軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1417話 コテージ到着

ティファレトの空がほんのりと赤みを帯び始めた頃。

ライト達翼竜籠組は無事ティファレトの街に到着した。

ライト達の乗った翼竜籠は翼竜牧場のティファレト発着場に着き、籠から降りたライト達。

カイ達アイギス三姉妹は帰りの便の人数変更手続きのためにターミナルの建物に入り、その間ライトとラウルはシグニスら御者と二頭の翼竜に労いの言葉をかけていた。

「シグニスさん、プテラナちゃん、お疲れさまでした!今日も楽しい空の旅をありがとうございました!」

「お疲れさん。いやいや、こっちこそ昼飯や休憩に美味しいおやつをご馳走になってありがたかったぜ。ラウルさんの料理は相変わらず、いや、前にも増して美味かった!」

「お褒めに与り光栄だ」

ライトに頬ずりしてくるプテラナを、ライトも嬉しそうに撫でながらシグニスと挨拶を交わす。

竜族との交流や加護のおかげで、一時は翼竜達に怖れられてしまったライト。だが、今ではすっかり仲良しに戻っている。

するとそこに、三日後の帰りの便の変更手続きを無事済ませたカイ達が戻ってきた。

「ライト君、ラウルさん、お待たせー」

「あ、カイさん、おかえりなさい!」

「さ、そしたら冒険者ギルドに行きましょ」

「はい!シグニスさん、プテラナちゃん、もし帰りの便もいっしょだったらよろしくお願いしますね!」

「おう、そん時はよろしくな!」

去り際にシグニス達に向けて手を振り続けるライトに、シグニスも笑顔で大きく手を振る。

そうしてライト達は翼竜牧場を後にし、レオニスとの待ち合わせ場所である冒険者ギルドティファレト支部に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翼竜牧場ティファレト発着場から、のんびり歩くこと約三十分。

ライト達は無事冒険者ギルドティファレト支部に到着し、建物の中に入った。

中に入ると、結構な数の冒険者達で賑わっている。この時間帯は、依頼達成の申告が集中しやすいのだ。

そんな中、一際人集りができている場所がある。その中心には、レオニスがいた。

「あ、あっちにレオ兄ちゃんがいた。おーい、レオ兄ちゃーん!」

「……お、ライト、着いたか!すまんな、お前ら、ちょっと通してくれ」

レオニスを取り囲む冒険者達を掻き分けるようにして、レオニスがライト達のもとに歩いてきた。

今日のレオニスはトレードマークのロングジャケットを着ていないのだが、それでも分かる人には分かってしまうのだろう。

ティファレトには滅多に現れない有名人だけに、取り囲まれるのも致し方ない。

そんなレオニスに、セイやメイが笑いながら話しかける。

「ンまー、レオってば人気者ねぇ!」

「そんないいもんじゃねぇって……見ての通り、野郎にばっかり囲まれてんだぜ?」

「大丈夫大丈夫!レオだってそれなりに男前なんだから、そのうち女の子にだってモテるようになるわよ!」

「そのうち、な……いつになったらそんな日がくるんだか、さっぱり分からんが」

レオニスの偏った人気者ぶりを揶揄うように笑うセイとメイに、レオニスがふぅ……と小さくため息をつく。

その一方で、ライトもレオニスに話しかけた。

「レオ兄ちゃんは今まで何してたの? 依頼掲示板とか見てたの?」

「おう、面白そうな依頼もそこそこあったし、それより先に売店でいろんな土産も買ったりしてたわ」

「え、もうお土産買ったの? 後で見せてね!」

「ああ、コテージに着いたらな。カイ姉達が喜びそうなものもたくさん買ったから、後で皆で見ような」

「まぁ、レオ兄ちゃんってば、姉さん達にまで気を遣ってくれてありがとうねぇ」

もう土産を買ったというレオニスに、ライトは驚きカイは嬉しそうに微笑む。

「さ、そしたら日が暮れないうちにコテージに行きましょ!」

「カイ姉達が借りたコテージは、ここから歩いてどれくらいのところにあるんだっけ?」

「結構街外れの方にあるんだけど、ここから近い公園からコテージ宿泊客専用の往復馬車が止まっているはずだから、それに乗って行く予定よ」

「六人全員が乗れる馬車なのか?」

「ぁー、さすがにそれはちょっと現物を見てみないと分かんないわね……」

「ま、全員乗れなくても問題ないさ。そしたら俺とラウルは普通に走ってもいいし。な、ラウル?」

「ああ。馬車にはカイさん達三人と小さなご主人様が乗るべきだ」

ライトとレオニス、ラウルにアイギス三姉妹、六人が固まってゾロゾロと歩きながら出口に向かって歩いていく。

これから始まる温泉旅行に、皆足取りも軽やかだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後皆で公園に行くと、やはり馬車は四人乗りだったのでアイギス三姉妹とライトが馬車に乗り、レオニスとラウルは馬車に並行して走ってコテージに向かった。

馬車の中ではアイギス三姉妹がムニン、トリス、ミサキを抱っこし、ライトの膝の上にフォル、左右にマキシとアラエルがちょこんと座っている。

普段ペットを飼っていないアイギス三姉妹は、八咫烏女子達のもふもふ羽毛に終始メロメロのご満悦である。

公園から馬車で移動すること約二十分。

ティファレトの街外れにある貸し切りコテージはとても広く、馬車から降りてさらに十分ほど奥に向かって歩き続けた。

これだけ表の入口から歩けば、中の様子が外から見える心配は全くないと言って差し支えないだろう。

コテージに近づくにつれ、屋外プールやバーベキュー用の設備に四阿等々、様々な設備があるのが見える。

さすがに屋外プールを使うには時期が早過ぎるが、夏に宿泊すればプールも楽しめるということだ。

バーベキュー設備も大きな台が三台あり、しかも雨避け兼日差し避けの四阿までセットとなっている。

ライト達はそうした様々な設備の横を歩きながら、心底感嘆していた。

「うわー、プールにバーベキュー台までついてるなんて、すごいねー!」

「あのバーベキュー台なら、一台で十人以上は使えそうだな」

「あれ、多分ティファレト名物の虹マスを丸ごと焼けるサイズになってるんだと思うぞ」

貸し切りコテージでキャンプ風の旅行なんて、前世も含めて一度もしたことのないライト。全てが初めてのことで、今からワクテカが止まらない。

そうして見えてきたコテージがまたかなり大きい。

十人は泊まれる建物という話だったが、それはあくまで部屋割りやベッド数の問題での話であり、ソファで寝るなどして手段を選ばなければ二十人や三十人は寝泊まりできそうだ。

そうしてコテージの入口に立ったライト達。

建物の鍵を持っているカイが鍵を使い、扉を開けて中に入った。

まずは皆でリビングに向かうと、そこには革張りのゴージャスなロングソファや六人座りの大きなテーブル、バーカウンターなどがある。

さらには冬に使うであろう大きな暖炉まであり、コテージならではの木造建築と相まってとても良い雰囲気だ。

「うわぁ……中もすっごく広くて綺麗だねー……」

「ああ、何ならラグナロッツァの俺の屋敷と大差ないかもな」

「ウフフ、さすがにそれはないわよ」

初めて見るコテージの中の様子に、ライトとレオニスがただただ感心している。

カイの言うように、ラグナロッツァのレオニス邸と比べて同じというのはさすがに言い過ぎだが、それでも予想以上に豪華な作りであることは間違いない。

「さ、そしたらまずは二階の部屋割りして、お風呂の確認をしてから夕食の支度をしましょうか」

「そしたら俺はすぐに食事の支度を始めるから、部屋割りはご主人様達に任せる。カイさん、今日の晩飯はどうする? コテージの中で食ってもいいし、外でバーベキューでもいいが」

「そうねぇ、せっかくだから皆でお外で食べましょうか」

「了解」

部屋割りの確認もそこそこに、早速夕食の支度を始めるというラウル。

確かにもう外はすっかり夕焼け空だし、六人分の食事を用意するなら早く取りかかった方がいいことは間違いない。

何気にせっかちなラウルに、レオニスが空間魔法陣を開きつつ話しかける。

「そしたらラウル、これもバーベキューの食材に加えといてくれ」

「ン? ……おおッ、何だこの巨大な魚は!?」

「ティファレトの名産品、虹マスだ。皆がここに着くまでの間に、街一番の魚屋に回って買っておいたんだ」

レオニスが空間魔法陣から取り出した、丸ごと一尾の虹マス。

そのあまりの大きさに、ラウルが驚きながらも咄嗟に受け取っている。

「これをバーベキューで焼くとなると、身に火が全部通るまでにかなり時間がかかりそうだな……よし、今すぐにバーベキューの炭火に火を付けてくるわ」

「一応切身もあるから、そっちも渡しとくわ。使えるようなら使ってくれ」

「はいよー」

ひとまずラウルは自分の空間魔法陣を開き、丸ごと一尾の虹マスを一旦仕舞い込んでから切身の方も受け取る。

時間が惜しいとばかりにいそいそと外に向かうラウルに、他の面々も思わず笑う。

「じゃ、とりあえず皆で二階に行きましょうか」

「はーい!……あ、マキシ君たちももういつもの大きさに戻っていいよ!」

「「はーい!」」

カイの呼びかけにライトが応じつつ、マキシ達八咫烏にも寛ぐように伝える。

ここにはもうライト達以外の人間はいない。コテージの中でまで八咫烏という正体を隠し続ける必要ないはないのだ。

そしてその話の流れか、ライトが未だレオニスの左肩にいるラーデにも声をかけた。

「ラーデもお疲れさま。カイさん達にご挨拶するから、こっちにおいでー」

『うむ』

ライトの呼びかけに、ラーデがふよふよとライトのもとに飛んでいく。

そう、ラーデの着けたアクセサリーの隠密魔法の付与効果により、カイ達の目には未だにラーデが映っていなかった。

ライトはラーデの腕に着けていたミサンガ風ブレスレットを外し、ラーデを抱っこしてカイ達の前に連れていった。

「カイさん、セイさん、メイさん、この子がラーデです!」

「まぁ、ホントにレオちゃんの肩にいたのね……今までずっと気づかなかったわ」

「へぇー、この赤くて黒い子が竜の祖なのねぇ」

「見た目や身体は小さいけど、竜ならではの威厳に満ち溢れているのが私にも分かるわ!」

それまで存在を認識できていなかったラーデが突然現れたことで、アイギス三姉妹が目を見張りながら驚いている。

しかし、彼女達が驚いていたのはほんの一瞬のことで、すぐに自己紹介と挨拶をし始めた。

「初めまして、ラーデ君。君のことは、マキシ君やレオちゃん、ライト君からも聞いているわ。私はカイというの、よろしくね」

「私はセイ、三姉妹の中の二番目で、カイ姉さんの妹でメイの姉よ。よろしくね!」

「私はメイ、三姉妹の末っ子よ。よろしくね!」

にこやかな笑顔で気さくに話しかけるアイギス三姉妹に、ラーデもその都度『うむ、よろしくな』と答えている。

ティファレト旅行をともにする全員が顔合わせを済ませ、ラウルを除く全員がコテージの二階に向かって移動していった。