軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1376話 三年生初めての日

ライトはとても充実した春休みを過ごし、再びラグーン学園に通う日がやってきた。

今日からライトはラグーン学園初等部三年生。

サイサクス世界のアクシーディア公国では初等部は三年生までなので、初等部の中では最高学年。ピッカピカの三年生である。

春休みに入る前、ライトの二年生三学期はいつにも増して波瀾万丈な日々だった。

特にコヨルシャウキとのビースリーで何度も死にかけたライトにとって、ラグーン学園に通えるというのは至福の時だ。

代わり映えしない平凡な日常―――それこそが最も尊くありがたいものであることを、ライトは身に沁みて実感していた。

久しぶりに袖を通すラグーン学園の制服。

ライトが一年生の秋に途中入学した時はゆったりめだったが、今ではぴったりフィットするようになった。

きっと三年生が終わる頃には、制服全体が少しキツくなったりズボンの裾や袖丈が短くなっていることだろう。

カタポレンの家からラグナロッツァの屋敷に移動したライトは、いそいそと着替えて二階から一階に下りる。

すると、玄関ホールで今まさに外から玄関に入ってきたばかりのラウルと鉢合わせした。

「お、ライト、今からラグーン学園か?」

「おはよう、ラウル!ラウルは今から野菜の収穫?」

「おう、こっちの温室菜園の方の収穫が終わったからな、今度はあっちの畑の収穫しに行くところだ」

「そっか、ラウルも頑張ってね!」

「ああ、ライトも気をつけてな」

「いってきまーす!」

「いってらー」

今日も野菜収穫に勤しむ 万能執事(ラウル) を労うライト。

ラウルに見送られながら、元気にラグナロッツァの屋敷を飛び出していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラグーン学園に到着し、三年生の教室がある棟に入るライト。

この日から新たに一年間使うことになる三年A組の教室に行くと、既に多数のクラスメイト達が登校していた。

「あ、ライト君!おっはよー!」

「ライト君、おはー!」

教室の中に入ってすぐ、ライトに向けて声がかけられた。

その声の主は、イヴリンとリリィ。相変わらず元気いっぱいな女子である。

そんな元気いっぱいな女子二人の横にはジョゼとハリエットもいて、ライトに向かって小さく手を振っている。

「皆、おはよう!」

「ライトさん、おはようございます」

「今日から皆で三年生だねー!」

「今日から皆、初等部で一番上のおねーさんとおにーさんだね!」

「実際は今までと何も変わらないけどねー」

まだ席順が決まっていないので、適当な机に座るイヴリンとリリィ。

その周りをライト達が取り囲みながら他愛もない話をする。実に長閑な光景である。

そして始業の鐘が鳴り、程なくして担任のフレデリクが教室に入ってきた。

今年もライト達A組の担任はフレデリクが受け持つようだ。

そうしてライトのラグーン学園三年生の初日が穏やかに始まっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

久しぶりのラグーン学園を存分に堪能し、午前中にラグナロッツァの屋敷に帰宅したライト。

二階の旧宝物庫でちゃちゃっと私服に着替え、カタポレンの家に移動した。

そして自室からすぐに飛び出て、外にいるであろうラウル達に声をかけた。

「ラウル、マキシ君、ラーデ、ただいまー!」

「おう、おかえりー」

「ライト君、おかえりなさい!」

『おかえり、ライト。久しぶりのラグーン学園とやらは楽しかったか?』

「うん!学園の友達皆も元気でね、たくさんお話しして楽しかった!」

『そうか、それは良かったな』

ライトの大きな声での呼びかけに、ラウルとマキシが殻焼き用焼却炉がある家の東側からヒョイ、と姿を現し、ラーデは 皇竜(じぶん) 用に開拓された南側の平地からふよふよと飛んできた。

今日はマキシも有給休暇を取って仕事を休み、ラウルとともに畑仕事をしていたようだ。

「レオ兄ちゃんはまだ帰ってきてない?」

「ああ、だいぶ前に警邏に出ていったからそろそろ帰ってくる頃じゃないか? …………って、噂をすれば影、だ」

ライトがラウルとともにレオニスの話をしていると、そこにちょうどレオニスが帰ってきた。

ラウルが言っていたように、カタポレンの森の警邏からの帰還である。

空からストッ、と降りてきたレオニスのもとに、ライトが嬉しそうな笑顔で駆け寄っていく。

「レオ兄ちゃん、おかえりー!」

「ただいまー。何だ、ライト、もう帰ってきてたのか」

「今日はまだ一学期の初日だから、半日で終わるってのもあるけど。これから皆でお出かけだから、急いで帰ってきたんだ!」

「そうかそうか、じゃ、早速出かけるか。ラウル、火の始末は大丈夫か?」

「もちろん。ライトが帰ってくる直前に、完全に消したところだ」

「そっか、ならいい」

笑顔で自分を出迎えてくれたライトの頭を優しく撫でるレオニス。

ライトが言うお出かけ、その行き先は暗黒の洞窟。そして皆で暗黒の洞窟に行く理由は、ノワール・メデューサのクロエの誕生日を祝うためである。

暗黒神殿の祭壇にあった未孵化の卵、そこからノワール・メデューサが生まれたのは昨年の四月三日のこと。

それから一年が経ち、クロエの誕生日を皆で盛大にお祝いしよう!ということになったのである。

「じゃ、今から皆で暗黒の洞窟に行くか」

「うん!皆、ココちゃんへの誕生日プレゼントはちゃんと持った?」

「もちろんだ。パパである俺が、可愛い娘のココへの誕生日プレゼントを忘れる訳がないだろう?」

「俺もだ。スイーツ以外にもちゃんと用意したぞ」

『我も一応用意はしてある』

「僕も用意しましたけど……ココちゃん、受け取ってくれるでしょうか?」

クロエの誕生日プレゼントを用意したかを確認するライトに、皆それぞれにちゃんと用意したと答える。

だが、マキシだけは何だか自信無さげだ。

それは、この五人の中で最もクロエとの繋がりが薄いことからきている不安の現れであろう。

そんな自信無さげなマキシに、ライトが力強く話しかける。

「マキシ君、大丈夫だよ!だってここにいる皆は、ココちゃんといっしょに天空島で戦った仲間だもん」

「そ、そうですか?」

「うん!マキシ君だってあの時、天空島で戦う皆のために回復サポートとかしてたし!ね、レオ兄ちゃん?」

「そうだぞ、ライトの言う通りだ。それにココはとても優しい子だからな、きっとマキシ達八咫烏とも仲良くしたいって思ってるぞ」

「……そうですね!僕もココちゃんと仲良くなりたいです!」

ライトとレオニスの励ましに、初めは不安そうに俯いていたマキシも次第に顔を上げていく。

そしてレオニスの楽観的推察に、マキシの顔がパァッ!と明るくなった。

「じゃ、そろそろ行くぞー」

「うん!」「おう」「はい!」

レオニスの掛け声を皮切りに、ライトとラウルとラーデがふわり、と宙に浮き、マキシは人化の術を解いて本来の八咫烏の姿に戻る。

そしてライト達一行は、暗黒の洞窟に向けて一斉に飛んでいった。