軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1340話 金鷲獅子との再会

しばらくしてレオニスも帰宅し、皆でカタポレンの家で朝ご飯を食べたライト達。

出かける支度を整えて、家の外に出て転移門があるエリアに移動した。

このエリアには、今三つの転移門がある。

一つは神樹達を繋ぐ『神樹ネットワーク』、一つは『ドラゴンと友達になろう!大作戦』の時に設置したシュマルリ山脈中央に繋がるもの、そしてもう一つがコルルカ高原奥地に繋がるものだ。

今回レオニスたちが使うのは、コルルカ高原奥地に繋がる転移門。

現在コルルカ高原奥地に繋がる転移門は、鷲獅子騎士団の管轄下にあるが、このカタポレンの家の転移門との繋がりも特例として残してある。

ラーデを抱っこしたライト、レオニス、シーナ、アル、全員が転移門の中に入り、レオニスが操作パネルで行き先を指定する。

そうしてライト達一行は、コルルカ高原奥地に移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

カタポレンの家から景色が一転し、突如開けた高地が広がる。

ここはコルルカ高原。視界を遮るものは何一つなく、果てしなく大きな蒼穹は息を呑む程の美しさだ。

「おおお……ここが、コルルカ高原なんだね……」

『カタポレンの森はもちろん、氷の洞窟の周りの平原とも違う、何とも雄大な景色ですね……』

「ワォーーーン!」

初めて見るコルルカ高原の壮大な光景に、ライトもシーナも感嘆を洩らす。

一方レオニスはラーデに向かって話しかけた。

「ラーデ、アウルムの居る場所は分かるか?」

『…………あっちの方角にいる』

レオニスの問いかけに、ラーデがライトの腕の中からヒョイ、と抜け出してぐるりと全方位を二回見回す。

そうしてとある方向を見据えつつ、小さな手で指差した方向は先日レオニス達がアウルムと会った洞窟とは違う方向だった。

「……ン? こないだの 塒(ねぐら) とは方向が違うな?」

『亜奴の塒は一ヶ所と決まってはないからな。鷲獅子達が縄張りとするところ全てがアウルムの領地と言っていい故に、一つ所に留まっているとは限らんのだ』

「そっか。じゃあラーデに案内してもらうのが一番確実だな。案内を頼めるか?」

『うむ、任せよ』

金鷲獅子の魔力を感知できるラーデに案内を託し、レオニスが今度はシーナ達に確認を取る。

「シーナ、アル、今からラーデが金鷲獅子のところに案内してくれるそうだ。この広大な高原を飛ばずに走り抜くってのは、なかなかにキツいと思うが……ついてこれるか?」

『誰に物を言っているんです? 地を駆けることにおいて、私達銀碧狼の右に出る者などおりませんよ』

「上等だ。そしたらラーデが飛んでいく方向についてきてくれ。俺とライトはなるべくあんた達の近くを飛ぶから、何かあったら呼んでくれ」

『分かりました』

レオニスの心配を他所に、不敵な笑みを浮かべながら問題ないと言い切るシーナ。

その自信たっぷりの様子に、レオニスもつられてニヤリ、と笑う。

「よし、ラーデ、そういうことだから行くぞ。アウルムのところまで、案内をよろしく頼む」

『承知した』

『アル、行きますよ。レオニス達に、私達銀碧狼の力を見せつけてやりましょう』

「ワォーーーン!」

レオニスの呼びかけにラーデが応じ、アウルムがいると思しき方向に飛んでいく。ラーデの飛ぶスピードは、とびきり早い訳ではないがそこまで遅くもない、といったところか。

そのラーデの後をライトとレオニスが追い、アルとシーナも勢いよく駆け出していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

転移門のある場所から出立し、ラーデの案内のもと飛び続けること約小一時間。

飛行できるライト達はもちろんのこと、シーナとアルもラーデの後をしっかりと追い続けていた。

緩やかな斜面どころか、垂直に近い断崖絶壁ですら、シーナ達は軽やかに駆け上がり、上にある平地まで悠々と到達してしまう。

しかもそれは成獣であるシーナだけでなく、アルもしっかりと食らいついているのがすごいところだ。

レオニスの心配を鼻であしらう余裕ぶりは、決して虚勢ではなく真の実力がある故の自信だったことが証明されたようなものである。

そして奥地に行くにつれ、野生の鷲獅子がちらほらと目視できるくらいになってきた。

ここはもう完全に鷲獅子の縄張り。

空を飛んでいるライト達はともかく、その中を突っ切るシーナ達のことが心配になってくる。

縄張りに侵入してきた他所者に、鷲獅子達がちょっかいを出したり排除しようと襲いかかってこないとも限らないからだ。

しかし、今のところそのような状況にはなっていない。

これは、この場に皇竜メシェ・イラーデがいるからか。

レオニスもラーデの後を負いつつ、周囲を警戒しながら飛行し続けた。

すると、それまで高い位置で飛んでいたラーデが徐々に飛ぶ位置を下降させ始めた。どうやらアウルムがすぐ近くにいるようだ。

そうして辿り着いたのは、何の変哲もない平らな高地。

そこで日向ぼっこよろしく寝そべっている金色の塊―――アウルムがいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

遠目からでもそれと分かる金色の塊は、陽光を浴びてキラキラと輝いている。

前回会った時と違い、金鷲獅子お得意の認識阻害能力は使っていないようだ。

アウルムがいる場所の少し手前でラーデが降り立ち、続いてライトとレオニスもラーデの後ろに降り立った。

それから程なくして、崖の斜面から駆け上ってきたシーナとアルが到着した。

そしてラーデが満を持したように、アウルムに声をかける。

『アウルムよ。我、ラーデが遊びに来てやったぞ』

『…………』

『どうした、まだ穢れの後遺症が残っているのか?』

『…………』

『…………ふむ、昼寝をしておるだけか』

『……(ᴢᴢᴢ)……』

声をかけても一向に返事をしないアウルム。

心配しながらアウルムの顔を覗き込むと、寝息を立てているのが聞こえてきた。

やはり日向ぼっこをしていて、気持ち良く昼寝をしているところと見える。

するとここで、ラーデの背後からレオニスやライトが覗き込んできた。

「ラーデ、アウルムは昼寝してるだけなんか?」

『ああ。いびきとまではいかないが、何やら気持ち良さそうに寝入っておるわ』

「そっかー。お昼寝しているところを起こすのは可哀想だねぇ」

『何、気にすることはない。我が起こしてしんぜよう』

ライトの気遣いなど無用、とばかりにラーデがアウルムの顔に近づく。

そして徐にその嘴の上に、ガバッ!と覆い被さった。

多くの鳥類は上の嘴に二つの鼻孔、鼻の穴がある。

それをラーデは己の身体を使って塞いだのだ。

鼻の穴をラーデに完全に塞がれたアウルム。

しばらくすると、眉間に皺を寄せながらフガフガ言い出した。

そうして耐え切れなくなったアウルムが、勢いよく頭を上に上げた。

その反動で、アウルムの嘴の上に乗っかっていたラーデがポーン!と遠くにすっ飛ばされていく。

『プハァッ!』

「お、アウルム、起きたか」

『わ、吾の眠りを妨げる不届者は誰ぞ…………って、ぬ? 其の方は以前、皇竜とともにいた者……奴の大家さん、とやらか?』

「おう、覚えていてくれたか。つーか、アウルムを起こしたのは俺じゃなくてラーデなんだがな」

まだ鼻をムズムズさせているアウルムに、早速レオニスが声をかける。

まだ寝惚け眼のアウルムだが、レオニスがラーデの大家だということは覚えていたらしい。

しかし、アウルムを無理矢理起こした不届者と誤認されてはレオニスも困る。

早々にラーデの名を口にしたレオニスの言葉に、アウルムがキョロキョロと周囲を見回した。

『ラーデ……皇竜も来ておるのか?』

「ああ。さっきあんたの嘴の上に乗っかって、あんたの息を塞いでいたんだが……あんたが勢いよく起きた拍子に、どっかにすっ飛ばされちまったわ」

『皇竜め、相変わらずの悪戯好きときたか。あんなちっこい 態(なり) のくせして、やることは以前と全く変わらん』

翼の先端で嘴の鼻孔を撫でるアウルム。

まだ鼻のムズムズが若干残っているようだ。

するとここで、遠くに吹っ飛ばされたラーデが戻ってきた。

『おお、アウルム、ようやく起きたか』

『おお、ラーデ、よくも吾が微睡みを蹴散らしてくれたのう!』

『まぁまぁ、そう憤るでない。其方に会うために、遠路はるばるやってきたのだ。それに、今日は珍しい客も連れてきておるぞ』

『珍しい客?』

小さなラーデの目の前に、アウルムがズズイッ!と鼻息も荒く詰め寄る。

しかし、ラーデはどこ吹く風でいなしつつ、視線をシーナ達親子の方に移す。

その思わせぶりな言葉に、アウルムが思わずラーデの視線を追い顔を上げた。

するとそこには、銀色の美しい毛並みを持つ銀碧狼の親子がいるではないか。

アウルムと同じく、陽光を浴びてキラキラと輝く銀碧色のシーナとアル。その煌めきに、アウルムの目は速攻で釘付けになった。

『おおお……何という美しい輝き……その毛色は、銀碧狼か?』

『ご名答。我が恩人、レオニスとライトの知己である銀碧狼の親子だ』

『確かにこれは、のんびりと昼寝などしていられないくらいに珍しい客だ。起こしてくれて礼を言うぞ、ラーデ』

『何のこれしき』

先程までの憤りは一転するどころか、ラーデに礼を言うアウルム。

そして徐にシーナ達親子に近づき、声をかけた。

『銀碧狼がこの荒れ地に来るとは、珍しいこともあるものよの。其の方ら、名は何という?』

『私の名はシーナ、こちらは我が子アル。鷲獅子の王にお会いできたこと、光栄に存じます』

『シーナにアルか、良き名だの。如何にも、吾はアウルム。この荒れ地を統べる鷲獅子の王 也(なり) 』

互いに名乗りを上げるシーナとアウルム。

出だしは和やかな会話に、ライトとレオニスが内心で安堵している。

するとここで、アウルムがシーナの顔を繁繁と見つめつつ問うた。

『……時に其の方ら、ラリーの子孫か?』

『ッ!!そうです、ラリーは我が曽祖父です!』

『おお、そうか、やはりな。其の方達の顔は、ラリーの面影が強う感じられるわ』

『そ、そうですか……? そんなことを言われたのは、生まれて初めてですが……何だかとても嬉しいですわ』

アウルムの言葉に、シーナが面映そうに答える。

アウルムがシーナの曽祖父を知っているとは驚きだ。

しかし、アウルムは皇竜であるラーデとも親交があるのだから、シーナの祖先をも知っていても何ら不思議ではない。

するとここで、どこからか「ぐきゅるるるる……」という腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。

その虫の声はとても大きくて、『今すぐ何か食いもんを寄越せ!』と全身全霊で訴えているかのようだ。

そしてその音源に全員の視線が集まる。

皆の視線は、アウルムのお腹に集中していた。

『ぬ……腹減った』

『アウルムよ……其方の腹の虫は飼い主に似て、本当に鳴き声が大きいな』

『うむ。吾が飼い慣らしておるだけに、主を見習う優秀な下僕なのだ。ついては吾が下僕の窮状を救うべく、何か食べるものを出してもらえると助かるのだが』

軽口を叩き合うラーデとアウルム。

アウルムの視線が、何やらレオニスの方を見ている。

その何とも熱い視線は、言わずもがな『飯くれ!』という無言の訴えを含んでいた。

そんな風に目で訴えられては、レオニスも無視する訳にもいかない。

レオニスが苦笑しながら空間魔法陣を開いた。

「しゃあないなぁ。俺はアルフォンソ達のように、ビッグワームの素なんて持ってねぇが……生肉の塊とかで良ければ出すぞ」

『おお、生肉も吾の好物の一つぞ!何でもよいから早う出してくれ!』

「はいよー、ちょっと待っててな」

生肉なら出すというレオニスの言葉に、アウルムの目がキラッキラに輝く。

ワクテカ顔でレオニスを急かすアウルムに、回りにいたライト達は思わず微笑みながら見守っていた。