軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1328話 二回目の泉作り

元気があり余るドラリシオ・レディー二体を落ち着かせた後、レオニスはライト達とともに泉を新設するための土地選びを始めた。

もともとこの療養のための区域は然程広くない。

その上百体ものブルーム達の療養が必要となり、既にライト達が前回訪問時にかなり広範囲を開墾済みで余剰分の土地があまりなさそうだ。

「ンーーー……できれば大きめの泉を作ってやりたいんだがなぁ」

「だよねー。ここにはブルームさん達がたくさんいるし」

「直径10メートル以上は欲しいところだよな」

ライト、レオニス、ラウルが畑の外周を歩き北の里の環境を確認しつつあれこれと話を詰めている。

一方マキシ達八咫烏兄弟は、泉作りで彼らが直接手伝えることはないため、ブルームやレディー達とともに畑の新芽への水遣りを手助けしていた。

ラウルからバケツを十個程借りて、溜池から水を汲んではバケツリレーよろしくブルーム達にせっせと渡している。

そして療養畑の南側の木々の前で、ライト達は頭上の枝葉を見上げながら相談を続けていた。

「やっぱ木を三本程伐採して、泉のための場所を新しく広げるべきか?」

「その方が早くて確実だとは思うけどねぇ……」

「それにはやはりマザーの許可が要るんじゃねぇか?」

そんなことを話していると、そこに先程マザーのもとに走っていったチルドレン、ドラ子が帰ってきた。

「母様のお許しが出ましたーーー!周囲の木も伐って構わない、とのことですーーー!」

手と蔓をブンブンと振りながら、療養畑に向かって駆けてくるドラ子。

ちょうど良いタイミングで現れたことに、レオニスがニカッ!と笑いながらライト達に話しかける。

「お、そうか、なら早速ここら辺の木を伐るか。五本も伐れば十分だろ」

「木の伐採なら俺に任せろ」

「頼んだぞ、ラウル。ライトはラウルが木を伐った後、土魔法で木の周りの地面を柔らかくしてくれ。根の除去は俺とラウルがやる。根や石を取り除いた後、俺が土魔法で岩を出して泉の器を作る」

「はーい!」

「了解」

木の伐採役を進んで買って出るラウルに、レオニスも頷きながら他の指示もテキパキと出していく。

天空島でも新しい泉を一度作っているので、その経験を活かして同じ手順で作業を始めた。

特にラウルなど、最近は木の伐採を頻繁にこなしているのでお手のものだ。

伐採する木の周囲を飛んで、スパスパと枝打ちしていく様はまさに伐採のプロ、もはや 樵(きこり) マスターと呼んでも差し支えない程の腕前である。

そうして小一時間が経過した頃には、泉の器が完成した。

その大きさはテニスコートくらいで、深さは2メートルくらいか。

体格が小さなブルームはもちろんのこと、チルドレンくらいまでならプールのような水遊びもできそうだ。

出来上がった泉の器を見て、アクアが満足そうにライト達に礼を言う。

『うわぁ、こんなに立派な器を作ってくれてありがとう!』

「どういたしまして。ブルーム達の力になりたいという気持ちは、俺達も同じだしな」

「うん!アクアが作る泉なら、きっとここのブルームさん達もすぐに元気になるよ!」

アクアの礼の言葉に、ライトとレオニスが明るい笑顔で応える。

一方ラウルはとても真面目な顔でアクアを見つめている。

「アクアはいつも俺達のことを助けてくれるしな。ノーヴェ砂漠で出会ったブルーム達を救いたいという俺の願いを、あの時アクアは叶えてくれた。この程度のことじゃ、その礼にもならんと思うが……改めて礼を言わせてくれ。アクア、あの時は本当に世話になった、ありがとう」

『フフフ、ラウル君は本当に真面目だねぇ』

ノーヴェ砂漠遭難事件でのアクアの助力に、ラウルが改めて礼を言う。

あの時もレオニスの発案でアクアの力を借りて、四体のブルーム達を人知れずノーヴェ砂漠からカタポレンの森まで一気に移動させることができた。

ブルーム達の生命を救いたいというラウルの願い。それを快く聞き届けてくれたアクアに、ラウルは感謝してもしきれない程に恩義を感じていたのだ。

そんな真面目なラウルに、アクアも嬉しそうに微笑んでいる。

『さ、今度は僕の出番だね。皆が頑張って作ってくれたこの器に、僕の力で決して尽きることのない泉を作ろう』

アクアはそう言うと、器の中心に向けて魔力を放った。

その直後からアクアの身体が光り、器の中央の底から清水がブワッ!と湧き出てきた。

その様子を、ライト達だけでなくいつの間にか泉の近くに集まっていたブルームやチルドレン、レディー達も息を呑みつつ見守っている。

そうして一分程経過しただろうか。

ライト達が力を合わせて作った器の中には、日の光を受けてキラキラと煌めく清らかな水がなみなみと満ち溢れていた。

『これが、アクア様の御力……』

『溜池の水とは比べ物にならない美しさね……』

『しかも、何だかすっごくいい匂いがする……』

カティア達レディーが、アクアの力を目の当たりにして心底感嘆している。

チルドレンのドラトリオも『こんな大きな泉をちゃちゃっと作っちゃうなんて、すごーい!』『さッすがアクア様!』『アクア様、バンザーイ!』と大はしゃぎしている。

するとここで、ライト達の横にいたブルーム達がアクアに声をかけた。

「アクア君、早速この水を畑の姉妹にあげたいのですが……」

『うん、もちろんいいよ。でもその前に、君達にも味見してもらいたいな』

「エ、ワタシ達モ、このお水ヲ、飲んでモ、いいノ?」

『もちろんさ!』

畑の姉妹に泉の水を与えたいと言う姉ブルームに、アクアが水の味見を勧めるではないか。

アクアの思いがけない提案に、妹ブルーム達が目をぱちくりとさせて驚いている。

半ば戸惑っているブルーム達に、アクアがニッコリと笑いながら話しかけた。

『だってこの泉は、ノーヴェ砂漠で傷ついた全てのブルーム達のために作ったんだもの。そしてその中には、当然君達も含まれているからね?』

「ありがとウ!」

「アクア君、大好キ!」

「アクア君、本当にありがとうございます!」

アクアの心遣いに、妹ブルーム達が一斉にアクアに抱きつきながら礼を言う。

姉ブルームだけは、分別を弁えてか抱きつくには至らないが、それでも嬉しそうな笑顔でアクアに礼を言う。

そんな和やかなやり取りの中、空気を読まない者が一人。

「アクア、俺もこの泉の水の味見をしていいか?」

『もちろんいいよ。ラウル君だけじゃなくて、ライト君やレオニス君、マキシ君やお兄さん達も皆味見してみてよ』

「ぼく達も味見していいの? ありがとう!」

ラウルの味見のおねだりに、アクアが前肢をクイッ、と動かして泉の水からいくつもの玉を作り出した。

それをラウルやブルーム達だけでなく、ライト達にも振る舞う。

そしてその水の玉は、チルドレンやレディー達の分も作られていた。

この場にいる全員の顔の前に、今出来上がったばかりの泉から分離した水の玉がふよふよと浮いている。

それを見たカティアが、おそるおそるアクアに問うた。

『アクア様……私達にも泉の水を飲ませていただけるのですか?』

『うん。せっかくだから君達も味見してみて』

「「「アクア君、ありがとうございます!」」」

畏れ多そうに尋ねるカティアを他所に、アクアのOKが出た瞬間に礼を言いつつパクッ☆と水の玉を口に含むドラトリオ。

無言で食いつかずに、先にちゃんと礼を言ってから口に含むあたり、彼女達にしてはかなり気を遣っていると言えよう。

そして泉の水を口に含んだドラトリオ、その美味なる味に絶叫するのも早かった。

「えッ、何このお水!」

「すっごく美味しい!」

「ほんの一口飲んだだけなのに、身体の中から力が漲るわ!」

ドラトリオの嬉しい悲鳴?を聞いた他のブルームやレディー達も、思わず急いで目の前にある水の玉を口にした。

『『『!!!』』』

「「「「!!!」」」」

彼女達の黄金色の瞳が、先程叫んでいたチルドレン達と同じように大きく見開かれる。

人生経験ならぬ花生経験の浅いブルームやチルドレンはともかく、それなりに長い年月を過ごしてきたレディー達ですら泉の水の美味しさに度肝を抜かれたようだ。

『こんなに清廉な魔力を含む水は、生まれて初めてだわ……』

『す、すごいお水ね……』

『ホ、ホントすごいお水ね!』

思うがままに所感を漏らすレディー達。

適切な表現で感動を表すカティアに、レナータとミレイユの語彙力がほんのりと残念寄りな気がするが。多分それら気のせいではない。

そしてライトとレオニス、アクアも新たな泉の水を絶賛する。

「おお、これはまた美味い水だな!」

「うん!アクアの泉のお水もすっごく美味しかったけど、こっちの泉のお水も美味しいね!」

「アクアが祝福を与えた泉の水の凄さは、俺も天空島のあの泉でよく知ってるが……植物にとって、これ程美味い水はそうそうない」

ライト達に続き、マキシ達も刮目しつつ泉の水を味わう。

「アクア君が作るお水は、本当にすごいですね!」

「ああ……このほんの一欠片の水の中に、魔力がこれでもか!と凝縮されているのが分かるな……」

「これ、シア様へのお土産にしたいくらい美味いッスね!」

八咫烏三兄弟が、それぞれの口でアクアが生み出した水を大絶賛する。

若干最後の一名だけ本音がダダ漏れだが、誰の発言かは明かさないでおこう。

そしてこの泉の真の持ち主であるブルーム達。

彼女達の黄金色の瞳は、感激の涙で溢れていた。

「こんなにも美味しい水を、私達のために授けてくださるなんて……どれ程礼を言っても、言い足りません……」

「このお水ヲ、たくさん飲めバ、きっト……」

「皆、すぐニ、元気ニ、なれル……」

「アクア君……本当ニ、本当ニ、ありがとウ……」

ブルーム達の黄金色のつぶらな瞳から、泉の水にも負けないくらいに澄んだ雫がポロポロと零れ落ちる。

瀕死の姉妹を思い咽び泣くブルーム達を、アクアが無言のまま前肢を広げてその胸に優しく包み込んでいた。