軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1437話 闇の女王の依代

朝食を食べた後、着替えたり支度を整えて再びリビングに集合したライト達。

ライトはいつものマントにアイテムリュック、レオニスは深紅のロングジャケット、ラウルは黒の天空竜革装備。いずれも皆フル装備である。

「よし、皆出かける準備ができたな」

「うん!」

「闇の女王、目覚めの湖の位置は分かるよな? そこまでは、俺達の中の誰かの影に入りながら移動するか?」

『………………』

「……ン? 闇の女王、どうした?」

出かける前に、闇の女王に移動方法の確認を取るレオニス。

しかし、闇の女王は何故かレオニスの胸元に熱い視線を注いでいた。

『……レオニス、其の方……よくよく見たら、良い物を持っておるではないか』

「良い物って、一体何の話だ? …………って、もしかしてこの黒水晶のブローチのことか?」

『そう、それだ』

闇の女王の謎の視線に、レオニスが己の胸元を改めて見る。

その視線の先にあるのは、レオニスが着ている深紅のロングジャケットの襟にクリップで着けていた黒水晶のブローチだった。

それまでずっと黒水晶を注視していた闇の女王。ふいにニヤッ……と妖艶な笑みを浮かべた。

『昼日中の陽光に当たってもなお、闇の如き漆黒を湛える黒水晶……吾が潜むに相応しい器となろう』

「ぁー、確かにな……じゃ、とりあえずここに入るか?」

『うむ』

闇の女王の熱い視線、その理由がレオニスにもようやく分かった。

レオニスが身に着けている黒水晶のブローチは、レオニスの護身用にアイギス三姉妹が彼のために作った品だ。

特に黒水晶は、魔除けや破邪に強い効果を発揮する宝石として名高い。

しかもブローチに使われているのは、超一流ブティックを長年経営しているカイ達のお眼鏡に叶った黒水晶。大粒で最高品質のものだ。

闇の精霊の頂点である闇の女王が入る器、依代としても最適だろう。

レオニスの承諾を得て、闇の女王がレオニスの襟に着いているブローチの大粒の黒水晶に向けて手を伸ばし、そっと触れた。

すると、彼女の指先が黒水晶に触れた途端、シュルン!と闇の女王の身体が瞬時に黒水晶に吸い込まれたではないか。

あまりのことに、レオニスが慌てて黒水晶に向けて声をかける。

「お、おい、闇の女王、大丈夫か!?」

『うむ、問題ない。……いや、問題ないどころか、この黒水晶の中は良質な魔力に満ちていてとても心地良いぞ』

「そ、そうか、なら良いが……」

ご機嫌な声で問題ないことを伝える闇の女王に、レオニスは拍子抜けしながら安堵する。

その後も闇の女王は黒水晶の中で『ここまで闇に満ちた場所なら、暗黒神殿とも空間を繋げられそうだな』『…………お、成功したぞ』『重畳、重畳。これで吾はいつでも暗黒神殿とこの黒水晶の間を自由に行き来できる』等々、実に満足げな様子で独りごちている。

黒水晶の中で、何やらいろいろと励んでいる闇の女王。思うような成果を得られているようで、何よりである。

するとここで、クロエがスススー……とレオニスの前に寄ってきて、黒水晶を覗き込みながら闇の女王に向けて声をかけた。

『ママー、そこからココ達の様子が見えるー?』

『おお、ココ様、その愛らしいご尊顔が良く見えますぞ』

『そっか!そしたらママも、ココ達といっしょにお出かけできるね!』

『ええ。ココ様の御身は吾がお守りします故、ココ様もどうぞ安心してお出かけ召されませ』

『うん!パパとママとお兄ちゃん達、そしてカラスちゃん達と皆でいっしょにお出かけできて、すっごく嬉しい!』

これで闇の女王もともに行動できるようになったことに、クロエがニパッ☆とした明るい笑顔で喜んでいる。

そうしてライト達は、コテージを出て目覚めの湖に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

皆で空を飛びながら、目覚めの湖を目指すライト達。

眼下には、まるで海のように果てしなく広がる緑の森。

そして夜に見るのとは全く違う、日中の明るい日射しに照らされた森を見ながらクロエが感嘆する。

『うわぁ……お外が明るい時の森って、こんな色をしていたのね!』

「そっか、ココちゃんは昼間にお出かけしたことないもんね」

『うん!闇の精霊達も昼間に空を飛ぶことはできないから、昼間の森を上から見るのはこれが初めてなの!』

初めて見る魔の森の昼の姿に、クロエが興奮気味に話している。

確かに月光で照らされる緑と日光に照らされる緑では、色鮮やかさからして全く異なるだろう。

クロエの目に映る全てのものが新鮮で、驚きと感動の連続にクロエは終始大はしゃぎだ。

ちなみに後で聞いたところによると、クロエのもう一つの目であるマードンは、森の中でも木々の下しか飛ばないのだという。

奴曰く『我、実は高所恐怖症でェーーー』とか『我、日光が苦ァ手なのでぅぅぅぅ』とかいろいろと言い訳しては低空飛行しかしないのだとか。

主の絶対的権限で『空高く飛べ!』と命令することも可能性としてはできなくもないだろうが、クロエとしてもそこまでしてマードンに頼りたくはないのでもう放置一択となった。

『アイツ、口ばっか煩くてホンット使えない……』と、口を尖らせながら本気で愚痴るクロエに、ライト達も苦笑いするしかない。

本当に、相変わらずどこまでも使えない 奴(マードン) である。

そうして程なくして、緑の海の中に木々が途切れる小島のようなものが見えてきた。

それこそが、今ライト達が目指している目覚めの湖である。

目覚めの湖を見たクロエが、より一層嬉しそうな声を上げた。

『あッ!あれがパパ達が言っていた、目覚めの湖!?』

「そうだぞ。あれは湖という、たくさんの水が集まってできた場所だ」

『あんな大きな泉、初めて見るわ!あの大きな水溜まりの中に、ママの姉妹やパパ達のお友達がいるのね!?』

「ああ。水の女王に湖底神殿守護神のアクア、水の精霊ウィカチャに湖の主イードがいる」

『ママの姉妹やパパ達のお友達なら、ココもお友達になれるかな?』

初めて見る湖をワクテカ顔で見つめるクロエに、レオニスが優しい口調で語りかける。

「もちろんだとも。目覚めの湖にいる仲間達は、皆心優しくて気の良い連中ばかりだ。ココのことだって、絶対に大喜びしながら歓迎してくれるさ」

『だといいな!』

もうすぐそこまできている、目覚めの湖の仲間達との出会い。

新たな出会いへの期待感でクロエの胸は踊り、ますます輝きに満ちた顔になっていく。

そしてライトが、目覚めの湖の中央を指差しながらクロエに教える。

「ココちゃん、あの湖の真ん中に小さな島、陸地があるのが見える?」

『……うん、見えるわ』

「ぼく達いつも、あの小島の上で水の女王様達と会ってお話ししたり、お茶会をしているんだ。とりあえず、あの小島に降りてみようね」

『うん!分かったわ!』

ライトの懇切丁寧な教えに、クロエも大きく頷きながら応える。

そうしてライト達は目覚めの湖の中央の小島の上まで飛んだところで、ゆっくりと下に降りていった。