軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1331話 春休みの予定と二年生最後の日

スペシャルなホワイトデーを堪能し、いよいよ春休みも近くなってきた。

ホワイトデーから九日後には、ラグーン学園が春休みに入る。

ラグーン学園の長期休暇は、ライトにとっては冒険三昧できる絶好の機会。夏休み程の長さはないが、それでも学校の都合を一切考えることなく行動できるのは嬉しいことだ。

春休みの間に何をするか、どこに出かけるか、今から考えるだけでもライトはワクワクしてくる。

そしてその行き先のリストアップに、ライトは日々勤しんでいた。

ライトが今度の春休み中に新たに着手しておきたいことは、今のところ五つ。

その内容は以下の通りである。

・ユグドラツィのもとで手持ちの使い魔の卵十五個を全部ハドリーに孵化させて、ハドリーの里を形成する。

・コルルカ高原奥地にいる金鷲獅子アウルムに会いに行く。

・ノーヴェ砂漠で最後の属性の女王、砂の女王探しをする。

・シュマルリ山脈中央にいるロドン=ドラゴタイラントの爪の採取。

・ブリーキー島にある『呪われた聖廟』にて、神威鋼入手のための魔物狩り=素材採取をする。

(ただし、呪いの聖廟に行く前にコヨルシャウキとビースリー対戦を複数回こなして、レベル上げをしておく必要あり。)

このうち上二つが比較的難易度低めなので、春休み入ってすぐにでもレオニスやラウルと協力して行う予定だ。

三つ目のノーヴェ砂漠探索も、その下の二つに比べたらまだマシな方なので、これも今春中にはこなすつもりでいる。

問題は下の二つ、ドラゴタイラントの爪採取と呪いの聖廟攻略。

これはライトのエクストラクエストのお題に関連することなので、レオニスやラウルの協力は得られない。

つまりはライト一人でこなさなければならないことが確定している。

難易度で言えば最高ランクで、ライトとしては『春休みのうちにこっそりこなせたらいいなー』と考えている程度のものなので、後回しでも構わない。

「とりあえず、ブリーキー島とドラゴタイラントの住処に瞬間移動用の魔石だけでも春休みのうちに設置したいなー」

「ブリーキー島の方は、既にセンチネルの浜辺にマッピングポイントを設置してあるけど……シュマルリ山脈中央の方はどうしよ? ラグスさんとこからはかなり遠いっぽいし」

「……ま、でもね。俺も空飛べるようになったし、何とかなるっしょ!」

春休みを直前にしたライト、布団の中であれこれと計画を練る。

クエストイベントは難易度が爆上がりする一方で苦労が絶えないが、その分やり甲斐はあるし達成した時の満足感も半端なく味わえる。

サイサクス世界に生まれついてから二度目の春休みを、今か今かと待ち侘びながら眠りにつくライトだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして迎えた、三学期終業式の日。

この日がライト達にとって、ラグーン学園初等部二年生最後の日。春休みが明けたらライト達は三年生に進級する。

三年生になったら教室も三年生用のエリアに移動するし、二年A組の教室に入るのも今日が最後かと思うと、ライトの胸にはほんのりとした感慨が湧いてくる。

しかし、こんなことを思うのは中身がアラフォーのライトだけ。

他の同級生達は皆、春休みへの期待でウキウキしている。

そして講堂での全校集会を終えて教室に戻り、担任のフレデリクの話を聞いて解散となった。

子供達は皆我先にとばかりに、一斉に下駄箱に駆け出していく。

ライトがのんびりと帰り支度をしていると、イヴリン達がライトに声をかけた。

「じゃ、ライト君もハリエットちゃんも、またね!」

「三年A組の教室で会おうね!」

「三年生になってもよろしくね!」

「うん、皆もまたね!」

「また四月にお会いしましょう」

明るい声でライト達に挨拶をすると、三人仲良く教室から駆け出していった。

三人とも家が近いので、皆で仲良く家に帰るのだろう。

一方ハリエットは、迎えの馬車があるのでそこまで急いで帰ることはない。ライトとともに、のんびりと帰り支度をしていた。

そしてほぼ同時に二人は帰り支度を終えて、席から立ち上がった。

するとハリエットが、少しもじもじとしながらライトに声をかけた。

「ライトさん、もしよろしければうちの馬車でいっしょに帰りませんか?」

「え、乗せてもらってもいいの?」

「もちろんです!だって、うちとライトさんのおうちはご近所さんですもの!」

ハリエットの誘いに、ちょっとだけライトがびっくりしながら問い返す。

そんなライトに、ハリエットが身を乗り出しながら『ご近所さん』を強調する。

もしかしたらハリエットは、イヴリン達三人が仲良く帰る様子を見て羨ましく思ったのかもしれない。

うんうん、やっぱ幼馴染がいるのって何となく憧れるよね!

ハリエットさんは由緒正しい貴族のおうちのお嬢様だから、気軽に話せる幼馴染とか作りにくいんだろうな。

平民の俺がハリエットさんの幼馴染役になるなんて、烏滸がましいにも程があるけど……ラグーン学園にいる間だけでも、幼馴染役を演じさせてもらうのもアリかもな。

ライトはそんなことを考えながら、ハリエットの誘いに快く応じた。

「そっか、そしたら今日はお言葉に甘えて馬車に乗せてもらっちゃおうかな!」

「はい!では、いっしょに参りましょう!」

ライトの快諾に、ハリエットの顔がパァッ!と明るくなる。

そうして二人は二年A組の教室から出ていき、貴族門前に控えていたウォーベック家の馬車に乗って貴族街に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ハリエットとともに馬車に乗ったライト。

馬車の中では、春休みの予定などの話に花が咲いた。

ハリエットはこの春休み中に、母ティアナとともにラグナ宮殿のサロンに通う予定なのだという。

そのためにドレスやアクセサリーも新調しなければならないとか、春休みの間はマナーを教える家庭教師が毎日来るとか、ハリエットが小さなため息をつきながら貴族特有の悩みや苦悩を溢す。

今から淑女教育とは大変だが、上流階級の子息子女ともなるとそうした教養教育は必須なのだろう。

一方ライトは、春休みの予定は適当に誤魔化した。

というのも、ライトが予定しているものはどれも普通の行き先ではないからである。

コルルカ高原奥地だのシュマルリ山脈中央だの、果てはノーヴェ砂漠探索など、何しろどれ一つとしてまともな行き先ではない。

ハリエットが聞いたら卒倒しそうなものばかりなので、ライトは「ラウルの畑作りの手伝いとか、お料理を習ったりして過ごす予定ー」とぼかすことにしたのだ。

もちろんハリエットがその答えに疑問を持つことなどない。

花咲くような明るい笑顔で「まぁ、ラウルさんからお料理を習うんですね。きっとすごいお料理上手になるでしょうね!」と嬉しそうに喜んでいる。

そしてライトとしても、春休み中に本当にラウルに料理を習いたいと思っているので、決して適当に嘘をついた訳ではない。

そうして馬車は、ウォーベック家の門の前に着いた。

ライトが馬車から降り、ハリエットに礼を言う。

「ハリエットさん、馬車に乗せてくれてありがとう!」

「どういたしまして。ライトさんも、春休みを楽しくお過ごしくださいね」

「うん!ハリエットさんもいろいろ忙しくて大変そうだけど、ラグナ宮殿での勉強頑張ってね!」

「ありがとうございます。では、四月にまたお会いしましょうね」

門の中に入っていく馬車の中から、ライトに向けて小さく手を振るハリエット。お嬢様然とした気品ある仕草が何とも愛らしい。

そんなハリエットに、ライトも大きく手を振りながら見送り、馬車が奥に入っていったのを確認してからレオニス邸に向かって歩き出した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニス邸に戻り、旧宝物庫でラグーン学園の制服から私服に着替えるライト。

いつもならラウルが玄関で出迎えてくれるところだが、出てこないところを見るとどこかに出かけている最中なのだろう。

カタポレンの畑でまだ農作業中か、もしくは伐採木の丸太化作業なのか、あるいはカタポレンの畑以外の場所に出かけているのか。

今朝カタポレンの畑で会った時には、ラウルは特にどこに行くとも言っていなかった。

ならばまだ畑の方にいるんだろうなー、と思いつつ転移門でカタポレンの家に移動しようとしたところ、転移門からラウルが現れた。

「お、ライト、もう帰ってきてたのか」

「あ、ラウルもおかえりー。ぼくも今帰ってきたところだよー」

「そうか、出迎えできなくてすまんな」

「ううん、気にしないでー。今まで畑で作業してたの?」

「おう、大根の収穫と丸太作りしてたわ」

「お疲れさまー。お昼ご飯にする?」

「ああ、すぐに用意するからいっしょに食堂に行くか」

「うん!」

カタポレンの畑から帰宅したラウルをライトが労う。

ラウルは農作業する時は必ず黒の天空竜革装備で挑むのだが、今日もその黒い執事風のフル装備でビシッ!と決めている。

こんな格好いい姿ですることが農作業や伐採木の処理だとか、スタイリッシュの無駄遣いもいいところである。

とはいえこの執事風装備はラウルの身体強化に大きく寄与しているので、力仕事が多い農作業及び丸太作りには欠かせないのだ。

ライトとともに階段を降りながら一階に向かう道すがら、空間魔法陣からエプロンを取り出してちゃちゃっと着るラウル。

その流れるようなテキパキとした動きも実に見事で、燕尾服風の装備とのミスマッチなどもはや気にならないくらいである。

そうして二人は昼食を摂るために、食堂に入っていった。