軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1317話 六番目の使い魔

ルディが拾ってきた使い魔の卵から生まれた、淡緑色の女の子。

背丈はライトの膝丈より小さいくらいで、頭に薄桃色の花冠を被っている。

髪は肌より濃い艶やかな緑色で、長さは背中の真ん中あたりまであるストレートヘア。瞳は花冠と同じ薄桃色で、あどけない童女の顔立ちだ。

体型は幼児体型で、ノースリーブのAラインワンピースのような衣服をまとっていた。

「えーと……これは、何だろう?」

『主様も知らない使い魔なんですか?』

「うーん……大昔の何かのイベントで、この子と似たようなモンスターが出てた、ような、覚えが、ある、気が、するんだけど……」

ぺたんこ座りでふぅー……と一息つく幼女?を前に、ライトが半目のしかめっ面でじーーーっ……と見つめて考え込む。

しばらくして、ハッ!とした顔になるライト。何かを思い出したようだ。

「あー、そうだ!これ、無人島の森林調査イベントに出てきたモンスターと同じ絵柄だ!」

『何て名前の子なんですか?』

「えーとねぇ、そのモンスターの名前までは思い出せないんだけど……ちょっと待っててね、この子のステータスを見てみるから」

ライトはマイページを開き、幼女に向けて【詳細鑑定】を発動させた。

謎の幼女のステータスは、以下の通りである。

====================

【名前】−

【種族】ハドリー

【レベル】1

【属性】地

【状態】通常

【特記事項】従属型使役専属種族第六十一種乙類

【HP】35

【MP】55

【力】4

【体力】5

【速度】6

【知力】5

【精神力】8

【運】6

【回避】7

【命中】6

====================

「種族名は、ハドリーだって」

「おお、こりゃまた珍しい使い魔を引き当てたもんだねぇ」

「ヒョエッ!…………って、ヴァレリアさん!?」

「やほー☆」

緑色の幼女、ハドリーのステータスを見ていたライトの顔の横に、後ろからヴァレリアの顔がニョキッ!と出てきた。

相変わらず唐突な登場の仕方に、ライトは口から心臓が飛び出しかけるくらいにびっくりして飛び上がる。

「ヴァレリアさん……正面から出てくることはできないんですか?」

「いやー、私って実は照れ屋さんだからさー、皆の真ん前に登場するのって気恥ずかしくって無理なんだよねー!」

「さいですか……とてもそうは見えませんが……」

心臓をバクバクさせながら物申すライトに、ヴァレリアがペカーッ☆と輝く笑顔で自分が照れ屋だと主張している。

ヴァレリアの言動は、とてもじゃないが照れ屋さん要素など微塵もない。

しかしそれは傍から見たらの話であって、本当は本人が言う通りとてもナイーブな性格なのかもしれない。ということにしておこう。

そんな二人のやり取りなど構うことなく、転職神殿組がヴァレリアに挨拶をする。

『ヴァレリアさん、ようこそいらっしゃいました』

『『ヴァレリアさん、こんにちは!』』

姉のミーアに倣い、ミーナとルディもヴァレリアに向かって元気よく挨拶をする。

輝く笑顔で挨拶をするミーナとルディに、ヴァレリアが彼女達の前に歩いていき頭や頬を撫でた。

「二人とも、ちゃんと挨拶ができて偉いねぇ♪」

『いつもミーナお姉様や主様に、いろんなことを教えていただいていますので!』

『僕もパパ様や姉様達、そしてヴァレリアさんを尊敬しています!』

「本当に可愛い子達だねぇ♪ やはりライト君が孵化させた子達だけあって、賢さや礼儀正しさも生みの親に似たんだろうね!」

ヴァレリアに褒められて嬉しいのか、ミーナもルディもニパッ☆と糸目笑顔でヴァレリアと会話をしている。

ヴァレリアはその殆どが謎に包まれた魔女だが、彼女が持つ能力や知識は底知れないものがある。

叡智の塊のような存在と仲良くなれたことは、ミーナやルディにとって今後も計り知れない恩恵があるだろう。

そしてここで、早速ライトがヴァレリアに声をかけた。

「ヴァレリアさん、この子ってそんなに珍しい使い魔なんですか?」

「あー、この子ね、ハドリーという名前で『ツツジの野原』という意味なんだよ。属性は一応地属性となっているけど、草木の精霊が元ネタというかモチーフになっていると言った方が早いかな」

「草木の精霊……つまり、ラウルやドライアドの親戚みたいなもんですか?」

「そうそう!ラウル君やドライアドの近縁種だね!」

理解が早いライトに、ヴァレリアもご機嫌な様子で肯定する。

確かに淡い緑色の肌は、天空島に住まうドライアド達を彷彿とさせる。

色はドライアド達の方が濃い緑色だが、彼女達は木の精霊でハドリーは草木の精霊。木々よりも草木の方が柔らかい緑色になる、ということなのだろうか。

そして頭に被っている花冠の花も、よくよく見るとツツジの花にそっくりだ。

色も薄桃色でツツジそのものだし、やはりヴァレリアが言う通りこのハドリーは『草木の精霊という性質を持った使い魔』ということで間違いなさそうだ。

するとここで、ハドリーがライトのマントをクイッ、クイッ、と引っ張った。

『パパ……名前、欲しい……』

「パ、パパ!? ぼくがパパ!?」

「ンー? ライト君ってば、何を驚いているのさ? 君がパパになるのなんて、今更じゃーん!」

「そ、そりゃ確かにそうですが……」

ハドリーにパパと呼ばれたライトが喫驚するも、ケラケラと笑うヴァレリアに今更扱いされてぐうの音も出ない。

そう、ライトは既にルディから『パパ様』と呼ばれている。

ここでハドリーにパパ呼ばわりされたところで、本当に今更である。

「この子の名前、どうしようか」

『主様にお任せいたします!』

『パパ様のセンスは世界一ですので!』

『そうですね、ライトさんに任せておけば間違いありませんね』

「皆、プレッシャーをかけないでくださいよぅ……」

ライトにお任せ!と言い切る転職神殿組に、ライトが顔を引き攣らせている。

ハドリー当人も望んでいるが、兎にも角にもまずは彼女だけの名前をつけてあげなければならない。

ライトは目を閉じ必死に脳内で思案する。

ツツジ……ツツジって英語で何ていうんだっけ。確か、アザレア?

アザレアのままだと響きがちょっとゴツいかな……

なら、頭の二文字を取っ払って『レア』にしよう!

ライトが名前を考え出すのに要した時間、およそ三秒。

それまで閉じていた目をパッ!と開けて、ヴァレリア達に向けて宣言した。

「この子の名前はツツジの英名『アザレア』から取って、『レア』というのはどうでしょう?」

『レア……可愛らしい名前ですね』

『女の子らしい響きで、とても良いと思います!』

『さすがパパ様ですー!』

「珍しいという意味のレアとも相まって、素晴らしい名前だね!」

ライトの案に、四人とも手放しで大絶賛している。

反対意見など微塵もないようなので、今度はハドリー当人に向けてライトが問いかけた。

「えーとね、君の名前だけど『レア』というのはどうかな?」

『レア……私の名前は、レアです!』

「気に入ってくれた?」

『はい!ステキな名前をありがとうございます!』

ライトが考案した名前を復唱する、レアと名付けられたハドリー。

名前が気に入ったようで、何よりである。

そして転職神殿組とヴァレリアが、一斉にライトの左右や頭越しにレアに話しかける。

『レアちゃん、初めまして。私はミーアと申します。ようこそこの転職神殿にいらっしゃいました、私達は心より貴女を歓迎いたします』

『私は貴女のお姉さんのミーアですよー♪ 『ミーア姉様』と呼んでね!』

『僕は貴女のお兄さんのルディです!僕のことは『ルディ兄様』と呼んでくれると嬉しいな!』

「私はね、ヴァレリア!この転職神殿に住んではいないけど、ちょくちょく来るのでして私のことは『ヴァレリアお姉ちゃま』と呼んでくれたまい☆」

ライトの右側にミーア、左側にヴァレリア、ライトの後ろにミーナとルディがいて、それぞれレアに向けて話しかけている。

息つく間もなく次々と話しかけられたレア、『ぁ、ぁぅぅ……』と戸惑い固まってしまっている。

そんなレアを庇うようにライトが抱っこし、他の四人を一喝する。

「そんな一辺に話しかけて、レアが驚いているでしょ!はい、皆、横一列に整列ッ!」

「『『『は、はいッ!』』』」

鬼教官よろしく整列を言い渡すライトに、四人ともシャキッ!となり慌てて横一列に並んだ。

一番左側はミーアで、その横にヴァレリア、ミーナ、そして一番右側にルディの順で並ぶ。

「はい、そしたら一番端のミーアさんから順に自己紹介していってください」

『はい』

ライトが胡座で地べたに座り、その中に抱っこしたレアをちょこん、と座らせている。

そしてライトの取り仕切りに従い、ミーアから順に改めてレアに話しかけた。

『私はこの転職神殿で専属巫女をしております、ミーアと申します。これからよろしくお願いしますね』

「私はヴァレリア。風来坊の魔女だよ。私のことは『ヴァレリアお姉ちゃま』と呼んでね!」

『私は力天使のミーナ。主様の三番目の使い魔で、ここ転職神殿ではミーアお姉様の妹でルディの姉です。『ミーナお姉様』と呼んでくださいね!』

三人の美女からの挨拶に、レアも『よろしくです!』『分かりました、ヴァレリアお姉ちゃま、ですね!』『ミーナお姉様は、使い魔の先輩なのですね!』とちゃんと受け答えしている。

そして最後のルディの番になった。

ルディがちょっとだけモジモジとしながら、レアに声をかける。

『こんにちは、レア。僕の名前はルディ。パパ様の四番目の使い魔で、君がさっきまで入っていた使い魔の卵を拾ってきたのは僕なんだ。そして僕も弟か妹が欲しいってパパ様に前からお願いしてて、今日その願いが叶ったんだ。だから、僕のことは『ルディ兄様』と呼んでくれると嬉しいな……』

ルディが照れ臭そうに明かす、レア生誕秘話。

その話をじっと聞いていたレアが、徐に口を開いた。

『……レアがこうして今日生まれてこられたのも、パパとルディ兄様のおかげなのですね。ルディ兄様、ありがとうございます』

『!!!』

ずっと弟妹を欲しがっていたルディ。

その念願が叶い、こんな可愛らしい妹ができた。

しかもその妹レアはとても賢くて、ルディの話をちゃんと理解して『ルディ兄様』と呼んでくれた。

妹から兄様と呼ばれるその甘美な響きに、ルディが目を閉じジーーーン……と涙ぐみながら感慨に浸っている。

そして眦に溜まった涙を誤魔化すかのように、ルディがクワッ!と目を見開き、レアに顔をズイッ!と近づけて話しかけた。

『よーし、君のことは僕が一生守ってあげるからね!』

『あ、ルディってばズルい!私だってレアのことを守るんだからー!』

『二人とも、大人気ないですねぇ……レアの勉強や教育は、やはり私が受け持たなくては』

「そういうミーアも、何気に大人気ないよね……」

初めてできた妹を前に張り切るルディに、ミーナは張り合い、ミーアは弟妹を窘め、ヴァレリアはミーアの変貌ぶりにスーン……とした顔でツッコミを入れている。

転職神殿に新たな仲間、レアが加わったことでより賑やかで楽しげなミーア達を、ライトもまた嬉しそうに見守っていた。