている。

まるっきり親バカモード丸出しだが、どちらとも本気でそう思っているし、何より他者を貶めたり害するようなものではない。

二人の女王がフフン☆とドヤ顔で守護神自慢をする様は、何とも微笑ましいものだ。

アクアもクロエも生後一年と少しで、未だ幼い守護神達が果たして上手く交流できるか、内心ではかなり心配していた。

しかしそれは杞憂に終わり、自分達の神殿守護神が加護を交換し合うまでに仲良く交流していることを、二人の女王は心から喜んでいた。