軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1327話 ブルーム達との再会

ドラリシオ・マザーへの挨拶を済ませ、北の里に向かうライト達。

途中数多のドラリシオとすれ違うも、皆遠巻きに 客人(ライト) 達を眺めている。

マザーの蔓で作ったブレスレットをしているおかげで、問答無用で襲われることはなくなったのはありがたい。

そして北の里の端、療養用の畑のある場所に着くと、四体のドラリシオ・ブルーム達が水遣りをしていた。

先頭でライト達を案内してきたチルドレン、ドラ子とドラ恵がブルームに向かって大きな声で呼びかける。

「アナタ達ー!アクア様がいらっしゃったわよーーー!」

「お水を遣る手を止めて、こっちにいらっしゃーーーい!」

「「「「ハーイ!」」」」

姉達の呼びかけに、妹達も明るい声で応じながら駆けてきた。

根っこを器用に動かしスタタタター!と走って?くる様は、この群生地に連れてきた時よりもはるかに元気で、それを見たライト達は安堵する。

そしてそれぞれがライト達に挨拶をした。

「アクア様、ご無沙汰しております!」

「ラウル、マキシ、烏ノ、お兄チャン達、こんにちハ!」

「レオニスト、ライトモ、久しぶリ!」

「皆、私達ニ、会いに来テ、くれたノ?」

ブルーム達の明るい笑顔に、ライト達も『やあ、皆元気そうだね』「こんにちは!」「おう、久しぶり」と答えている。

そしてアクアがブルーム達全員を見回しながら、嬉しそうに話しかけた。

『皆、思ってたより元気そうで良かったよ。あれから君達がどうなったのか、僕もとても心配だったんだ』

「アクア君、心配、してくれテ、ありがとウ!」

「あれからネ、オ母チャンガ、私達ヲ、ずっト、抱っこしテ、傷ヲ、癒やしテ、くれたノ。だかラ、もウ、すっかリ、元気ヨ!」

「今ハ、畑にいル、オ姉チャンヤ、妹達ガ、元気になっテ、くれるようニ、毎日、皆デ、お世話ヲ、しているノ!」

アクアの言葉に、ブルーム達も皆嬉しそうに返す。

そして四体の中で一番大きなブルームが、アクアだけでなくライト達にも向けて声をかけた。

「もし良ければ、皆で畑を見ていってくれますか?」

『もちろん!ライト君、レオニス君、行こう!』

「うん!」

姉ブルームの誘いに、アクアが嬉しそうに畑の方に飛んでいく。

ライト達が力を合わせて開墾した、北の里の療養畑。

ここには約百体のブルーム達が植えられている。

それはまだとても小さいものばかりだが、ところどころに小さな緑の芽が出ているのが見えた。

「わぁー、新しい芽が出てる!これ、全部ノーヴェ砂漠で生まれたブルームさん達だよね!?」

「だな。持ち帰った花びらや蔓は、とても小さかったが……あんな小さな欠片だったものが、こうしてちゃんと芽吹いているのを見ると……何だか感動だな」

「ああ……」

畑の新芽を見て大喜びするライトに、素直にその感動を口にするレオニス。

そんな彼らの横で、ラウルやマキシ達八咫烏兄弟も感無量の面持ちで畑を眺めていた。

しかし、四ヶ月経っても小さな新芽一つというのは、もとの欠片が小さかったにしてもかなり成長速度が遅いように思える。

そのことを危惧したアクアが、姉ブルームに問うた。

『ねぇ、この畑にいる子達は、いつになったら君達のような身体に戻れるの?』

「私達ドラリシオは、身体の基幹である球根を大きく太らせた状態でないと、地上での活動はできません。なので、私達の姉妹もまずは球根の回復に努めているのですが……母様のお話によると、春を五回迎える頃には畑から出られるだろう、と仰っていました」

『そうなんだ……今のままだと、あと丸五年くらいは療養しなくちゃならないんだね……』

姉ブルームの話に、アクアがため息をつきながら畑の新芽を見遣る。

確かに彼女達ドラリシオは、階級の区分に関係なく下半身の大きな球根に栄養を蓄えて活動している。

一方ノーヴェ砂漠で生まれて散っていったブルーム達は、球根どころかほんの一欠片の葉や花弁、蔓を持ち帰るのがやっとだった。

そこからマザーの涙で奇跡の復活を遂げることができたが、その状態から新たに球根を作り出すとなると相当な月日を要するのは想像に難くなかった。

するとここで、レオニスが姉ブルームに話しかけた。

「五年か、そりゃ大変だな……なぁ、このブルーム達に遣る水はどこから運んでるんだ?」

「北の里の中央にある溜池から、手に汲んで運んでるわ」

「そのちっこい手でいちいち水を汲んでは畑に撒いてるのか?」

「ええ。だって、それしか方法がないもの。それに、水遣りは姉様達も手伝ってくださるから、そんなに大変でもないのよ」

「そっか……そりゃまぁそうだよな」

にこやかな姉ブルームの答えに、レオニスが納得しつつもしばし考え込む。

ドラリシオ達は人族のように、バケツや桶など道具を使って何かを作業するということはない。

ただ、ドラリシオ達は手がウツボの花のようになっているので、そこに水を汲んで運ぶことができる。

そしてそれは体格の良い上位種程有利で、チルドレンやレディー達も水遣りを手伝ってくれるという。

しかし、完全復活するのに五年もかかるというのはさすがに心配だ。

しかもドラリシオは、ドライアドのように植物魔法は使えないしそもそも魔法全般があまり得意ではない。稀に魔法を使える者が出てくるが、使えるのは土魔法くらいだという。

これは、ドラリシオの種族特性=物理攻撃が得意で脳筋寄りのせいもあるだろう。

すると、話を聞いていたアクアがレオニスに向かって声をかけた。

『ねぇ、レオニス君。一つお願いがあるんだけど、いいかな?』

「ン? 何だ?」

『ここに、傷ついたブルーム達を癒やすための泉を新しく作ってあげたいんだけど……もしよければ、皆にも泉作りを手伝ってほしいんだ』

「おう、いいぞ。要は天空島に作ったアレと同じようなものを作りたいってことだろ?」

『うん。今回は水の女王はいないけど、僕だけでもそれなりに魔力を含む水を十分作れるからさ』

アクアのお願いを、レオニスが速攻で承諾する。

ここにアクアが泉を作れば、良質な魔力を含む水を療養中のブルーム達に思う存分与えることができる。

その効果は、水の女王とともに作った天空島のアクアの泉ほどではないだろうが、それでも溜池の水を使うよりははるかに有用なはずだ。

そしてレオニスが、ドラ子とドラ恵に向かって声をかけた。

「なぁ、アクアがここにブルーム達のための泉を作りたいって言ってるんだが。特に問題はないよな?」

「え!? アクア様が直々に泉を作ってくださるの!?」

「そそそそれは……とても嬉しいことだし、多分大丈夫だとは思うけど……一応母様にお聞きしてくるわッ!!」

「おう、いってらー」

レオニスの問いかけに、二体ともびっくりしている。

そしてドラ子がマザーに伺いを立てるべく、バビューン!と駆け出していった。

確かに群生地内に新たな泉を作るとなると、統治者であるマザーの承諾をきちんと得ておいた方がいいだろう。

「じゃ、ドラ子が帰ってくるまでここでのんびりと待つとするか」

「そしたらさ、どこに泉を作るか先に下見しておかない?」

「お、それいいな。…………って、何だ、この地響き?」

ライトの案にレオニスが同意する傍から、何やらズドドドド……という地響きが聞こえてきた。

音が激しく鳴る方を見ると、それはドラ代が連れてきたレナータとミレイユの駆けてくる音であり、その少し後ろにカティアがついてきていた。

『アクア様ーーー!ご無沙汰しておりますーーー!』

『レオニス達も来てるんだってーーー!?』

『コラー!貴女達!アクア様の御前なんだから、もう少し落ち着きなさーい!てゆか、療養畑で走り回っちゃダメーーー!』

喜び勇んですっ飛んでくるレナータとミレイユに、カティアが大慌てで諌めている。

もちろんレナータとミレイユがそれを聞く様子など微塵もないが、その尻拭いに奔走するカティアが大変そうだ。

そんな騒がしいレディー達に、レオニスがふぅ……と小さくため息をつきながら数歩前に進み出て、徐に右手を前に翳した。

「澎湃波濤」

レオニスの右手の前に発現した魔法陣から、極太の水柱がものすごい勢いで放射された。

そしてその極太の水柱は、突進してくるレナータとミレイユの顔面に直撃し、その後ろにいたカティアもろとも後方に大きく吹っ飛ばされた。

ちなみにチルドレンのドラ代はレディー達より身長が低いので、レオニスの水柱に吹っ飛ばされることなく無事である。

「「「ふぎゃッ!」」」

水柱で吹っ飛ばされて、地面にぺたり……と倒れ込む三体のドラリシオ・レディー達。ゥキュゥ……という情けない声を漏らしている。

そして位置的にカティアの上にレナータとミレイユが重なって倒れていて、つくづく災難に見舞われるカティアが何とも気の毒ではある。

びしょ濡れになってひっくり返っているレナータ達。その顔の横に、レオニスが仁王立ちしてギラリ!と双眸を光らせて見下ろす。

「お前ら、ここがどこだか分かってんのか? こないだノーヴェ砂漠から命からがら戻ってきたブルーム達が療養している畑だぞ?」

「「「……(プルプル)……」」」

「だいたいお前らはこいつらのお姉ちゃんなんだから、妹の療養を邪魔しちゃいけねぇだろう」

「「「……(コクコク)……」」」

「次にまた同じことをしたら、今度は水柱じゃなくて火柱を食らわせるぞ? あァ?」

「「「……(プルプルコクコク)……」」」

レディー達を叱り飛ばすレオニスの、思いっきり眉間に皺を寄せて忌々しげに二人を見下ろす鋭い眼光と、底冷えするような声の響き。それらのあまりの冷酷さと恐ろしいまでの威圧に、レナータ達が身体を寄せ合ってプルプルと震えながらコクコクと何度も小さく頷き続ける。

さすがに今回ばかりは自分達に非があることは、レナータもミレイユも理解したようだ。もっとも、それを必死に止めようとしていたカティアだけは巻き添えを食らって可哀想ではあるが。

レディー達がちゃんと聞き分けたことに、レオニスは一転してパァッ!と明るく笑いかける。

「分かりゃいいんだ、分かりゃな!」

『ったく……私達を水魔法で吹っ飛ばすなんて、アンタくらいのもんよ』

『ホントホント……私達と同じで頭まで筋肉のくせに、水魔法だけじゃなくて火魔法まで使えるなんて、そんなん反則よ!』

「ン? 何なら今すぐ火魔法の味見でもするか?」

『貴女達、本当に懲りないわね……』

レナータとミレイユがブチブチと文句を言いながら立ち上がり、ずぶ濡れになった顔や手の蔓をブンブンと振って水飛沫を飛び散らす。

その文句にレオニスがにこやかな笑顔のまま、何気に物騒なことを言っている。

もちろんこれはレオニス流ジョークなのだが、カティアが慌てて制止に入る。

『てゆか、レオニスもここで火魔法とかやめて? 貴方がそんなものを繰り出した日には、この里全部が焼けてしまいかねないんだから』

「分かってるって。こんなのほんの軽い冗談だ」

『貴方の冗談は、聞く側からしたら冗談に聞こえないのよ……』

レオニスとレディー達の、明るくもどこかイカれたやり取り。

それを目の当たりにしたブルーム達は、口をあんぐりと開けたままポカーン……としていて、ライト達はただただ苦笑するしかなかった。