軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1429話 楽しい旅行の終わり

「………………」

夢から覚めて、のっそりと起き上がったライト。

夢の内容が緊迫感ありすぎて悪夢に近かったせいか、眠って疲れが取れるどころか疲労が蓄積した気がする。

しばしベッドの上でボーーーッ……としていたが、もそもそとベッドから出て身支度を整え始めた。

ぱしゃぱしゃと顔を洗いながら、ライトはぼんやりとした頭で考える。

『あれ、 絶(ぜ) ッ 対(て) ぇーーーにただの夢じゃねぇよなぁ……もしあれが正夢なら、今ティファレト遺跡に入ったら屍武者や禍精霊【光】に出食わすってことになるんか?』

『さすがに武器防具無しであれらと戦いたくないなぁ……ま、そもそも俺の場合、年齢的にも遺跡の再調査なんて当分参加できんだろうけど』

『……でもまぁ、レオ兄やラウルなら大丈夫っしょ……あの程度のモンスターにやられるような二人じゃないし』

ライトの記憶では、忿怒の屍武者も禍精霊【光】も遺却の獣王も、それなりに強いモンスターだった覚えがある。

さすがにそれらの詳細データまでは【詳細鑑定】でも使わないと分からないが、少なくともHPは五桁もしくは六桁はあったはずだ。

だが、レイドボスやイベントボス程の脅威ではない。万が一レオニス達がティファレト遺跡の内部調査でそれらと出食わしたとしても、余裕で返り討ちにできるだろう。

顔を洗ってさっぱりした後は、パジャマから服に着替えて一階のリビングに行く。

するとそこには、ライト以外の面々が既に集まっていた。

「あ、ライト君、おはよう」

「ライトちゃん、おはよう!」

「何だ、ライトにしちゃ珍しく起きてくるのが遅かったな?」

「よく寝れなかったのか?」

皆からかけられる朝の挨拶に、ライトも「おはようございますー」「うん、いつもと枕が違うせいかなぁ?」「大丈夫、ちゃんと寝たよー」等々返している。

「皆、もう朝ご飯は食べたの?」

「いや、まだだ。もうそろそろライトが起きてくるかと思ってな、皆で待ってた」

「あー、待たせちゃってごめんね!じゃ、皆で朝ご飯食べようよ!」

「食堂の方で、もうある程度用意してあるぞ」

「ありがとう、ラウル!」

ライトの起床待ちだったという朝ご飯を食べに、全員リビングから食堂に移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

朝食を食べた後、ライト達はコテージを出る支度をして玄関に集まった。

ラグナロッツァに帰る翼竜篭の便が午前十時出立予定なので、午前九時にはこのコテージを出なければならない。

コテージの門扉の前には、行きの時に乗ったのと同じ馬車が待機している。

コテージの玄関では、出立を前にして一足先に下りてきたアイギス三姉妹が楽しそうにおしゃべりをしている。

「はぁー……楽しい時間って、どうしてこうも過ぎるのが早いのかしら?」

「ホントホント。特にアラエルさん達とのファッションショーが楽し過ぎて、あっという間に三日が過ぎちゃったわ!」

「ティファレトの温泉もすっごく気持ち良かったし、またいつか皆でティファレト温泉旅行しに来たいわね」

「カイ姉さん、それ、すっごくいいわね!」

「その時は、是非ともアラエルさん達をお誘いしたいわね!」

おしゃべりを楽しむアイギス三姉妹の腕には、それぞれ普通サイズの八咫烏母娘達が抱っこされている。

カイはアラエル、セイはムニン、メイはトリス。

この三日間、人族の女性の裸体をじっくり観察して完全な人化の術を目指す!という名目のもと、温泉に浸かりまくった八咫烏母娘達。

その羽根はこれまでになくツヤッツヤに輝いていて、極上のつやもふとなっていた。

カイ達の腕に抱っこされながら、八咫烏母娘がアイギス三姉妹に礼を言う。

「カイさん達のおかげで、私達もとても有意義なひと時を過ごさせていただきました。娘達ともどもお世話になり、本当にありがとうございました」

「このご恩は決して忘れません」

「皆さんにご指導いただいた教えを胸に、今後もより精進を重ねていくことを誓います!」

真摯に礼を述べるアラエル達に、カイ達も「どういたしまして。私達もとても楽しかったわ」「ご恩なんて大層なものじゃないわ!」「人化の術がもっと上手になったら、また私達にもその成果を見せに来てね!」等々、嬉しそうに返事をしている。

そんな話をしているうちに、ライトやレオニス、ラウルにマキシも玄関に集まってきた。

「カイ姉、待たせてすまん」

「大丈夫よ、そんなに長く待った訳ではないもの」

「皆、忘れ物はないか?」

「大きな荷物は全部レオに持ってもらったから大丈夫よー」

「じゃ、ぼちぼち行くか」

「あ、レオちゃん、ちょっと待って。ラーデ君とはここでお別れだから、ちゃんとご挨拶させて?」

「そっか、そう言われりゃそうだな」

皆で外に出る前に、玄関でアイギス三姉妹がラーデと別れの挨拶を交わす。

ラーデはレオニスとともに冒険者ギルドの転移門で帰るため、アイギス三姉妹とはここで別れとなるからだ。

レオニスの右肩にちょこん、と乗っかっているラーデに、カイがそっと手を伸ばして頬を優しく撫でる。

「ラーデ君、私達の旅行に三日間付き合ってくれて、本当にありがとう。ラーデ君や皆のおかげで、とても楽しく過ごせたわ」

『何の、礼なら我の方から言わねばならぬ。此度の旅行は、我にとっても実に楽しく得難い経験であった』

「もうラーデ君とお別れなんて、寂しいわ」

『そう寂しがることはない。きっとまた、いつの日か会える故な』

「そしたら、その時はまた私達と旅行に行きましょうね!約束よ!」

『ああ、約束しよう』

カイ、セイ、メイ、三人とも名残惜しそうに、ラーデを代わる代わる抱っこしたり撫でたりしている。

アイギス三姉妹とラーデは、このティファレト温泉旅行で初めて会い、三日間をともに過ごした。

たかが三日、されど三日。カタポレンの森でライト達と暮らすのとはまた違う、女性ならではの気配りや華やかさ、賑やかさ、そういったものをラーデもまた思いの外気に入っていた。

そしてアイギス三姉妹はライトや八咫烏達とともに馬車に乗り、レオニスとラウルは馬車と並走しながら翼竜篭の発着場に移動した。

発着場にいる翼竜を見ると、今日はシグニスはいないようだ。

代表者であるカイがターミナルで搭乗手続きをし、ライト達が利用する翼竜篭に乗り込む。八人乗りの翼竜篭は、行きと同様大きくて豪奢な作りだ。

外にいるレオニスとラーデに向かって、カイとライトが篭の中から手を振る。

「レオちゃんも、気をつけてラグナロッツァに帰ってきてね」

「ありがとう。何、転移門で移動するから大丈夫さ」

「レオ兄ちゃん、また後でね!」

「ああ、帰りの空の旅も楽しんでこいよ」

「うん!」

「ラウル、ライトやカイ姉達のことを頼んだぞ」

「了解」

出立の午前十時になり、ライト達を乗せた翼竜篭がゆっくりと浮かんでいく。

ラグナロッツァに向かって悠々と飛んでいく翼竜篭を、レオニスは青空を見上げながらラーデとともに見送っていた。