軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1366話 二人の新たな決意

砂の女王の住むジャッジ・ガベルを後にしたライトとレオニス。

帰りは急ぎではないので、二人並んでのんびりと空を飛んでネツァクの街に向かう。

「これで全部の属性の女王様に会うことができたねー」

「ああ。廃都の魔城の奴等に付け狙われている女王も何人かいたが、それでも何とか皆元気そうで良かった」

「ホントだね……」

レオニスがしみじみと呟いた言葉に、ライトもまた感じ入りこれまでのことを振り返る。

ライト達が初めて会ったのは、炎の洞窟にいる炎の女王。

炎の洞窟に近い街、商業都市プロステスの異常気象の原因が炎の洞窟からきていることを知り、レオニスがその調査依頼をプロステス領主であるアレクシス・ウォーベックから受けたのが始まりだった。

そして炎の洞窟の中で穢れに侵され瀕死状態に陥っていた炎の洞窟を救出し、彼女から『他の属性の女王達の安否を確認してほしい』と頼まれた。

ライト達は快く引き受け、世界各地にいる属性の女王達を探し訪ねることになったのだ。

ライト達が炎の洞窟を訪れ、炎の女王から依頼を受けたのが昨年の二月半ばのこと。それから実に丸一年以上が経過したことになる。

しかし、頑張った甲斐あって全ての属性の女王と直接会い、彼女達の無事を確認することができた。

それだけではない、彼女達と仲良くなったライト達は女王達の加護を得たし、女王達のもとに必ずいる神殿守護神達とも懇意になった。

これは現役冒険者であるレオニスはもちろんのこと、将来冒険者になりたいライトにとっても大いに役立つであろう。

炎の女王から始まり、水の女王、火の女王、闇の女王に海の女王等々、これまで出会ってきた属性の女王達の顔がライトの脳裏に思い浮かぶ。

ゲームキャラクターとしての女王達は、グラフィックが流用されているので顔立ちや身体つきは基本的に皆同じだ。しかし、属性毎の色や特性を表現した髪型などで変化がつけられていて、どの女王も皆美しく可憐だとライトは思う。

前世からBCOの女王ファンだったライトは、女王達と新しく出会う度にその胸が高鳴ったものだ。

そんな風にライトが数々の思い出に浸っていると、レオニスがライトに話しかけてきた。

「とりあえず属性の女王達の無事は確認できたが、廃都の魔城の奴等が付け狙っているのは女王達ばかりとは限らん。現にラキ達オーガ族やツィちゃん達神樹族は直接襲われたし、こないだ会ったばかりの金鷲獅子のアウルムも穢れに侵されていた。八咫烏のマキシに至っては百年以上も魔力を収奪されてきたからな」

「うん、そうだよね……ぼく達が知らないところで、今もどこかで誰かが苦しめられているかもしれないよね」

「そう、俺達がまだ知らないだけで、きっとそうした被害はまだまだ世界中にあるだろう。将来俺達の手で、廃都の魔城の奴等に引導を渡すためにも……これからもそうした異変を片っ端から見つけて潰していかんとな」

真剣な眼差しで前を見ながら飛び続けるレオニス。

彼の言うことは正しい。廃都の魔城の四帝は、これまでずっと人類と敵対し続けてきていたが、何度斃されても無限に等しいと思える魔力でその都度復活してきた。

その復活の魔力の源は、全て他者から収奪したものであることがこれまでの経緯で判明している。

人類のみならず、サイサクス世界に生きる者全ての仇敵である廃都の魔城、そしてその首領である四帝。

奴等を完全に撲滅させるには、復活の源である魔力収奪源を全て叩き潰すのが一番確実な近道なのだ。

そうしたレオニスの決意を受けて、ライトも奮起しつつ応える。

「うん!ぼくももうすぐ冒険者登録できるし!そしたらレオ兄ちゃんといっしょに、いろんなところに出かけて冒険するんだ!」

「ラグーン学園に通っている間は、あまり遠出はできんがな」

「うぐッ……で、でも!夏休みや冬休み、春休みとかの長いお休みの間なら遠出できるし!」

「まぁな、今だって春休みでこうして遠征してるしな!」

レオニスの冷静なツッコミに、ライトが慌てたように反論している。

懸命に言い募るライトの姿がおかしいのか、レオニスはカラカラと笑いながら同意する。

するとここで、ふとレオニスがライトに問うた。

「そういやライト、春休みってのは他の休みのように宿題はないんだったか?」

「うん、春休みだけは宿題は全くないよー。春休みは学年が進級する変わり目にあるし、学年を跨いで宿題させる意味なんてないもん。それに、クラス替えはなくても担任の先生が変わる場合もあるし。ただ、今回だけはこないだのビースリー騒動のせいで、ラグーン学園全体がしばらく休園してたから、復習のための計算ドリルは何枚か渡されたけど」

「そっか、そういうもんなのか。俺は学園とか学校に通ったことなんてないから、そこら辺はよく分からんが……ま、宿題に追われずにのんびり過ごせるってのはいいことだ」

「だよねー!」

春休みの宿題の心配をするレオニスに、ライトが懇切丁寧に教えている。

レオニスがライトの宿題を心配していたのには、実は理由がある。

それは『ノーヴェ砂漠遠征を題材とした宿題を出されたら困る』というものである。

というのも、以前オラシオンに会った際に、レオニスはオラシオンから「夏休みの植物観察日記に、ライト君がデッドリーソーンローズの観察日記を提出してくれましてねぇ……そりゃもう先生方全員びっくり仰天でしたよ」という話を聞かされていた。

それを聞いた時には、さすがにレオニスも『ぇぇぇ……アレを観察日記の題材に選ぶとか、そりゃねぇだろう……』と思ったものだ。

なので、もしライトが今回のノーヴェ砂漠遠征を長期休暇の宿題の題材にしようとしていたら、レオニスは止めるつもりでいた。

レオニスがそう思うのも当然だ。この過酷な環境のノーヴェ砂漠で一週間も探索する初等部の児童なんて、ライト以外に存在する訳がないのだから。

例えばの話、もしライトが『ノーヴェ砂漠遠征日記』なんてものを書いてラグーン学園に提出したら、それこそ前代未聞の大騒動になること必至である。

しかし、春休みは宿題がないというのなら大丈夫だろう。

強いて言えば、臨時休園分の遅れを取り戻すための計算ドリルが出されたらしいが、それならコルルカ高原奥地やノーヴェ砂漠の遠征を題材にすることも絶対にない。

はぁー……俺やグラン兄が冒険者なんてもんをしているせいか、ライトまですっかり冒険者気質になっちまってるが……ま、こればかりはしゃあない、何せライトはグラン兄の子だからな。

本当ならライトも、一日も早く冒険者として活動したいところだろうが、ラグーン学園での学びもライトの将来には絶対に必要なことだし。

ひとまず今のライトには、学業に重きを置きつつ学園が休みの間だけ冒険させてやるのが一番だよな!

レオニスがそんなことを考えていると、ライトはなおも嬉しそうに話し続ける。

「ぼくもねー、春休み中にしたいことがたくさんあるし!今回もノーヴェ砂漠に初めて遠征できて、すっごく楽しかったー!」

「そっか、そりゃ良かったな。でも、ノーヴェ砂漠の遠征はいつでも……それこそ大人になってからでもできるが、ラグーン学園での勉強は今しかできんからな? 学園生でいる間にしかできんことも、きっとたくさんある。休み中の冒険もいいが、普段のそうした何気ない時間も大事にしていけよ」

「うん!ぼく、ラグーン学園に通うことができて本当に良かった!レオ兄ちゃん、ぼくをラグーン学園に入学させてくれてありがとうね!」

今という時間を大切に生きろ、と言うレオニスの言葉に、ライトも破顔しつつ頷く。

レオニスは学園生活の詳細など全く分からないが、それでも子供時代の良い思い出がたくさんある。

ディーノ村の孤児院で過ごした日々は、決して裕福ではなかったし、むしろ貧乏でどん底だったと言っても過言ではない。

だが、貧しいながらもグランやレミ、カイやセイ、メイといった掛け替えのない仲間達とともに過ごした珠玉の日々でもあった。

そうした自身の経験から、子供時代にしかできないことをライトにもたくさん経験してほしい、と心から願っているのだ。

そうしているうちに、ネツァクの街の外壁が見えてきた。

真っ暗だった空も、東の方角が薄っすらと白んできている。夜明けはもうすぐそこだ。

二人は外壁が見えた時点で地面に降り立ち、そこから歩いてネツァクの街に入っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ネツァクの街に無事帰還したライトとレオニス。

先程砂の女王からルド兄弟宛に砂の勲章を預かったが、さすがに夜明けのこの時間にルド兄弟宅を訪ねるのは憚られる。

これはまた日を改めて渡すことにして、とりあえず二人は冒険者ギルドネツァク支部に向かった。

時刻はちょうど午前五時、冒険者ギルドの正門が開く時間である。

ネツァク支部の扉を開くと、掲示板の前に結構な人集りがいる。朝イチで貼り出される依頼の中で、より美味しい依頼を受けようと仕事を探しにきた冒険者達のようだ。

ライトとレオニスは、早速クレノがいる窓口に向かう。

「よ、クレノ、おはよう。今日は早番か?」

「あッ、レオニスさん!おかえりなさい!あれからもうすぐ一週間になるので、いつお帰りになるのかずーっと気がかりだったんですよぅー!」

「おお、そりゃすまん、心配かけたな」

「いえいえ、こうして二人とも無事帰還なされただけで嬉しいですぅー。ライト君もおかえりなさい」

ライトとレオニスの帰還を心から喜ぶクレノ。

ライトに対しても、ニッコリと微笑みながら朝の挨拶をしてくれる。その心根の優しさに、ライトも嬉しそうに挨拶を返す。

「クレノさん、おはようございます!でもって、ただいまです!」

「ライト君、ノーヴェ砂漠はキツくなかったですか?」

「レオ兄ちゃんといっしょだったので大丈夫です!それに、砂の女王様にも無事会えましたし!」

「そうですかー、それは良かったですねぇ。砂の女王にお会いできるなんて、とてもすごいことなんですよー?」

ライト達が目的を達成したことに、クレノもつぶらな目をさらに大きくして驚いている。

砂の女王に限ったことではないが、属性の女王は会おうと思ってすぐ簡単に会えるような存在ではない。

今回ライト達は砂の女王に会うのに一週間近くかかり、彼らのこれまでの女王探しの中ではかなり手こずった部類だ。

だがしかし、それでも一週間程度で砂の女王と会えたことはクレノに言わせれば奇跡的な早さである。

「さて、では俺達はそろそろラグナロッツァに戻る。ルド兄弟に注文した砂漠蟹の買い付けがあるから、近いうちにまたネツァクに来る予定だがな」

「そうなんですかー。まぁねぇ、さすがにこの時間にルド兄弟さんのおうちを訪ねる訳にはいきませんものねぇ」

「そゆこと」

近いうちに再びネツァクを訪れる予定があることをクレノに伝えるレオニス。

ラウルへの土産に買い付けたものだから、本当は帰る前に受け取りたいところなのだが。24時間営業のコンビニでもない個人宅に、朝の五時から押しかける程レオニスも非常識ではない。

それはクレノにも分かるので、にこやかな笑顔でレオニスに言伝を頼む。

「そしたら殻処理貴公子様にも、是非ともよろしくお伝えくださいねぇー♪」

「おう、ラウルにもきちんと伝えとくわ。じゃ、またな」

「クレノさん、朝早くからお仕事ご苦労さまです!ぼくもまたネツァクに来ますね!」

「お気遣いありがとうございますぅ。ライト君もレオニスさんもお疲れさまでした、またいらしてくださいねぇー!」

ネツァクでの目的を達成し、ラグナロッツァに戻るライトとレオニス。

二人が転移門のある事務室の奥に向かっていくのを、クレノが窓口から手を振りながら見送っていた。